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悩みが消える!“歴史・偉人“の言葉~伊達政宗の巻~

掲載日:2023年10月3日事業戦略

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「独眼竜」の異名を持つ伊達政宗は、好きな戦国武将ランキングで上位にランクインすることが多い、人気のある武将です。波乱万丈の人生を送った政宗には、魅力的な名言や逸話、破天荒で大胆なエピソードが残されています。その一方で、繊細で計算高い一面も持ち合わせていました。
本稿では、政宗の言葉やエピソードを紐解き、現代の荒波にもまれるビジネスパーソンが生き残る術を探っていきます。

内気な少年は、23歳で東北の覇者に

1567年、伊達政宗は出羽国(現・山形県)の米沢城主・輝宗の長男として生まれました。
「梵天丸(ぼんてんまる)」と名乗っていた幼少期に天然痘を患い、右目の視力を失ったことが、「独眼竜」と呼ばれる所以ですが、これがコンプレックスとなり、幼いころの政宗はとても内気な性格だったといいます。

そんな政宗も、父・輝宗が招いた美濃の高僧・虎哉宗乙(こさいそういつ)から武士としての心得や仏教、漢学、文学など学問の指導を受けることで変わっていきました。
のちに政宗は、教養ある武将として諸大名や公家などから高い評価を受けるようになりますが、そのベースはこのころに養われたようです。

その後、15歳で初陣、18歳で伊達家の17代目当主となった政宗は、合戦で周辺の諸将を次々と撃ち破り、わずか23歳で東北地方の大半を支配下に置くという華々しい経歴を築きあげていきます。
その成功に活きているのが、様々な智慧を身に付けた政宗の処世術なのです。

しかし、この間、不幸な出来事もありました。
1585年、畠山義継との戦いで、政宗は父・輝宗を拉致されてしまったのです。義継は討ち取ったものの、結果的に父を死に追いやってしまいます。また母・保春院による政宗暗殺未遂事件も起きました(諸説あり)。

1590年には豊臣秀吉の命で小田原の北条征伐に参陣、死装束で秀吉に拝謁したことは有名なエピソードです。
秀吉に臣従した政宗は文禄・慶長の役にも参陣します。
その際に政宗は、黒と金を基調とした装束をまとい、足軽の装束や馬の鞍までも派手で奇抜な出で立ちであったため、行列の見物人たちを大いに驚かせました。これが、「伊達者」という言葉の起源になったともいわれています。

1603年に政宗は居城を岩出山城から仙台城に移し、仙台藩初代藩主となります。
その後、1614年から翌年にかけて起こった大坂の陣が、政宗最後の出陣となりました。1636年、政宗は江戸の仙台藩邸で亡くなります。70歳でした。

行き過ぎを戒め、バランスを重視

政宗が座右の銘として大切にしていたといわれるのが「五常訓」で、儒教の五徳(仁・義・礼・智・信)に基づいています。

  1. 1.仁に過ぎれば弱くなる
  2. 2.義に過ぎれば固くなる
  3. 3.礼に過ぎれば諂(へつら)いになる
  4. 4.智に過ぎれば嘘をつく
  5. 5.信に過ぎれば損をする

いずれも、度がすぎるとかえって自分にとって良くないということです。
それぞれの意味を紐解いていきましょう。

1は、人に優しくしすぎると、意見も言えないほどに弱くなるということ。
他人への思いやりは大切ですが、そればかりでは、その人に言うべきことも言えなくなってしまいます。
相手を思えばこそ、ときには心を鬼にして苦言を呈することも必要であり、これはビジネスの場でも同様でしょう。

2では、自分の正義を貫きすぎると、融通が利かなくなることを表しています。
自分が正しいと信じることを頑なに守り通そうとすると、他人の意見にも耳を貸さず、柔軟な対応ができなくなるでしょう。
取引先や上司、部下といい関係を築くには、ときに相手の話に耳を傾けることも重要なのです。

3は礼儀正しさがすぎると、相手に媚びているように見え、信用を失うということです。
「慇懃無礼」という言葉があるように、礼儀正しさも度を超すとかえって嫌味やお世辞のように受け取られかねず、相手に失礼にあたることもあるでしょう。

4は、賢くなりすぎると、嘘もうまくなってしまうことを戒めています。
知識や知恵は必要ですが、それによって自己の利益のために事実をゆがめてしまったり、策に溺れてしまったりすることを指しています。

5では、人を信じすぎて誠実になりすぎると、自分が損をすることを注意するものです。
人を信じるあまりに相手の言うことを妄信してしまい、自身の判断力を失ってしまうことがあります。
ビジネスの場においても、言われたことをただ実行するばかりでなく、しっかりと自分で考えなければならない場面も訪れるでしょう。

この五常訓のベースとなっている五徳、仁・義・礼・智・信の5つは、どれも必要なことです。
しかし、それが行きすぎれば、自身にとって害になることがあります。大切なことは、それぞれのバランスです。

また、どんなに「智」が優れていても、「信」がなければ人はついてきませんし、「礼」に欠ける人は「智」や「仁」に優れていても、「信」を得ることは難しいでしょう。
これら5つの相互バランスも、非常に重要だといえます。政宗は、そのことをよく理解していたのです。

ビジネスシーンにおいても人間関係においても、これら5つを日常的にバランス良く持っていることが肝要であり、そういう人が物事をうまく進められるのかもしれません。

「この世に招かれた客」だと考えて、現実を受け入れる

高い教養を身に付け、乱世を生き抜いた政宗は多くの名言を残しています。
その1つが、「この世に客に来たと思えば何の苦もなし」という言葉。

政宗は幼いころに片目の視力を失いました。さらに、合戦のさなかに拉致された父を死なせてしまい、実母による暗殺計画まで起こるという波乱の人生を歩んでいます。
一時は天下を狙ったこともある政宗ですが、それは叶わず、結果的に豊臣秀吉や徳川家康に臣従していました。
政宗自身としては望み通りにならない人生だったのかもしれません。

同じようなことは、現代を生きる私たちにも往々にしてあるでしょう。そして、それに対して怒りや焦り、不安を覚えることもあるはずです。
しかし、それは物事を「自分本位」で考える姿勢に端を発する場合もあるのです。

例えば、誰かが昇進すればその一方で昇進ができない人がいます。
自分の意見ではなく、他の人の意見が採用されることもあるでしょう。
試験に合格する人がいれば、不合格になる人もいます。世の中には、思い通りにならないことがたくさんあるのです。

それらを自分本位で考えていると、極端な怒りや理不尽さを覚え、望ましくない行動に出てしまうこともあります。
世の中を自分中心で見るのではなく、「自分はこの世に招かれた客だ」と思うことができれば、それらの感情は薄れ、現実を素直に受け入れることができる、ルールやマナーを守った、客人らしい礼節ある行動ができるようになる。
政宗の言葉は、そのことを私たちに教えてくれているのかもしれません。

相手好みのパフォーマンスで、危機を乗り切る

政宗にはよく知られたエピソードがいくつかあります。
その1つが1590年の、豊臣秀吉による小田原・北条氏征伐で起きた出来事でしょう。

秀吉は政宗に参陣を命じていましたが、当時の伊達氏は北条氏と同盟関係にありました。
母・保春院による暗殺未遂事件もあって政宗は遅れて参陣することになり、秀吉を激怒させます。

秀吉への謁見は許されず、箱根に幽閉された政宗は「千利休殿に茶の湯の手ほどきを受けたい」と申し出ます。
これを聞いた秀吉は、自身が茶の湯好きだったこともあり、政宗に大変興味を抱き、謁見が叶うことになりました。

その際、政宗は髷を落とし、死装束で秀吉の前に現れ、遅参を詫びます。
この政宗のパフォーマンスは、派手好みの秀吉に気に入られ、遅参のことは許されたわけです。

また同年に発生した葛西大崎一揆では、政宗がそれを扇動したという疑いをかけられてしまいます。
このときも政宗は、死装束に黄金の磔柱(十字架)を掲げて、秀吉のもとに弁明に行き、結果的に疑いが晴れることになりました。

政宗は秀吉が「派手好み」「茶の湯好き」だということを知っており、これらの奇策に出たのです。
政宗が茶の湯に造詣が深かったことも、秀吉の大いに気に入るところとなったのでしょう。

初対面の相手であっても共通の話題があれば場がなごみ、好みの手土産を持参すれば喜ばれます。
そのために、私たちは対面前の情報収集に努めるでしょう。政宗は、それを徹底して実行していたのです。
秀吉について事前にしっかりと情報収集をし、その好みに合わせたパフォーマンスで難を逃れたのは、まさにビジネスパーソンの鑑といえるかもしれません。

おわりに

政宗は死を前にして、こんな辞世の句を遺しています。
「曇りなき 心の月を 先立てて 浮世の闇を 照らしてぞ行く」
これを現代語に訳すと、「何も見えない闇のような時代で、月明かりを頼るように自分の信じた道をただひたすらに歩んできたのだ」となります。

政宗の生きた時代は先の見えない乱世です。予想だにしないことが起き、明日の命も分からないのが戦国の世でした。
テクノロジーの進歩がめざましく、大量の情報が氾濫し、未来の予測が困難なVUCAと呼ばれる現代も同様かもしれません。
そんな時代だからこそ、政宗のように自身の信念が「道しるべ」になるのでしょう。
そして、何が起きても「この世の客」だと考えることは、不要なストレスやプレッシャーから解放されるヒントになりそうです。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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