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“気鋭の起業家”は、いかに壁を乗り越える?

掲載日:2023年6月1日事業戦略

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斬新なアイデアを有していたり、優秀な仲間を集められるカリスマ性があったり、才気あふれる起業家であっても、興した事業を軌道に乗せるまでには、様々な課題をクリアしていく必要があるでしょう。お金や人、組織、事業など、スタートアップで頭を悩ませるテーマは多岐にわたります。
本稿では、会社を立ちあげて経営していくうえで立ちはだかる「起業の壁」を紐解き、それをどのように乗り越えていくのか解説します。

日本特有ともいえる「環境の壁」

そもそも我が国では、他の先進国に比べると、起業するという文化が、そこまで浸透していないといわれています。
米国・バブソン大学と英国・ロンドン大学ビジネススクールの起業研究者たちによる調査「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター」では、1999年にデータ収集を開始して以来、日本では、創業に向けた準備や、実際に会社を立ちあげるといった起業活動が、常に低いレベルにあると発表しているほどです。

例えば、米国に目を向けると、iPhoneを開発したApple社やFacebookを立ち上げたメタ・プラットフォームズなど、ベンチャー企業から世界的なイノベーション企業へと発展した会社が多数存在しています。
一方で、日本にも革新的な商品やサービスを打ち出している企業は存在しているものの、任天堂やソニーといった安定した大企業から生まれることが多い状況です。

その背景には、「起業する」という選択肢がいまだ少数派で、安定を望む職業選択が主流であるという環境があるのではないでしょうか。
仮に起業を思い立ったとしても、家族等、周囲の人から反対意見を受けて、諦めてしまうというケースも少なくありません。
起業することに対して、非常に大きなリスクを伴う、失敗したら二度と立ち直れないかのようなイメージを抱いている人も多いのかもしれません。

このような環境下で一歩踏み出すのは、かなり勇気のいる決断だといえます。
しかし、実際にはそうした一世一代の大勝負かのような起業ばかりではないのです。

もしも失敗のリスクが気になるのであれば、うまくいかなかった場合でも、損害を最小限に留めるような「小さな起業」から始めてみるのも良いでしょう。
例えば、最初から多額の借入をせずに、自己資金の範囲内でできることを考えたり、初期投資をできるだけ抑える形で事業を構築したり、最初から従業員を雇わずに、一人でできる規模感で始めたりして、徐々に拡大していくわけです。

また、各自治体や商工会議所では、起業に必要な経営知識や資金調達方法等を教える創業スクールのような支援や、交流会を行っています。
このようなサポート機関から情報を得ることや、同じような志をもつ仲間を作ることも、起業への足がかりを掴むための方法です。

知っておかなければならない「法律の壁」

創業するうえで生まれる法的課題も忘れてはいけません。
特に経営者として組織を作りあげていくためには、「民法」「会社法」「労働基準法」について把握しておく必要があります。
これらの内容すべてを把握するのは難しいと思いますが、どんな法律なのかと、それぞれの把握しておくべき規約についてはしっかりと確認しておきましょう。

  • 民法
    一般市民や法人の権利義務について定めた法律。
    商取引や金融取引、契約や財産の扱い方などについても定められているものです。
    契約後にトラブルが発生した場合、その契約が有効なのか、無効なのかの判断基準になります。
  • 会社法
    会社の設立や組織、運営、管理について定めた法律。
    株式会社や持分会社、社債、組織変更、合併、会社分割、株式交換および株式移転まで、規定事項は多岐にわたります。
  • 労働基準法
    労働者の権利を守るための法律。
    従業員を雇う場合に、把握しておくことが必要です。労働時間や休憩、賃金、休日、年次有給休暇、災害補償、就業規則などが定められています。

この他にも、外部の企業や人に仕事を依頼する、いわゆる外注をするのであれば「下請法」、書籍や映像、漫画やイラストなど、創作物を手がけるのなら「著作権法」なども把握しておいたほうが良いでしょう。

拡大するなら乗り越えるべき「資金の壁」

2006年に施行された会社法により、最低資本金の規制が撤廃され、出資金1円からでも会社設立が可能となりました。

ただ、技術開発や研究、物作り等の設備投資が必要な事業には、初期段階からまとまった資金を必要とする場合があります。
ここで立ちはだかるのが、資金調達の壁です。

スタートアップ時の資金調達においては、有望なベンチャービジネスに対して、株式取得等によって資金を提供する企業「ベンチャー・キャピタル」や、創業間もない企業へ資金を出資する個人の「エンジェル投資家」といった存在が大きな役割を持ちます。
ただ、日本ではそこまで普及しているとはいえず、資金調達先としてメインとなるのは銀行だといわれます。

銀行で融資を受ける際は、貸付の条件として、これまでの実績を求められることが多いです。
これは、これから起業する人にとって大きなハードルとなることもあります。

その壁を突破するためにできることとしては、創業融資に積極的な金融機関を探すと良いでしょう。

さらに、融資関係に詳しいコンサルタントや士業と顧問契約をして、ともに融資を受けるための戦略を練っていくのも一つの方法です。
専門家のアドバイスをもとに金融機関へしっかりと業況報告を行うことで、信頼関係を構築することが、融資に向けた第一歩となるでしょう。

スタートで悩む「集客の壁」

スタートアップの段階で、集客に悩む人は多いはずです。
まずもって大切なのは、自社の商品やサービスの特性を理解すること。

そんなの創業者が一番分かっているに決まっているだろうと、思う人もいるかもしれません。
ただ、重要なのは顧客心理を起点に考える、つまり「顧客の悩みを解決する」ために、自社の商品やサービスをどう活用できるのかという観点を持つことです。

そのために、ターゲットとなる顧客の意見を実際に聞いてみると良いでしょう。
商品を購入、もしくはサービスを利用してくれたお客さまには、その理由をヒアリングするのです。

ターゲットとなる顧客特性に近い人から意見をもらうのも、効果的です。
自社の商品やサービスについてリサーチし、問題を改善していくことで、その強みや販売方法も見えてきます。

次に大事なのが、情報を発信していくことです。
リサーチした顧客ターゲットの悩みに関する情報を、積極的に発信していくのです。

予算があれば広告を使っても構いませんが、今は、LINE、インスタグラム、Twitter、YouTubeといった様々なSNSや配信プラットフォームもあるので、これらを活用していきましょう。
可能であれば、メールアドレスを取得する、SNSでフォローしてもらう、YouTubeでチャンネル登録してもらうことも考えて、見込み客に商品やサービスをアピールしていくためにリーチできる環境を整えていくことも肝要です。

いずれ、ぶつかる「組織作りの壁」

起業したばかりの頃は、経営者を中心に数名の社員で運営するケースが多いため、コミュニケーションを取りやすく、共通した目的意識を持って同じ方向へ進んでいき、会社もうまく回っていくことが多いでしょう。

しかし、事業拡大とともにメンバー数が30人、50人、100人と増えていく中で、問題が発生するのです。
これを「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」と呼びます。

それでは「50人の壁」を乗り越えた、あるECサイトを運営する企業の例を見てみましょう。

この企業は、代表者が大学在学中に会社を立ちあげ、独自のネットサービス利用者が順調に増えて事業が拡大し、従業員が50人を超えたときに問題が起こりました。

従業員が増えていく中で創業メンバーとのコミュニケーションが薄くなり、苦楽をともにしてきた従業員が次々と辞職してしまったのです。

これは珍しいことではありません。
会社の規模が変われば、組織の規模や、やるべきことも変わっていきますから、その過程では起こりうる事象だといえます。
こうした壁を乗り越えるためには、早い段階から、従業員が増えても会社がうまく回るような組織体制を整えておくことです。

例えば、この会社のトップは現場のオペレーションが苦手でしたが、ビジョンやミッションを掲げ、マネジメントすることは得意としていました。
そこで、経営者として、中長期的にどのようなプロダクトを作っていくかの方向性を示すこと、そして従業員とのコミュニケーションを積極的に取り、その考えを浸透させることに徹したのです。
オペレーションに関しては、専門人材を立てることで円滑に組織が動くように体制を改善し、問題を解決に導きました。

事業が拡大していく段階では、こうした人材に関する問題も発生しやすいもの。
そのためにも初期の段階から、組織をどのような形にしていきたいのかを意識して、体制を整えていくことが大切です。

おわりに

起業したときに立ちはだかる様々な壁と、それを乗り越える手段について紹介してきました。
たくさんの解決すべき問題や、把握しておかなければならないことがあるように思うかもしれません。

たしかに、起業というのは一朝一夕にうまくいくものではないでしょう。
ただ、一つひとつ丁寧に向き合うことで、打開策は見つかります。
まずは起業に向かって、できることから行動し、一歩を踏み出すことが肝要です。

コロナ禍の苦境を乗り越えた5人の経営者

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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