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知らないとまずい!残業時間の上限規制で今すぐ企業が見直すべきポイントとは

掲載日:2021年7月14日人材戦略

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働き方改革関連法によって、2020年4月より中小企業を含むほぼ全ての企業に「時間外労働の上限規制」が適用されました。これまでも残業(時間外労働)に対する規制はありましたが、今回の改正でより明確に上限が定められたことになります。
違反すると罰則もあるので、多くの企業が対応を余儀なくされ、従業員への意識改革にも取り組んでいるでしょう。
割増賃金率も拡大されることから、残業が増えると経費が嵩むことにもつながる場合があります。
本稿では、「時間外労働の上限規制」について押さえておくべきポイントや、企業が見直すべき点について解説します。

「時間外労働の上限規制」とは

「時間外労働の上限規制」は、働き方改革により導入された時間外労働の上限に対する規制制度です。
2019年4月に大企業から導入が始まり、2020年4月には中小企業にも適用されました。

残業(時間外労働)は、法定労働時間となる「1日8時間、1週間40時間」を超えて働くことを意味します。
一般的には法定労働時間=所定労働時間(就業規則や雇用契約で定められている労働時間)であることが多いですが、中には1日8時間労働に満たない企業もあります。
仮に、その企業で1日8時間働いたとしても法定労働時間内には収まっているので、正確には「残業」とはいえませんが、8時間以上働いている場合は、超えた分だけが「残業」となるのです。

残業は、法律では原則「禁止」となっています。しかし、あらかじめ「36協定」による労使の合意があれば、残業をさせることが認められています。
特に法改正前は、残業時間の上限基準について厚生労働大臣の告示によって定めがあったものの、「特別条項付きの36協定」を締結すれば企業はいくらでも残業時間を設定できるという、事実上「青天井」の状態でした。
それが今回の改正により、「特別条項による時間外労働」に明確な上限が定められたのです。
こうした残業時間の上限を法規制することは、労働基準法が制定されて以来、初めての大改革といえます。

改正前と改正後で「時間外労働の上限」はどう変わった?

今回の改正では、時間外労働の上限は原則として「月45時間・年360時間」までとなり、臨時的な特別な事情がない限り、これを超えることはできなくなりました(ただし、「1日8時間・1週40時間以内」「休日は毎週少なくとも1回」「これを超えるには、36協定の締結・届出が必要」という原則変わりません)。

また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、次の範囲内とする必要があります。

  1. 1.時間外労働
    年720時間以内
  2. 2.時間外労働+休日労働
    • 月100時間未満
    • 「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」が全て80時間以内
  3. 3.月45時間を超えることができるのは、原則として年6ヵ月まで

特に重要なのは、「特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計を月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内にしなければならない」という点です。
例えば、1ヵ月の時間外労働が45時間以内に収まり、特別条項にはならなくても、以下のように同月の休日労働の時間を足すと合計が100時間以上になる場合は、法律違反となります。

【違反例】 時間外労働44時間 + 休日労働56時間 = 100時間

違反した場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。
なお派遣先の企業が、派遣元で締結した36協定に違反した場合は、派遣先企業が法律違反となります。

また、これまでも36協定を結んでいた企業でも、改正法に基づく上限範囲内で36協定が定められていなければ、上限を見直した上で再度36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届ける必要があるので注意しておきましょう。

適用される企業と適用されない企業

改正法が適用される範囲は、大企業から中小企業にまで及びます。
中小企業については、厚生労働省では「『資本金の額または出資の総額』と『常時使用する労働者の数』のいずれかが以下の基準を満たしている」企業と定義づけており、事業場単位ではなく企業単位で判断されるので、注意しましょう。

<「時間外労働の上限規制」が適用される中小企業の定義>

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する労働者数
小売業 5,000万円以下 または 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他
(製造業、建設業、運輸業、その他)
3億円以下 300人以下

なお、留意点は以下の通りです。

  • 労働者数には、正社員だけでなくパートやアルバイトも含みます(臨時的に雇用した労働者は除く)。
  • 出向社員や派遣社員は、雇用契約関係を基準に算入します。例えば、移籍出向社員の場合は出向先の労働者数に算入しますが、在籍出向の場合は出向先・出向元双方へ算入します。
  • 派遣社員は派遣元の労働者数に算入します。

ただし、中には、適用を猶予される企業・職種や適用除外となる業種もあります。適用猶予・除外の事業・業務については、厚生労働省のウェブサイトを参照してください。

働き方改革関連法では、労働基準法と合わせて労働安全衛生法も改正されており、1週間あたり40時間を超えて労働した時間が月100時間を超えた従業員には、医師の面接指導も罰則付きで義務づけられます。
そのため、現在上限規制の適用外でも、面接指導を行った医師の意見を踏まえ、必要に応じて就業場所や職務内容の変更、有給休暇の付与などの措置を講じなければならないので注意しましょう。

他にも、働き方改革関連法では、時間外手当の割増賃金の水準も見直されています。
割増賃金には、「時間外(時間外手当・残業手当)」「休日(休日手当)」「深夜(深夜手当)」の3種類があり、今回の改正で、「時間外(時間外手当・残業手当)」について月60時間を超える残業への割増賃金率が50%に引きあげられました。

中小企業については、2023年3月31日まで適用が猶予されるため、猶予期間中は25%のままでも問題ありません。
しかし、今のうちに新たな割増賃金率に対応できるよう対策を取ることは必要になります。

「時間外労働の上限規制」対策で企業が今すぐ見直すべきポイント

残業時間の法規制に向けた対応策については、様々な方法があります。
しかし、本来は「上限を超えないようにする」のではなく、「残業を減らす」ことが先決でしょう。
そこでまずは、次の2点をスタートラインに残業管理を徹底することをおすすめします。

①労働時間の現状を把握する

残業を発生させる要因は、1つではありません。「1人がこなす仕事量が多すぎた」「一部の人間に集中していた」など、要因は発生状況によって異なります。「残業時間がどこでどう発生しているか」を理解できていなければ、全社で均一的に取り組んでしまい、結果として「残業が減らない」という事態に陥ることもあります。
残業を減らすなら、まず、「自社の残業状況がどの程度発生しているのか」「どの部門で発生しているのか」「従業員ごとに残業時間に差はあるのか」「同じ作業をしている従業員間で残業時間に差はあるか」「残業が発生しやすい時期があるのか」など、実際の残業時間を部門単位、個人単位で把握しましょう。
残業している人数、個人別、残業時間、発生部門、時期、仕事量など細かく確認することで、次のステップとなる「残業抑制に向けた対策」も取りやすくなります。

②法令に則った労働時間の管理体制を構築する

労働時間の現状を把握するためにも、時間外労働の上限を超えないように管理するためにも、法令に則った労働時間管理の徹底は必須です。
特に今回の改正では、次のように2段階で上限を超えていないか管理しなければなりません。

  1. 1.月45時間を超えていないか、超えた月が年6ヵ月以内か
  2. 2.その上で、月の上限を超えた分に関して、以下の要件を満たしているか
    • 年720時間以内
    • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
    • 時間外労働と休日労働の合計について「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」が全て1ヵ月当たり80時間以内

労働時間の管理については、厚生労働省が2017年に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で、「原則としてタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」とされています。つまり、単に「1日何時間働いたか」を把握するのではなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を使用者が確認・記録し、これを基に「何時間働いたか」を細かく把握・確定しなければなりません。
また、時間外労働の上限規制においては、毎日の労働時間は当然ながら、月単位、年単位でも上限を意識しなければならなくなります。
法令に則って労働時間を管理するには、客観的かつ適正に、労働時間を管理する仕組を導入すると良いでしょう。
こういった仕組の導入は、勤怠管理の管理のみならず、労働者や管理者が労働時間に対する意識をもつことで残業を減らすといった、労働時間の意識改革にもつながることが期待できます。

おわりに

労働時間の適正な管理は、どのような企業においても手を抜けない課題といえます。
まずは時間外労働に対する理解を深め、適切に管理できる体制を整えることで、本格的に残業を抑制する対策にも取り組みやすくなるでしょう。
ぜひ本稿を参考に、自社の労働管理について見直してみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「知らないとまずい!残業時間の上限規制で今すぐ企業が見直すべきポイントとは(https://www.obc.co.jp/360/list/post100)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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