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起業前に「ウェルビーイング経営」を学ぶ理由

掲載日:2023年5月1日事業戦略

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昨今、働き方改革等の潮流を意識して「ウェルビーイング経営」を取り入れる企業が増えています。
価値観が多様化し、SDGsが注目を集める中で、社員が健康的に高いモチベーションをもって業務を継続できるような環境つくりは、持続的な事業展開を志す起業家にとってマストの考え方といえるでしょう。
本稿では、ウェルビーイング経営が注目されている理由から、自社での実践法までを解説します

ステークホルダーが“幸せ”になれるように

起業をめざす人なら、「ウェルビーイング経営」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

そもそもウェルビーイング(Well–being)とはどういう意味なのでしょう。
これはWell(良い)とBeing(状態)を組み合わせた言葉で、「心身ともに健康で、かつ社会的にも満たされた状態」を意味する概念です。
幸せの感情を指す幸福(Happiness)と似ていますが、ウェルビーイングは満たされた状態がより持続することをさします。

この言葉が初めて登場したのは、WHO(世界保健機関)が設立された1946年。
設立者の1人である施思明(スーミン・スー)博士が、WHOの機関名や憲章をまとめる際、「予防医学(病気の予防・治療)」だけでなく、「健康促進」について盛り込むよう提案したからだといわれています。

ウェルビーイング経営とは、自社の利益だけでなく、企業の取引先や従業員、つまり経営に関わる関係者全員の幸せまで実現していく経営のことです。
背景には、SDGsやダイバーシティ、働き方改革、人材の流動化やコロナ以降のリモートワーク等、社会環境の大きな変化に合わせ、働き方を柔軟に見直す必要が出てきたという状況があります。

これまでにも「健康経営」(社員の健康状態の把握、管理、改善を目的とする経営)という考えはありましたが、今は健康状態の改善だけでは不十分だとされているのです。
健康はもちろん、目的意識を持って主体的に仕事に取り組み、人生の意義を見出してイキイキ暮らしていける状態にもっていくことが求められています。
つまりウェルビーイング経営は、事業の目的である収益の向上のために、従業員や取引先の幸福度の向上まで重視する対策ということなのです。

健康で多様な人間が、アイデアを呼び込む

具体的にウェルビーイング経営に成功している企業の中には、ウェルビーイングを推進する役職をつくったり、ガイドラインを策定したり、リスクを取る発言をしても非難や罰を受けない心理的安全性の確保を維持したり、業務時間の何%かを挑戦したいプロジェクトにあてて良いとする制度を設けたりしている例があります。

ウェルビーイング経営を取り入れた起業をめざすなら、まずは先進企業の取り組みをよく検証することが重要でしょう。

導入後、具体的にどのようなメリットがもたらされるかというと、「社員のモチベーションの向上」や「生産性の向上」をはじめ、「人材の確保(離職率の低下と採用率の向上)」や「企業価値の向上」等があげられます。
働き方改革の実施やワークライフバランス、職場の人間関係が改善されれば、社員の心身がともに健康になり、一人ひとりが主体性とやり甲斐を持って仕事に取り組むことができるということです。

従業員のウェルビーイングを重視していることを社内外に周知すれば、企業のイメージや価値の向上にも役立ち、採用面で有利になり、離職率の低下にもつながるでしょう。

また、心身ともに健康で多様な人材が集まるようになれば、多角的な発想や創造力、アイデアが集結するようになり、イノベーションの可能性も広がっていきます。
そうなれば、企業の生産力やパフォーマンスが上昇し、対外的な信頼度もアップ、更なる発展も期待できます。
昨今注目を集めるESG投資においても、支持を集められるようになるのではないでしょうか。

指針となる、幸福実現の要素とは?

ウェルビーイング経営には決められた定義があるわけではないので、どのように実現するべきか迷う人たちがいるかもしれません。
業態や職場、働き方等に照らし合わせると、企業によって様々な解釈をすることもできるので、そこが難しいともいえるでしょう。

判断をブレなくするには、取り組みの指針となる理論や、ウェルビーイングを構成している要素をしっかり把握しておく必要があります。
代表的な考え方を2つ紹介します。

一つは「PERMA(パーマ)」理論です。
これは「ポジティブ心理学」を提唱したアメリカの大学教授・セリグマン博士が構築した理論で、ウェルビーイングを実現するための5つの要素をまとめています。
以下、それぞれの頭文字をとって「PERMA」と呼んでいるのです。

P:Positive emotion
嬉しい、笑い、面白い、楽しい、感謝、感激、感動、愛、希望等
E:Engagement
物事への深い関り、没頭、突入、熱中、夢中、ワクワク等
R:Relationship
豊かな人間関係、つながり、協力、援助、与える、支える等
M:Meaning
人生の意味、目的、意義、長期的視点、社会貢献等
A:Accomplishment
仕事や目標の達成感、成果、自己効力等

PERMA理論では、これら5つの要素を満たしている人ほど幸福であるとしています。

もう一つが、米国の調査会社であるギャラップ社が提唱する5つの要素です。
同社は、世界150ヵ国で行った調査の結果、PERMAとは異なるウェルビーイングの要素を導き出しています。

  1. 1.Career Wellbeing
    仕事の幸福度。収入を得る仕事だけでなく、家事、育児、勉強等、生活も含んだ働き方や生き方。
  2. 2.Social Wellbeing
    人間関係の幸福度。家族や友人、同僚等と、信頼と愛情をもって良好な人間関係を築けているかどうか。
  3. 3.Financial Wellbeing
    経済的な幸福度。安定して収入を得る手段、納得し満足する生活が送れているか、資産管理できているか。
  4. 4.Physical Wellbeing
    心身の幸福度。自分がやりたいと思うような行動を、不自由なく実行できるエネルギーがある健康状態のこと。
  5. 5.Community Wellbeing
    地域社会やコミュニティの幸福度。地域、家族、職場、学校等所属コミュニティと深くつながっている感覚。

ギャラップ社の5つの要素を見ると「やりがいのある仕事」「家族・友人・同僚との関係が良好」「自己投資できる収入」「心身ともに健康な状態」「安心できるコミュニティへの所属」を追求することが、ウェルビーイング経営に近づく要素だということが分かります。

「何が変わるか」を社員と共有し進めていく

では、仕事の現場でどのようにウェルビーイングに向けたビジョンを周知していけば良いのでしょうか。
一例として、以下のような段階を意識し、実践していくことを推奨します。

  1. 1.目的を社内に提示し、自社に合わせてウェルビーイング経営を定義する。
  2. 2.定義や概念だけでなく、具体的な施策や制度、ルール・規定に落とし込む。
  3. 3.取り組みの結果を可視化(数値による成果観測を行う)。

マネジメント層が方向性を掲げるだけでは不十分、かつ意味がないので、具体的に何をするか、何が変わるかを現場の社員が納得することが重要です。
その点を意識しておくことで、次第に、社員の協働意識等の形で成果が現れてくるでしょう。

次に、会社として具体的にできる施策を考えてみましょう。
例えば、より良いコミュニケーションを取れる機会やスペースを設けたり、社員同士で利用できるコミュニケーションツールを導入したり等、忌憚なく意見を交換できるように環境を整備することがあげられます。
これらの施策により、仕事のモチベーション向上や、同僚との良好な関係性構築が期待できるでしょう。
また、社員間での意見交換がしやすくなったことで、会社における心理的安全性が向上したという例もあるのです。

また、健康診断や予防接種の他に、ストレスチェックや産業医への相談窓口、フィットネスの設置等も、心身の健康を保つために有効です。

労働環境の見直しについてはリモートワーク等の勤務形態をはじめ、有給休暇、育児休暇の取得がしやすい環境や社内風土の醸成等も必要だといえるでしょう。

おわりに

今後ウェルビーイングは、あらゆる会社経営における一つの大きな柱となっていくと予想されますが、社会状況の変化や時代により定義が変化していくこともありえます。
また、精神的な健康は、外部から改善結果が見えづらい現状もあります。
多様性を重んじる時代においては、人によって満たされる状態も様々なので、時代の変化や個人の事情も考慮しつつ、経営陣と現場が一体となり自社の社風に寄り添い、フレキシブルに対応していく必要があるでしょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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