あなたの意欲が湧いてくる“哲学者”の教え
掲載日:2022年4月1日事業戦略
新しい仲間が増えたり、今までとは全く違う場所に身を置いたりすることが多い季節。慣れない環境や新たな作業に、心が疲弊してしまうこともあるかもしれません。
本稿では、今、再注目されている哲学の世界から、そんなビジネスパーソンを奮い立たせる言葉をご紹介します。
謙虚な気持ちで学ぶ姿勢が、成長をもたらす
新年度を迎えると、身が引き締まる思いがするものです。
特に、新社会人たちは、期待と不安の入り混じった毎日を過ごしていることでしょう。
また、新しい環境に身を置く、もしくは、新たな目標や計画に向かって走り出そうとしているビジネスパーソンも多いはずです。
そのような人には、ぜひ、心に留めておいていただきたい名言があります。
「いかに知識を身につけたとしても全知全能になることなどはできないが、勉強しない人々とは天地ほどの開きができる」
これは古代ギリシアの哲学者・プラトンの言葉です。
どれほど知識があったとしても、仕事においてパーフェクトになれるわけではありません。しかし、コツコツ知識を増やしていけば、勉強をおろそかにした人とは、大きな差がつくでしょう。
仕事を始めると、学生時代の勉強とは違い、より実践的な知識を身につけることが必要です。
新人時代は、ビジネスの基礎を覚える必要があり、管理者やリーダークラスになるなど、立場があがっていけば、それに応じた知識が求められます。部署を異動した場合も、新たに学ぶべきことが出てくるはずです。
それに、社会人としての知識とは、座学で身につくことばかりではありません。
様々なことを経験し、その内容を振り返ることでしか、身につけることのできない知恵もあります。
つまるところ、どれほど年齢を重ねても、学び続けなければならないわけです。しかし、ときには学ぶことの多さに疲れてしまったり、その意味に疑問を抱いたりすることもあるでしょう。
そんなときは、ぜひこの言葉を思い出してみてください。もう一度、意欲を奮い立たせることができるかもしれません。
「唯一の真の英知とは、自分が無知であることを知ることにある」
これは、プラトンの師であるソクラテスの言葉です。新たな知識を学び吸収するためには、謙虚であることも大切です。
自分が無知であることを自覚していれば、知らないことに出合ったとき、新鮮な気持ちで学ぼうと思えるということです。それを認めるのは勇気がいることですが、その謙虚な気持ちこそが、大きな成長につながっていくのだといえるのではないでしょうか。
さらに、自らの驕りや傲慢さ、独りよがりな態度を戒めてくれるかもしれません。
例えば、仕事を覚え、一通りのことができるようになると、自分を過大に評価しがちです。そうして起きたほんの少しの勘違いが、手痛いミスにつながることも珍しくないでしょう。
ドイツの哲学者であるフリードリヒ・ニーチェもいっているように、「轢かれる危険がもっとも多いのは、ちょうど一つの車を避けたときである」ということです。
だからこそ、自分を客観的に観察・評価して、等身大で把握するように努めることは、愚かな間違いを防ぐ、良い方法だといえます。そうすることによって、次に何を学ぶべきかも、自ずと見えてくるはずです。
勇気を持って「ありのままの自分」を受け入れることが、成長への第一歩だといえるでしょう。
成果を生み出す「種」
ニーチェは、1800年代後半を生きた哲学者であり、「神は死んだ」など、多くの有名な言葉を残しました。
その中から、新たなことに挑戦しようとするときの金言となるものを、いくつかご紹介します。
「樹木にとってもっとも大切なものは何かと問うたら、それは果実だと誰もが答えるだろう。しかし実際には種なのだ」
これをビジネスで例えるならば、樹木とは「仕事」であり、果実とは「成果」に置き換えることができます。
そして種は、成果を生むために「考えること」や「準備すること」を指すでしょう。
たしかに、会社から見れば、利益につながる成果を重視し、評価するのは当然です。ただ、結果を出すためには、そこに結びつく方法を考え、行動することが前提となります。
そのためには、それまでの経験から教訓を学び、知見を蓄えておく必要があるのです。さらに大きな成果を出すためには、同じ方向を向いて協力してくれる仲間が必要となるでしょう。
こういった「成果を生むために欠かせない土台」である種を、日ごろから意識して集め、植え、育てておかなければ、「成果」という果実を手にすることはできないということを示唆しています。
種が大切であるということを忘れてしまいがちなビジネスシーンとして、新たなサービスや商品を生み出そうとするとき、もしくは、競合に勝とうとするときがあげられます。多くの人が、他社との差別化や独創性を意識するのではないでしょうか。
「今までにない新しさ」をイメージすることで、せっかくこれまで培ってきた経験や知見から、離れて発想しようとしがちです。
しかし、ニーチェは独創性について、次のように教えます。
「何か新しいものを初めて観察することではなく、古いもの、古くから知られていたもの、あるいは誰の目にもふれていたが見逃されていたものを、新しいもののように観察することが、真に独創的な頭脳の証拠である」
オリジナリティーのあるものを生み出すには、身の回りにないもの、誰も考え付いたことのないものを探し求めるのではなく、過去からあるもの、知られているもの、身近なものといった既知の事実を、従来とは異なる視点で見るところから、生まれてくるというのです。
また、企画会議や商品開発においては、周囲と意見を交換しながら、答えを探していくでしょう。
ニーチェは、そうしたチームを組む際の心構えといえる言葉も残しています。
「若者を確実に堕落させる方法がある。違う思想を持つ者よりも同じ思想を持つ者を尊重するように指導することである」
人間誰しも、自分と同じ考えを持つ人には、親近感を抱き、できるだけ一緒にいたいと思うでしょう。
特にビジネスにおいては、周囲を、自分の意見に賛同してくれる味方で固めたいと思うのは、自然なことかもしれません。
しかし、ニーチェのこの言葉は、逆説的に、“違う思想を持つ者”を尊重するように語りかけています。
そして、若者を、と始まっていますが、これは若者に限った話ではないのです。
自分と同じ考え方の人が周りにたくさんいた方が、意思決定がスムーズで、仕事は楽に進みます。
そのような環境は居心地が良いものですが、考えることを停止してしまい、自身が成長する機会すら、奪ってしまうのです。
自らの考えが間違っているのではないか、という疑問を持つこともなく、思考が偏り、固定化されてしまうことがあるからでしょう。
異なる意見に触れ、自分が抱えていた考えを振り返ることで、新たな気づきを得たり、修正したりすることが、思考を深めていくためには重要なのです。
もちろん、目的とするゴールは同じであるべきでしょう。
「より良いものをお客さまに届けたい」「新しい発想で市場を驚かせたい」といった、最終的な成果は同じでも、そこに至るまでのアプローチは様々な可能性を考慮するべきです。
最後に、気持ちを前向きにしてくれるニーチェの言葉を紹介します。
「心の中に未来にふさわしいビジョンを描け。そして、自分を過去の末裔であるという迷信を忘れるんだ。あの未来の生を思い巡らせば、工夫し、発明すべきものが限りなくある」
現在、そして未来は、過去の延長線上にある。たしかに、そうした一面があることも事実でしょう。
その一方で、夢を描くことは未来に向かって進んでいく原動力になるのです。
実現したい将来像に向かって、バックキャスティングで考えれば、会社や事業が飛躍していくためのヒントが得られるかもしれません。
おわりに
今回は、紀元前のプラトンやソクラテスから、近代に活躍したニーチェまで、哲学者たちが残した言葉の一部をご紹介しました。2000年のときを超えた今でも、私たちの心に響くのは、哲学が、人間の本質に問いかける学問だからでしょう。
自分の進むべき道を見失ってしまったとき、なんとなく日々のやる気が出てこなくなってしまったとき、ぜひ、彼らの言葉を思い出してみてください。より良い明日を過ごすための、モチベーションアップにつながるかもしれません。
(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)