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なぜ、中小企業はSDGsに取り組むべきなのか?

掲載日:2020年9月15日事業戦略

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「SDGs」とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟国である193の国々が、2016年から2030年の15年間で達成することを目標に掲げたものです。まだまだ、自分事と捉えていない方もいるかもしれませんが、実は、今すぐにでも取り組みを始めなければ、時代に取り残される危険があるともいえます。
本稿では、中小企業にとってのSDGsについて考えていきます。

日本のビジネス界に広がる大きな潮流

SDGsには、17の目標(ゴール)と、169のターゲット(具体的達成基準)が設定されています。ここには、貧困や飢餓、環境問題、そして、経済成長やジェンダーといった内容まで幅広い課題が網羅され、「地球を保護しながら、すべての人が平和と豊かさを享受できるようになる普遍的な行動をしていこう」といった願いが込められています。
17の目標には、それぞれ、経済・社会・環境という3つの側面がありますが、現在、大企業を中心に、様々な取り組みが広がっています。
ところが2018年に、経済産業省・関東経済産業局が中小企業500社に向けて実施したウェブアンケートでは、84.2%が、「SDGsについて全く知らない」と答えています。現在では、この数値も多少は改善されているでしょうが、それでも、中小企業においてSDGsの認知度はまだまだ低いといえるでしょう。

これは、「SDGsへの取り組みは大企業の話であって、中小企業には関係ない……」と思われている企業経営者が多いからなのかもしれません。
しかしながら、大企業がSDGsへの取り組みを進めるにつれて、仕入先や下請けにも、同様の取り組みを求めるケースが増えています。中小企業にとって、SDGsの潮流は、どのようなメリット、もしくはリスクをもたらすのでしょうか?

SDGsと向き合わない場合、向き合う場合

まず、リスクとして考えられるのは、「大手企業のサプライチェーンから外される可能性がある」ということでしょう。大手企業がSDGsに取り組むのには、グローバル競争に勝ち抜ぬいていくためにも、企業ブランディングによってイメージと価値を高めていきたいという狙いがあります。
そうした中では、パートナーとしてビジネスを推進する取引先にも、SDGsに対して、同じ観点を持っている企業が選ばれていくことになるでしょう。したがって、SDGsへの取り組みをしていない中小企業は、サプライチェーンから除外されてしまうことがあるかもしれません。SDGsへの取り組みは、中小企業にとって早急に取り組むべき課題だといえます。

また、日本国がSDGsを推進している以上、自治体や公立学校などが取引先を選ぶ際には、SDGsに取り組んでいる企業かどうかという観点が入ってくるでしょう。もし、SDGsに見向きもしていない中小企業だとしたら、今後の業者選定時にはじかれてしまい、ビジネスが先細りになっていく可能性があるかもしれません。

SDGsに取り組むことで想定されるメリットのひとつとしては、まず、社員のやりがいや人材確保の面で効果があるということです。最近の若手社員や就活する学生が会社に求めるものとして、「社会貢献」を重要視する傾向が高まっています。
社会貢献は、「会社の将来性」にもつながることですので、中小企業にとっても、社員に自社で働く意味を伝え、優秀な学生を獲得するために、SDGsへの積極的な取り組みによって、夢と共感を提供していくことが必要だと思われます。

中小企業のSDGsへの取り組み、その成功術とは?

ただ中小企業が、いざSDGsに取り組もうとしても、「いったい何から始めればいいのか」と悩む経営者が多いようです。また、資金や人材が限られている中で、「何をしたらいいのか」と戸惑う方もいらっしゃるでしょう。
実際、前述した17の目標(ゴール)を達成するための169のターゲット(具体的達成基準)は、主に、国家や行政が取り組むべき内容ばかりで、中小企業が取り組むべき具体例については、ほとんど説明されていません。

とはいえ、わからない、どうしよう、と止まっていては、時代の流れに取り残される危険があります。大切なのは、自社の業務をしっかりと見直し、できることから1つずつスタートさせていくことになります。実際、中小企業であっても、SDGsへの取り組みを進め、大きな成果を出している会社もあるのです。

例えば、神奈川県横浜市の株式会社大川印刷。資本金2,000万円、社員37名という中小企業ですが、「ソーシャル・プリンティング・カンパニー®」を掲げ、「環境印刷」を実践して、SDGs経営を展開しています。

本業である印刷業を通した社会貢献をめざして、有害な石油系溶剤を含まないインクを採用したり、排出する年間のCO₂を算出したうえ、その全量を政府のJ–クレジットなどによってカーボン・オフセット(打ち消し活動)をし、また、本社工場で印刷する電力は、再生可能エネルギー100%(自社太陽光20%、風力発電80%)にしています。

このCO₂ゼロ印刷を選ぶことによって、顧客は自社のCO₂削減実績になるため、株式会社大川印刷にとっては競合との差別化につながり、また、SDGsを取り組む大手企業や団体のサプライチェーンの輪の中にも入り込めるようになっているといいます。
さらに、社内にはSDGs経営のプロジェクトチームを立ち上げ、社員がボトムアップ型で取り組む環境をつくることによって、自社のブランディングにもつなげているようです。

また、岐阜県岐阜市の三承工業株式会社。資本金1,000万円、社員54名で、建設・リフォーム・土木工事などを営む企業ですが、SDGsの中でも、特にダイバーシティを意識した労働環境改善を進め、出産を終えた女性社員のカンガルー出勤(子連れ出勤)を導入したり、女性だけの子会社を運営することによって、グループ全体の女性従業員比率を50%以上に高めています。
これらは、SDGsへの取り組みの“見える化”ともいえ、自社を訴求するインパクトになっていることでしょう。

そして同社は、女性社員の目線を活用することによって、主婦層のニーズをキャッチしながら、低所得者や外国籍といったマイホームの購入が難しかった層に低価格高品質の注文住宅を展開しています。さらに、「防犯意識の高い住宅」を発信して、地域のリスクを軽減して、住民が住み続けたいと思う街づくりに貢献しています。この結果、幅広い層の顧客を獲得することに成功して、売上が3倍になったということです。

このように、中小企業であっても、SDGsへの取り組みを進めることは、何ら不可能ではありません。また、SDGsへの取り組みを展開しなければ、自社の将来像を描くこともできなくなりつつあります。
ここで大切なことは、経営者自身が率先して、積極的に関わっていくことだといえます。また、同時に、できること、できないことを見極め、できることから順序立てて進めていくことでしょう。さらに、社員の理解を深め、社員とともに一丸となって、SDGsへの取り組みを推進していく必要があるともいえます。
これらを踏まえて、まず、やるべきことを考えてみてください。

(記事提供元/株式会社プレジデント社 企画編集部)

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