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「ChatGPT」で伸びる人、沈む人

掲載日:2023年6月1日事業戦略

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最近、話題の「ChatGPT」。これは、米国のAI開発企業・OpenAIが公開している対話型AIサービスのことです。高度なAIを無料で使えるということもあって注目されている一方で、人間の仕事が奪われるのではないかと危惧する声もあります。果たして、それは本当なのでしょうか。また、ビジネスシーンで活用できれば、大きな効果があるはずですが、こうした最先端のテクノロジーにも実は、得手不得手があるのです。
本稿では、まだまだ未知数なChatGPTに振り回されてしまわないために、知っておきたい概要といかし方を解説していきます。

最新テクノロジーの、苦手分野とは?

2022年11月のリリースからわずか5日間で100万ユーザーを達成し、翌年2月には1億ユーザーを突破した「ChatGPT」。
その最大の特徴は、人間のように自然な会話ができることです。
投げかけた問いに対して、AIが収集した情報を提供することはもちろん、課題や悩みへのアドバイスをしたり、小説等を創作したりすることもできます。

あっという間に注目されたChatGPTですが、興味を持っているのは個人だけではありません。
世界的なIT企業が、こぞって活用の動きを見せているのです。

例えば、Microsoftが提供する検索エンジン「Bing」には早速、ChatGPTが実装され、OpenAIに対して100億ドルの投資をすると発表しました。
GoogleもChatGPTの対抗サービスである、対話型AI「Bard」をリリースしています。

ただ、なんとなく革新的な技術であることは分かるけれど、実際にどんなことができるのかは、よく知らない、という方も少なくないでしょう。

そもそもChatGPTは、AIが自発的に学習して、アウトプットとして自然な文章を生成可能な、「GPT」という言語モデルをベースとしています。
インターネット上にある膨大な情報を学習し、複雑な語彙や表現でも理解できるのが特徴です。

さらに、過去の会話を記憶し、内容に誤りがあった場合はユーザーが訂正できるなど、より自然な会話に近付くための機能が搭載されています。
そのため、「東京でおすすめの観光地はどこですか?」といった簡単な質問や日常会話はもちろん、文章の要約や生成、翻訳、テキストやコードの添削、プログラミングに至るまで、できることは多岐にわたるのです。

一方で、ChatGPTには苦手なこともあります。
それは、学習していない内容について答えられないということ。

ところが、そうした内容を投げかけられても、「分からない」とは言いません。
自分の持っているデータを組み合わせて、とりあえずの答えを生成してしまいます。

そのため、もっともらしいことを回答しているように見えても、実は真っ赤な嘘だったという可能性もあるわけです。

また、明確な答えがない、感情にまつわる表現や計算も苦手だといわれます。
ChatGPTは言語モデルであるため、「2×3は?」という質問に「6」と正しい答えを導き出していたとしても、ChatGPTが実際に計算しているわけではなく、大量の学習データから答えを導き出しているに過ぎないのです。

人間は仕事を奪われてしまうのか

ChatGPTには得手不得手があり、必ずしも答えが正しいわけではないという側面があるものの、得意な能力をビジネスに活用できるのではないかという、期待は高まっています。

例えば、ChatGPTをいかせそうな業務の一つに、AIを搭載したチャットボットやバーチャルアシスタントがあげられるでしょう。
これは既に多くの企業が導入し、運用しているシステムで、顧客からの問い合わせや注文に対応することができます。
人間の負担軽減に役立っているほか、データ収集や分析、文章のスペルミスや文法の間違いを発見するといった分野でも、能力を遺憾なく発揮できそうです。

他方、新たなテクノロジーが登場すると「仕事を奪われてしまう」という懸念が持ちあがるのは世の常。
高度なAI技術によって仕事の一部が自動化、効率化されることで、将来的には不要となる職業が出てくることは、想像に容易いでしょう。

実は、OpenAIとペンシルベニア大学の研究者が、AIが仕事の自動化にどれだけ影響を与えるかを調べて発表しています。
影響を受ける可能性が高い職業は、作家、ウェブデザイナー、会計士、ジャーナリスト、法務秘書、通訳・翻訳等だそうです。
逆に、グラフィックデザイナー、検索マーケティングアナリスト、財務マネージャー等を、影響を受ける可能性が低い職業としてあげています。

とはいえ、もしAIで代替できる業務があったとしても、それによって人間は、AIで代替することができない複雑で、より高度な業務に注力できるようになるはずです。
また、AIと人間が協力することで、生産性を高めたり、新しいアイデアを創造したりすることも期待できます。

加えて、現段階ではChatGPTが導き出す答えが「間違った情報」ということも大いにあり得るため、人の手で内容をチェックしなくてはなりません。
そのため、タスクを短縮することができても、完全な自動化はまだ先のことになりそうです。

AIを使いこなすために求められる能力

将来的に自分の仕事がChatGPTに取って代わられてしまったとき、自身の新たな価値を見出せない“沈む人”にならないために必要なことは、ChatGPTの特性や強み、人間にしかできないことをしっかりと把握し、AIを有能な部下のように使いこなせるようになることでしょう。

そのための第一歩は、ChatGPTに的確な指示を出せるようになることではないでしょうか。
部下に仕事の指示をするときに、曖昧な内容だと混乱を招き、思った通りの結果が得られないでしょう。
それはChatGPTも同じです。
能力を遺憾なく発揮させるためには、AIに合わせた「指示力」を身に付ける必要があります。

具体的には、以下のようなポイントを押さえると良いでしょう。

  • やってほしいことを明確に指示する
  • 指示内容は、全体を通して矛盾がない
  • 求めるアウトプットの条件や期限などを明記する
  • 出されたアウトプットを鵜呑みにせず、正しいか検証する

AIを扱うからといって、特殊なスキルを求められているわけではなく、むしろ、物事を分解して論理的に考える能力や、伝えたいことを整理して分かりやすく伝える能力などは、ビジネスパーソンであれば備えておくべき基本的なものです。
こうした観点で改めて考えることは、自分のスキルが一定以上のレベルにあるかを見直す機会にもなるといえます。

次に、人間がAIに勝るものを理解し、その強みを磨くことも肝要です。

ChatGPTはAIによる分析ツールに過ぎないため、感情や志、人間性といったものは持ち合わせていません。

例えば、部下のモチベーションをあげる、強い意志と使命感を持って仕事に向き合って結果を出す、商談の場で相手を見ながら機微を捉え、相手の立場に立った提案をする、といったことは、現時点では人間の方がはるかに優れています。
これらも、前述した指示力と同様に、ChatGPTの存在に関わらず、ビジネスパーソンには必須のスキルでしょう。

もう一つ大切なことは、ChatGPTという新しいテクノロジーを過度に恐れず、その発展を楽しみながら特性を理解し、触れてみることです。
その際には、個人的に気になっていることを、気軽に聞いてみるくらいでいいでしょう。
「百聞は一見にしかず」で、実際に使ってみると、ChatGPTの得手不得手を肌感覚で理解できるのではないでしょうか。

ただし、社外秘の情報やプライバシーに関する内容を、むやみに入力することは避けた方がいいでしょう。
その点は、一般的なSNSやインターネットを利用するときと、変わりません。

これらの能力を再確認したうえで磨きをかけ、自ら使いこなしていくことができれば、ChatGPTに踊らされることなく、むしろ“伸びる人”になれるはずです。

おわりに

ビジネスでの活用が期待されているChatGPTは、登場から驚くべきスピードで社会に浸透していきました。
現在では、SNSを中心に、ChatGPTを使って大喜利のような楽しみ方をする人も増えています。
個人レベルでも、それだけ使いやすいということは、コツさえ覚えれば活用の幅は広がっていくでしょう。

実際、ビジネスシーンでも既に、チャットボットによる顧客とのコミュニケーションや、社内会議のサマリー作成などに利用している事例が出てきています。
テクノロジーの進歩を身近に捉え、AIを味方に付ける。これこそ、新しい時代を“伸びる人”として活躍していくビジネスパーソンの、秘訣なのです。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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