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「安易な値下げ」は失敗のもと 成功する値下げ戦略とは?

掲載日:2020年3月5日事業戦略

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商品やサービスの価格設定は、経営上重要かつ悩ましい問題です。事前に十分な検討を行わず、「値段を下げればもっと売れるかも?」と安易に価格を下げしてしまうと、利益のみが減って余計に経営を苦しめることにもなりかねません。
本稿では値下げを検討する際のポイントについて解説します。

値下げを成功させるのが難しい4つの理由

まず、値下げには次のような課題・問題点があることを理解したうえで、必ずしも上手くいくものではない、想定していた効果が十分に得られない可能性がある、ということをしっかりと認識する必要があります。

①価格を下げた分、顧客が増えるとは限らない

価格を下げればお客さまが来てくれる、お客さまが増えるというのは、思い込みの可能性はありませんか?顧客層や商品によっては値下げをそれほど魅力的に感じない可能性もありますし、少々の値引きでは実際の購買行動を起こすまでに至らないこともあり得るでしょう。

②同業他社も値下げするかもしれない

自社が値下げを決行すれば、同業他社もさらなる値下げで対抗するかもしれません。
外食業界ではデフレが加速化した2000年ごろにそのような値下げ合戦に陥りましたが、結果的にはどこも疲弊し、現在は多大な努力の末に価格を元に戻しているケースが多く見受けられます。

広い販売網を持ち、購買力が高い大手企業では、強い態度で仕入れコストの交渉ができ、薄利多売を狙う作戦もとれますが、中小企業で同様の対応をとると、たとえ最初は順調であっても、資本力・資金力で勝る大手企業にさらに安い価格で似た商品を販売された場合、太刀打ちが出来ず、逆に窮地に陥る可能性もあります。

③商品のブランド価値を毀損してしまうおそれがある

その価格だからこそ感じてもらえていた価値が、値下げをすることによって薄れてしまうことも考えられます。
例えば、高級路線で売っていた某小売企業が、庶民的な価格で近年人気を集める他社に影響され、その顧客層を取り込もうとして値下げを決行したことがありました。

結果、値下げはしたものの、元々が高級な商品であったため、値下げによって取り込みたかった顧客層の求める価格帯まで下げるに至らず、値下げによるメリットをうまく訴求することができませんでした。それだけではなく、元々、高級感や特別感を気に入りリピートしてくれていた既存顧客が離れてしまうと共に、安い値段に引き寄せられた新規顧客も値下げが終わると離れ、最終的には会社の経営が傾くという事態になりました。

④値引きや値下げ価格が定着してしまうと価格を上げるのが難しい

値引きが普通になると、通常価格で買ってもらえなくなるという問題もあります。定期的にセールをしているとなれば、通常価格では購入せず「今度のセールを待って購入しよう」という消費者心理が働きます。

また、原材料の入手が難しくなったり、インフレになったり、人件費が上がったりと、その商品・サービスを提供するためのコストが上昇し、従来の価格で提供するのが困難になってしまったとしても、値下げ価格に慣れた顧客は本来の価格に戻しただけでも離れていってしまうことも考えられます。

値下げ戦略を成功させるために必要な3つのこと

値下げは、商品価値を上げるよりも簡単にできそうに見えて、実は成功させるのが難しいアクションであり、値下げを成功させるには入念に戦略を練る必要があります。適切な手を打つために事前に把握しておきたいのが以下のようなポイントです。

成功ポイント1:「損益分岐点」と「限界利益」を把握する

その商品・サービスを生産・販売、提供するためにどの様な費用がどの程度かかっていて、いくらでいくつ売れば利益が出るのか、どんぶり勘定ではなく正確な数字で把握しておく必要があります。そこで役立つのが「損益分岐点」と「限界利益」です。

ある商品を販売したときに、利益も損失も発生しない「収支トントン」になる売上高が「損益分岐点」です。損益分岐点は、「固定費÷{1-(変動費÷売上高)}」で計算できます。

固定費とは商品がいくつ売れようがほぼ変わらずに発生するコストのことで、例えばオフィスの使用料や社内人件費、広告費などがあてはまります。変動費は、原材料費など売れれば売れるほど費用負担が大きくなるコストのことです。

一方、「限界利益」は「売上高-変動費」で計算できます。「売上高-(売上原価+販売費及び一般管理費)」で計算される「営業利益」に似ていますが、営業利益の計算式では売上高から変動費も固定費も差し引いています。限界利益が黒字であれば、たくさん売れるか固定費を下げれば利益が出る状態ですが、赤字であれば売れれば売れるほど赤字が拡大する状態です。

損益分岐点や限界利益を計算すれば、マイナスを出さないために必要な売上額、いくつ売れればかかった固定費を回収しきることができるのか、売上改善のためには変動費と固定費のどちらを削減すべきかなどがわかりますので事前によく分析しておきたいところです。

成功ポイント2:生産能力、処理能力のキャパシティを調査する

販売価格を下げるということは、商品1個あたりの利益率を下げてでも販売数を増加させる作戦をとるということです。そこでは、値引きしようとしている商品が販売数増加に耐えうる商品なのか見極める必要があります。

もし値下げ効果で人気が出て購入が殺到した場合でも、生産が追いつかず売り切れになったり、店内のオペレーションが雑になってしまっては本末転倒であり、せっかく来てくれたお客さまに「もう今後はやめておこう」と思われてしまうかもしれません。

成功ポイント3:値下げに対する顧客の反応を想定する

値下げをしても消費者の心が動かなければ意味がありません。商品を買って欲しいその顧客は値下げに敏感な層なのか、価格も含めて自社商品にブランド価値を感じてくれている層なのか、事前にしっかりと調査・分析したうえで把握しておきたいところです。

ブランド価値やイメージを重要視しているとあるコーヒーチェーンでは、直接的な値下げではなく「1つ買ったらもう1つ同じものをプレゼント」というキャンペーンを打ち出していました。時期に合わせて「大切な人と一緒に楽しんで」といったストーリー性もうまく組み込み、単に「半額セール!」ではなく高級感や特別感は残したままお得だと思ってもらうことに成功したケースです。

値下げ前に利益やブランド価値に与える影響を熟考する

値下げには綿密な戦略が必要です。まずは先述のポイントや商品の特性、他社の状況など様々なことを考慮に入れたうえで、本当にそれが最も有効な手段なのか念入りに検討しましょう。そして値下げをするのであれば、自社の利益やブランド価値を損なわない方法をしっかりと見極めることも大切です。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社ZUU)

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