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雇用調整助成金に関する、よくある誤解

掲載日:2020年12月9日事業戦略

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2020年もっとも脚光を浴びた助成金といえば、休業手当を支払って従業員の雇用維持を図る会社に対して支給される「雇用調整助成金」でしょう。昭和50年代に創設されたこの助成金は、リーマンショックや東日本大震災などで日本経済が不況に見舞われるたびに申請が急増しましたが、コロナ禍においても申請件数が増加しました。
中小・零細企業においては、多忙な社長や役員が自ら申請に取り組むも、用語の難解さや制度の複雑さにギブアップしてしまい、途方に暮れるということもあったようです。
本稿では、雇用調整助成金について解説し、申請時のよくある誤解についてお伝えします。

雇用調整助成金への対応は様々

雇用調整助成金は通常、経済上の理由で直近3ヵ月の平均売上高(または生産量)が前年同時期と比較して10%以上減少しており、かつ、従業員に平均賃金の6割以上を休業手当として支給していることが申請条件となります。事前にハローワークへ提出した計画届及び労使協定に沿って休業を実施し、従業員へ休業手当を支払い、出勤簿や賃金台帳を添付して支給申請を行うという流れです。本来ならば事前準備にもそれなりの時間がかかる助成金なのですが、コロナ禍においては、急遽休業に踏み切らざるを得ない会社が多数あり、助成金の支給が急務となったため、厚生労働省は相次いで条件緩和や提出書類の削減を実施しました。
もちろん助成金申請のハードルが低くなるのは歓迎すべきことですが、これにより企業の総務人事ら実務担当者が混乱に陥ったという声もあります。苦労して揃えた添付書類が突然不要になったり、受給予定金額を計算し直すことになったりという事態が多発しました。また、変更された要件について詳細を確認しようにも、労働局やハローワークに電話がつながらないということもあったようです。
このような様々な要因で、「雇用調整助成金はよくわからない」と申請を踏みとどまったり、制度について誤解をしてしまったりするケースがありました。

雇用調整助成金申請時のよくある誤解

雇用調整助成金申請において、よくある誤解は下記3点です。

  1. 従業員に何も払わなくても助成金をもらえる
  2. 一人あたりの受給額が8,330円から『一律15,000円』に改正された
  3. 解雇を出したら一切申請できない

これらはすべて誤りとなりますが、その理由について解説します。
①について、雇用調整助成金は休業手当を支払うことが要件となり、支払ったことを示す書類(賃金台帳)を添付しなければなりません。
このような誤解をしてしまうのは、雇用調整助成金の趣旨をそもそも理解していないケースが多いです。事業活動を縮小せざるを得なくなった会社が、従業員に休業手当を支払って休ませつつ雇用維持を図るのがこの助成金の目的ですので、休業手当の支払いなしには助成金の対象とならないのです。

②に関して、15,000円はあくまで受給額の上限で、平均賃金×助成率が受給額となります。
「一律15,000円」という誤解は、第2次補正予算案の編成時に生まれたものです。実際には、第2次補正予算によって雇用調整助成金の上限額が日額8,330円から 15,000円に引き上げられたのですが、受給できる金額はあくまで「平均賃金×助成率」のままで、15,000円がそのまま支給されるわけではありません。

③については、解雇(会社都合退職)が出ても、助成率が下がるだけで、申請自体は可能となります。
上記のような誤解は、助成金制度を知っているからこそ生じる場合が多いです。厚生労働省系の助成金は、雇用状況を改善させることを目的として支給されるため、会社都合退職者を出してしまうと一定期間支給申請の対象外とするものがほとんどです。しかし雇用調整助成金はもともと経済上の理由により事業縮小を余儀なくされた事業主を支援する制度であるため、会社都合退職者が出ても助成率が下がるだけで、支給申請自体は可能なのです。

おわりに

申請に関する労働局ごとのローカルルールも様々です。出勤簿や賃金台帳についてデータでの送付を受け付けるところもあれば、紙での提出を義務付けるところもあります。 「○○労働局は審査が比較的ゆっくり」「△△労働局は書類チェックが細かい」など労働局ごとの温度差もかなりあるようです。無駄を省き、最短の入金を目指すには、申請書類をそろえる前の確認作業が大切になってきます。
未曽有のコロナ禍においては、何度も条件緩和や制度拡充がなされ、情報が錯綜する難しい状況でしたが、常に最新の情報を確認する他ありません。
本稿を参考にしていただき、厚生労働省のウェブサイトなど最新の情報を確認したうえで、実務対応するようにしてください。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「雇用調整助成金のよくある誤解と特例措置など実務対応のポイント(https://www.obc.co.jp/360/list/post138)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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