一流へと飛躍する “リベラルアーツ”入門
掲載日:2023年5月1日人材戦略
ビジネスにおける様々なシーンで役立つとされる「教養」。
例えば海外では、商談の前に行われる軽いアイスブレイクで、ビジネスと関係のないアートや歴史の話、いわゆる「教養トーク」を繰り広げるのが一般的です。
そして、新たな分野や職務にて新しいスキルを習得することを指す、「リスキリング」が注目される日本でも、「リベラルアーツ」を勉強することにより得られる「普遍性の高い学び」への関心が高まっています。
リベラルアーツは「教養」と訳され、一般的には「文学、歴史、美術、音楽、科学などの分野の知識」とされます。
本稿では、ビジネスパーソンが心得ておくべき教養の重要性、および効果的な学びの方法について紐解いていきましょう。
ビジネスに不可欠な「深く考えるための知的基盤」
昨今、リスキリングが注目を集めているのは、「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)」といわれているように、先が見えない時代になってきていることが背景にあります。
一度就職したからといって定年まで勤めあげることは確実ではなく、雇用が流動的になってきているのが実態です。
そのため、いかなる状況にあっても自分で納得して働けるよう、主体的に学びを深め、スキルを高めていく必要性がこれまで以上に求められています。
変化していく環境に合わせて最適な学びを習得していくために、自ら学習する姿勢が大切なのはもちろん、あらゆる学びの礎となる、普遍的な知的基盤を自分の中にもっていることが重要です。
その学びの基盤となるのが、リベラルアーツであると考えられています。
一見ビジネスとは別領域と捉えられることもありますが、本来リベラルアーツとは「論理的に深く考えるための教養」であり、「普遍性の高い学び」です。
「普遍性の高い学び」とは、「情報の分野に関わらず、なんらかの意味を見出せる思考力」といえます。
そのような思考を有していれば、環境が変わったとしても、最適な形で情報の取捨選択や、アイデアの創出ができることでしょう。
だからこそ、ビジネスにおいても必要とされるのです。
知識を得ることに加え、リベラルアーツを学ぶ意義としては、以下のことがあげられます。
- 自ら課題を見つけ、課題解決のための目標を設定して、解決に導くことができる
- あふれる情報の中で物事の本質を捉えたり、異質なものに共通項を見いだしたりして、新たな思考を広げていくことができる
- 物事を多角的に捉えることができ、思考力や意思決定力、分析力の基盤をつくることができる
これらの素質は学習を続けるビジネスパーソン、そしてリーダーに不可欠な力であるのはいうまでもないでしょう。
「3つの習慣」で、効果的に教養を身に付けよう
ビジネスパーソンの土台となりえるリベラルアーツを身に付けるために、どのようなポイントを押さえておくべきでしょうか。
以下に、教養を効果的に自身の血肉としていく際に、お勧めの「3つの習慣」を紹介します。
1.問題意識を持って自問自答をする習慣
「ChatGPTは、本当に便利なのか」
「日本の製造業はなぜ停滞気味なのか」
「外国人労働者の受け入れが進まないのはなぜか」
……こうした問いへの答えを出すのは簡単ではありませんが、問題意識をもちながら自問自答する習慣を付けることで、深く考えることができるようになります。
熟考する中で自然と好奇心が高まり、自分が知らなかった関連情報(あるいは関係ないと思っていた情報)を得ることもできるでしょう。
知識が蓄積され、やがてそれらの知識が結びついて、新たな思考が生まれやすくなるのです。
2.持論の説明を頭の中でシミュレーションする習慣
自分なりの考えをもつことができたら、それを他の人に分かりやすく説明できるよう、頭の中で繰り返しシミュレーションする習慣を意識しましょう。
相手に話す状況を思い浮かべて思考を言語化することにより、一層持論の深化、定着化が期待できます。
そして、機会があれば、実際に人に話してみましょう。
他人に持論を披露する状況では、周囲から様々な意見や感想、質問が出てくるはずです。
このような経験を経ることで、新たな気付きが生まれ、さらに学びが深まります。
3.異論と前向きに対話する習慣
持論を展開すれば、当然反対意見や異論を提示する人も出てきます。
そうした「自分とは異なった意見を持つ人」と前向きに対話することで、知識や見識が広がるのです。
そのためには異論に対しても、否定したり、感情で判断したりするのではなく、前向きに対話する姿勢が大切です。
議論になってしまうと、どうしても勝ち負けの意識が生じるので、まずは異論をじっくり聞いたうえで、「なぜそう思うのか」という背景を理解していくことを意識しましょう。
「関係ない」と思っていた意見や情報が、その意味合いを理解することで、やがて持論と結びつくこともあります。
また、自分と異なる人に敬意をもって接することは、しなやかな感性も育むことにもつながるでしょう。
特に学んでおきたい4つの領域
欧米等で商談の前や商談中に軽くリベラルアーツに触れることが多いのは、相手の興味をひき、交渉をスムーズにすることができるからです。
冒頭でもお伝えしたとおり、リベラルアーツの領域は経営学、歴史学、建築学、言語学、家政学、政治学、心理学、数学等多岐にわたります。
ここでは、ビジネスパーソンが特に見識を深めておきたい分野を紹介しましょう。
- 美術史
アメリカにおいては宗教・歴史・社会が三大教養といわれていますが、ビジネスの場で宗教と政治の話はタブーとされています。
それを踏まえ、推奨したい話題が美術史です。
作品を通じて、創作された時代背景や哲学、思想等を知る手掛かりとなりえる学問であり、国を問わず共通する無難な話といえます。 - 日本・日本人について
日本人として、自国のことを良く知っておくことはいうまでもなく大切です。
日本、および日本人にはどんな特徴があるのか、どのようにして発展してきたのか、日本の組織の特徴や労働観はどのようなものか、その効用とは何か……といったところまで、深く、日本の文化や社会について今一度学ぶと良いでしょう。
そうすることで、「日本人としての自分とは」「自分は日本をどう見ているか」「自分が今成し遂げたいことに、日本人であることはどう影響しているのか」といったことにまで思考が広がり、自己理解にもつながります。 - グローバル観
日本だけでなく、世界はどうなっているか、その中で日本はどんな位置付けなのか、世界の国々はどうつながっているかといった視点をもつことは、世界がボーダレスになっている今、最も大切なことです。
ビジネスの交渉時等には、ピンポイントで相手の国の文化や歴史を知っておくことは礼儀でもありますし、日本と比較して考えられることで、交渉をうまく進める一助にもなります。
同時に、日本のことも客観視できるようになっていくでしょう。 - 社会・人間学
例えば、社会における「多様性」について学ぶことは、現代のビジネスでは欠かせません。
また、人間関係構築を人文学的に紐解いたり、テクノロジーと人類の付き合い方や今後の展望に対する知見を習得したり等、社会や人間について学ぶことは、まさに普遍のテーマといえるでしょう。
哲学にも通じる領域です。
おわりに
リベラルアーツを身に付けることで、物事を多角的に捉える姿勢や、柔軟な思考を養うことができます。
自分自身の教養が広がるのはもちろん、まったく新しい価値を創造できる可能性も高めることができるのです。
学びをどう自分の中に取り込み、どう解釈してビジネスでいかしていくかは自分次第。
自身の思考が固定化されていないか、常に自問自答しながら学びを深めていくと良いでしょう。
(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
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