ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

最先端企業が注目する「心理的安全性」とは何か?

掲載日:2022年6月1日人材戦略

キービジュアル

「会議を開いても、部下からアイデアが出てこない」「せっかく部下にプロジェクトを任せても、指示待ちで自分から動こうとしないという悩みを持っている、経営者やリーダーの方々も少なくないでしょう。そうした課題に対して大切な要素として、アメリカのグーグルやネットフリックス等、世界の最先端企業が注目するのが、組織内の「心理的安全性」です。
もし、思いあたる節があるのなら、社内環境に問題があるのかもしれません。本稿では、心理的安全性とは何か、それに着目した職場環境の作り方をご紹介します。

安心して、意見やアイデアをいい合える環境が重要

心理的安全性とは、何でしょうか。
心理的安全性に関する研究の第一人者である、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は、「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」と定義しています。

例えば、職場に心理的安全性があると確信できれば、社員が恐れを感じることなく意見を述べたり、躊躇することなくアイデアを提案したりするようになります。

心理的安全性がにわかに注目されたのは、グーグルが2012年に始めた労働改革プラン「プロジェクト・アリストテレス」がきっかけでした。
このプロジェクトでは、様々な業務に関わる幅広いチームを対象に、「効果的なチームを作る条件」について調べたのです。

その結果、重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」ではなく、「チームメンバーがどのように協力しているのか」であることがわかりました。
パフォーマンスが高いチームは共通して、メンバーが自分のミスを認めたり、仕事に関する質問をしたり、積極的にアイデアを提案したりしても、必要以上に罰せられることも、バカにされることもないと、信じられる雰囲気があったそうです。

個性がある、自分らしい考え方を気兼ねなく発信することができる組織であれば、各人の多様な意見を集めることができます。
高い能力を持つ一人によって、ではなく、いわゆる“集合知”によって、チームとして優秀な、素晴らしい結果を生み出すことができるのでしょう。

代表的な日米企業のケースを知る

心理的安全性を重視したマネジメントをしている企業を、日本とアメリカで一社ずつご紹介します。

まず、日本であてはまるのが、作業服大手のワークマンです。
同社は「社員のストレスになることはしない」と明言。「仕事の期限を設定しない」「ノルマや短期目標を設定しない」という方針を打ち出しています。

期限やノルマは過度なものになってしまうことも多く、社員が心労から失敗やミスを犯したり、保身や体面のために無理矢理クリアしようとしたりして、結局、仕事のレベルを下げてしまうという理由で、設定することを避けているのです。

ワークマンでは、何年かかってもやり遂げたい大きな目標を一つ決めて、全社員がディスカッションしながら、能動的に仕事をすることをモットーにしています。社員が安心してタスクに取り組む環境を、巧みに作り出しているといえるでしょう。

アメリカの事例としては、冒頭でも名前をあげた、映像作品の制作・配信を行うネットフリックスです。
同社では、同僚と違った意見や役立つアイデアがあるときに、それを伝えないことは会社への背信行為として位置づけ、経営者を含む全社員が自由に意見交換することを奨励しています。

文章や口頭で、改善点や評価を伝える“フィードバック”は、「いつでも・どこでも」が基本。
会議での対面時やメール等、方法は問いません。

ただし、フィードバックを出す側には、相手に直接言える内容にすることを大前提として、「相手を助けようという気持ちで伝える」「行動や態度を改めるよう促す内容にする」ことを求めています。
受け取る人には、フィードバックに対して「感謝の気持ちを伝える」「それを受け入れるか否かは、自分で決めて構わない」という、それぞれ2点のルールを設けました。

急成長を遂げ、今、注目の企業が重要視していることから、今後、心理的安全性を重んじる企業はより増えていくのではないでしょうか。

七つの質問で、組織内の雰囲気をチェック!

「質問することが恥ずかしい」「意見を言うと怒られそうだ」「手を借りたいが、仕事を頼みにくい」。
あなたが所属する組織に、このような雰囲気はないでしょうか。

以下の七つの質問は、エイミー・C・エドモンドソン教授が、グループ内に心理的安全性があるのか調べるために考えたチェックポイントです。
質問の1、3、5は「そう思わない」、それ以外の質問は「そう思う」と回答されると、心理的安全性が高いと判断できます。

早速、チェックしてみましょう。

  1. 1.チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
  2. 2.チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
  3. 3.チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
  4. 4.チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
  5. 5.チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
  6. 6.チームのメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
  7. 7.チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

(Google re:Work 「効果的なチームとは何か」を知る より引用)

結果はいかがだったでしょうか。ネガティブな回答が目立つようなら、心理的安全性に問題があるかもしれません。
注意するとともに、改善へのアクションを始めましょう。

日頃から、トップがメンバーと対話する

心理的安全性を高めるために、組織内の上下を問わず、誰もが遠慮なく、意見やアイデアを言い出せる雰囲気を作りましょう。
そのために、まず大切なのは、日頃から経営者やリーダー等、組織やチームのトップが、こまめにメンバーへ話しかけることです。

組織やチームのメンバーが10人くらいまでなら、わずかな時間で構わないので、1日1回、全員と話すように心がけてください。
プライバシーに配慮する必要はありますが、スポーツや趣味、グルメ等、最初のうちは仕事以外の話題を振ると、話のきっかけになるはずです。

コロナ禍では、なかなか対面で直接、会話をすることは難しいかもしれません。
その場合は、ビデオ通話アプリを活用するのも有効です。

これが習慣として定着すると、ちょっとした表情や口調の微妙な変化が読み取れるようになります。
仕事上のトラブルや悩みをメンバーが抱えていれば、自然と気付けるようになるのではないでしょうか。
また、メンバーから経営者やリーダーには、なかなか話しかけづらいものですが、慣れてくれば、相談しやすい雰囲気を醸成できるかもしれません。

もし、口頭で話すことが難しいときには、チャットやメールでのコミュニケーションだけでもとりましょう。
文面だけでは、感情の機微を読み取ることは困難ですが、関係性構築の一助となるはずです。

メンバーから仕事の相談されたときには、対面でもオンラインでも、きちんと視線を合わせて、相手の話に耳を傾けること。話を途中でさえぎらず、最後まで聞くことが肝心です。

そのうえで、質問に答えるときは、「それはダメだね」「こうしなさい」等、意見や判断を一方的に伝えるのはNGです。
「あなたはどう考えているの?」「解決に向けて、どんな準備をすればいいと思う?」という具合に、メンバーが自ら答えを導き出す手助けをするよう、意識しましょう。

組織全体で、遠慮なくディスカッションできる機会を設けるのも良いです。
ネットフリックスのケースのように、意見や感想を言う側は、否定的な表現を避けて、アドバイスに徹すること、言われた側には感謝を伝えることをルールとして、一人ひとりに発言の場を与えてみてください。

今までになかった新しい意見や発想、違う角度からのアイデアを得ることができるかもしれません。

おわりに

グーグルの調査によると、心理的安全性の高いチームは、生産性が高く、離職率も低いことが分かりました。
上位下達一本槍の組織では、メンバー各自がユニークなアイデアを持ち合い、チームでそれをブラッシュアップするという環境は生まれません。それでは、日本企業に今、必要とされるイノベーションを起こすことは難しいでしょう。

昨今、在宅勤務やリモートワークがすっかり定着しました。個人での作業が増えており、不安や孤独を感じている社員が増えているかもしれません。
本稿を参考に、心理的安全性について、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

その他の最新記事

ページの先頭へ