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“見えないコスト”を削減する成長性アップの新発想

掲載日:2020年7月20日事業戦略

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企業が利益を上げていくためには、コストを見直し、不必要な部分のカットを実施していくことが不可欠でしょう。コストとは、会社が事業を継続していくにあたって必要となる「支払わなければいけない費用」のことを指しますが、経営者は、「見えるコスト」と「見えないコスト」があることを理解して、事業の成長計画を練ることが大切だと考えられています。それは一体なぜでしょうか?
本稿では、「見えるコスト」・「見えないコスト」について考えてみましょう。

「見えるコスト」のカットには、デメリットがついてくる

「見えるコスト」とは単純明快で、言わば、モノやサービスに対して支払うお金となり、材料費や人件費、事務所経費……などがあげられます。
一方、「見えないコスト」とは、事業を行うのに必要となる間接的なものです。つまり、それにかかわる「作業量」と「時間」だといえるでしょう。

利益を増やすには、売上をアップさせるか、経費を抑えるかが一般的ですから、コストの削減は重要な経営課題です。
ただし、会社のことを考え、いざコストの削減をしていこうとすると、材料費の値引き交渉をしよう、無駄な人員を減らそう、残業を抑えよう、賃料が安いオフィスに移転しよう……と、身近な「見えるコスト」から手を付けがちになります。

これらは確かに、毎月、固定費としてかかってくる経費ですから、削減できれば、その効果は大きいでしょう。また一度、見直しをすれば、すぐに効果が表れますので、効率的なコスト削減になっていきます。

しかし、目先にある「見えるコスト」ばかりに気をとられて、そこだけに手をつけると、危険もあります。
材料費の値引き交渉をすれば取引先との軋轢を生むかもしれませんし、リストラや残業代カットを実施すれば社内に不安が広がるでしょう。また、事務所経費の軽減のために狭いスペースに移転すれば、快適さが失われ、不満が募って、社員のモチベーションダウンにもつながるかもしれません。

つまり、これらの「見えるコスト」の削減は、短期的には効果を発しますが、知らないうちに、ジワジワとそのデメリットが広がり、いつしか取り返しのつかない状況を引き起こすことがあるのです。経営者には、要注意といえるでしょう。

「見えないコスト」を削減する、企業成長の可能性

そこで、考えていきたいのが「見えないコスト」の改善です。これは前述したように、事業を行うのに必要となる「作業量」と「時間」を考えた見直しとなります。
例えば、経理担当者の業務について考えてみましょう。

企業によっては経理担当者が、毎月、給料日や経費の支払日に銀行へ出向き、振り込み作業をする場合もありますが、企業の給料日が集中する毎月25日や月末は窓口やATMが混雑して、長い時間が必要なケースが多くなります。
行列ができていれば、手続き終了までに1時間以上かかることも珍しくないでしょう。会社から銀行までの往復時間を入れると、2時間ほど費やす経理担当者もいるようです。

ここで、考えてみましょう。経理担当者の年収から、その時間給を逆算すると、このコストは、どの程度になるでしょうか?
仮に、経理担当者の時給が1,500円の場合、この業務には、1,500円×2時間で3,000円のコストがかかっていることになります。

これが、「見えないコスト」です。では会社として、この業務をインターネットバンキングに切り替えた場合はどうなるでしょう?
インターネットバンキングは、個人向け利用とは違って、法人向けの場合は基本的に、毎月の利用料がかかります。ここでは「見えるコスト」がかかるのです。
そこで、「そんなコストを支払うくらいなら、経理担当者が必要なときに銀行へ出向き、ATMで手続きをした方がコストはかからない……」と考える経営者も少なくありません。

しかし、この「見えるコスト」と、先ほどの「見えないコスト」を、比較してみてください。
2時間で3,000円かかる「見えるコスト」をインターネットバンキングに切り替えることによって、経理担当者は業務時間の短縮が可能となり、生み出した「時間」を別の業務に当てることができるようになるかもしれません。つまり、生産性のアップにつながるのです。
こう考えると、「見えるコスト」の削減ではなく、「見えないコスト」を削減していく意味がわかってくると思います。

「作業量」と「時間」の余裕を生み出せば、さらなる発展の糸口が見つかる

また、別の業務における「見えないコスト」についても考えてみましょう。
例えば顧客から注文を受注するとき、取引先からFAXで発注書を受け取り、それに従って倉庫に電話して在庫を確認、社員がパソコンに注文伝票を手入力して、発送の手配をする……、このようなアナログな業務フローのままの会社が少なくありません。

ただ、ここにも「作業量」と「時間」という改善すべき「見えないコスト」があるのです。例えば、これらの業務を“自動化”できれば、どうでしょうか?
業務効率が大幅にアップして、「見えないコスト」のカットができるはずです。

最近では、中小企業でも活用しやすいRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)という、業務を自動化するさまざまなツールが登場しています。
これらの「業務自動化ツール」を利用すれば、例えば、ウェブサイト上で注文を受け付け、在庫の確認から商品の発送、請求までを自動化することもできるので、生産性が大きく向上するだけでなく、正確でスピードも速くなり、結果、顧客満足度の向上につながっていくことも考えられます。
そして最終的に、注文が増えて、売上アップにつながる可能性もあるでしょう。

こうした自動化ツールの導入には、設備投資という「見えるコスト」が発生します。ただ、こうした業務システムにも、最近は「所有から利用へ」の動きが広まってきました。
初期投資が不要か、あるいはごく少額で、月額利用料の負担だけでシステムを導入できるようになっており、また、当初は無料でお試しできるものも少なくありません。

さらに、これらの自動化ツールを活用した場合、その業務を担当していた社員の「作業量」と「時間」に余裕ができることになります。
これまで日々の業務に追われて、余裕のなかった社員が、単純作業から解放されて、クリエイティブな仕事に専念できればモチベーションが上がり、それが生産性の向上につながり、いい循環が生まれるのではないでしょうか。

企業経営者にとって、無駄なコストを削減することは非常に重要ですが、業務の改善、企業の発展と成長を考えたコストカットを考える場合には、短絡的に「見えるコスト」にだけ目を光らせるのではなく、長期的な視野をベースとした「見えないコスト」への取組みも重要になってくるのです。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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