起業・スタートアップセミナーとは?参加の意義や選び方、ピッチイベントとの違いを解説
掲載日:2025年7月1日起業準備

起業・スタートアップセミナーは、起業をめざす方やスタートアップとして事業を始めたばかりの方等を対象に、経営の基本や資金調達法、マーケティング等を学ぶイベントです。忙しい起業家でも参加しやすいように、経営者として求められる知識を短時間で効率良く学べます。
また、起業・スタートアップセミナーには、ただ知識や情報を学ぶだけにはとどまらないメリットが多数あります。
本記事では、起業・スタートアップセミナーの概要、参加の意義や選び方のポイントを紹介します。
目次
起業・スタートアップセミナーとは?
起業・スタートアップセミナーとは、これから創業したい方や創業から間もない方、事業の成長を目指している方等を対象に、起業やスタートアップに役立つ知識を学ぶ勉強会のことです。
公的機関から民間機関まで全国で数多くの団体によって開催されており、ほとんどのセミナーで参加資格は求められず、誰でも申し込めます。
起業やスタートアップでぶつかる課題はステージごとに異なることもあり、開催されるセミナーの内容は多岐にわたります。また、セミナーには同じ志を持つ仲間が集まるため、起業家同士の人脈づくりにも役立つでしょう。セミナーの中には、起業家同士の交流を目的としたものも多くあります。
セミナーとピッチイベントの違い
起業・スタートアップセミナーと同じく、起業家を対象としたイベントに「ピッチイベント」と呼ばれるものがあります。
ピッチイベントは、ご自身のアイデアやビジネスモデルを人前でプレゼンするイベントです。セミナーは座学で知識や情報を得る「受動的」なイベントであるのに対し、ピッチイベントはご自身の事業をアピールする「能動的」なイベントとなっています。
ピッチイベントに参加すると、参加者や観覧者の前でご自身のビジネスをアピールすることにより、事業の認知度を高めるのに役立ちます。さらに、主催者やゲストとして参加する公的機関や企業とつながりが生まれ、事業拡大の可能性を広げるチャンスとも期待されます。
起業・スタートアップセミナーの主催者
起業・スタートアップセミナーの主催者は、「公的機関」と「民間機関」の大きく2種類に分かれます。
公的機関による起業・スタートアップセミナー
日本政策金融公庫、中小企業基盤整備機構、地域の産業振興財団、商工会議所等、国や地域の公的機関が主催するセミナーです。「創業塾」や「創業セミナー」と呼ばれることが多く、開催予定は公的機関や自治体のウェブサイトで調べられます。
起業の促進や地域経済の活性化を目的にしたセミナーが多く、無料あるいはリーズナブルな料金で受講できるのが特徴です。参加条件も厳しくないため、誰でも利用しやすいことがメリットです。
民間機関による起業・スタートアップセミナー
公的機関によるセミナーが事業の運営にまつわる基本を学ぶものが多いのに対し、民間団体や企業が開催するセミナーでは、最新の市場動向や有名な起業家の成功体験談等、具体的で幅広いテーマをみつけやすいでしょう。
民間機関によるセミナーの開催はSNSやイベントプラットフォーム、企業の公式サイト等で調べることができます。
ただし、無料で参加できるセミナーも多いものの、高額な受講料を必要とするものも珍しくありません。
起業・スタートアップセミナーで身につくこと
起業・スタートアップセミナーを受講すると、以下のような起業に役立つ、経営や財務の基本・人材育成のノウハウ・マーケティングの知識が身につくとされています。
- 起業やスタートアップに必要な経営や財務の基本
- 事業計画の立て方やマーケティングの手法
- 起業・スタートアップ向けの資金調達法
ここでは、セミナーへの参加によって身につくとされる内容を詳しく紹介します。
起業やスタートアップに必要な経営や財務の基本
起業家となるには、事業を運営する経営者としての知識が不可欠です。どれだけ豊かなビジネスアイデアを持っていても、経営手腕が不足していると開業や事業の継続がむずかしくなるおそれもあります。
起業家として事業を執り行うには、開業に向けた実務の他、従業員を雇ったときの労務管理、決算書等の数値を読み解く力を身につけることも重要です。決算書等の数値は事業の成果を把握するだけではなく、適切な経営判断を下すのにも欠かせません。
必須となる知識をトータルで学ぶもの、テーマを細かく区切ったもの等、セミナーで取り扱う内容は様々です。ある程度の知識や経験をお持ちなら、ご自身に不足すると思われる内容のセミナーを選びましょう。
事業計画の立て方やマーケティングの手法
事業計画書はビジネスの方向性を示す重要な文書です。誰にでも伝わりやすいように明確に策定することで、ご自身のビジネスを外部に訴求しやすくなります。資金調達を容易にし、販路の拡大につながる等、事業の継続や成長の可能性を高めることになるでしょう。
事業計画書では、事業の優位性を示すにとどまらず、現状あるいは将来起こりうる課題とその解決方法について、論理的に伝えられるかどうかも重要です。また、ご自身の事業にはどれほどの需要があるかを踏まえて、ビジネスの独自性や魅力を分かりやすくプレゼンする資料となる等、マーケティング戦略の一環とも言えます。
このように、事業計画はマーケティング戦略にも繋がる重要な要素となるため、戦略的な事業計画の立て方を学べる、実践的なセミナーへの参加がおすすめです。特に、金融機関や投資家、先輩起業家等から、様々な視点からご自身の事業計画への意見を得られるセミナーであれば、事業の運営にも好影響を与えるでしょう。
関連記事:「事業計画書とは?主な記載項目と書き方のポイントを分かりやすく解説!」
起業・スタートアップ向けの資金調達法
起業やスタートアップを検討中の方がいざ開業する段階になると、事業をスタートさせるための資金を準備しなければなりません。
ひと口に資金調達と言っても、金融機関からの借入れ、ベンチャーキャピタルや個人投資家(エンジェル投資家)からの出資、クラウドファンディング等が挙げられるでしょう。そのため、資金調達法を理解したうえで、ご自身のビジネスに適した選択を判断するために、正しい知識を持っておくことが大切です。
セミナーによっては、公的機関による補助金・助成金の種類や利用要件、申請方法等について、詳しく学べるものもあります。
関連記事:「創業時に使える補助金は?助成金・支援金や申請時の注意点も解説」
起業・スタートアップセミナーへの参加メリット

起業・スタートアップセミナーへ参加するメリットは、次の点が挙げられます。
- 起業・スタートアップの志を持つ仲間と出会える
- プレゼンテーションのスキルを磨ける
- 公的機関のセミナーを受けると登録免許税が軽減される可能性がある
- 個別に相談できることが多い
起業・スタートアップの志を持つ仲間と出会える
起業・スタートアップセミナーへ参加する大きなメリットの一つが、同じ志を持つ仲間との出会いです。同じ立場の方が一堂に会するため、起業やスタートアップに役立つ情報を交換や、成功や失敗の経験共有等を通して、人脈づくりにつながる等の貴重な機会となるでしょう。
起業したばかりの頃は、事業の運営で悩めることも少なくありません。そんなときに、セミナーで出会った同じ起業家であれば、悩みを理解し合える点も大きなメリットと言えるでしょう。
終了後に参加者の交流会の時間を設けているセミナーや、交流そのものを目的にしたセミナーも数多くあります。
プレゼンテーションのスキルを磨ける
事業を効果的に伝えるためのプレゼンテーションスキルを学べるセミナーもあります。
どんなにすばらしいアイデアも、その魅力が相手に伝わらなければビジネスとして成立しません。プレゼンテーションスキルは、取引相手からの信頼を勝ち取り、資金調達の際にも重要な判断材料となる等、ビジネスで欠かせないスキルの一つです。
プレゼンテーションは伝える相手がいてこそ成り立つため、一人で学ぶより、講師や参加者とともに実践を重ねる方がより効率的に身につけられるでしょう。セミナーで習得したスキルを試す場として、先述したピッチイベントに参加するのもおすすめです。
公的機関のセミナーを受けると登録免許税が軽減される可能性がある
公的機関の起業・スタートアップセミナーを修了すると、開業時に支払う登録免許税が軽減される可能性があります。
産業競争力強化法に基づいて市区町村が策定した「創業支援等事業計画」において、「特定創業支援等事業」の一環として開催されたセミナーが対象です。対象のセミナーをすべて受講した後、法人登記の際、自治体から受け取った修了証明書を提出すると登録免許税が減免されます。
個別に相談できることが多い
開業・スタートアップセミナーには、セミナーの終わりに、主催者が参加者との個別相談に応じるものもあります。セミナーの内容をさらに深堀りしたい、ご自身のビジネスを具体的に相談したい等、幅広く対応してもらえるでしょう。
また、公的機関が開催している場合、申請可能な補助金や空き店舗の状況等、ビジネスの実務にまつわる情報を提供してもらえるセミナーもあります。
起業・スタートアップセミナーを選ぶポイント
起業・スタートアップセミナーは種類が豊富にあるため、ご自身の状況や興味に合わせて参加するセミナーを選びましょう。もし選び方に迷ったら、次のポイントを考慮して選ぶことをおすすめします。
①セミナーのテーマ
②事業内容
③講師やゲスト
④対象者
⑤開催期間
⑥開催場所
①セミナーのテーマ
起業家やスタートアップを対象としたセミナーといっても、そのテーマは、開業に必要な実務、経営のノウハウ、資金調達法、マーケティングの手法、先輩起業家の体験談、参加者の交流会等、テーマは様々でバラエティに富んでいます。
例えば、同じ「財務」がテーマのセミナーでも、確定申告等の初歩的な知識から、財務諸表の読み方に関する実践的な実務まで、セミナーによって難易度が異なります。
そのため、ご自身が今必要とするテーマや難易度を見極めたうえで、参加を決めるのがおすすめです。
②事業内容
業界ごとに、求められる資格や許認可、最新の動向、慣習等に違いがあります。起業やスタートアップの運営にあたっては、ご自身の事業が属する業界の知識を得ることも重要です。
そのため、対象となる業種をしぼった起業・スタートアップセミナーを受講すれば、起業前や起業直後だとうかがい知れない情報、業界特有の注意点等を効率良く知ることができるでしょう。
③講師やゲスト
起業・スタートアップセミナーには、セミナーごとのテーマに精通した講師やゲストが登壇します。
基本的に受動的な座学となるセミナーでは、講師やゲストは大きな存在です。中小企業診断士、税理士をはじめとする専門家、金融機関の融資担当者、ベンチャーキャピタル等の投資家、先輩起業家が、講師やゲストとして招かれることが多いでしょう。
セミナーの告知で講師やゲストの情報や実績を確認して、ご自身に必要な情報を得られるかを判断するようにしましょう。
現在の職業に関わらず、起業経験のある講師やゲストであれば、実体験に基づいたリアルな声を聞ける可能性が高まります。起業の成功体験等に興味があるなら、起業経験者かどうかにも注目しましょう。
④対象者
起業・スタートアップセミナーは、参加条件を満たしていれば、誰でも申し込めます。しかし、セミナーによっては、「女性限定」「25歳以下」「35歳以下」「起業を検討中の方」等、性別や年齢、状況で対象者を限定しているものもあるため注意しましょう。
なお、対象者を限定する理由には、属性ごとに想定される興味や関心、課題が変わること、セミナーの主催者が支援したい対象が異なること等が挙げられます。
⑤開催期間
起業・スタートアップセミナーは、1日限定の単発セミナーから数日間で修了する連続セミナーまで、開催期間の設定が様々です。起業やスタートアップの知識をひと通り身につけるために、数ヵ月等の長期にわたって開催されるセミナーもあります。
特定の知識や情報を入手したいなら単発セミナー、起業のノウハウを体系的に学びたいなら連続セミナーと、希望に応じて選びましょう。
⑥開催場所
起業・スタートアップセミナーは、コロナ禍を経て、オンライン開催が普及しています。オンラインセミナーは、ご自身のいる場所に関係なく、知りたい知識を学ぶのに便利です。
一方で、実際に会場へ出向いて参加する従来のセミナーに参加すれば、自治体や金融機関、企業等の人脈を広げたい、起業を志す仲間と出会いたいとの希望を満たす可能性があります。
特に起業する場所やスタートアップの地域がはっきりしている場合、そのエリアの商工会議所等が開催する公的機関のセミナーに参加すると、例えば申請可能な補助金のように、地域ならではのリアルな情報を得やすいでしょう。
起業・スタートアップセミナーへ参加するときの注意点
気になる起業・スタートアップセミナーをみつけたら、できるだけ早いタイミングで参加を申し込むのがおすすめです。
単発セミナーはその都度開催されますが、連続セミナーは参加のチャンスが年1回に限られる場合がほとんどです。定員に達し次第、先着順で締め切られるセミナーも多いため、機会を逃さないように注意が必要です。
また、公的機関によるセミナーには、エントリーシート等の書類提出を参加条件としているものもあるため、余裕をもって準備を始めておきましょう。
しかし、セミナーの中には「確実にもうかる」「簡単に稼げる」等と誇張した表現を使い、具体的な知識や情報の提供がないものも存在します。講師の実績や経歴、主催者の信頼性等から、信頼のおけるセミナーかどうかを判断することが大切です。
起業時の法人口座開設はみずほ銀行がおすすめ
起業・スタートアップセミナーへの参加を経て、ご自身の事業をスタートさせたら、法人口座の開設を検討しましょう。
法人口座の開設なら、創業期のビジネスにも手厚い支援を提供するみずほ銀行がおすすめです。
みずほ銀行は、インターネットバンキング「みずほビジネスWEB」、電子帳票に対応したみずほWEB帳票サービス、法人口座からのリアルタイム決済が可能なみずほビジネスデビットを無料付帯等、これから起業する法人にとって便利で役立つサービスや特典を多数提供しています。
また、みずほ銀行では、スタートアップ企業を支援する会費無料の会員制サービス「M’s Salon」を展開しており、必要不可欠な経営知識、事業遂行ノウハウ、ビジネス拡大機会、資金調達サポート等の提供により、スタートアップ企業の成長もサポートしています。
まとめ
起業・スタートアップセミナーとは、ご自身でビジネスを始めたい方や起業から間もない方等を対象に、起業にまつわる知識を学べるセミナーのことです。ピッチイベントがビジネスをアピールする能動的なイベントであるのに対し、セミナーは必要な知識を座学で学ぶ受動的なイベントとなっています。
起業家や起業家をめざす方を対象としたセミナーとは言え、起業に役立つ知識は多岐にわたるため、扱うテーマは幅広く、セミナーごとに大きな違いがあります。ご自身に必要な知識を得られる機会となるかどうか、判断のうえで参加しましょう。
起業・スタートアップセミナーは知識を得る場であるだけではなく、同志と出会える、人脈づくりに役立つ、ビジネスをアピールできる、相談できる、登録免許税の減免を受けられる等、様々なメリットが挙げられます。セミナーには参加条件がある場合もあるため、余裕をもって申し込んでおくと安心です。
起業する際には、起業家を支援するサービスの充実したみずほ銀行での法人口座開設がおすすめです。休日夜間いつでもお申込が可能で、原則として登記事項証明書・印鑑証明書の原本提出が不要です。
創業期をサポートする便利で役立つサービスや特典も提供していますので、ぜひみずほ銀行での法人口座開設をご検討ください。
監修者

内山 貴博
- 1級FP技能士
- CFP
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。