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算定基礎届とは?押さえておくべき基礎知識

掲載日:2021年6月28日生産性向上

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算定基礎届は、正式名称を「被保険者報酬月額算定基礎届」といい、企業が毎年日本年金機構へ提出する書類の一つです。社会保険料の計算に必要となる手続きのため、提出の時期が近づくと対応に追われるケースもあるでしょう。
本稿では、算定基礎届について「何のために必要なのか」や「どのように手続きをするか」といったポイントをご紹介します。

算定基礎届とは

健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、月の報酬を等級ごとに区切った「標準報酬月額」により算出され、従業員の毎月の給与から天引きで徴収されます。
標準報酬月額は、給料や手当などの報酬額を区切りの良い幅で区分したもので、健康保険では都道府県ごとに1~50等級、厚生年金保険では1~31等級まで区分されています。しかし、報酬額は昇給や減給などで年々変動するため、毎年一回見直しを行うことになっています。これを「定時決定」といい、年に一度の大事な手続きとなります。
算定基礎届は、この定時決定の際に「標準報酬月額」を決定するために提出する、重要な書類になります。

算定基礎届によって見直された「標準報酬月額」は、原則9月から翌年8月まで適用されます。
ただし、「標準報酬月額」は、算定基礎届を提出する7月より前3ヵ月分、つまり4月、5月、6月に支払われた報酬をもとに算出します。
一年間に支払われた賃金から標準報酬月額を算定するのではないので、注意しておきましょう。

健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料は、企業と従業員が折半で支払うものです。提出後に間違いが見つかった場合は訂正して再提出ができますが、手間を増やさないためにも正しく手続きを行いましょう。

算定基礎届の対象者

算定基礎届の提出は、7月1日の時点で健康保険・厚生年金保険の被保険者となっている従業員が対象となります。
休職中や育児休業などを取得している人も含まれますので、抜け漏れがないようにしましょう。
また、70歳以上の健康保険被保険者は、厚生年金の被保険者ではありませんが、算定基礎届の対象になりますので注意してください。

ただし、以下に該当する従業員は対象とはなりません。

  1. 6月30日までに退職した従業員
  2. 6月1日以降に被保険者となった従業員
    資格取得時の決定によって翌年8月までの標準報酬月額が決定しているため、対象外となります。
  3. 7月改定の月額変更届を提出する従業員
    4月の昇給などで、4月~6月に支払われた報酬の平均と、現在の標準報酬月額に大きな差がある場合、7月に月額変更届の提出による随時改定を行います。そのため算定基礎届の提出は必要ありません。
  4. 8月、9月に随時改定が予定されている従業員
    8月または9月の随時改定に該当する場合には、随時改定が優先されるため「月額変更届」の提出が必要となります。

最近は働き方が多様化しているため、中には副業やパートやアルバイトを掛け持ちしている従業員がいるかもしれません。
該当する従業員は、社会保険の加入条件を満たす場合、それぞれの企業で資格取得手続きを行うことになっています。

算定基礎届は、メインとなる企業として届け出た「選択事業所」を管轄する年金事務所から各企業に送付されますので、「選択事業所」を管轄する年金事務所に提出します。
その際の標準報酬月額は、各企業から受ける報酬を合算して決定し、各企業における保険料はそれぞれから受ける報酬の割合によって按分して計算することになります。

標準報酬月額の対象となる報酬

標準報酬月額を算出するにあたり、対象となる報酬とならない報酬があります。
労働者が労働の対価として受ける報酬は、賃金、給料、俸給、手当などを問わずすべて対象となります。
また、金銭(通貨)に限らず、通勤定期券、食事、住宅など現物で支給されるものも報酬に含まれます。

例えば、通勤定期券の場合はその全額が対象となります。そのため、3ヵ月・6ヵ月単位の通勤定期券は、1ヵ月あたりの額を算出して報酬に含みます。食事を支給している場合は、厚生労働大臣が都道府県ごとに定めた価額に換算して算出します。ただし、3分の1以下を従業員が負担している場合は、本人負担分を差引いた額を算入します。社宅や寮を提供している場合は、厚生労働大臣が都道府県ごとに定める価額に換算して報酬を算出します。
ただし、臨時に支払ったものや、年3回以下で支給した賞与(*年3回以下支給されるものは標準賞与額の対象)などは含まれません。

標準月額報酬の算出方法

算定基礎届の基礎となる標準報酬月額は、どのように算定されるのでしょうか。

標準報酬月額は、各都道府県別の「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」で確認します。保険料額表は、全国健康保険協会のウェブサイトや日本年金機構のウェブサイトを参照ください。

標準報酬月額を計算する手順は、以下のようになります。

  1. 4月・5月・6月に支払った報酬(給与・賞与等)を確認する
  2. 各月の支払基礎日数を調べる
  3. 3ヵ月分の報酬の平均額を計算する
  4. ③で計算した平均額を、自社を管轄する都道府県の保険料額表から探す
  5. ④が該当する「標準報酬」欄の「等級」と「月額」をチェックする

この中で特に重要なのは、①の報酬と②の支払基礎日数です。
報酬には、前述したように「報酬に含むもの・含まないもの」がありますので、正しい内訳で計算されているかどうかの確認が必要です。

また、支払基礎日数とは、その報酬の支払対象となった日数のことです。算定基礎届で届出する報酬月額は支払基礎日数が17日以上あるものに限られ、17日未満の月は算定の対象外とされています。
正社員などで月給制や週休制の場合は、出勤日数に関係なく、暦日数が支払基礎日数となります。欠勤した日数分だけ給料が差し引かれる場合には、就業規則や給与規程等に基づき事業所が定めた日数から欠勤日数を控除した日数でカウントします。
パートやアルバイトなど短時間就労者の場合は、実際の出勤日数(有給休暇も含む)が支払基礎日数となります。

4月~6月の3ヵ月間で17日以上の支払基礎日数がある月の平均で標準報酬月額を算出します。3ヵ月とも17日未満の場合は、15~16日出勤した月を対象とし、3ヵ月とも15日未満の場合は従前の標準報酬月額で定時決定します。
特定適用事業所に努める短時間労働者の場合は、4月~6月の3ヵ月の支払基礎日数がそれぞれ11日以上で算出することになります。

ただし、4月~6月の期間が繁忙期と重なり残業が集中する場合、残業手当が多く支給され標準報酬月額が高くなる可能性があります。

そこで、「4、5、6月の給与の平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した標準報酬月額」を比較して、保険料額表で2等級以上の差が生じ、その差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合には、前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した標準報酬月額で決定することができるようになっています。ただし、この適用を受ける場合は「事業主の申立書」と「被保険者の同意」の提出が必要となります。

算定基礎届の書き方と期限、提出先・提出方法

算定基礎届の提出期限は、原則としてその年の7月1日~7月10日までとなっており、協会けんぽに加入している場合は管轄の年金事務所に提出します(7月10日が土日祝日の場合は翌日以降の開庁日となります)。
健康組合保険に加入している場合は、健康保険分を健康保険組合へ、厚生年金部分を年金事務所へ提出します。
ただし、健康保険組合の提出期限は上記日程と異なる場合がありますので注意しましょう。

算定基礎届の用紙については、以下の書類が届いたら必要事項を記入して提出します。

  • 被保険者報酬月額算定基礎届(70歳以上被用者算定基礎届)
  • 被保険者報酬月額変更届(7月改定者)《該当者がいる場合》
  • *令和3年4月以降は、厚生年金保険の適用事務に係る事業主等の事務手続きの利便性向上を図る目的から、被保険者報酬月額算定基礎届総括表は廃止されました。

算定基礎届の用紙には5月中旬頃までに資格取得届を提出した被保険者については、氏名や生年月日などが印字されているため、異動や退職など変更があれば訂正・削除します。

また、提出方法は、以下の4つの方法があります。

  1. 送付された算定基礎届に同封されている返信用封筒で管轄の年金事務所へ郵送する
  2. 管轄の年金事務所窓口に持参する
  3. 電子媒体(CD・DVD)に記録して郵送する
  4. 電子申請する

電子媒体で提出する場合には、指定のフォーマットで作成する必要があります。詳しくは日本年金機構のウェブサイトを参照ください。
また、電子申請を行う場合は、電子政府の総合窓口「e–Gov」を利用します。電子申請が可能な給与システムを使わず直接「e–Gov」から手続きを行う場合は、日本年金機構のウェブサイトで手続き方法が紹介されていますので、参考にすると良いでしょう。
算定基礎届を提出後に「標準報酬月額決定通知書」が届いたら、通知書の内容をもとに毎月の給与計算を行います。

算定基礎届の準備を進めておこう

算定基礎届の作成・提出では、「どの従業員が対象なのか」「どの報酬が標準報酬月額の基となるのか」を正しく把握し、期限内に提出することが大切です。年に一度の業務とはいえ、年末調整に次ぐ忙しさに頭を悩ませる方も多いことでしょう。
算定基礎届の手続き自体は複雑ではないものの、その他の業務に支障をきたさないよう、いかに効率的に進めるか検討しておくことが賢明です。
また、2020年4月から特定の大法人に対して、一部の社会保険・労働保険に関する手続きに対して電子申請が義務化されます。当面は大企業や一部の法人が対象ですが、今後は中小企業へと対象が拡大することも予想されます。現有のシステムが電子申請に対応していない場合は、今のうちに準備を進めておくことも重要です。

最近の給与システムでは、算定基礎届についても書類作成から電子申請まで対応しているものが数多くあります。電子申請まで対応可能なシステムを活用することも、手間を省き無駄なく業務効率をあげる方法として有効でしょう。

本稿を参考に、算定基礎届に関する基礎知識をおさえ、準備を進めてください。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「算定基礎届とは?担当者が押さえておくべき基礎知識(https://www.obc.co.jp/360/list/post113)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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