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法人税の実効税率とは?計算方法・シミュレーションや表面税率との違いも解説

掲載日:2025年4月14日起業準備

キービジュアル

企業の所得には、法人税だけでなく、法人住民税や法人事業税等の税金が課税されます。安定的な経営や資金繰りのためには、「実効税率」に関して正しく理解することが重要です。

本記事では、実効税率の概要や表面税率との違い、計算方法を解説します。実効税率を求めるシミュレーションも紹介するので、実効税率の理解を深めたい方や法人化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

法人税の法定実効税率とは

法人税の実効税率(法定実効税率)とは、企業が負担する実質的な税率のことです。

企業の所得には、法人税等の国税、法人住民税や法人事業税等の地方税が課税されます。このうち、事業税(特別法人事業税を含む)は損金算入が可能です。

実効税率は各税率を単純に合計したものではなく、事業税の損金算入を考慮した税率であり、実際にどれくらいの税金を負担するかを把握するのに役立ちます。

なお、法人税と法人事業税には軽減税率が設けられており、また法人地方税・法人事業税は標準税率と異なる税率が定められている場合があることから、企業の規模や所在地によって実効税率は異なります。

実効税率と表面税率の違い

実質的な税率を指す「実効税率」に対し、「表面税率」は法人の所得に対して課される法人税や住民税、事業税等の税率を合計したものです。主な違いは以下の通りです。

項目 実効税率 表面税率
概要

事業税の損金算入を加味した実質的な税率

税法や条例で定められた税率を合計したもの

税率

表面税率よりも低くなる

実効税率よりも高くなる

用いる主な場面

税効果会計の処理等*

納付や申告等

表面税率は、税法や条例で定められた法人税や住民税、事業税等の税率を単純に合計したものであり、事業税の損金算入を加味した実効税率とは一致しません。

事業税を損金に算入すると課税所得が減るため、実効税率は一般的に表面税率よりも低くなります。

  • *税効果会計とは、税務上の課税所得と会計上の利益の差異を調整し、会計上の利益に対応する税額を求める会計上の手続きのことです。

法人の所得に課税される税金の種類

法人の所得に対して課税される税金の種類は、以下の通りです。

税金の種類 国税/地方税
法人税

国税

地方法人税

国税

法人住民税(都道府県民税・市町村民税)

地方税

法人事業税

地方税

特別法人事業税

国税

法人税

法人税は、法人の企業活動から得られる所得に応じて課税される国税です。所得金額(益金-損金)から求めた課税所得金額に税率をかけ、税額控除額を差し引いて求めます。

税率は原則として23.2%(2025年2月時点)ですが、資本金1億円以下の中小法人のうち、所得金額のうち800万円以下の部分は15%に軽減されます(本則は19%)。

なお、「令和7年度税制改正」にて、所得金額が年10億円を超える事業年度は、800万円以下の金額に適用される税率が17%に引き上げられることが決まりました。2025年4月1日以降の事業年度から適用されます。

地方法人税

地方法人税は、法人税の納税義務者に課税される国税です。法人税額に税率10.3%(2025年2月時点)をかけて税額を求めます。

名称に「地方」の文言が入っていますが、地方税ではありません。地域間の財政力の格差縮小を目的に、法人住民税(法人税割)の一部を国税化し、地方交付税の財源を確保するために創設された国税です。

法人住民税

法人住民税は、事務所等が所在する自治体に対し、法人が納める地方税です。自治体が提供する行政サービスを受けるために納めるもので、都道府県民税と市町村民税を合わせて「法人住民税」と言います。

法人住民税の税額は、「均等割」と「法人税割」を合計した金額です。

均等割

法人住民税(均等割)は、資本金の額や従業員数に応じて定額で負担するものです。

区分 標準税率
都道府県民税

2万円~80万円

市町村民税

5万円~300万円

例えば、東京都23区内に所在する法人で、資本金が1,000万円以下の場合、従業員数50人以下なら均等割は7万円(2万円+5万円)、50人超なら14万円(2万円+12万円)です。

資本金等の額
(2025年2月時点)
都道府県民税均等割 市町村民税均等割
従業者数50人超
市町村民税均等割
従業者数50人以下
1,000万円以下

2万円

12万円

5万円

1,000万円超1億円以下

5万円

15万円

13万円

1億円超10億円以下

13万円

40万円

16万円

10億円超50億円以下

54万円

175万円

41万円

50億円超

80万円

300万円

41万円

自治体によっては、国が定めた標準税率とは異なる税率を定めている場合があります。

なお、均等割は赤字の法人も納めなければなりません。

法人税割

法人住民税(法人税割)は、法人税額に応じて負担するものです。

税額は、法人が国に納めた法人税額に税率をかけて求めます。つまり、法人税割は均等割とは異なり、黒字の法人だけが納めるものです。

区分(2025年2月時点) 標準税率 制限税率(自治体が課税できる税率の上限)
都道府県民税

法人税額の1.0% (課税所得の0.23%相当)

2.0%

市町村民税

法人税額の6.0% (課税所得の1.39%相当)

8.4%

自治体によっては、標準税率とは異なる税率を定めている場合があるため、各自治体のウェブサイト等でご確認ください。

法人事業税

法人事業税は、法人が行う事業そのものに対して課税される地方税です。事業所が所在する都道府県に対して納めます。

法人事業税には以下の4種類があり、業種や資本金の額等によって税率が異なります。

法人事業税の種類 概要
外形標準課税 ①付加価値割
②資本割

一定の規模以上の法人(原則として資本金1億円超の法人)に対してのみ課される

③所得割

所得額に応じて課される

④収入割

収入額に応じて課される

  • *所得割を課税標準にするのが適当でない法人(電気供給業・ガス供給業・保険業を営む法人)が対象

例えば、資本金1億円以下の普通法人の場合、所得割のみ課税されます。所得割の標準税率は、以下の通りです。

所得(2025年2月時点) 標準税率
年400万円以下の金額

3.5%

年400万円超800万円以下の金額

5.3%

年800万円超の金額

7.0%

特別法人事業税

特別法人事業税は、2019年に法人事業税の一部を分離して創設された国税で、法人事業税の納税義務者に対して課税されます。国税ですが、法人事業税と合わせて都道府県に申告・納税します。

特別法人事業税の税額は、法人事業税の所得割額(または収入割額)に税率をかけた金額です。税率は業種や資本金の額等によって異なります。資本金1億円以下の普通法人の場合は、37%です(2025年2月時点)。

法人税実効税率の計算方法・シミュレーション

イメージ

法人税の実効税率は、以下の計算式で求められます。

計算式

実効税率=(法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率)+法人事業税率*)÷(1+事業税率)

  • *特別法人事業税率を含む

上記の式にあてはめて標準税率で計算すると、資本金1億円超の普通法人の実効税率は29.74%と求められます(2025年2月時点)。

計算例

(23.2%×(1+10.3%+7%)+1%×(1+260%))÷(1+1%×(1+260%))=29.74%*

また、資本金1億円以下の普通法人の場合、標準税率で計算した実効税率は33.58%です(課税所得金額800万円超の部分)(2025年2月時点)。

計算例

(23.2%×(1+10.3%+7%)+7%×(1+37%))÷(1+7%×(1+37%))=33.58%



標準税率(2025年2月時点)

税金の種類 課税標準 標準税率(資本金1億円超の普通法人) 標準税率(資本金1億円以下の普通法人)
法人税 課税所得

23.2%

23.2%

  • *課税所得金額800万円超の部分
地方法人税 法人税額

10.3%

10.3%

法人住民税 法人税額

7.0%

7.0%

法人事業税(所得割) 課税所得

1.0%

7.0%

特別法人事業税 標準税率で計算した法人事業税額

260%

37%

  • *実効税率は、小数点第2位未満を四捨五入しています。

代表例として、東京23区に所在する企業の実効税率を紹介します。

東京23区内・資本金1億円超の法人の実効税率

東京23区内に所在する資本金1億円超の法人を例に、実効税率を計算しましょう。税率は以下の通りです。

税金の種類 課税標準 税率
法人税 課税所得

23.2%

地方法人税 法人税額

10.3%

法人住民税 法人税額

10.4%(超過税率)

法人事業税(所得割) 課税所得

1.18%(超過税率)

特別法人事業税 標準税率で計算した法人事業税額

260%

東京23区では、法人住民税と法人事業税において超過課税を実施しており、超過税率(標準税率を超える税率)で課税されます。なお、超過課税とは、条例により地方税法で定められた標準税率よりも高い税率で税金を課すことです。

そのため、標準税率で計算した場合と比べて実効税率が高くなります。

実効税率の計算式にあてはめると、実効税率は30.62%と求められます。

計算例

(23.2%×(1+10.3%+10.4%)+1.18%+1%×260%)÷(1+1.18%+1%×260%)=30.62%

東京23区内・資本金1億円以下の中小法人の実効税率

次に、東京23区内に所在する中小法人(資本金1億円以下)を例に、実効税率を計算しましょう。税率はそれぞれ以下の通りです。

税金の種類 課税標準 税率
法人税 課税所得

23.2%

地方法人税 法人税額

10.3%

法人住民税 法人税額

7.0%(標準税率)または10.4%(超過税率)

法人事業税(所得割) 課税所得

7.0%(標準税率)または7.48%(超過税率)

特別法人事業税 標準税率で計算した法人事業税額

37%

東京23区の場合、法人住民税と法人事業税には標準税率と超過税率があり、所得や法人税額等によってどちらを適用するかが変わります。

標準税率が適用される場合、実効税率は33.58%です。

計算例

(23.2%×(1+10.3%+7.0%)+7.0%×(1+37%))÷(1+7.0%×(1+37%))=33.58%

一方、超過税率が適用される場合の実効税率は、34.59%と求められます。

計算例

(23.2%×(1+10.3%+10.4%)+7.48%+7%×37%)÷(1+7.48%+7%×37%)=34.59%

法人口座を開設して適切な税務処理を

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  • * 法人税や地方税をクレジットカードで納付する際、決済手数料がかかる場合があります。

まとめ

法人税の実効税率とは、法人が負担する実質的な税率のことです。法人税だけでなく、法人住民税や事業税も考慮した税率であるため、実際にどれくらいの税金を負担するかを把握するのに役立ちます。

経営の安定や円滑な資金繰りのために、実効税率に関する正しい知識を身に付けましょう。

個人口座で資金管理を行うことは、法的に問題ありません。しかし、正確かつスムーズに資金管理・税務処理を行っていくためには、法人口座を開設するのが望ましいでしょう。

みずほ銀行では、法人口座の開設と同時に法人カードも発行できます。適切な資金管理や業務の効率化にぜひお役立てください。

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監修者

安田 亮

安田 亮

  • 公認会計士
  • 税理士
  • 1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

HP:https://www.yasuda-cpa-office.com/

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