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事業承継における「相続争い」回避のポイント

掲載日:2018年11月26日事業承継

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中小企業にとって、事業承継はいずれ考えなければならない大きな問題の一つと言えるでしょう。後継者選びはもちろんのこと、その後継者に安心して経営を任せられるよう、時間をかけて教育や準備をしていくことも必要になります。また、自社株式などの事業用資産を、譲渡・贈与・相続などで後継者が取得する際の税制面の問題も考えておく必要があります。

事業承継ではほかにもさまざまな対策を事前にたてておくことが大切ですが、特に重要な対策の一つとして、事業用資産をスムーズに後継者へ移転させることがあげられます。家庭に置き換えると「遺産分割対策」となり「相続争い」を避ける対策とも言えます。今回は、特に親族内の事業承継にかかわるリスク、さらにその回避策についてお伝えします。

事業承継は税務上の問題だけではない

自社株式や不動産などの事業用資産は、個人の相続財産とくらべて評価額が大きくなる可能性が高く、事業承継の際、後継者の税負担も大きくなるケースがあります。その場合には納税資金をどのように確保するのか、自社株式の評価を下げて税負担を軽減できるか、どのように後継者へ移転・取得させるか、といった対策が必要となります。

このように税制面の対策について考えておく必要がある一方で、事業用資産は「評価額が大きい資産」だけでなく、土地や株式など事業を円滑に継続するために「分割してはいけない財産」といった側面もあります。経営に関係のない親族が自社株式を保有する、といったことは回避しなければいけませんし、できるだけ後継者に事業用資産を集中させ、経営の安定につながる対策をとる必要があります。

起こりがちな相続争い

では事業承継について十分な対策をとれていない場合、どのような問題が起こるのか、考えられるリスクをいくつかあげてみます。

遺留分の侵害リスク

最初のリスクは「遺留分」の問題です。たとえば父親が特定の個人にすべての遺産を遺言で遺贈してしまったら、他の子どもたちは遺産がもらえなくなってしまいます。そういったケースで遺産を相続されなかった子どもたちが主張できるのが「遺留分」です。

先述のとおり、事業用資産は評価額が大きくなるケースが多く、後継者が相続などをした結果、他の相続人がもらえるはずの資産である「遺留分」を侵害する恐れがあります。後継者に代償金の支払い能力があれば問題は解決しますが、そうでない場合には遺産分割協議がまとまらず、調停や審判に持ち込まれることも考えられ、スムーズな事業承継ができなくなる可能性があります。

非後継者における経営への介入リスク

財産を公平に法定相続分で分割し、事業とは関係ない相続人が自社株式を取得した場合、その相続人が経営に介入してきたり、株式の買い取りを要求してきたりすることも考えられ、承継後の事業継続やキャッシュフローによくない影響が出ることも懸念されます。

現経営者個人が法人に金銭などの貸し付けを行っていたり、法人の債務の連帯保証人になっていたりする場合には、貸付金・連帯保証債務としてそれぞれプラス・マイナスの相続財産となります。貸付金については後継者が相続すれば問題ありませんが、事業と関係ない相続人が相続した場合には貸付金の返還請求をされるリスクがあります。

実際に起こった相続争いのケース

上記のようなリスクに対して十分な対策を講じないと、後継者や他の相続人にさまざまな争い事などをのこすことになります。実際に自社株式が分散したために経営が立ち行かなくなった下記のようなケースもあります。

後継者に事業用資産が集中できず事業継続が困難に

現経営者である父が突然心筋梗塞で亡くなった。相続人である子ども3人のうち役員だった長男が事業承継を行う予定だが、生前に事業承継の対策を行っておらず遺言書もなかったため、相続人間で遺産分割協議を行うことに。父個人の資産である自社株式と事業用不動産の評価額が高く、長男が相続をすると他の相続人の遺留分を侵害してしまう。長男は代償金の支払いができる資金がないため、自社株式を3分割して事業を継続するが、その後長男以外の子ども2人が経営に口出しをしてくるようになり収益が悪化。社内外の評価が下がり金融機関からの融資もストップ、事業継続が困難となり倒産。

  • *中小企業庁「Ⅰ 事業承継対策の大切さ(ケース3)」を一部改変

これは決して特別なケースではなく、適切に対策を講じないとどの企業にも起こり得ることです。特に近年は「もらえる権利があるものは主張しよう」という権利意識が以前よりも高まっている傾向があります。金銭が絡むと親族間でも争い事が起き、結果その後の関係性も悪化してしまうというリスクもあります。

相続争いを回避するために

このような争い事を回避するには、「経営承継円滑化法」の認定を受けたうえで、「遺留分の『除外合意』『固定合意』を行う」、「後継者が他の相続人に対して支払う代償金準備を現経営者の生前に行う」、「経営に関係のない相続人・親族が保有する自社株の買取資金対策を法人で行う」などのさまざまな対策が考えられます。まずは事業承継にあたって、自社の問題や、その対策を把握することや、現経営者が主導権を握ってしっかりと話を進めていくことが重要と言えるでしょう。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社ZUU)

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