ページの先頭です
メニュー

メニュー

閉じる
本文の先頭です

まだ間に合う! 「2024年問題」対応の第一歩

掲載日:2023年12月1日事業戦略

キービジュアル

「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって、トラックドライバーの時間外労働に対する管理が厳格化されることで生じる様々な問題の総称のことです。具体的には、時間外労働の上限規制が導入され、ドライバー1人あたりの走行距離が短くなることで、長距離でモノを運ぶことが困難になると予測されています。
この問題がコストの上昇など、物流業界に与えるインパクトは決して小さくありません。本稿では、物流業を営む企業だけでなく、物流サービスを利用している荷主企業にどういった影響があるのか、その対策についても整理していきます。

来たる「物流の停滞」に、業界はどう備える?

2024年4月以降、トラックドライバーの時間外労働に対する上限規制が適用されます。
年間960時間が残業時間の上限となり、1ヵ月あたりに直すと80時間しか認められなくなるのです。この制度は、既に多くの業種で導入されていますが、自動車運転の業務など一部業種については、適用が猶予されていました。
しかし2024年4月からは、これまで残業時間の規制がなかった運送業界も、大きな変革が迫られるわけです。

こういった改革は、ドライバーの労働環境を改善するためにも欠かせません。
しかし、物流業界にとっては人手不足や賃金上昇による中小企業の負担増、売上減少、ドライバーの収入減少など複合的な課題が発生するとともに、輸送量の大幅な減少が懸念されています。

ドライバーの労働時間が削減されることで生じる問題の1つは物流の停滞です。
近年ECサイトが拡大し、物流量は増加傾向にあります。この状況に加え、業界としても人手不足が問題視される中で、物流が大きく滞る恐れが出てくるのです。トラックドライバーに残業規制が適用されると、これまでの物流の3割以上を輸送できなくなる可能性があります。

このような変化に備えて、物流企業ではどのような対策を行うべきなのでしょうか。

1.運行の効率化への対策
ドライバーが残業できる時間が短くなるということは、それだけ短時間で効率の良い輸送を行わなければならないということになります。言い換えると、それを実現するための対策は、業務効率化や生産性の向上にもつながるのです。

配送を効率化するために、運航計画の最適化も今後導入が進むことになるでしょう。
車両にGPSやセンサーなどのデバイスを搭載し、運行状況をリアルタイムに把握することで配送先や到着時刻、積み荷などの条件から効率的な配送ルートを割り出します。そのうえで配車を行える環境を構築することで、配送の無駄を抑えることにつながります。こういったDXを活用した運行の効率化を図る必要があるのです。

2.荷待ち時間、荷役時間の削減
荷待ち時間は、ドライバーの拘束時間を増やす大きな問題です。
荷主などの都合で発生する荷待ち時間を短縮して、その分運行にあてることができれば、これまでよりも長距離の輸送をすることが可能となります。「先着順の荷下ろしを避けて予約制にする」「時間を柔軟に指定できるようにする」といった対策を荷主側に提案し、理解を得ることが必要です。
また、荷物の積み下ろしをする荷役時間も、ドライバーの拘束時間を増やし、負担になっています。
そもそも、荷物の積み下ろしは輸送に付随する業務でしかなく、ドライバーが担うべき業務ではないのです。荷受け先の企業との連携、新たな荷役機械の導入など、荷役にかかる時間を短縮する施策は効率化にも直結していきます。

3.ドライバーの待遇改善
残業時間が規制されることで給与が減ると、手取り収入を増やすために転職を検討するドライバーが出てくることが予想されます。この問題を解決する方法としては、根本的なドライバーの待遇改善を進める必要があるのです。

2024年4月以降、月60時間超の残業時の割増賃金を支払っても、なお手取りが下がってしまうのであれば、企業として業務効率化によるコスト削減や売上アップ分を、ドライバーに還元する検討が求められます。
それでも物流企業だけでドライバーの待遇改善を図ることができない場合には、運賃引き上げを行わざるを得ません。事業継続のために必要であることを荷主に説明し、理解を得たうえで実行しましょう。

物流サービスの利用企業が、まず取りかかるべきこと

2024年問題に対応するために、日頃から物流サービスを利用している荷主企業が取れる対策には、どのようなものがあるのでしょうか。3つの観点から考えていきます。

1.物流の効率化
対策として低コストで実行できて効果的なのが、物流の効率化を図ることです。
設備投資をするなど大規模な改革を行わなくても一つひとつの業務を見直していくことでより効率良く、ドライバーに負担がかからない輸送を実現できます。

  • 配送ルートをゼロベースで見直して最適化する
  • 納品スケジュールを洗い出し、無駄をなくす
  • 物流量の波をなくして平準化する
  • 各拠点の在庫量をリアルタイムで可視化して無駄な輸送をなくす

当たり前のように行っている現行の運用にも、「どこかに改善すべき点はないか」と再確認することがポイントとなります。

2.共同輸送を活用
トラックの積載量に余裕があるにもかかわらず、1社の荷物だけで運行するのは効率が良くありません。行き先が同じであれば、複数の荷主の荷物を1台のトラックに乗せて運ぶことで、運送(運輸効率より一般的では?)効率が大幅に向上します。
荷主がこのような柔軟な輸送体制に理解を示すことで、効率の良い物流網を構築することが可能になるのです。
輸送の効率化を図りたい荷主企業同士がマッチングできるプラットフォーム、共同輸送マッチングサービスを活用しても良いでしょう。

3.トラック輸送に頼らない「モーダルシフト」への転換
物流をトラック輸送だけに頼るのではなく、一部を列車や船などに置き換えて輸送する「モーダルシフト」に転換するのも効果的です。
モーダルシフトを導入することで、ドライバーが長距離を移動する必要がなくなり、労働環境の改善やドライバー不足への対策につながります。列車や船はトラックよりも大量の荷物を積めることから、大量輸送にも適していて、長距離輸送をする場合はコストの削減が可能になります。

これらの対策は、物流の効率化のためでもありますが、長い目で考えると企業の収益構造の改善が継続的に行える体制にもつながるのです。

また、国土交通省では、2024年問題の荷受け企業を対象に、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)」によって、流通業務の効率化を図る事業へ支援を行っています。

運輸局への相談を行い、効率化につながる事業計画を作成して申請し、審査に通ると、「総合効率化計画認定」を受けられ、この認定によって、営業倉庫の法人税・固定資産税・都市計画税の減免やモーダルシフトといった取り組みを行った際の経費等の補助などを検討してみてはいかがでしょうか。

おわりに

2024年問題に対しては、物流業と物流サービスを利用している荷主企業が手を取り合って、効率的な物流網の構築に取り組む必要があります。トラックドライバーの労働環境が良くない中で、これまでのような輸送体制を維持することは望ましいものではありません。物流側だけでなく、荷主企業も主体的に対策を講じて、両者がそれぞれの立場から物流の最適化をめざしていくことが重要となるでしょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

その他の最新記事

ページの先頭へ