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エンパワーメント型マネジメントで組織改革!

掲載日:2020年12月14日事業戦略

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「チームの目標がなかなか達成できない」「自分も手一杯で部下の育成に注力できない」「慢性的に人が足りない」……、そんな悩みを抱える管理職の方は少なくありません。特にリモートワークが広まりつつある今、従来のような対面を基本とした一方的な管理型のマネジメントは通用しなくなりつつあります。
これからは、権限を部下に任せ、マネジャーは支援に回る「エンパワーメント型」のマネジメントに変えることが、社員のやりがいや業績を飛躍的にアップさせる近道といえるでしょう。
本稿では、管理職が現場をマネジメントする際に効果を発揮するといわれる、「エンパワーメント」型マネジメントの効果的な導入方法を、実例を交えてご紹介します。

VUCAの時代に求められるマネジメントとは?

「エンパワーメント型マネジメント」とは、チームのメンバー一人ひとりの力を発揮させ、マネジャーはあえて支える役回りに徹する組織管理のことです。具体的にマネジャーがやるべきことは、
「メンバーの意見や自主性を尊重する」
「メンバーの挑戦意欲を引き出す」
「メンバーの適正を見極め、権限委譲する」
「適切な環境を率先して作りあげる」
といったことがあげられます。

これまでの日本では、「先導・管理型のマネジメント」が長く続いていました。トップやマネジャーがメンバーに目標や施策を指示し、場合によってはプレイング・マネジャーとなって一緒に業務を遂行し、メンバーを叱咤激励するようなスタイルといえます。部下は指示された内容を確実に実行し、報告を怠らないようにすることが重要視されます。
この「指示されたことを確実に実行する」というのは、顧客との関係でも同様で、「顧客から依頼された仕事をきっちりやり遂げる」ことが最も大切なこととされてきました。

ところが、現代はVUCAの時代といわれています。
これは、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の4つのキーワードの頭文字を取った言葉です。もちろん、ビジネスにおいても例外ではなく、先を見通すことが難しい時代というのは誰しも実感されていることでしょう。
つまり、顧客からの要求を「言われたことだけ、きっちりこなす」のみでは、生き残れない時代になりつつあります。変化に対応するために、顧客や市場との距離を縮めなくてはならず、柔軟に思考し、革新的なアイデアを実現できる組織への変革が求められているのです。

そのためには、これまでのように優秀なマネジャーがメンバーを引っ張っていく「先導・管理型のマネジメント」ではなく、組織に属するメンバー一人ひとりの能力を発揮させることでチームとして成果をあげていく「エンパワーメント型マネジメント」が必要になってくるでしょう。

このマネジメントスタイルを実現できたある会社の実例を紹介しながら、そのヒントを探ります。

部下の能力を発揮させる2つのコツ

A社は、約1年をかけて組織改革を進めることにしました。まず実施したのが、マネジャーへのレクチャーです。“部下に権限を与えつつ支えることができるマネジャー”を育成することが、「エンパワーメント型マネジメント」実現のためには必須であり、研修を通じて「一人ひとりの力を発揮できる風土を作ること」の重要性を認識してもらいました。そのうえで、マネジャー自身が各職場の現状を把握するため、部下一人ひとりと個人面談を実施しました。
面談から分かったのは、部下の仕事に対しての思い入れに温度差があったり、そもそもの情報の捉え方にも違いがあったり、ということでした。これらは、どの部署においてもほぼ共通した課題となっていました。

そこで、この会社では
①情報を正確に共有する
②ゴールや役割を明確にする
ということが、部下の能力を発揮させるためのカギとなると考えました。そこで、この2点をテーマに、各職場における対応策を、マネジャー自身が考えて実施していくことにしました。
では、具体的にどのようなことが行われていたのでしょうか?

「①情報を正確に共有する」ことについては、

  • 毎週定時に15分間メンバーとミーティングをして、仕事の方向性や具体的なやるべきことの確認を行う
  • マネジャーが知識やノウハウを部署全体に共有する場を設ける
  • メールの一斉送信の場合、見逃してしまうケースがあるため、あえて紙の回覧板を回すことで全員が必ず目を通すようにする

「②ゴールや役割を明確にする」ことについては、

  • マネジャー自身が部下に対し小さいゴール(容易に達成できるもの)を設定し、実現したらほめてチャレンジする意欲を高める(達成できれば徐々に高いゴールを設定する)
  • 定期的に「1on1(ワンオンワン)ミーティング」を実施し、個人の思いを確認して尊重する
  • 自由に意見を言うことができるような雰囲気作りをする
  • 部下が相談に来るまでは、「あの案件はどうなっている?」など、催促しない
    といったことです。

その結果、
「部下に口を出さないようにしたら、部下は自然に取り組んでくれた」
「個人個人の仕事への責任感が高まり、チーム全体の力が強くなった」
「先輩社員が後輩を見守るようになったため、後輩はのびのびと仕事ができ、よいアイデアを口にするようになった」
「ある部下の意見を採用したら、意外と上手くいき、すると当人だけでなく、他の部下も積極的に意見を言うようになり、チームとしてレベルアップした」
といった声がマネジャーから聞かれるようになりました。「一人ひとりの力を発揮できる風土」を育むことに成功した例といえるでしょう。

マネジャー同士の情報共有や切磋琢磨がポイント

各マネジャーの実践が功を奏したのはもちろんですが、そもそものマネジャーが「エンパワーメント」の重要性を認識していなくては“本物”にはなり得ません。この会社が「一人ひとりの力を発揮できる風土」を醸成できたのは、継続的なマネジャー教育により実現された、部下へのフォローが背景にあったといえます。
そのフォローとは、最初の面談で確認した部下一人ひとりの思いを反映させながら、「職場で実践したいこと」「実践してどうだったか」を、数カ月おきに繰り返し、人事部に報告するというものでした。

また、マネジャー自身は、1年の締めくくりに「自分はどのような働きかけをしたか」「メンバーがどう変わったか」などについてまとめてもらうことで、自身のマネジメント効果についての振り返りを行いました。

注目すべきポイントは、これらの内容は、すべて社内のイントラネットに一覧化され、マネジャーなら誰でもアクセスして見ることができるようにしたことです。それにより「どこの部署の誰々マネジャーはこんな実践をしている」「あの部署ではここまで解決できている」と競争意識も芽生えて、切磋琢磨されていったそうです。
そうしたことが、結果として同社が「エンパワーメント型組織」となった一因でしょう。

組織は一人ひとりの集合体です。各々の“マインド”が変われば、行動が変わり、チーム全体が変わります。そのためには、まず現場を指揮するマネジャーの意識を変えるべきだといえます。
本稿の事例を参考に、ぜひマネジャーの意識改革と組織の変革に取り組んでみてはいかがでしょうか。チーム全体が頼もしく思える日がやってくるはずです。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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