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潰れそうで潰れない店の秘密を探る!

掲載日:2019年2月18日事業戦略

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街を歩いていると、中高年の女性をターゲットとしたブティックや陳列数が豊富とは言いがたい小さな自転車店、その他には金物店や和菓子店等、古くから変わらず営業を続けているお店に出会うことはありませんか。いずれも「単価が低い」「いきなり市場が広がることがない」といった利益を出しづらい商品を扱っているうえ、宣伝力のある大型店の進出や安い通販商品等の影響があるにも関わらず、事業を継続できているのです。本稿では、そんなお店の経営の秘密を探っていきます。

独特なビジネスモデル

潰れないということは、どこかにその商品やサービスを必要とするお客さまがいて、売り上げがあるということ。つまり、その商品やサービスが他とは違うため、事業が継続できていると考えられます。こうしたビジネスモデルは、「ロングテール戦略」と呼ばれています。

ロングテール戦略とは

ロングテール戦略とは、他店と違う商品やサービスを扱うことですが、もう少し詳しく言えば、「世の中の人気商品に頼らず、特定のニーズしかなく競争が少ないニッチな商品の販売でその小規模市場を独占する、または大量販売で売り上げを確保する方法」です。実は大手ネットショッピングサイトも、販売数は少なくても必要な人が必ずいる商品を多数扱っていることで成功していると言われています。同じようなことが、潰れそうで潰れない店でも起きています。ただ、こうした実店舗の状況を調べていくと、お客さまは1年間でせいぜい数十人ですが、その方たちだけで全体の利益の90%以上を占めるという店が多く見られます。つまり、それだけ「客単価」を高める方法をとっていると言えます。

商品が高くても選ばれるのはなぜ

客単価が高い、つまり商品が高いという状況でも、なぜ、お客さまが来てくれるのでしょうか。その背景の一つには、競争相手が少ないことが挙げられます。例えば、東京都内のとある商店街にある帽子店は、品ぞろえが多いことで有名で、そのサービスのレベルも含め、「関東で3店しかない」とも言われています。珍しい商品も多いことから、北海道等の遠方からもマニアが訪れるそうです。来店者数は、計算すると1日たったの3人しかいないのですが、マニアは多少高くても商品を買ってくれます。平均単価が約3万円の帽子が確実に売れるというのは驚きです。

また、この店が選ばれるもう一つの理由は、ここでしか受けられないサービス、「帽子のサイズ調整やかぶり方の指導」が受けられることが挙げられます。最近の既製品の帽子はフリーサイズが多く、「1センチ単位でサイズを合わせ、かぶり方を決める必要がある」という帽子の本来のニーズを満たしていません。フィッティングが出来る知識をもった店員と、お客さまの状況に応じて大量の在庫が必要になることから、消費型の大型店には真似ができないのです。

有料サービスで客単価を上げる

ニッチな市場へ独自の商品を提供しているお店の例では、他にも福岡県で昭和30年代から続いている希少な「ボタン専門店」があります。在庫は常時1万種類以上あり、中には数十年前の貴重なボタンもあるため、マニア心をくすぐられて購入する人や、遠方からわざわざ買いにくる人が多数いるそうです。ボタンということで帽子ほど商品単価は高くありませんが、その利益を補っているのが、ボタンホールを作る「穴かがり」等の特殊な技術の提供です。お客さまが多く通う洋裁教室等を訪問し、一般の人には難しい作業を請け負うことで、商品販売以上の利益を生んでいます。

先述のブティックも、お茶を出す等して長期的につき合える顧客を作る一方、ズボン等を購入した時の裾上げや、破れた服の修理、サイズ調整等の「お直し」を請け負うことで、利益を確保しています。お客さまは他の専門業者に頼む手間が省けることから、ワンストップで用件が済むのなら多少割高になってもと思うようです。自転車店の場合は、パンク等の修理サービスがこれに当たります。穴を塞ぐ材料と接着剤の原価はわずか数十円ですが、おおよそ500円から1,000円の修理代を徴収できます。最近はパンクだけでなく、電動アシスト自転車の定期点検や整備の依頼も増えているようです。作業自体は数分で終わるのに対し、1台で数千円の利益が上がります。

限られた顧客に高利益率の商品・サービスを提供

ここまでは、市場が小さいニッチな商品やサービスを提供するお店を見てきましたが、逆に市場が大きい商品を扱っているのにもかかわらず、意図的に顧客数を狭めて成功した例を紹介しましょう。

家電量販店が台頭してきた20年前、安売りビジネスに追随することをやめ、その後、21期連続で黒字を達成した小さな電気店があります。東京郊外にあるこの店では、約3万世帯あった顧客を約1万世帯に減らし、値引きしないかわりに十分なサービスを提供する商売に切り替えたのです。顧客の数は、営業担当者1人当たりが、1ヵ月に1回訪問することが出来る数である、約400世帯を基準に考えました。ただ単に顧客を減らすわけではなく、購買頻度と累計購入額のデータを基に絞り込んで上客を割り出し、動画や写真を使って、これまで以上に丁寧に接客することを可能にしたのです。

そうした接客により、家族構成や趣味等の情報を詳しく収集できれば、お客さまの好みに合った新しい商品の提案ができますし、例えば、進学で一人暮らしを始める子供にあつらえる家電一式を請け負う等のケースもでてくるでしょう。こうして確実に商品を買ってもらうことができれば、お客さまの数が減ってもむしろ利益率は増加します。

また、この店では「無料会員制度」を作り、「即日訪問修理」「修理中の代替品提供」「リモコンの電池交換」といった無期限の無料サービスを揃えました。こうしたサービスを通じて訪問の機会をさらに増やし、直接家電製品の調子を確認できれば、提案のタイミングを逃すこともなくなります。その他にも、お客さまを毎週末に店頭で実施するイベントに招待し、鹿肉やサンマを焼いて振る舞ったり、景品をプレゼントしたりしているそうです。こうして店の「ファン」を獲得しているというわけです。

人口減少は避けられない日本。顧客の絶対数が少なくとも商売が回る仕組みを構築することは、今後ますます重要になってくるはずです。

  • *本コンテンツは株式会社USENが運営するサイト「canaeru(https://canaeru.usen.com/)」内の記事「潰れそうで潰れない店の秘密を探る!(https://canaeru.usen.com/diy/p385/)」を一部加筆・変更したものです。
    上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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