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従業員の住所変更手続きに際し、押さえておくべきポイント

掲載日:2021年4月21日人材戦略

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従業員が結婚や人事異動などで引越し、転居をすると、企業側では住所変更に伴う対応が必要になります。しかし、企業の中には具体的な手続きがマニュアル化されておらず、属人的に業務を行っているケースが見られます。イレギュラーに発生する対応では、時間の浪費や対応の抜け漏れといったミスも起こりやすくなるでしょう。
本稿では、従業員の住所変更に伴う対応について整理し、スムーズに業務を遂行するポイントをご紹介します。

企業が従業員の現住所を把握しなければならならない理由とは

従業員の現住所を把握しておくために、就業規則で「従業員として採用された者は、住所を会社に届け出ること」「住所に変更が生じたときは、速やかに会社に届け出ること」と定めている企業は多いでしょう。

そもそも、なぜ企業は従業員の住所を把握しておく必要があるのでしょうか。
その理由の1つには、総務部門の業務に必要であることがあげられます。
総務部門では、社会保険や雇用保険の加入・脱退や所得税の納付など、従業員の代わりに行う手続きが多くあります。こうした手続きには、最新の従業員情報が欠かせません。業務を的確に、かつスムーズに行うためにも、最新の従業員情報を把握しておく必要があります。

もう1つは、通勤手当を正しく支給するために必要だからです。最近は在宅勤務も増えていますが、企業が従業員に対して自宅からの交通費を支給するケースは多いでしょう。住所を正しく把握していなければ、支給額が足りない、もしくは過剰に支給してしまい、不正受給などに繋がってしまう可能性があります。また、通勤手当は固定賃金にあたるため、社会保険料の算出にも影響します。正しい金額を支給するためにも、企業は従業員の現住所を把握しておかなければならないのです。

さらに、災害時などに「従業員の安否を確認する」ことにも現住所は活用されます。自宅にいて災害が発生した際でも、企業はまず従業員の安否確認を行います。他にも、無断欠勤が続くなど異常が発生した際に従業員と連絡がつかなければ、自宅を訪問する必要もあります。企業に課せられた安全配慮義務の点からも、従業員の住所は常に把握しておかなければなりません。

とはいえ、居住地などの情報は個人情報でもあります。個人情報保護法により、企業には従業員の個人情報を適正に管理する義務が課せられているため、厳格な情報管理が必要です。万が一情報が漏れた場合、企業は従業員に対して不法行為責任を負うこともあるため、取り扱いには注意が必要です。

住所変更手続きや対応が必要なもの/不要なもの

企業が行う従業員の住所変更手続き業務といえば、雇用保険や社会保険関係が中心となりますが、他にもあります。中には、速やかに手続きが必要なものもあれば、そうでないものもあります。
ここでは、住所変更を行う業務別に必要となる対応をご紹介しましょう。

(1)社会保険(健康保険・厚生年金保険)の住所変更手続き

住所変更が生じた場合、社会保険に関しては速やかに手続きを行う必要がありますが、住所変更の手続きが「不要な人」もいます。手続きが「不要な人」とは、マイナンバーと基礎年金番号が紐付けされている従業員です。マイナンバーを持っている人が住民票などを移動させると、自動的に社会保険の登録情報も更新される仕組みになっています。ただし、協会けんぽでなく健康保険組合に加入している場合や「海外転勤などで非居住者となりマイナンバーがない」「住民票以外の場所で居住している」など、何らかの理由でマイナンバーと基礎年金番号が紐付けされていない、または紐付けが不明の場合は、「被保険者住所変更届」を提出する必要があります。

マイナンバーと基礎年金番号が紐付けされていない従業員は、「マイナンバー未収録者一覧」として届けられるので、未収録者が住所を変更した際は速やかに手続きを行いましょう。
手続きの方法は、事業所を管轄する年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」を郵送か窓口持参して提出します。

「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」は2枚つづりになっており、単身赴任で従業員だけが引っ越す場合は1枚目のみ提出します。被扶養家族ごと全員で引っ越す場合は、「被保険者住所変更届」の中にある「被扶養配偶者の住所変更欄」にも忘れずに記載しましょう(まだ国民年金の被保険者ではない子供の手続きは不要です)。
また、配偶者が国民年金第3号被保険者に該当する場合は、2枚目にある「国民年金第3号被保険者住所変更届」の提出が必要となります。

(2)雇用保険の住所変更手続き

雇用保険では住所を登録していないため、住所が変更になっても手続きは不要です。
雇用保険関係で従業員の住所が必要になるのは、従業員が退職する際の離職票を発行するときになります。

(3)労災保険、その他損害保険等の住所変更手続き

労災保険は、保険料の全額を企業が負担し政府に納付しています。この保険関係は“事業”を単位として成立していますので、従業員が住所を変更しても支障はありません。
ただし、会社でまとめて加入している損害保険や傷害保険などでは、住所変更手続きが必要なものもあります。手続きが必要かどうかについては、それぞれの保険会社に確認しておくと良いでしょう。

(4)税務関連の住所変更手続き

住民税は、基本的に給与からの天引きで徴収し、毎年1月1日に居住していた自治体に対してその年の分を全額納付することになっています。年の途中で転居した場合は、その年の給与支払報告書を旧住所の自治体に提出することになります。

(5)労働者名簿、緊急連絡先名簿、住所録等の名簿更新

「労働者名簿」は、労働基準法第107条で定められた、従業員の氏名や生年月日など様々な情報を記した書類です。事業所ごとに作成・保管が義務づけられており、入社時に必ず作成しなければなりません。
その項目には住所も含まれており、転居などで住所変更した場合はその都度「遅滞なく」更新する必要があります。
他にも、社内で必要とする名簿類には「緊急連絡先名簿」「住所録」「社員名簿」などがあります。こうした社内用に活用している書類でも、住所まで記載しているものはすべて更新しなければなりません。特に緊急連絡先を管理している場合は、「緊急連絡先変更届」も忘れずに提出するよう指示しておきましょう。

(6)通勤手当の見直し

通勤手当は固定的賃金にあたるため、給与面だけでなく、社会保険料などにも影響する可能性があります。そのため、住所が変わり通勤ルートも変わる場合は、交通費などの通勤手当を見直す必要があります。
定期券を購入している場合、期間の途中で通勤経路の変更が起こると、必ず払い戻しと再支給の手間が発生します。1ヵ月を超える定期代を支給している場合、住所変更の際は1ヵ月前など現実的な範囲で事前に届け出てもらうようにしましょう。定期期間中に経路変更した場合の払い戻しの手順、日割の有無、払い戻し金額の計算方法、手数料の負担、新たな通勤経路での定期代支給月数などをルール化し、周知しておくことをおすすめします。
通勤経路を変更した際、住所変更届とは別に「通勤経路変更届等」を提出するルールを設けている場合は、忘れずに提出するよう指示しておきましょう。

従業員情報の収集をペーパーレス化すれば、活用も管理もスムーズに

従業員の住所変更に際し、「住所変更届」や「通勤経路変更届」「緊急連絡先変更届」などの提出をルール化している企業は数多くあります。こうした届出を紙の書類で対応していると、情報を管理するためにその都度手入力でデータ化したり、個人情報として厳重に書類をファイリングしたりと、様々な手間が発生します。入力ミスなどのリスクもあり、管理する側にとっても大変な業務の1つといえるでしょう。

こうした従業員からの情報をデータとして受け取ることができれば、手作業で入力する必要がなくなり、データで管理することができます。さらに、連携するシステム間で自動的に反映できる仕組みなら、業務アプリケーションごとに従業員データをインポートする必要もなくなります。
近年は、従業員が変更になった自身の情報を簡単に届出できるクラウドサービスもあります。入社や退職、結婚など様々なライフイベントによって必要な従業員情報を収集することができますが、住所変更においては、新しい住所や連絡先の情報収集だけでなく、通勤経路や緊急連絡先の変更についても同時に収集することが可能です。

従業員が紙の利用に慣れていてデータへの切り替えに不安がある場合は、企業側で入力箇所に手順や解説を登録しておき、それに従うだけで社内手続きを完了できるようにすると良いでしょう。

おわりに

以上のように、従業員の引っ越し等による住所変更があった場合、企業側でも様々な対応が必要になります。
住所変更手続きは集中しやすい時期はあるものの、年間を通していつでも発生します。
データでの管理も参考にしながら、本稿でご紹介したポイントをおさえて業務遂行を進めてみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「従業員の住所変更手続き|社会保険・雇用保険の対応など総務担当者が押さえておくべきポイント(https://www.obc.co.jp/360/list/post150)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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