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健康経営とは?メリットや取り組みのポイント

掲載日:2020年5月22日人材戦略

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働き方改革による従来型労働のあり方に変化の兆しがある中、「健康経営」という概念に注目が集まっています。メンタルヘルスの不調を理由とする休職や退職者が大幅に増えており、今では従業員が「元気に働ける」ことは重要な経営戦略の一つとなっています。
しかし一方で、「取り組みたくても、何から始めれば良いのか分からない」と戸惑う声も少なくありません。健康経営は、ポイントをしっかり押さえていれば、難しいものではありません。本稿では、健康経営について、メリットや取り組みのポイントなどをご紹介します。

「健康経営」がもたらすメリット

健康経営とは、以下のように定義されています。
「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」(出典:NPO法人健康経営研究会「健康経営とは」より)

「健康経営」が企業にもたらすメリットにはどういうものがあるのでしょうか?まとめてみると以下のようになります。

  • 健康保険料の負担が軽減する
    健康経営では「従業員の健康を守る」ことを第一とするため、従業員の通院・治療の頻度が減少することで、企業が負担する医療費の削減につながるといわれています。
  • 従業員1人ひとりの生産性が向上する
    従業員が健康で働ける状態は仕事に対する集中力やモチベーションを維持することにつながり、一見遠回りのようですが、業務効率が上がることで、結果として生産性が向上するといえるでしょう。
  • 人材が定着・確保しやすくなる
    一人ひとりの健康に配慮した働き方や職場環境が整備されると、全ての従業員が心身ともに健康な状態で活き活き働くことができます。職場や仕事に対する社員の満足度が向上し、職場への定着化が推進され、離職率の改善にもつながるでしょう。
  • 経営上のトラブルやリスクを回避できる
    企業が従業員の体調不良を早期発見することに努めることによって、疾病休暇等による損失を最小化することができます。さらに、従業員の体調不良によるミスや事故を減らすことで、労災発生などのトラブルを事前に回避することにもつながります。
  • 企業のイメージアップにつなげやすい
    従業員が心身共に元気に働く姿は、社内外にポジティブなイメージを与えます。「働きやすい会社」として印象づけることができれば、ホワイト企業として社会的な信頼度も高まり、企業ブランドの価値を上げる効果も期待ができます。

「健康経営」の取り組み方、基本としてやるべきこと

では「健康経営」を実現するには、具体的に何にどう取り組めば良いのでしょうか?
経済産業省では、「健康経営を経営課題として戦略的に実践するためには、組織マネジメントの一環として、健康経営を体系的に理解し、その実践手法を検討する必要がある」*としています。
*経済産業省PDF「企業の『健康経営』ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)(PDF/3,290KB)」より

そして、健康経営を実践するには、その取り組みが“経営基盤から現場の施策まで”の様々なレベルで連動・連携していることが重要であり、「経営理念・方針」「組織体制」「制度・施策実行」「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの取り組みが必要とされています。労務管理の基礎である「⑤法令遵守・リスクマネジメント」は、当然行われるものと前提し、他4つの取り組みについて具体的に何をどのように実施するか整理しましょう。

  1. 経営理念・方針
    「健康経営理念を定め、社内外に発信する」
    まず、企業理念に沿って健康に関する基本方針などを決定し、企業のトップが大々的に通知することが肝要です。
    健康経営に関する理念(考え方)を明文化することで、健康経営に取り組むことを社内外に宣言し、健康経営をスタートさせましょう。発信の際は、健康経営の目的が企業の持続的成長に資することを明らかにし、自社の企業理念や中長期計画に基づいて宣言すると良いでしょう。
  2. 組織体制
    「健康経営理念に基づき、運営組織体制を整備する」
    健康経営の実施にあたっては、推進役となる“実行力のある組織体制”が必要です。専門部署を設置するか、人事部などの既存部署を整備し、専任または兼任の担当者を配置します。担当者には、健康経営に関する研修を実施したり、専門資格を持つ人材を採用したりすることなども検討しましょう。
    従業員の健康保持・増進は、企業、産業医や保健師などの産業保健スタッフ、健康保険組合、労働組合、従業員などがチームとなって取り組む課題です。新たに設置された運営組織を中心として、互いに連携しPDCAサイクルを実施できる体制を整えましょう。
  3. 制度・施策実行
    「従業員の健康課題を導き出し、施策を実施する」
    健康経営を実践する上では、自社の従業員の健康状態を把握し、どこに課題があるかを理解しておくことが必須です。
    まず、ストレスチェックや健康診断など既存のデータを活用して、長時間労働と特定保健指導の要否や、医療費との相関関係などを分析してみましょう。他にも社内アンケートなどで現在の健康状態や不調を感じていることなどを把握します。そうすることで、ボトルネックや課題が見えてくるでしょう。
    その上で、具体的に何をどのように実践していくのか、健康経営の目標や取り組み内容を検討・計画し、実行に移します。実施する施策は、職場環境や働き方、従業員個人の生活などあらゆる側面からアプローチをします。その際、企業が率先して実施できるものからスタートさせましょう。場合によっては、社内ルールとして制度化することも重要です。その他、企業だけで実施できないものは、必要に応じて健康保険組合やフィットネスクラブ等の外部企業などと連携して実施することも検討します。
  4. 評価・改善
    「定期的に効果検証を繰り返し、改善していく」
    計画を実行したら、その結果をきちんと把握することも必要です。取り組みの成果を評価したり計画の改善を効果的に行ったりできるように、計画立案の際にあらかじめ評価指標を設定し、成果の目標を立てるようにしましょう。
    施策を実行した後は、効果検証を行い改善すべき点は改善し・・・と、PDCAサイクルをまわしながら従業員の健康を維持・管理していきます。また、日常的な歩数や血圧などのバイタルデータを記録することも、成果の効果測定には効果的です。そうした日常の健康データを蓄積することで、今後の対策に活かすこともできます。

「健康経営」に取り組む際に注意しておきたいこと

健康経営は、長く、継続して取り組むものになります。いきなり結果を求め大がかりにスタートさせても、関係者の意識が長続きしなければ意味がありません。そこで、取り組みにあたっては、以下の点に注意しておきましょう。

  • コストがかからない対策から手をつける
    健康経営は、すぐに成果を求めず⻑期的な活動を展開する必要があります。特に初めて取り組む場合には、健康情報の収集、分析、管理の面だけでもコストがかかりやすいものです。例えば、定期健康診断以外の取り組みを行っていなかった企業では、その他の情報をアンケート等で補填する必要がありますが、自社内でアンケートを実施・分析するにしても新たな人的コストが発生することは否めません。ましてや、外部ブレーンや専用のシステムを使うことになると、なおさら費用がかさみます。
    厚生労働省でも「健康経営ハンドブック2018(PDF/15,500KB)」で推奨しているよう、まずはコストをかけずにできるところから始めましょう。
  • ストレスチェックから見える組織分析を有効活用する
    ストレスチェック制度はメンタル不調を未然に防止する事を目的として創設され、2015年から労働者を常時50人以上雇用している企業に義務づけられています。しかし、高ストレス者への対応が分からないことや負担が増えることから、「ストレスチェックは実施しているものの対策ができていない」という企業は多く存在します。
    ストレスチェックから見える組織分析、組織単位でストレスの発生状況を見える化できたり、ストレスが低い組織の良い取り組みを共有することができたりするので、職場全体の改善に役立てることができます。ストレスチェックは、単に従業員に受検させるだけなど形式的に終わらせず、結果をもとに専門家との連携を図り、高ストレス者を出さないよう活用していくことが重要なのです。
  • コミュニケーションが取りやすい環境を創る
    細やかな体調変化やメンタル不調の発見には、職場の“風通しの良さ”も大いに影響します。
    普段から上司(管理者)と部下のコミュニケーションが密に取られていれば、部下の日常の様子の変化をいち早くキャッチできる可能性があります。また、スタッフ同士の意思疎通が活発になると、メンタルにも良い影響を与え、社内の空気も明るくなります。結果的に、仕事に対するモチベーションも上がり、生産性向上にもつなげられます。
  • 特定対象者だけのインセンティブ制度は要注意
    成果を出した人が何らかの“ご褒美”を受けられるインセンティブ制度は、健康経営の取り組みとしてよく用いられますが、禁煙や減量など、一部の従業員だけが対象となる場合、不公平感や不満などモチベーションを低下させる要因になってしまうことがあります。健康経営の対象は、全従業員であることが前提です。全ての従業員から充分な理解を得ることなくして、生産性の向上と健康経営の実現は叶いません。施策を計画する際は、不公平感や不満が出ないよう注意しておきましょう。

おわりに

従業員を大切にする姿勢や働きやすい環境づくりは、経営者にとって疎かにできない課題です。何も対策を取らないままでいると、休職コストの増加、人材流出リスク、採用コストの増加、訴訟リスク、レピュテーションリスクが高まる・・・など、多大な企業損失にもつながりかねません。
経済産業省が提唱するように、企業は「健康経営」にかかる費用をコストではなく「投資」と捉え、⻑期的な視野に立って継続していくことが重要です。

とはいえ、自社内のスタッフだけで取り組むには限界があります。メンタルヘルスケア対策でも、産業医の面接指導が欠かせないなど、様々な外部ブレーンと連携しながら取り組んでいく必要があります。
昨今では、システムを利用して、メンタル不調による休職予備軍をITが予見し、カウンセリングへと促すことも可能になっているようです。こうした新たなシステムも有効に活用しながら、うまく健康経営を進めてみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「健康経営とは?メリットや取り組みのポイント(https://www.obc.co.jp/360/list/post103)」を一部加筆・変更したものです。
上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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