資本金・創立費・開業費の勘定科目と仕訳は?会社設立時の会計処理を解説
掲載日:2024年12月18日会計

会社を設立する際に、会計処理や仕訳の仕方でつまずくことがあるかもしれません。個人のお金で創業費を立て替えたり、個人の口座に資本金を一時的に入金したり等、個人のお金や口座が関係してくるケースもあり、記帳方法が複雑になることがあります。
本稿では会社設立時に扱うことになる「資本金」「創立費」「開業費」の3つについて、勘定科目・仕訳方法を詳しく解説します。個人のお金で立て替えた場合の仕訳方法も説明しているので、ぜひご参照ください。
会社設立時の費用・資金はどのように会計処理する?

会社設立時にかかる費用は、仕訳帳の内容をベースにしながら、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表に記載する必要があります。その際、会社設立時に必要な以下の3つの費用・資金について、会計処理の仕方や財務諸表への記載方法に悩むことがあるかもしれません。
- 資本金
- 創立費
- 開業費
現在はサービスが充実していて、基本的に会計ソフトの仕訳帳に入力すると自動的に財務諸表が完成します。そのため、上記3つの費用・資金についての仕訳帳への記載方法(仕訳方法)を理解していれば、簡単に財務諸表を作成できます。
ただし、資本金・創立費・開業費の勘定科目を把握していなければ、正しい仕訳ができません。そこで本稿では、上記3つの費用・資金について、勘定科目・仕訳方法を詳しく解説します。
会社設立時の費用の勘定科目・仕訳

会社を設立する際に関係する主な資金・費用は「資本金」「創立費」「開業費」の3つです。これらの費用を適切に扱うためには、費用ごとに正しく仕訳を行う必要があります。ここでは会社設立時の費用の勘定科目・仕訳について、詳しく見ていきましょう。
資本金の勘定科目・仕訳
資本金とは、会社経営に必要な「元手となるお金」のことです。会社設立時の「発起人の手元資金」や、株主や投資家からの「出資金」が含まれます。
法人登記をするには、あらかじめ資本金を用意し、銀行口座に入金しておく必要があります。ただし会社の設立前は法人用の銀行口座を開設できないため、最初は一時的に発起人の個人口座に入金するのが一般的です。
資本金を個人口座に入金する際の仕訳方法・勘定科目は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預け金 |
3,000,000円 |
資本金 |
3,000,000円 |
資本金の仕訳には、貸借対照表の「純資産」グループに属する「資本金」という専用の勘定科目を使用します。借方の勘定科目には「預け金」を勘定科目として使用しましょう。借方を普通預金にすると法人口座への入金と区別できなくなるので、「預け金」で会計処理を行うのが一般的です。「仮払金」や「現金」等の勘定科目でも代用できます。
そして発起人の個人口座に入れた資本金を、会社名義の法人口座に移す際は、以下のように仕訳をします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 |
3,000,000円 |
預け金 |
3,000,000円 |
創立費の勘定科目・仕訳
創立費とは、会社を設立する際に支払った費用のことです。設立登記前や設立登記時にかかる以下のような費用が該当します。
- 定款の作成費用
- 定款認証費用
- 登録免許税
- 定款作成や設立登記を依頼した司法書士・行政書士への報酬
- 会社設立のために借りた会議室の費用
- 会社設立のために開いたミーティングの交通費
使用する勘定科目は「資産」グループの繰延資産に属する「創立費」です。例えば会社の設立登記に関する費用の25万円を現金で支払った場合は、以下のように仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
創立費 |
250,000円 |
現金 |
250,000円 |
創立費は繰延資産に該当するため、「任意償却」もしくは5年(60ヵ月)以内の「均等償却」が選択可能です。均等償却を選択すれば、創立費を複数年に分けて少しずつ経費にしていくことができます。
例えば25万円の創立費を均等償却する場合、初年度(12ヵ月分)の償却額は、25万円÷60ヵ月×12ヵ月で「5万円」です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
創立費償却 |
50,000円 |
創立費 |
50,000円 |
均等償却は月割で計算されるため、例えば初年度の事業月数が6ヵ月の場合、創立費の償却額は25万円÷60ヵ月×6ヵ月で「2万5,000円」です。
開業費の勘定科目・仕訳
開業費とは、準備活動や宣伝、スタッフの採用・教育、設備の設置など、会社の設立後、本格的に事業を開始するまでにかかった費用のことです。
勘定科目は、「資産」グループの繰延資産に属する「開業費」です。開業費として計上できる費用には、以下のようなものがあります。
- ウェブサイトの作成費用
- チラシ・Web広告など宣伝費用
- 10万円未満の備品の購入費用
開業費120万円を、現金で支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
開業費 |
1,200,000円 |
現金 |
1,200,000円 |
開業費も創立費と同様に繰延資産であり、任意償却・均等償却を選択できます。例えば上述の開業費120万円を均等償却する場合、初年度(12ヵ月分)の償却額は、120万円÷60ヵ月×12ヵ月で「24万円」です。仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
開業費償却 |
240,000円 |
開業費 |
240,000円 |
開業費と同様に月割で計算するため、開業月が1月以外の場合にはもっと少なくなることも把握しておきましょう。
個人のお金から支払った費用の勘定科目・仕訳
会社設立時の創立費・開業費を個人のお金から立て替えて支払った場合、どのように仕訳をすれば良いのでしょうか。
法人の設立前に「創立費」を立て替えた場合、会社の設立前に支払を行った時点での仕訳は行いません。会社の設立後、精算する際に「創立費の勘定科目・仕訳」で解説した通りの仕訳を行います。
会社の設立後に発生する開業費などを個人が立て替えた場合には、一般的な経費を立て替える際の仕訳方法と同様です。貸方に「未払金」を使用し、借方には費用ごとの勘定科目を使用します。例えば開業費を個人が立て替えた場合の仕訳は、以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
開業費 |
10,000円 |
未払金 |
10,000円 |
立て替えた分を会社の現金で精算する際は、以下のように仕訳をします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 |
10,000円 |
現金 |
10,000円 |
また一時的に個人口座に入れていた資本金の一部を、費用の支払にあてた場合、勘定科目は「未払金」ではなく「預け金」を使用します。例えば、発起人の個人口座に一時的に入れている資本金から、20万円の創立費を支払った場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
創立費 |
200,000円 |
預け金 |
200,000円 |
まとめ

資本金を個人口座に入金、法人口座に移動する際の勘定科目には「預け金」等を使って仕訳します。
創立費・開業費の勘定科目は一般的な経費と同じように「現金」等の勘定科目で仕訳しますが、繰延資産に該当するため、そのままでは経費になりません。任意償却・均等償却のいずれかを選択して「創立費償却」「開業費償却」の仕訳をすることで経費にしていきます。
会社設立時のお金を適切に管理するためには、法人を登記してからできるだけ早い段階で法人口座を開設しておくことが大切です。みずほ銀行の場合、法人口座開設と同時に法人名義のデビットカード「みずほビジネスデビット」をお申し込みいただけます。創立費・開業費として例示したような各種支払のうち、カード決済が可能なものについて活用いただくことが可能です。ウェブ面談を利用すれば店舗に出向くことなく手続きが完結しますので、何かと忙しい創業期にはぜひ、みずほ銀行の法人口座のご利用をご検討ください。
(記事提供元:株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
- *本稿に含まれる情報の正確性、確実性あるいは完結性をみずほ銀行が表明するものではありません。
また、個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
最新の情報をご確認のうえ、ご自身でご判断いただくようお願いいたします。
執筆者

宮崎 千聖
金融メディアを中心に執筆・監修者として活動するファイナンシャル・プランナー。銀行員としてローンの相談や融資の手続き、企業の財務チェックなどを経験。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士