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経営者こそ、率先して「リスキリング」せよ

掲載日:2023年8月21日事業戦略

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近年、ビジネス環境が急速に変化しています。変わりゆく社会の中でビジネスを成功させるには、経営者こそ、自身をアップデートすることが不可欠でしょう。「リスキリング」は、企業が組織の力を、ビジネスパーソンが個の力を強くしていく取り組みとして注目を浴びていますが、トップ自らも例に漏れず、新たなスキルを習得していく必要があるのです。
本稿では、経営者が特に習得すべきスキルとして、「デジタル」と「マーケティング」に焦点をあてて、その意義や効果に迫ります。

トップが学び直すべき、2つのハードスキル

リスキリングは企業が社員に対して、その機会を提供するもの、あるいは、ビジネスパーソンが自身で取り組み、個としての力をより強固なものへと成長させていくもの、と捉えている経営者も少なくないでしょう。
もちろん、そうした側面があることも間違いではなく、リスキリングは企業の生存と成長につながる重要な投資です。

しかし、経営者も学び直すことで、社会の進展に対応し、より適切な戦略を立てることができるようになるはずです。
リスキリングは、経営者と社員がともに成長するための取り組みであるべきなのです。

では、なぜ経営者がデジタルとマーケティングに関するリスキリングを行うべきなのか。
それは、変動性が高く不確実なビジネス環境において、重要となる考え方や変化に対応するスキルを得ることができるからです。

企業のトップがリスキリングを図ることの効果は、経営者自身だけでなく、企業全体に及びます。
経営者がデジタルの知見を深めることで、企業全体のDXをより効果的に推進することができるでしょう。
これは、新たなビジネスモデルの開発や、効率的な業務遂行のためのシステム導入など、具体的な形で現れます。

もはや当たり前のように現代社会で企業に求められるDXは、ビジネスプロセスの変革や他社への優位性確立、顧客とのコミュニケーション強化などをめざすもの。
その舵取りをすべき経営者こそ、デジタルの意味と可能性を理解したうえで、戦略を立てる必要があるわけです。

加えて、マーケティングに関する知見を持つことで、顧客のニーズを正確に把握し、それに応じた商品やサービスを提供することができるようになります。
顧客との関係を強化し、その満足度を高められれば、企業の売上に寄与していくのです。

また、現代社会において、生活者の行動様式や市場の動向は、加速度的に変わっているでしょう。
最新の潮流を把握しなければビジネスを成功させることが難しくなっているため、マーケティングの知識を学び、市場を精緻に把握することで的確な一手を紡ぎ出さなければなりません。
だからこそ、経営者に必要なスキルなのです。

社員に背中を見せて、自らが試金石となれ

経営者自身がリスキリングを行うことの意義は、戦略に資する知見を得る以外に、もう1つあります。
それは、トップが学び続ける姿勢を持つことで、社員も自己成長の重要性を認識し、自主的にスキルアップを図るようになっていくということです。

しかし、すべての企業で、リスキリングの環境が整っているわけではありません。
経営者が率先して自身の学び直しに取り組むことで、社員のリスキリングには何が必要なのか、どのようなサポートをするべきなのかが見えてきます。

前述したように、リスキリングは経営者と社員がともに成長していくための取り組みなので、そうした観点からも、大きな効果があるといえるのです。

さらにデジタルにおいては、実際に現場で手を動かす社員やその業務への理解が深まれば、大きな視点で描いた経営戦略を、社員一人ひとりの行動へと落とし込んでいくことも考えやすくなるでしょう。

「杓子定規にDXを推進しようとするけれど、それによって現場の工数が余計に増えた」
「作業における、どの部分をデジタル化すれば効率が良くなるのか、経営層は理解していない」

DXについては、こうした現場の不満が散見されます。

企業でデジタル化を進めていくのは、まずエンジニアやIT担当者です。
経営者はデジタルを学び直すことで、エンジニアの行動特性や必要性を理解することができますから、よりスムーズなコミュニケーションで、適切な施策を打ち出すことができるのではないでしょうか。

リスキリングにおける課題としては、テーマに対する苦手意識、特にデジタルに関しては、そうした感覚を持っている人が少なくないようです。
さらに、すぐには効果が出ない、利益に直結する取り組みではないことから、どの程度、投資すべきなのか、力を入れるべきなのか、その基準がわかりにくいということもあげられるでしょう。

リスキリングによって会社や事業の成長をめざすのであれば、企業が投資をして、最初のうちは自ら主導していかなければなりません。

これらの課題を解決するためにも、経営者がまずリスキリングを実践して、その効果を実感することが必要です。
そのうえで、取り組んだ内容や結果を全社的に共有すれば、それが社員たちのモチベーションにもつながるのではないでしょうか。

3種のプロセスで、会社を強く成長させる

さて、実際にリスキリングを行うにあたって、3つの種類があることも理解しておきましょう。
それは、「使いこなしのリスキリング」「変化創出のリスキリング」「仕事転換のリスキリング」です。

  • 引用:厚生労働省「第22回労働政策審議会労働政策基本部会」配布資料「リスキリングをめぐる内外の状況について(リクルートワークス研究所 主任研究員 大嶋寧子)」

●使いこなしのリスキリング
使いこなしのリスキリングは、ツールやシステムを効果的に活用するためのスキルを獲得するプロセスとなります。

DXが進む現代のビジネス環境では、様々なデジタルツールやソフトウェアが出てきているでしょう。
しかし、これらを単に導入するだけでは、効果を最大化することはできません。
適切に操作し、活用するためのスキルや知識を身に付けることが求められるわけです。

まずは、自身の業務領域に効果を発揮する最新のデジタルツールに対して、しっかりとアンテナを張っておくこと。
そして、その機能を細かく理解することで、最も適したものを導入する。

そのうえで使い方をマスターすれば、業務効率や生産性の向上に貢献することができます。
使い方に関しては、デジタルツールのベンダーに相談窓口やサポート体制があるはずですから、そうしたところを活用しましょう。

これは実際に現場で手を動かす社員が実践すべき内容であり、経営者が一つひとつのツールについて、その使い方を精緻にマスターする必要はありません。

ただし、導入を決定するのはトップでしょうから、全く知らないというのも困ります。
アンテナを張って、最新情報をインプットしておくことは必要でしょう。

●変化創出のリスキリング
変化創出のリスキリングは、ビジネス環境の変化や会社が生き残るための変革に対応するスキルを獲得するプロセスです。

生活者や市場の変容に伴い、企業はビジネスプロセスや経営戦略を見直す必要があります。
しかし、知識やスキルが古いままでは、新しい時代に対応することはできず、変革の実現が難しくなるでしょう。

トレンドのビジネステーマを取りあげた書籍を読むのもいいですし、講演や研修に足を運ぶという方法もあります。

まず経営者が実践し、おすすめの書籍を社内に共有したり、自身が読んだものを社員が自由に読めるよう、社内図書館のようなスペースを設けたりするのも効果的です。
もし、社員にも学んでほしい研修を見つけたら、企業として社内研修の機会を提供するのもいいでしょう。

●仕事転換のリスキリング
仕事転換のリスキリングは、将来の職務や仕事の変化に対応するために必要なスキルを獲得するプロセスです。

デジタル化や技術の進歩により、一部の職種や業務は自動化や効率化の影響を受けています。
このような変化により、社員は部署異動や兼任によって、新たな職務や仕事に移行する必要性が生じるかもしれません。
そのため、社員一人ひとりが自身のキャリアを保護・発展させることが求められるわけです。

これは働く環境を整える、ということにもつながりますので、企業として積極的に投資して、社員の多能工化や活躍の場を増やすサポートをすれば、生産性が向上し、社員の満足度もあがるでしょう。

これらの取り組みにより、企業としてビジネス環境に適応し、競争力を高めることができます。
経営者は、特に変化創出のリスキリングを自ら実践しながら、主体性を持って支援することで、社員の成長と能力開発は促進されていくでしょう。

おわりに

デジタル化の進展に対応し、企業が的確な経営戦略を立てるためにも、トップのリスキリングは必要不可欠です。
経営者自身が新しいスキルを持つことで、強い影響力を持って、企業をリードし続けることが可能となります。

その姿勢は社員にも好影響を及ぼし、組織を良い方向へと導いてくれることでしょう。
リスキリングは、経営者自身の成長だけでなく、会社全体の成長を支える重要な要素となるのです。

  • 参考文献:後藤宗明 著『自分のスキルをアップし続けるリスキリング』(日本能率協会マネジメントセンター)

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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