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事例で解説!外国人材に活躍してもらう3つのコツ

掲載日:2021年2月8日人材戦略

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労働力人口の減少に伴い、新たな戦力として外国人材を採用する企業が増えてきています。2019年4月には改正出入国管理法が施行され、外国人技能実習生の受け入れの幅も広がりました。また、ダイバーシティ経営の一貫として、外国人を正社員に迎える動きも進んでいます。
しかし、実際には言葉の壁や文化、商習慣の違い等から摩擦が生じてしまう懸念もあります。
外国籍の人たちに組織に溶け込んで活躍してもらうには、何が必要なのでしょうか。
本稿では、外国人採用を進め、共生に成功している企業の事例を交えながら、そのポイントを紹介していきます。

受け入れ準備のための「社内の意識統一」はできているか?

自社で外国人を雇用しようというときに必要になるのは、出入国管理のルール、在留資格制度等、手続きに関する知見を得ておくのはもちろんですが、より重要なのは、「なぜ、外国人材を受け入れる必要があるのか」という“目的”を明確にし、社内で共有しておくことではないでしょうか。
そうでないと、いざ社内で受け入れが始まったときに、言葉や文化、習慣、宗教等の違いによって、摩擦が生じてしまうことがあるかもしれません。

受け入れの“目的”には、「優秀な人材の確保」「グローバル展開の円滑化」「異文化を受け入れることによる社内の活性化」等が考えられるでしょう。
ただ、ここで、「安価な労働力の確保」という考えで安易に外国人材を受け入れてしまうと、かえってトラブルを招いてしまうこともあります。

従業員約30人を抱え金型鋳造を行う都内A社の経営者は、「従業員が外国人か日本人かに関わらず、会社だけでなく本人のビジョンを大事にすることが大切。単なるワーカー(働き手)として採用してはいけない。大事なのは、日本人従業員にも外国人従業員と一緒に働く意味や意義を理解してもらうこと」と力説します。

同社はかつて、人手不足を補おうと、技能実習生を採用したことがありましたが、そのときは、「ビジョンがなく、ワーカーとしてしか見ていなかった」といいます。

その後、紹介により難民認定を受けた30代のミャンマー人男性を採用。このときは彼に、「ミャンマーでも、経済成長を末端で支える鋳造技術は必要になってくる。そのときのために当社で技術を覚え、君が帰国したら会社を立ち上げてミャンマーの人を雇用して母国に貢献して欲しい。そのときは、私が投資するから」と伝えました。すると、そのミャンマー人男性は涙を流して喜び、熱心に働いてくれたそうです。
彼は、英語や中国語にも堪能だったため、当社が事業戦略として温めていた海外進出の足がかりにもなりました。

このように、目的を明確にして雇用したことで一定の成果が出たため、その後当社は、中東やアフリカ諸国等、様々な国籍の人を採用しました。しかし今度は、「勝手にタバコを吸いに行く」「ミスを放置したままにする」等、日本人社員から不満が噴出。結果的に辞めてしまう日本人社員も出てしまい、現場が大混乱に陥ったそうです。

経営者は、そのとき初めて、日本人社員と思いやビジョンを共有していなかったことに気づき、事業戦略としての自社における外国人材の必要性、技術伝承の大切さ、途上国発展の一翼を担っていること等を伝えました。
すると、日本人社員は協力的になり、自ら英文の「作業マニュアル」を作成してくれるまでになったのです。

こうした試行錯誤を経た経験から、経営者は冒頭のような思いに至ったそうです。さらに現在同社では、就業中に、日本人社員には1時間の英語学習を、外国人社員には日本語教師を招いての講習を実施。それによって、双方のコミュニケーションが円滑になり、経済産業省が表彰するダイバーシティ100社にも選ばれたそうです。

A社は、外国人材採用後に社内の意識統一に成功しましたが、できれば受け入れ前の段階で、社内で共通認識を持って準備を進めることが、第一のコツといえるでしょう。

理解しやすいマニュアルで「言語の壁」を乗り越える

A社の事例のように、外国人材を雇用するにあたり、「作業マニュアル」は不可欠なツールの一つではないでしょうか。
そんなマニュアルの工夫として、複数の言語やマンガ、動画を使って作成し、日本語が不十分な外国人でも業務しやすい環境を整えている企業もあります。これが2つめのコツです。

全国にコンビニエンスストアを展開するB社は、店舗スタッフの国籍の多様化が進み、店舗全体の約1割を外国籍のパート・アルバイトが占めます。そのため、本部にも外国籍の社員を配置し、その外国籍社員が講師となり、各地の店舗に出張して母国語で外国籍のパート・アルバイトに教育しているといいます。
同社では、パート・アルバイトとして採用されると、入店時のルールや身だしなみ等を記載した小冊子がもれなく配布されますが、これを英語や中国語、ベトナム語等、複数の言語でも作成しました。

その他、挨拶の仕方やレジ打ち、レジ待機時のマナー等について、「良い例」と「悪い例」をそれぞれ動画にしています。
動画は1テーマにつき2~3分程度で、各店舗にあるパソコンで随時見られるので、空き時間に確認したいテーマをすぐにチェックできます。教育する時間が十分に取れない店舗オーナーの大きな助けになっているといえるでしょう。

B社では、業務の流れ等を紹介したマンガも用意しており、「言葉が分からなくても、すぐに理解できる」と、外国籍のパート・アルバイトに好評だそうです。

生活習慣等の支援は、仕事の幅を広げるためにも有効!

3つめのコツは、不慣れな日本での生活等、業務以外についてもフォローするという点です。

「優秀なIT人材の確保」を狙うITベンチャーのC社は、ベトナムを中心に、中国、台湾等のアジア諸国からITエンジニアリングを採用しています。
IT業界で使用するプログラミング言語は、世界共通のコミュニケーションツールといえるため、外国人を採用しやすい傾向があるためです。

C社では、エージェントを通じて現地大学の卒業生を新卒採用しており、内定すると、WEBで日本本社にいる母国語が同じ社員と面談を定期的に行い、入社前に不安をできるだけ払拭するようにしているそうです。
入社後は、新人1人につき、3~5人の先輩社員がチームとなって、業務時間内に日本語をレクチャーしています。

特徴的なのは、その内容が「語学習得のため」というよりも、「日本でより暮らしやすくするための、日本の生活習慣やルール・マナー」が中心であることです。
C社の担当者は「エンジニアとして日本語はそれほど高度である必要はありませんが、やはりできたほうが生活も便利になりますし、仕事の幅も広がります」とレクチャーの意義を語ります。

また、冒頭に紹介したA社は、日本の会社で働く上での基本的なルールを外国人に理解してもらう必要性を痛感し、「始業時間に遅れない」「電車が遅れたら遅延証明書をもらう」等、日本人にとってはごく当然ともいえる内容を、NPO法人とともに冊子にまとめているそうです。

双方がwin–winとなる関係の構築を

最後に、技術者の高齢化により今後の人手不足が見込まれるため、海外へ目を向けたD社の例を紹介します。
古民家再生にも取り組む同社は、木造住宅の他、鉄筋の大型建物等も手がけています。ただ、技術者不足の他、国内市場が飽和状態であることに危機感がありました。

そんなとき、コンサルタントから見込みのある市場として紹介されたのが、東南アジアのラオスでした。視察を経て、現地の職業訓練校に自社の技術者を派遣して、家づくりを担う人材育成に取り組むことにしたのです。
コンクリート住宅が主体のラオスで、木造家屋を理解してもらうのに苦労しましたが、現地の人たちは、自ら材料を調達して自分たちで家を建てることが多いため、「言葉が通じなくても建築への理解は早かった」といいます。

2016年からは職訓校の生徒を研修生として日本に呼び、本社で実習させているそうです。そのうち、技能実習生として受け入れるケースもありますが、事前に現地で基礎教育をしているため、摩擦が生じることなく、スムーズな受け入れにつながっています。
研修終了後は日本本社の社員となるほか、2020年に設立した現地法人での勤務という選択肢も用意し、本人に技術だけでなく“希望”も持たせているといえるでしょう。

これからの時代、ますます多様な人材を受け入れる流れが進むはずです。そんなときに必要なのは、自社のビジョンを明確にした上で、きめ細やかに“相手に必要なこと”と向き合っていく姿勢ではないでしょうか。
これは日本人、外国人問わず欠かせないことですが、特に生活や文化的な背景が異なる外国人材の場合には、より丁寧に対応しなくてはなりません。
手間や時間はかかりますが、そうすることが将来に渡って事業を継続していくカギの一つだと思われます。

今回紹介した取り組みは、外国籍の人のみならず、日本人にとっても「イキイキと働ける職場環境づくり」のヒントにもなるはずです。
ぜひ、外国人材の活用も含めて、企業の未来を見据えた動きをしてみてはいかがでしょうか。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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