子どもへの事業承継により、会社を存続させる方法とは
掲載日:2019年9月24日事業承継
中小企業が後継者の候補を検討する場合、特に小規模の企業では家業という性格があるため、子どもが後継者になっている割合が高いといえます(図表1)。
一般的に子どもは親が経営している姿を見て育ってきていますので、事業の経営とはどういうものか具体的なイメージをもって捉えることができるため、承継した後でイメージと違っていたということが、子ども以外が承継した場合と比べて少ないようです。
しかし、中小企業白書によると、近年は子どもが事業を承継する割合は減少し、親族以外の者が承継する割合が増えているとのことです。本稿では、事業承継に関する調査から、子どもへの事業承継に関する対応を解説します。
(図表1)子どもが後継者である割合(承継済の実績ベース) | |||||
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従業員数:5人以下 |
6~20人 |
21~50人 |
51~100人 |
101~300人 |
301人以上 |
80% |
70% |
64% |
53% |
46% |
41% |
資料:中小企業庁「人材活用実態調査」
親からの事業承継について
親が事業を行っている就業者に行った、親の事業に対する承継意思についての調査結果を見ると「承継者は決まっておらず、自分は承継するつもりはない」と考えている就業者は49.5%と、半数近くになっています(図表2)。
(図表2) 親からの事業承継について | |
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自分が承継することが決まっている。 |
8.3% |
自分以外の者が承継することが決まっている。 |
18.2% |
承継者は決まっていないが、自分が承継してもいいと思っている。 |
9.7% |
承継者は決まっておらず、自分は承継するつもりはない。 |
49.5% |
承継者は決まっていないし、自分が承継してもいいかはまだ考えていない。 |
14.3% |
資料:(株)ニッセイ基礎研究所「就業意識調査」
子どもが承継しない理由
子どもが親の事業を承継しない理由(言い換えると『したくない』理由)としては、「親の事業に将来性・魅力がないから」が45.8%ともっとも割合が高く、次いで「自分には経営していく能力・資質がないから」が36.0%となっています(図表3)。一方で「今の収入を維持できないから」については13.9%と高いとはいえないことから、収入というよりも、そもそもの事業の継続に不安があること、やりたいと思える事業でないこと、そして経営していくことに対して不安があることが、子どもが承継しない大きな理由になっているようです。
(図表3)親の事業を承継しない理由
資料:(株)ニッセイ基礎研究所「就業意識調査」
子どもへの事業承継について
子どもに事業を承継させようとするなら、こうした子どもが懸念している問題を解決していくことが何よりも重要です。承継したいと思えるような将来性・魅力のある事業にするためには、経営スタイルの維持ではなく、経営革新に取り組んでいくことも重要だと考えられます。しかし、その前にどのような企業であれば魅力を感じ承継してくれるか、子どもとよく話し合うことも大切になります。また、後継者は一朝一夕には育ちませんので、子どもが能力に不安があると感じているのであれば、後継者としての教育を早い段階からしっかりと行っておく必要があります。
なお、円滑な事業承継を実現するためには、株式などの資産承継についても計画的に準備しておくことが重要となります。
<事業承継の留意点>
- 事業の経営革新の取り組みを行い、事業の将来性や魅力を高める
- 子どもとコミュニケーションをとり、どのような考えをもっているのかを理解する
- 後継者に、マネジメントなどの教育を計画的に行う
先代経営者の行動による影響
事業の承継は必ずしもうまくいくとは限りません。もしかすると、承継者と従業員との間で大きなトラブルが生じ、最悪の場合、企業存続の危機が訪れるかもしれません。そのような事態にならないために、経営者は承継者のために何ができるのかを考えておく必要があります。
承継前にどのようなことを行ったかの調査では、約30%の経営者が「役員への打診」、「後継者へ権限の一部を委譲」を承継前に行ったとの結果が出ている一方で、「特別なことはしなかった」経営者も33.3%いるようです(図表4)。
これらの準備を行ったことによる承継への影響では、先代経営者が何らかの取り組みを行っていると、承継が上手くできたと答えている経営者の割合が高くなっているようです。
このことから、事業承継においては、後継者が承継後に動きやすい状況を事前につくっておくことが重要となるようです。
(図表4)承継前にどのようなことを行ったのか
資料:(株)東京商工リサーチ「後継者教育に関する実態調査」
本コンテンツは独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営するサイト「J–Net21」(http://j-net21.smrj.go.jp/)内の記事「ビジネスQ&A」(https://j-net21.smrj.go.jp/qa/succession/Q0070.html)を一部加筆・変更したものです。
上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。