スタートアップ企業とは?特徴やリスク、スモールビジネスとの違いも解説
掲載日:2025年4月10日起業準備

スタートアップ企業は、革新的なアイデアと技術で短期間での急成長をめざす新興企業です。新たな産業創出の原動力として注目を集めている一方、高いリスクと向き合う必要があります。
本記事では、スタートアップの定義から経営の特徴、起業に必要な準備まで、網羅的に解説します。起業を検討している方やスタートアップに興味がある方はぜひ参考にしてください。
スタートアップ企業とは

スタートアップ企業は、革新的なアイデアや技術を武器に、短期間での急成長をめざすビジネスモデルを持つ企業のことです。
日本経済の新たな担い手として注目を集めるスタートアップ企業による経済効果は、直接効果と間接波及効果を合わせて約19兆円規模に達し、北海道の域内総生産に匹敵する規模まで成長しています。
スタートアップ企業は新規雇用の創出や社会課題の解決等、期待される役割は多岐にわたります。
スタートアップ企業とスモールビジネスの違い
スタートアップ企業とスモールビジネスは一見似ていますが、めざす方向性や成長戦略は大きく異なります。
【スタートアップ企業とスモールビジネスの比較】
比較項目 | スタートアップ企業 | スモールビジネス |
---|---|---|
成長戦略 |
数年で急拡大をめざす |
段階的な堅実成長 |
資金調達例 |
VCやエンジェル投資家から大規模調達 |
自己資金と銀行融資 |
リスク |
高リスク・高リターンな傾向 |
低リスク・安定収益な傾向 |
出口戦略 |
IPOやM&Aを想定 |
事業の長期継続 |
スタートアップ企業は革新的な技術やアイデアで市場に変革をもたらし、短期間での急成長を目指します。そのため、大規模な資金調達が必要で、VC(成長段階の企業に投資する企業)やエンジェル投資家(起業して間もない企業に資金を出資する個人投資家)からの出資を受けるのが一般的です。
一方、スモールビジネスは安定経営を重視します。自己資金や銀行融資を中心に、無理のない範囲で事業を展開し、顧客との信頼関係を築きながら、着実な成長をめざすのが特徴です。
どちらが優れているということではなく、事業構想や目標に応じて、適切な形態を選択することが重要です。
スタートアップ企業の特徴
スタートアップ企業の本質は、革新的なアイデアと急成長戦略にあります。従来のビジネスとは異なり、市場に変革をもたらし、短期間で大きな成長をめざす経営スタイルが特徴です。
社会課題解決を担い、経済・社会に大きなインパクトを与える
スタートアップ企業は、既存の枠組みを超えた発想で社会課題に挑戦しています。例えば、フードロス対策アプリは食品廃棄問題を、介護DXサービスは人手不足を解消する等、革新的なソリューションを提供しています。
この取組は単なるビジネスの成功にとどまらず、新規雇用の創出や産業構造の変革等、社会全体にポジティブな影響を与えます。
前述の通り、スタートアップ企業の経済効果は約19兆円規模に達し、未来の産業を支える原動力となっています。
短期間での急成長を志向する
スタートアップ企業の最大の特徴は、短期間での急成長をめざす点です。従来のビジネスでは10年以上かかる成長を、数年で実現することを目標とします。そのため、スタートアップ企業では下記が重要です。
- 革新的な技術やサービス
- 少数精鋭の機動的な組織
- スピーディーな意思決定
- 積極的な投資戦略
特に初期段階では、製品開発から市場投入までのスピードが重要です。顧客からのフィードバックを素早く取り入れ、製品改善のサイクルを高速で回すことで、市場での競争優位性を確立します。
シェア獲得の速さは成功の鍵となり、市場での存在感を早期に確立することで、大手企業に匹敵する影響力を持つことも可能です。
ただし、急成長をめざす一方で、初期は赤字が続くことが多く、リスクを伴う経営判断が求められます。
創業者の描くビジョンを実現するガバナンス経営の必要性
スタートアップ企業におけるガバナンスは、創業者のビジョンを軸に展開されます。全社員がミッションやバリューを深く理解し、同じ方向を向いて進むことが重要です。
組織の拡大に伴い、意思決定の仕組みも進化させる必要があります。初期のフラットな構造から、段階的に権限委譲を進め、スピードと質のバランスを取った経営体制を構築します。透明性の高い運営により、投資家や従業員との信頼関係も強化されます。
投資家からの資金調達が重要
スタートアップ企業の成長には、適切なタイミングでの資金調達が不可欠です。シード期(準備段階)からアーリー期(成長段階)、レイター期(持続的成長の追求段階)と、各成長段階に応じた資金調達戦略を立てる必要があります。
VCやエンジェル投資家からの調達は、資金確保以上の意味を持ちます。エンジェル投資家のネットワークやノウハウを活用し、事業成長を加速させる重要なパートナーシップとなります。
出口戦略としてのIPOやM&Aを見据えた、計画的な資金調達が成功の鍵となります。
スタートアップ経営の抱えるリスク
スタートアップ企業は大きな成長可能性を秘めていますが、事業進捗や資金調達のプレッシャー等の多くのリスクと向き合う必要があります。
失敗するリスクが大きく、事業進捗のプレッシャーも大きい
スタートアップ企業は不確実性が高く、失敗するリスクが大きい企業です。革新的な事業に挑戦する一方で、以下のリスクと向き合う必要があります。
- 市場ニーズの見誤り
- 資金不足
- ビジネスモデルの不備
- 人材確保の難しさ
特に初期段階では、前例のない事業に挑戦するため、市場の反応を予測することが困難です。製品開発から収益化までの道のりは険しく、経営陣と従業員には大きな負担がかかります。
また、少数精鋭での運営が基本となるため、一人ひとりの役割が重要です。適切な人材の採用と定着が、事業成功の鍵を握ります。しかし、実績の少ない企業での採用活動は容易ではありません。
投資家からの期待に応えながら、限られた資金と時間の中で成果を出すプレッシャーも大きくなります。事業の不確実性が高い中、迅速な意思決定と実行力が求められます。
資金調達のプレッシャーがあり、資金繰りの適切な管理が求められる
スタートアップ企業の資金調達は、成長への投資と事業継続の両面で重要な課題となります。
投資家からの成果期待や短期間での結果要求、継続的な資金確保の必要性、競合との差別化といったプレッシャーがあります。
特に初期段階では、収益が安定せず運転資金が不足しがちです。月次での収支管理を徹底し、次回調達までのランウェイ(残存可能期間)を常に意識する必要があります。
以下のような資金調達方法を複数確保し、特定の資金源への依存を避けることも重要です。
- アセットファイナンス(資産を売却)
- ファクタリング(売掛金を現金化)
- クラウドファンディング
- 補助金・助成金
- 社債
- 融資
- 出資
定期的な財務レビューにより、戦略の見直しと修正を行うことで、持続的な成長を実現します。
付与されたSO(ストックオプション)が開花するか否かは事業成長次第
スタートアップのSO(ストックオプション)は、企業価値の上昇と連動する独特の報酬制度です。将来、特定の価格で株式を購入できる権利を従業員に付与することで、企業の成長が個人の利益に直結する仕組みを作ります。
SOの価値実現には事業の成長が不可欠です。市場ニーズの獲得や競合他社との差別化、適切な資金調達等、企業価値を高める要素がそろって初めて、SOは意味のある報酬となります。逆に、事業が成長できなければ、SOは単なる紙切れとなってしまいます。
近年、大型調達に成功した企業では基本給も大手企業並みの水準を実現しています。SOは追加的なインセンティブとして機能し、優秀な人材確保の重要な要素となっています。
しかし、SOの価値は経済環境にも左右されます。不況期の株価下落や、IPO市場の冷え込みは、SOの価値実現に大きな影響を与えます。そのため、基本給とSOのバランスを考慮した報酬設計が、スタートアップの人材戦略において重要となっています。
スタートアップの起業の方法と必要な準備
スタートアップ企業の立ち上げには、革新的なアイデアと実行力が不可欠です。事業計画の策定から、資金調達、法的手続きまで、準備すべき要素は多岐にわたります。
ここでは、スタートアップの起業に必要な3つのステップを解説します。ビジネスモデルの構築、資金調達の方法、そして会社設立の手順について、具体的に確認しましょう。
ビジネスモデルの構築と事業計画の作成
革新的なアイデアをビジネスとして成立させるには、綿密な計画が必要です。成功するビジネスモデルの構築から、具体的な事業計画の作成まで、段階的に準備を進めていきましょう。
特に重要なのが、試作段階での市場検証です。想定顧客からのフィードバックを収集し、製品やサービスを改善することで、市場投入後の成功確率を高められます。
財務計画では、初期投資から運転資金まで、必要な費用を詳細に算出します。収益予測と合わせて、資金調達の規模や時期も決定していきます。最低3年、理想的には5年先までのロードマップを描くことで、持続可能な成長戦略を立案できます。
資金調達
スタートアップ企業の資金調達には、成長段階に応じた複数の選択肢があります。返済義務の有無や調達規模を考慮し、最適な方法を選択することが重要です。
調達方法 | 詳細 |
---|---|
エクイティファイナンス |
|
デットファイナンス |
|
その他の調達方法 |
|
また、スタートアップ企業の成長段階ごとに適した資金調達方法は以下のように異なります。
- シード期:創業資金としてVC投資や創業融資
- アーリー期:事業拡大のための本格的な資金調達
- レイター期:大規模な事業展開やM&A資金の調達
適切な資金調達には、事業計画の実現性や収益化の見込みが重要です。複数の調達手段を組み合わせ、長期的な成長を支える資金計画を立てることがポイントとなります。
法的手続きと会社設立
スタートアップの設立には、適切な会社形態の選択と法的手続きが必要です。以下、重要なステップや手続きです。
【会社設立の基本事項】
- 1.会社形態の選択(株式会社・合同会社)
- 2.商号と事業目的の決定
- 3.本店所在地の選定
- 4.資本金の設定
- 5.役員構成の決定
【具体的な手続き】
- 定款の作成と認証
- 会社印の準備
- 資本金の払込
- 法務局での登記申請
- 税務署への届出
株式会社設立では、定款認証と登記申請が特に重要です。定款認証には公証役場での手続きが必要で、約1週間かかります。登記申請後は10日程度で完了し、その後、銀行口座開設や各種許認可の取得を進めます。
手続きの多くはオンライン化が進んでいますが、原本の提出や対面での手続きが必要な場合もあります。スケジュールに余裕を持って進めることが重要です。
まとめ
スタートアップ企業は、革新的なアイデアと技術で社会に変革をもたらし、日本経済の新たな原動力となっています。その経済効果は約19兆円規模に達し、新規雇用の創出や社会課題の解決にも貢献しています。
成功の鍵は、革新的なビジネスモデルの構築、適切な資金調達、そして迅速な経営判断にあります。しかし、失敗するリスクが高い厳しい世界でもあり、綿密な準備と強い覚悟が必要です。
みずほ銀行のイノベーション企業支援『M's Salon』は、スタートアップ企業の成長に必要不可欠な経営知識、事業遂行ノウハウ、ビジネス拡大機会、資金調達サポート等を提供しているため、利用をご検討ください。
専門家によるアドバイスや、ビジネスマッチングの機会等、充実したサポート体制を整えています。革新的なビジネスに挑戦するスタートアップ企業の成長を、みずほ銀行は総合的にサポートします。
監修者

安田 亮
- 公認会計士
- 税理士
- 1級FP技能士
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。