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休業手当とは?基礎知識や休業補償との違い

掲載日:2021年3月17日人材戦略

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労働には、ノーワーク・ノーペイの原則があります。これは、「労務の提供が行われなかった場合には賃金の支払義務は発生しない」というものですが、「労務の提供が行われない場合」には欠勤や遅刻など労働者側の問題もあれば、企業側に理由がある場合もあります。
2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から従業員を休ませるケースがあったようです。一時的でも、企業側に理由がある場合は「休業手当」を支払う必要がありますが、休業に至るには様々な要因があるため、休業手当の支給が必要なケースかどうか判断に迷うことも少なくないでしょう。
本稿では、「休業手当」にスポットをあて、支給条件や対象、算出方法などをご紹介します。

休業手当とは

「休業手当」は、雇用主である企業の責任で従業員を休ませた場合に、その従業員に対して支給する手当です。 労働基準法第26条には、次のように定められています。
「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

「使用者の責に帰すべき事由」とは、企業の都合で従業員が就業できなくなったことを指します。例えば、以下のようなケースなどが該当します。

  • 企業側の故意または過失による休業
  • 経営不振による休業
  • 資材不足による休業
  • 設備や工場の機械不備、欠陥、検査等による休業
  • 作業に必要な従業員数が足りない場合の休業
  • 運転資金不足による操業停止(全部または一部)
  • 親会社の経営不振を受けての休業
  • 労働者が所属しない組合のストライキなどで企業が休業した場合
  • 電気など燃料の供給不足、夏期の節電対策に伴う休業

ただし、企業側の都合による休業でも、休業手当が発生しないケースもあります。例えば、台風など自然災害で公共交通機関が使用できない場合は、不可抗力とみなされ、「使用者の責にはあたらない」とされることがあります。
他にも、新型コロナウイルスに関連する休業については、「使用者の責に帰すべき事由」にあたるものとあたらないものがありますので留意しましょう。

以下のようなケースは「使用者の責に帰すべき事由」に該当します。

  • 新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる従業員を、企業側が自主的な判断で休業させる

一方、以下のようなケースは「使用者の責に帰すべき事由」に該当しません。

  • 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づき、都道府県知事が要請する就業制限による休業
  • 緊急事態宣言の対象地域で、休業要請を受けたことによる休業、または入居施設全体の閉館に伴う休業
  • 新型コロナウイルス感染症に感染したため従業員を休業させる場合
  • 部品調達先の操業が一時停止するなどで部品調達に支障が出た場合で、他の調達先がない場合
    1. ただし、他に調達先があると見込まれながら休業する場合は「使用者の責に帰すべき事由」とみなされます。

また、休業手当と誤解されやすい制度に「休業補償」がありますが、これは業務上で発生した負傷や疾病のために働くことのできない従業員に対して支払うものです(労働基準法第76条)。したがって、休業補償は「災害補償」として労災保険でまかなわれることになります。さらに、休業手当は給与所得として所得税の対象となりますが、休業補償は非課税となるのも大きな違いです。
両者は名称が似ていて混同しやすいものですが、企業が支給する休業手当とは全く異なるので注意しましょう。

休業手当の対象者と支給額の算出方法

休業手当は、正社員やパート、アルバイト、契約社員など、雇用形態に関係なくすべての従業員が対象となります。
ただし、中には休業手当を出すかどうか判断に迷うケースもあるでしょう。例えば、内定者に対しての対応は、労働契約が成立していれば労働基準法が適用されるため、「使用者の責に帰すべき事由」による休業を指示した場合は休業手当を出す義務が生じます。また、派遣従業員についても、労働基準法第26条の適用下にあり、派遣社員と雇用関係にある企業に休業手当の支払義務が発生します。
業務委託契約を結んでいる場合は、契約相手が個人事業主であれば休業手当の対象外となりますが、委託企業の指揮命令の内容や程度によっては例外的に休業手当の対象となるケースもあるため、注意が必要です。

支給額については、労働基準法第26条にもあるように「平均賃金の60%以上」とされていますが、同法が示す平均賃金とは基本給のことではありません。
平均賃金を算出するには、以下の計算式を用います。

事由の発生した日以前の3ヵ月間に支払われた賃金総額÷計算した3ヵ月間の総日数(暦日数)

「事由の発生した日」は休業開始日のことを指し、その前日から遡って(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から遡って)3ヵ月間に支払われた賃金総額で算出します。
賃金総額には、通勤手当や精勤・皆勤手当、年次有給休暇分の賃金、時間外手当など諸手当等も含まれます。ただし、以下の賃金については例外的に控除されます。

  • 結婚手当、傷病手当、加療見舞金、退職金など臨時で支払いを受けた賃金
  • 3ヵ月以上の間隔で支払われる賃金(3ヵ月ごとに支払う賞与などは算入されます)
  • 労働協約で締結していない現物給与

また、この3ヵ月に次にあげる期間が含まれる場合は、他の手当や給付金が並行して支給されることがあるため、その支給日数と賃金額を3ヵ月期間と賃金総額から控除します。

  • 就労中の負傷、または病気療養のために休業した期間
  • 産前、産後に休業した期間
  • 企業・事業者側の責任によって休業した期間
  • 育児や介護のために休業した期間
  • 試用期間

例えば、毎月20日を賃金締切日とする企業が7月15日から休業した場合、直前の賃金締切日は6月20日となるため、6月20日から遡って3ヵ月の平均賃金をもとに休業手当を算出します。仮に、休業前の3ヵ月に支払われた賃金総額が66万円だったとすると、以下のようになります。

(賃金総額)66万円÷92日(3月21日〜6月20日)=7,173円91銭(1日の平均賃金)

1円未満の金額は、特約がない限り50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げて計算します。
休業手当を「平均賃金の65%」とした場合、1日の休業手当は4,663円となり、休業期間中の所定労働日数分を支払うことになります。
ただし、時間給制や日給制の場合は、平均賃金の計算式に60%をかけた額を「最低保障金額」とし、原則による計算での算出額がそれを下回る場合は、最低保障金額を平均賃金とします。

例)毎月20日を賃金締切日とする企業において、日給8千円、通勤手当1日400円、事由発生以前の3ヵ月の労働日数が合計30日の従業員に対して、7月15日から休業した場合

[原則による計算](賃金総額)252,000円÷92日(3月21日〜6月20日)=2,739円13銭

[最低保障の計算](賃金総額)252,000円÷30日(労働日数合計)×60%=5,040円

上記の場合、最低保障金額の方が高くなるため、5,040円を平均賃金として休業手当を算出します。休業手当を「平均賃金の65%」としている場合、1日の休業手当は3,276円となります。

おわりに

業務停止が不可抗力と見なされる場合は、厚生労働省としても休業手当の支払い義務はないと判断していますが、休業を決める際には従業員の不利益を最大限回避できるように努力するのが雇用者である企業の責任です。
2020年は、新型コロナウイルス感染症による未曽有の事態に見舞われ、多くの企業が在宅勤務やテレワークなどワークスタイルの切り替えを余儀なくされました。飲食業界を中心に、一定期間の休業や時短営業の協力を求められた企業・商店も数え切れないほどあります。
長期的な対応が求められるからこそ、従業員の雇用と生活の双方を守ることが企業と従業員との良好な関係維持につながります。
本稿を参考に、休業手当の基礎知識をおさえ、適切な対応を心がけましょう。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「休業手当とは?休業補償との違いや担当者が押さえておきたい基礎知識(https://www.obc.co.jp/360/list/post152)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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