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起業前に抱きがちな5つの「思い込み」

掲載日:2022年12月1日起業準備

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SNSやメディアで取りあげられる、話題の起業家たちの姿は実に華々しく見えるものです。

以前よりも起業のハードルが下がった現在、起業家という夢を抱く人も多いでしょう。
しかしいざ起業した後、思い描いていた経営者像とかけ離れた実態に直面し、事業を軌道に乗せることができないまま撤退してしまうというケースも少なくありません。
「起業家精神」が各所で重要視される今だからこそ、冷静に、理想と現実のギャップをしっかりと認識することが大切なのです。

本稿では、「起業前に抱きがちな5つの思い込み」を確認しながら、堅実に起業の準備をしていくためのヒントを紐解きます。

「社長になれば好きなことができる」は、間違い?

思い込み1.アイディアさえ良ければお金はすぐに儲かる

起業をめざす人の目的で、最も多いのが「お金を儲けたい」というものでしょう。
著名な起業家の華やかな活躍を目にし、「自分も一山当てたい」と思ったことのある人は少なくないはずです。

しかし、「確実に儲かる商売」というものは、この世界に存在しません。

「まだ世の中に出ていない、尖がったアイディアによる製品やサービスを生み出せば、勝ち目があるはずだ」
そのような考えも一理あるかもしれませんが、ここまでは誰もが抱く、ありがちな思い付きともいえます。

自分には新しいものを生み出せる発想力があるのか。コストと時間はどうやって捻出する算段なのか。
重要なのは、思い付きのその先なのです。

また、もし生み出した製品やサービスがヒットしたとしても、安定した利益をあげるようになるには時間が掛かります。
起業家には忍耐力や持久力も必要なのです。
一瞬話題をさらったもののすぐに消えていった製品やサービスに、覚えがある人もいるでしょう。

起業家として、真に必要なのは「アイデアさえ良ければ」という発想ではなく「世の中の課題を解決する」という視点です。
そのために何が求められるのかを考えていくにつれ、思い付きではなく、勤勉さに裏打ちされた発想こそが重要であると気付くはずです。
単純に「お金を儲けたい」という場合、待遇の良い職業をめざして勉強し就職して、会社員をした方が余程効率が良いといえるでしょう。

思い込み2.自分で会社を作れば好きなことをしていられる

会社員であれば、上司の指示や会社の意向に沿って働くのはごく普通のこと。
ときには、自分の考えで行動できないことから、イライラしたり歯がゆい思いをしたりすることもあるでしょう。

だからこそ「起業して自分の好きな仕事だけをやりたい」という気持ちを抱くこともあるかもしれません。
経営者であれば、自分のスケジュールは自分で決められますし、これこそ起業する醍醐味だ、と感じる人もいるでしょう。

しかし、自由にやっているだけで、果たして会社は成り立つのでしょうか。

実際に起業して経営者の立場になれば、「好きなことだけを続ける」のはほぼ不可能だと分かってきます。
経営者としてやらなければならないことが、次から次へとなだれ込んでくるからです。
収支の決算、従業員への給料の用意、事務処理等、やることは山積。
ときにはトラブル対応に奔走しなければならず、理不尽な状況に立ち向かう必要もあるでしょう。

収益を安定させるまでには時間も要するので、起業してしばらく、自分のやりたいことに集中する暇はほとんどないものです。

実は難しい?友人との起業

思い込み3.勢いのある業界のビジネスに参入すれば稼げる

これから伸びていく業界として、よく取りあげられるのがIT業界、電子部品・半導体業界、EC業界、倉庫・物流業界、医療業界、農業等です。
またコロナ禍における生活や職場に対応した「ウイルス対策」「巣ごもり消費」「リモートワーク」等の分野も、環境の変化が追い風となり、近年急激に伸びた業界といえるでしょう。

起業家なら、需要の高い業界をめざしたくなるのも無理はありません。
しかし、高度な技術や許認可が必要となるマーケットは、費用も莫大な額になるので参入障壁が高くなります。
さらに、既存業界にはブランド力の高い大企業が席巻していて、彼らのライバルとならざるを得ないケースも。
参入したところで差別化を図ることは難しいため、後発部隊には困難が待ち受けているのです。

起業においてマーケットの需要は注目すべき点ではありますが、それよりも、まずは自分が本来持っているはずのモチベーションを深く掘り下げ、長く続けられる仕事を選ぶことが大切でしょう。

例えば、自身の情熱を傾けられる仕事です。
「自分はこのサービスが好きなんだ」「このジャンルでは絶対に負けない」という気持ちがないと、まず長続きさせることができませんし、ライバルに勝つこともできないでしょう。

思い込み4.友人や親しい人と起業すればうまくいく

「気の合う仲間や友人とビジネスを始めれば、信頼関係やコミュニケーションが図りやすいのできっと上手くいく」
一見メリットがあるようで、実は、友人同士の起業は難しいとされています。

「友人相手だからと気を遣ってしまい、ふとした疑念や違和感を指摘できなかった」
「意見の相違を恐れて、決断が鈍ってしまった」
このような失敗談は後を絶ちません。

例え事業が順調であっても、友人感覚で曖昧にしていた「収益の分配」と「責任の所在」を巡ってもめてしまう、ということもあります。

友人同士という対等な関係だからこそ安心していたはずなのに、「ビジネスパートナー」となったことで関係に変化が生じたり、一度つまずいたことで関係修復が困難となったり、結果、ケンカ別れとなり事業の方も空中分解してしまうという事例も珍しくありません。

友人や仲間という人間関係の良さをビジネスに持ち込むのは、ある意味危険な行為なのです。

もし信頼関係のある友人たちで起業したとしても「親しき仲にも礼儀あり」を忘れず、一企業としてのルールやセキュリティの仕組みは、しっかり構築すべきでしょう。

思い込み5.自分を曲げず、諦めなければ成功する

起業家にとって、揺るがぬ信念や諦めない精神は大切です。
ただし、頑固すぎるのもときには考えものかもしれません。

例えば、自分の価値観やアイディアを押し通して、周囲の意見を聞かなくなってしまう経営者がいます。
この手のタイプは、自分たちが提供するモノと顧客が求めているモノにズレが生じても気付かないことが多いのです。

信念は、ときとして「思い込み」や「固執」になることもあります。
適切に周囲の人の意見にも耳を傾け、自身の考えを客観的に捉え、柔軟に取り組んでみることが必要です。
自身のアイディアや価値観を押し通し事業を成功へ導くことができる「天才的な起業家」は、極一部なのだと考えるべきでしょう。

時代の変化や世の中の流れを察知して、臨機応変に対応するしたたかさこそ、起業家には大切なのです。

おわりに

ここまでにあげた例を読み、自分も同じような思い込みをしていた、と気付いた方がいるかもしれません。
それもそのはず、これらの思い込みは、起業を志す人の誰もが、初期に抱きがちなものばかりなのですから。

起業家という職業には夢がありますが、リスクもつきもの。
理想と現実のギャップを認識したうえで、なるべく冷静に、着実な形で準備を進めていくべきでしょう。

華々しく見える有名起業家も、リスクを覚悟しながら泥臭く努力を積み重ねた結果、成功を手にするに至ったはずです。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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