ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

自社を磨く、「採用ブランディング」入門

掲載日:2023年8月1日人材戦略

キービジュアル

少子高齢化によって生産年齢人口が減少し、人材確保に悩んでいる企業は少なくありません。その一方で、従来とは違う採用活動を展開し、成果につなげている企業もあるようです。それが、近年よく聞く「採用ブランディング」。
本稿では、採用ブランディングにどのようなメリットがあり、どう取り組めば良いのかを見ていきます。

求職者から「選ばれる」企業をめざす時代

採用ブランディングとは、文字通り、採用活動において自社を「ブランド化」することです。
商品やサービスにおけるブランド構築の考え方を採用にも応用し、企業の認知度やイメージ、魅力を高め、「この会社で働きたい」「ここに入社したい」と思われる、求職者から「選ばれる」企業になることをめざします。

昨今、採用ブランディングが注目されている背景には、近年の採用環境が「売り手市場」といえる状況があるでしょう。
少子高齢化で若手を中心に労働力が減少し、有効求人倍率も上昇傾向にあります。
従来のような「求人を見た応募者の中から、欲しい人を採用する」という手法では、なかなか人材を獲得できなくなっているわけです。

加えて、近年は企業と求職者との接点が多様化しています。
特に若年層の採用においては、ナビサイトなどの求人媒体に情報を掲載していれば、応募が集まってくる時代ではありません。
合同説明会や就職セミナー、スカウトなどのダイレクトリクルーティング、就活に特化した口コミサイト、SNSでのつながりなど、様々な方法でアプローチすることが求められています。

だからこそ、求職者に自社のイメージを定着させ、認知度を高めていくことで、能動的に応募を取りにいかなければなりません。
そのためにも、自社の強みや魅力を一貫して伝える、採用ブランディングを取り入れる企業が増えているのです。

6つの効果と、それを最大化する進め方

では、採用ブランディングを実施することで、具体的にどのような効果を期待できるのでしょうか。
主に、次の6つがあげられます。

1.企業認知度の向上
自社の魅力や強みなどをうまく発信することで、多くの人に認知されます。
求職者に伝われば、興味を持ってもらうきっかけとなり、応募にもつながるでしょう。
特に中堅・中小企業にとっては、まず自社を知ってもらうことが採用活動の第一歩です。
企業としての認知度があがることは、母集団形成や内定辞退の防止などに、大きな効果をもたらします。

2.良質な母集団の形成
採用ブランディングを通じて集まってくる求職者は、自社の魅力や強みを理解し、それに共感する人材である可能性が高いです。
発信する情報に自社のニーズを盛り込めば、それに合った人材からの応募が増え、質の高い母集団ができるでしょう。
採用後、入社時のミスマッチも減り、社員の定着化がはかれるでしょう。

3.競合他社との差別化
多くの求職者は1社狙い撃ちではなく、複数の企業へ同時に応募しているはずです。
他社との差別化ができていないと印象に残りにくく、数ある候補の一つとしてしか認識されません。
採用ブランディングによって自社独自の魅力や強みを発信できれば、それだけで求職者の印象に残りやすくなるでしょう。

4.採用コストの削減
企業の認知度が高まり、魅力やイメージが定着すれば、求人広告や掲載媒体を減らしても、求職者からのアプローチが増えることを期待できます。
また、母集団の質があがることで、量を追いかける必要がなくなり、合同説明会などへの参加コストも抑制できるでしょう。

5.入社後の離職抑制
採用ブランディングでは、自社の魅力や強み、価値観などを採用活動の中で求職者に伝えていきます。
例えば、説明会、1次面接、2次面接……とステップを進みながら、求職者には企業の価値観や理念、社風などへの理解や共感が生まれていくわけです。

その結果、入社時点で既に高い理解と共感に達しており、ギャップが生まれにくくなるため、人材定着の促進や離職防止にもつながるでしょう。

6.早期に活躍人材となる
どんなに能力が高い人でも、その企業の風土や価値観にマッチしていなければ、入社後に活躍することは難しくなってしまいます。
活躍人材になるためには、半年から2年はかかるといわれていますが、採用活動の段階で風土や価値観になじんでいれば、入社後に活躍するまでの時間を短縮することもできるのです。

これらの効果を最大化するためには、以下のような流れで進めることをおすすめします。

  1. 自社の分析
  2. 求める人材像の明確化
  3. 採用コンセプトの決定
  4. 採用コンセプトに基づいて、「採用スローガン」を作る

まずは、自社の商品やサービスの強み、制度や待遇といった目に見えて分かりやすい魅力だけではなく、経営理念や社風などにもスポットをあてて分析し、他社と差別化できるポイントを把握しましょう。
さらに、課題となっていることや強化すべき内容も合わせて整理していくと、求める人材像や採用コンセプトが自ずと決まってくるのです。それを言語化し、採用スローガンへと落とし込んでいきます。

“超理想”のペルソナに向けて、コンセプトを設定する

「求める人材像」は、選考における客観的な判断基準となります。
採用したい人材の要件について、複数いる評価者間で認識のズレを防ぐためにも、明確に設定しておく必要があるのです。

その方法としては、自社の理念や価値観に基づいて決める、現場社員にヒアリングするといったことが考えられます。
それ以外に、社内でエース的な存在の社員をサンプルとして、その特性を分析するのも良いでしょう。
すでに活躍している人は、自社にとって理想の人材に最も近い存在であり、大いに参考になるはずです。

採用ブランディングにおいては、求める人材像を基に「採用ペルソナ」を設定します。
類似した言葉に採用ターゲットがありますが、年齢や学歴、職歴などの大まかな属性で対象を絞り込んでいくターゲットに対し、ペルソナは架空の人物を想定して、スキルだけでなく趣味や価値観、性格など、詳細な人材像を作りあげていくものです。

例えば、「海外在住歴があり語学が堪能」「趣味はゴルフ」「ITリテラシーが高い」「明るく社交的」などと細かく設定していきます。
もちろん、それらをすべて満たす人材を見つけるのは至難の業でしょう。
しかし、このように“超理想”ともいえる人材像を詳細に想定することで、採用コンセプトや採用スローガンも、よりパーソナライズされた心に響くものとなり、研ぎ澄まされていきます。

そのうえで、「採用コンセプト」を決めていきましょう。
採用コンセプトは、その企業の魅力や強みを言語化したもので、採用活動全体を貫く「軸」となるものです。
これが曖昧だと、説明会や面接などで担当者が変わる場合、それぞれの話すことがバラバラになってしまい、統一感がなくなります。それでは、求職者に企業のイメージがしっかり伝わりません。

自社の魅力や強み、求職者に求める価値観などを整理したうえで、詳細に定めた採用ペルソナを基に「誰に何を伝えるか」を明確にして、マッチする人材から共感を得られるものにするのです。

求める人材像やコンセプトが決まったら、それを伝えるメッセージを作ります。
独自の要素を盛り込んだ、自社「らしさ」を表現することを意識して、ホームページやパンフレット、求人広告などで活用できるものを考えましょう。

全社で協力する体制を作る

採用ブランディングでは、全社をあげて、その活動に取り組む体制を作る必要があります。
なぜなら、自社の魅力や強みなどを明確にしてコンセプトやスローガンに落とし込んでも、それが社内で浸透・共有されていなければ意味がないからです。

例えば採用活動で発せられるメッセージと、SNSなどで発信している内容にギャップがあると、会社のイメージが正しく形成されることはありません。
求職者から選ばれるどころか、場面によって言っていることが変われば、信頼を得ることすら難しくなるでしょう。

また、発信する内容と現場の実状にギャップがあると、せっかく採用した人材も「イメージしていた会社と違う」と早期離職につながりかねません。
だからこそトップをはじめ、全部署、全社員が一丸となって取り組まなければならないのです。

経営者の中には、採用活動と事業を区別して考える方も少なくありません。
しかし、採用と事業は密接に関係しています。人材不足が深刻化すると、事業の継続にも支障をきたすでしょう。
まずはトップ自ら、採用を最優先課題だと認識し、全社に協力を呼びかけましょう。

先に触れたように、採用ブランディングの効果はミスマッチ防止や人材定着など、応募者の入社後にも表れます。
新入社員がすぐに会社を辞めてしまったり、その育成に時間がかかったりすることは、ともに働く自分たちにとっても大きな負担になることを既存社員に理解してもらうことも重要です。

これらの手法をうまく活用し、採用課題を解決した事例があります。
医療分野における人材サービスやITツールを提供するベンチャー企業では、自社のフェーズに合わせて段階的に採用ブランディングを実施することで、採用課題を解決したのです。

立ち上げから成長期には、まず自社の認知度をあげるために、既存社員が入社した理由を連載という形でブログに掲載しました。
採用媒体の機能を活用することで、求職者の目に触れるようにするとともに、実際の社員が抱くリアルな声を届けるコンテンツが奏功し、総計120万近くのPVを獲得したといいます。

そのうえで、認知度がある程度あがってからは、コーポレートサイトのリニューアルや動画コンテンツの拡充を実施しました。めざしたのは、自社の社会的役割を訴求することです。
これにより、認知度の向上によって興味を持った求職者たちの中でも、企業理念や会社の風土に共感した人が集まるようになりました。

同社が採用ブランディングを成功させた秘訣は、自社が抱える課題とありたい姿を明確に把握し、順を追って解決していったことでしょう。
このように自分たちが定めたゴールに向かって、ストーリーを作り実践していくことも、採用ブランディングにおいては重要なポイントなのです。

おわりに

企業が自社の魅力や特徴をしっかり伝えられず、求職者に共感が生まれていなければ、ミスマッチにつながるでしょう。
いくら母集団を大きくしても、求める人材像や採用コンセプトが明確になっていなければ、的確なアプローチをすることはできません。
効率良く、効果的に採用を進めていくためにも、まずは自社の魅力や強みを再確認し、それを言語化することから始めるのです。

実は、これは採用だけでなく、既存社員にも好影響があります。
全社的に自社の理念や強みなどを再確認する機会にもなり、社員一人ひとりが組織の一員であるという自覚や意識が強まり、モチベーションがあがることも期待できるでしょう。
「自社磨き」の取り組みとして、ぜひ実践してみてください。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

その他の最新記事

ページの先頭へ