スタートアップ・エコシステムとは?その仕組みや起業家が参画するメリットを解説
掲載日:2025年7月1日起業準備

スタートアップ・エコシステムとは、スタートアップ企業の成長を組織的に支援する枠組みです。スタートアップの起業家・政府・自治体・大企業・投資家・研究機関等が集まり、ビジネスを成長させるための環境を指します。
日本は欧米に比べて開業率が低く、またユニコーン企業が少ないという課題を抱えています。そこで、政府は起業しやすい環境を整備し、スタートアップが地域経済の活性化やイノベーションの創出で重要な役割を果たすことが期待されています。
自治体によってはスタートアップ・エコシステムに力を入れているところもあります。起業を予定している方は、どのような支援を受けられるのかを知っておくと良いでしょう。
スタートアップ・エコシステムとは

スタートアップ・エコシステムとは、政府が企業の創設やイノベーションの促進を目的として進めている事業です。スタートアップ企業を、経済面だけでなく経営面や法務面など、様々な面からサポートする枠組みです。
政府がスタートアップ・エコシステムの整備を進めている理由は、生産性や国力を高め、経済の新陳代謝を図るためです。日本は開業率やユニコーン企業(評価額10億ドル超の未上場企業)の数が欧米に比べて低く、イノベーションが起こりづらい課題があります。
実際に、内閣府によると、日本の競争力は過去30年間で著しく低下しています。株式市場が成長していないだけでなく、実質賃金が増えていない状況が続いており、経済が停滞してしまっています。
そこで、政府は2022年を「スタートアップ創出元年」として位置づけ、戦後の創業期に次ぐ第二の創業ブームを実現するためにスタートアップ・エコシステムを始めました。
なお、スタートアップの成長は、既存の大企業にもメリットをもたらすと考えられています。大企業がスタートアップを買収(M&A)や、コラボレーションを通じて新技術を導入する「オープンイノベーション」を行うことで、持続的な成長につながると期待されています。
スタートアップ・エコシステムの構成要素
スタートアップが成長するためには、様々な面から企業経営を支援する仕組みが必要です。
エコシステムの構成要素には、起業家だけでなく資金を提供する投資家や金融機関、商品やサービスの開発を支援する研究機関等が含まれます。
起業家 |
新しいアイデアやビジネスモデルを持ち、付加価値を提供するために事業を立ち上げる |
---|---|
投資家 |
エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)等、スタートアップに資金を提供し、成長を支援する |
メンター (弁護士や中小企業診断士等) |
経験豊富な起業家や専門家が、スタートアップに対して知識や経験を共有し、アドバイスを行う |
大企業 |
インキュベーターやアクセラレーター、コワーキングスペース等、スタートアップの成長をサポートする施設やプログラムを提供する。認知度の向上を担うこともある |
行政機関 |
支援するための枠組みの立案や資金援助、規制緩和等を通じて、スタートアップの活動を促進する |
研究機関や教育機関 |
大学や研究所が、技術開発や人材育成を通じてスタートアップを支援する |
金融機関・保証協会 |
融資や保証を通じて資金調達をサポートする |
起業家 |
---|
新しいアイデアやビジネスモデルを持ち、付加価値を提供するために事業を立ち上げる |
投資家 |
エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)等、スタートアップに資金を提供し、成長を支援する |
メンター (弁護士や中小企業診断士等) |
経験豊富な起業家や専門家が、スタートアップに対して知識や経験を共有し、アドバイスを行う |
大企業 |
インキュベーターやアクセラレーター、コワーキングスペース等、スタートアップの成長をサポートする施設やプログラムを提供する。認知度の向上を担うこともある |
行政機関 |
支援するための枠組みの立案や資金援助、規制緩和等を通じて、スタートアップの活動を促進する |
研究機関や教育機関 |
大学や研究所が、技術開発や人材育成を通じてスタートアップを支援する |
金融機関・保証協会 |
融資や保証を通じて資金調達をサポートする |
様々な立場にある機関や個人がエコシステムに参画し、「人材」「資金」「サポート・インフラ(メンター、アクセラレレーター、インキュベーター)」「コミュニティ」面からスタートアップを支援しています。
幅広い支援を受けられ、「困ったときの相談相手がいる」状況なら、起業の心理的なハードルが下がるでしょう。
革新的なアイデアを持った優秀な人材が、新しいビジネスを立ち上げやすい環境を整えることで、多様な産業の発展や雇用創出が期待されています。
スタートアップ・エコシステムは単に起業家を支援するだけでなく、地域全体の経済成長や社会的課題の解決にも寄与する重要な仕組みといえるでしょう。
スタートアップ・エコシステムに参画するメリット
スタートアップ・エコシステムに参画することで、起業家は資金調達やノウハウを吸収できるメリットを受けられます。
具体的に、スタートアップ・エコシステムに参画するメリットを見ていきましょう。
資金調達の機会を得られる
スタートアップ・エコシステム内には、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家など、多様な投資家が存在します。また、金融機関も参画しているため、投資家や金融機関と関係を構築することで資金調達の機会を得られる可能性が生まれるでしょう。
政府が進めているスタートアップ支援では、投資家への税制優遇や債務保証等を通じて、スタートアップに資金が流れるような仕組みが構築されています。
スタートアップ・エコシステムへ参画すれば、自社の存在を認知してもらうきっかけを得られます。事業の成長段階やニーズに合わせた資金調達が可能となれば、イノベーションの促進につながるでしょう。
専門家からアドバイスを受けられる
スタートアップ・エコシステムの「メンター」として、弁護士や中小企業診断士、税理士等の専門家が参画しています。法務や経営、税務に関する悩みも、専門家と相談すればスムーズに解決できるでしょう。
また、先輩起業家や投資家に経営相談も可能です。ビジネスのリアルな成功談や失敗談を聞くことで、自分の事業に落とし込んで応用できるでしょう。
人脈やネットワークを形成できる
スタートアップ・エコシステム内では、他の起業家や先輩起業家との交流やビジネスマッチングが行われています。
様々なセミナーや交流会に参加することで、取引先や顧客の獲得、協業による事業の新規展開も期待できます。最新の業界動向や技術情報の共有を受けることで、ビジネス戦略の策定や市場対応力を磨く機会になるでしょう。
また、人脈やネットワークの形成・拡大により、新しいアイデアを得られる可能性があります。複数の起業家仲間やメンター等との交流を通じて、第三者から有益な意見やアドバイスをもらうことで、イノベーションのヒントを得られるかもしれません。
自治体が行うスタートアップ・エコシステムの例
スタートアップ・エコシステムは政府が進めている事業ですが、自治体が独自に行っている取組もあります。
スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム
東京都は、スタートアップを支援する取組として「スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム」を行っています。東京を中心とした東京圏一円のスタートアップ・エコシステムであり、東京圏の経済の持続的な発展をめざしています。
東京コンソーシアムの主な活動は以下の通りです。
支援 | 詳細 |
---|---|
スタートアップ成長支援・支援環境整備 |
「ディープ・エコシステム」と「グリーン・スタートアップ」の二つの枠組みを設け、公募・採択企業への伴走支援を行う |
共創プロジェクト組成支援 |
テーマ別にワーキンググループを組成し、テーマ軸からのプロジェクト化を模索。会員間のマッチングを行う |
コミュニティ醸成 |
会員限定のイベントやオープンなイベントの開催等、会員間のネットワーキング機会を提供 |
国内外の情報集積・発信 |
都や国の行うスタートアップ関連政策との連携、東京のスタートアップやスタートアップ・エコシステムの認知拡大を図る |
2025年2月現在、コンソーシアムの会員数は約900社です。スタートアップだけでなく、大企業・経済団体・金融機関・投資家・スタートアップ支援機関・大学・自治体等が参画し、スタートアップへの支援を行っています。
セミナーや交流会による情報収集だけでなく、会員限定のイベントやワーキンググループ、公募プログラム等の取組への参加も可能です。交流や相談できる場を求めている都内のスタートアップ企業は、参画を検討すると良いでしょう。
品川スタートアップエコシステム
東京都の品川区は独自に「品川スタートアップエコシステム」を構築し、アクセラレーションプログラムや女性創業、メンタリング等のスタートアップ支援に取り組んでいます。
東京コンソーシアムと同様に、大企業や投資家、金融機関など様々な立場にある法人や個人が参画し、スタートアップの成長を生み出す仕組みを構築しています。また、弁護士や中小企業診断士も参画しているため、専門的な相談も可能です。
交流会や「スタートアップ・エコシステム拠点都市連携イベント」等を開催しており、リレーション構築や新たなビジネス機会を獲得するサポートを受けられます。
今回は品川区の例を紹介しましたが、他の自治体でもスタートアップ・エコシステムを構築しているところがあるため、起業地のサポート内容を確認してみると良いでしょう。
スタートアップ企業は法人口座を開設すると便利
スタートアップ企業は、これまでの事業実績がないため、認知度が低い弱みがあります。スタートアップ・エコシステムへの参画を通じて、自社の認知度を高め、様々な立場にある人たちと交流を持つメリットは大きいでしょう。
法人を設立する際は、事業実態を明らかにするためにも、法人口座の開設がおすすめです。法人口座があることにより、きちんと運営されている法人であることをアピールできるため、取引の発展に寄与する可能性があります。
特にメガバンクは、信用力やブランド力が高く、経営サポートが充実している点が強みです。メガバンクで法人口座を開設することにより、事業の信頼を得られる可能性が高まるでしょう。
例えば、みずほ銀行の法人口座を開設すると、以下のように効率的な業務に役立つサービスをご利用いただけます。
- 便利なインターネットバンキング「みずほビジネスWEB」
- 法人口座からのリアルタイム決済が可能な「みずほビジネスデビット」
- 電子帳票に対応した「みずほWEB帳票サービス」
他にも、人材・スキルマッチングサービスや大企業とのビジネスマッチングイベント等のサービスも提供しています。
関連記事:「法人口座開設におすすめの金融機関は?選び方とメリット・デメリット」
まとめ
政府や自治体が進めているスタートアップ・エコシステムとは、スタートアップ企業を地域全体で支援するための枠組みです。起業家が少なく、スタートアップへの投資が少ない状況を受け、人材育成や経営支援、資金調達等のサポートを行っています。
起業家の方は、スタートアップ・エコシステムに参画することで、様々な経営支援を受けられます。また、人脈やネットワークの形成を通じて、自社の認知度を高めて事業の発展につながるチャンスを得られるでしょう。
また、エコシステムではスタートアップが融資や出資を受けやすくするためのサポートを行っているため、金融機関や投資家との接点を持てるメリットもあります。
スタートアップ企業を設立する際は、事業発展のサポートを受けられる銀行での法人口座開設がおすすめです。
みずほ銀行で法人口座を開設すると、「M’s Salon」への入会チャンスが生まれます。「M’s Salon」は、スタートアップ企業に対し、経営知識や事業遂行ノウハウ、ビジネス拡大機会等を提供する会員制サービスです。
企業同士のビジネスマッチングやベンチャーキャピタル(VC)とのマッチング、各種ベンチャー支援専門家等による講演等のイベントへご参加いただけるため、ぜひみずほ銀行での法人口座開設をご検討ください。
監修者

内山 貴博
- 1級FP技能士
- CFP
大学卒業後、証券会社の本社で社長室、証券業務部、企画グループで5年半勤務。その後FPとして独立。金融リテラシーが低く、資産運用に保守的と言われる日本人のお金に対する知識向上に寄与すべく、相談業務やセミナー、執筆等を行っている。
日本証券業協会主催「投資の日」イベントや金融庁主催シンポジウムで講師等を担当。
2018年に日本人の金融リテラシー向上のためのFPの役割について探求した論文を執筆。