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先手必勝! 「人材確保」5つの戦略

掲載日:2022年9月1日人材戦略

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少子化に伴い、日本の労働人口も減少の道を辿っています。人材不足は今後、更に加速することでしょう。
そうした中、採用にかけられるコストが限られる中小企業が優秀な人材を集めるためにはどうするべきでしょうか。
人材確保は1日にして成らず。中長期的視点に立ち、早い段階から戦略を考える必要があるといえます。
本稿では、優秀な人材を獲得するため、企業が取るべき5つの戦略を紹介します。

人手不足により事業存続の危機も

ある企業では、「人材」を「人財」と表記するそうです。事実、企業にとって「人」はまさに「財産」といえるでしょう。

昨今では人材の流動化が加速しているため、せっかく採用した人でも、自分が企業に合っていないと感じればすぐに離職されてしまいますし、求職者が集まらず、そもそも採用活動自体が難航している企業も少なくないはずです。

企業の採用活動が暗礁に乗りあげれば、今いる従業員にしわ寄せが及び、過労やストレスによる業務効率の低下、顧客に対するアウトプットの質が低くなることにもつながりかねません。
不満を募らせた従業員が離職してしまうこともありえます。
そうすると、ますます人手不足に拍車がかかる悪循環に陥り、最悪の場合、事業継続が困難になってしまうかもしれません。

厚生労働省の「令和3年版 労働経済の分析」によると、倒産件数全体における人手不足関連の倒産が占める割合は、2018年以降増加傾向にあります。
このことからも、人材確保は企業にとって最優先とすべき経営課題といえるでしょう。

中小企業の中には、採用市場における自社の知名度の低さや、採用活動にかけられるコストが少ないこと等が原因で、採用活動では不利な立場にあると感じる企業もあるかもしれません。
しかし、「中小企業であるがゆえの強み」にもっと目を向けることで、採用における課題を乗り越えられる可能性もあるのです。

柔軟な姿勢、中長期的な視点を!

一般的に、中小企業は大企業に比べ、意思決定や施策実施をスピーディに行いやすく、柔軟性に富む点がひとつの大きな特徴といえます。
こうした強みを生かし、予想される労働市場の更なる縮小に備え、中長期的視点で人材確保に向けた施策を行っていくべきです。

具体的な戦略しては次の5つが考えられます。

  1. 1.ダイバーシティ推進(多様な人材が働きやすい環境の整備)
  2. 2.キャリア支援の充実(従業員のやりがいや意欲を高めるための育成)
  3. 3.コミュニケーションの活性化(一人ひとりの思いの傾聴)
  4. 4.採用ブランディング強化(自社の魅力の分析・アピール)
  5. 5.経営方針の明確化(将来性、方向性の可視化)

では、一つずつ解説していきます。

1.ダイバーシティ推進(多様な人材が働きやすい環境の整備)

「ダイバーシティ」とは「多様性」を意味しますが、単に多種多様な人材が組織にいるだけではダイバーシティ推進とはいえません。

これまで、活躍の場が限られていた女性や高齢者、障がい者の方々が活躍できる仕組みを導入し、働きやすい環境を整えることが重要であり、さらに、対象者ごとに施策を用意するだけに留まらず、様々な局面に対応できる柔軟性を備えていることがベストです。

ダイバーシティには、性別や年齢、障がいの有無、国籍等の「目に見える多様性」と、価値観や考え方等の「目に見えない多様性」があります。

例えば子育て中の社員であっても、「子供が小学校に入る前までは仕事を抑えたい。だから時短勤務をしたい」と考える人がいれば、「子供が小さくてもこれまで通り出張もこなしたい」という考えの人もいるでしょう。
「育児中の人」向けに一律の制度を用意しても、一部の人のニーズに応えられない可能性があります。

そのため、様々な働き方を会社として認め、個人が自分で選択できる仕組みを整えるのが理想といえます。

とはいえ、企業としてもすべての選択肢をあらかじめ用意するには限度があるので、当事者の状況や思いを把握し、きめ細やかにすり合わせていくのが現実的でしょう。
大企業ではなかなか難しいことですが、規模が小さく、小回りの利く中小企業であれば、比較的取り組みやすいはずです。

2.キャリア支援の充実(従業員のやりがいや意欲を高めるための育成)

教育・育成制度の充実も、人材確保には有効な要素です。

新入社員がただ与えられた仕事をこなし、自身の能力が生かされない、スキルアップが図れないと感じてしまえば、その会社にいる意味を見出せなくなってしまうでしょう。

求職者には、入社後にどのような教育が行われ、いつどんなスキルが身に付くか等、あらかじめキャリア計画を示すことをお勧めします。
そのためにはもちろん、会社として中長期的視点による育成計画を整えておく必要があるでしょう。

また、応募時から職種別(コース別)に募集をかけることで、本人の希望と実務のミスマッチを防いでいる企業もあります。
これは、企業にとってもスペシャリストの早期育成につながるというメリットがあります。
その分、企業側は細やかに充実した教育支援を用意する必要があるので、手間はかかりますが、若手のうちから活躍できる育成体系を整えておくことで、安易な離職を防ぎ、人材の確保・定着につながることが期待できます。

3.コミュニケーションの活性化(一人ひとりの思いの傾聴)

自社に最適で、機能する施策を行うためには、従業員の声を吸いあげることが第一です。

企業は、できる限り従業員一人ひとりの考えを把握しておくのが理想でしょう。従業員が多いと現実的ではありませんが、人数の少ない中小企業であれば、不可能ではないはずです。

採用時の面接で、人物像を見極めるためにじっくり話すことはもちろんですが、入社1年以内までは2~3カ月に1回程度、個別に話す場を設けてフォローすることで、新入社員の不安は軽くなるでしょう。

その他の従業員についても、1対1で上長と話す場(1週間に15分程度)を定期的に設定する等、お互いの考えや状況を理解し合っておくことで業務の円滑化が図れ、悩みを抱えたまま離職することを防げます。

リモートワークが日常化している会社では、従業員がコミュニケーションの減少から孤独感を抱えやすいです。
オンラインツール等を活用して、意識的に従業員の声に耳を傾けましょう。

経営者と従業員の距離感が近い企業であれば、経営者自ら従業員の話を聴くことも可能かもしれません。
経営者と従業員が直接語り合うことにより、ステレオタイプのダイバーシティ推進やキャリア支援に留まらない、自社に適した施策構築のヒントが見えてくるはずです。

4.採用ブランディング強化(自社の魅力の分析・アピール)

大企業よりも知名度が低い中小企業こそ、強化しておきたいのが「採用ブランディング」です。

求職者が企業の価値観について深く知ることが共感につながり、高い精度でのマッチングが期待できます。
採用が効率化されることで、コスト抑制にもなるのです。

採用ブランディングを高めるため、まずは自社の強みや魅力を再考してみましょう。
同業他社とどう違うか、労働条件だけでなく、独自の技術力やサービス、顧客の特殊性、業界での位置づけ、社会への貢献具合等……。
特に事業の側面で魅力を分析し、深掘りしていくと良いでしょう。
労働条件に惹かれて入社したとしても、事業そのものに魅力を感じなければ、働くモチベーションは長続きしないものだからです。

また、自社の強みや魅力を分析していくことで、あらためて「不足している人材像」「欲しい人材像」がはっきりしていくことも期待できます。

そうして見出した魅力を、企業のウェブサイトやパンフレットに記載するのはもちろん、経営者の思いや事業の沿革等をまとめて、書籍化するのも一手です。

自社の魅力をアピールすることは、企業イメージの向上にもつながり、営業ツールにもなり得ます。

5.経営方針の明確化(将来性、方向性の可視化)

最後に、これまで紹介してきた4つの内容を包括する必須のポイントが、自社の経営方針や採用方針を含めた人事プランを明確にすることです。

求職者や従業員が「この会社で働き続けたい」と思うには、トップが方針や将来性をわかりやすく打ち出すことが不可欠でしょう。
そのためには、経営者自身に中長期的な視点が備わっていなくてはなりません。

特に採用選考時には、自社の将来像を示しながら、求める人材像と求職者を見比べる必要があります。
「こんなスキルを身に付けてもらいたい」「こうして活躍してもらいたい」と、入社前に自身の口から伝えることで説得力が出ますし、求職者にとって、入社後のイメージが掴みやすくなるでしょう。

会社としての方向性を明示することで、共感する人たちが集まり、モチベーションの高い集団となることが期待できます。
単なる「人員確保」ではなく、まさしく「人財確保」が実現できるでしょう。

助成金や、公的施策活用のススメ

自社で戦略を考えるにあたり、助成金を活用する方法もあります。

厚生労働省では、雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上等を支援する「事業主の方のための雇用関係助成金」を多く用意しているのです。

例えば、企業のOFF–JTやOJTについて、経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する「人材開発支援助成金」や、非正規雇用労働者の正社員化や賃金規定等の増額改定、正規雇用労働者との賃金規定・諸手当制度の共通化等の取り組みを支援する「キャリアアップ助成金」等があげられるでしょう。
【事業主の方のための雇用関係助成金】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html

また、経済産業省は「地域中小企業・小規模事業者人材確保等支援等事業」によって、中小企業で必要な人材が適切にマッチングできる環境整備に取り組んでいます。
【地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業】
https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/jinzai/jinzai_coordinate.html

おわりに

5つの戦略を突き詰めると、会社の将来のため、中長期的な視点で施策を行っていくことが重要であると分かります。
その際、従業員の声を聴き、迅速に施策を実行できる柔軟性は、規模感の小さい企業の大きな武器であるはずです。

本稿で紹介した戦略には、成果が出るまで時間を要するものも含まれます。
だからこそ、更なる労働人口縮小が予測される未来まで会社を存続させるべく、小さな一歩でも良いので早くから動き始めるべきでしょう。

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