労務管理とは?業務内容や必要なスキル、人事管理・勤怠管理との違いを解説
掲載日:2026年9月2日労務
労務管理とは、従業員の勤怠状況や給与計算、福利厚生、安全衛生等、従業員が安心して働ける環境を整備するために欠かせない業務です。
適切な労務管理を行うことで、従業員の満足度やモチベーションが高まり、企業全体の生産性向上につながります。一方で、労働基準法をはじめとする各種法令への対応も求められるため、正しい知識と適切な運用体制を整えることが大切です。
本記事では、労務管理の基本的な定義から具体的な業務内容、必要なスキル、効率化の方法まで詳しく解説します。これから労務管理に取り組む方や、現在の業務を見直したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
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労務管理とは
労務管理とは、従業員の働く環境を整えるために、労働時間や賃金、休暇等の労働条件を適切に管理する業務です。
企業が従業員を雇用する際には、労働基準法をはじめとする労働関連法規の遵守が義務付けられており、労務管理はこれを徹底するための基盤となります。
具体的には、賃金管理、労働時間管理、教育・研修、退職・再雇用に至るまで、従業員に関する各種施策が含まれます。
人事管理との違い
労務管理は、勤怠管理や給与管理、社会保険手続き等の労働環境に関わる幅広い業務を通じて、従業員が働きやすい職場づくりを行います。
一方、人事管理は従業員の採用・育成・評価・配置といった人的資源の活用を担い、従業員個々のパフォーマンスに焦点を当てます。
つまり、労務管理が全従業員にとっての基盤となる環境やルールを整える役割であるのに対し、人事管理は人材を活用する仕組みを構築・運用する業務です。
なお、「人事労務管理」という用語は、人事管理と労務管理を包括した概念であり、企業の経営資源である「ヒト」を対象とした管理活動全般を指します。
勤怠管理との違い
勤怠管理とは、出退勤時刻や休憩時間、時間外労働時間、有給休暇の取得状況等、従業員の労働時間等の記録を管理する業務です。労務管理と勤怠管理の主な違いは業務範囲の大きさにあり、勤怠管理は労務管理の一部として位置づけられます。
勤怠管理は、従業員の労働時間を正確に記録することで、給与計算や保険料の算出、長時間労働の把握・是正等を可能にする点が特徴です。
正確な勤怠管理ができていなければ、従業員への適切な給与の支払いができなくなるほか、コンプライアンス違反につながる等、深刻な労務トラブルを招く恐れがある点にも留意が必要です。
労務管理の目的
労務管理を適切に実施することで、持続的な成長を支え、従業員と企業の双方に多くのメリットをもたらします。以下では、労務管理の目的を解説します。
生産性の向上
従業員が安心して働ける環境を整えることで、仕事に対する意欲や企業への信頼が高まり、業務効率や生産性が向上します。
職場における満足度が高まれば、従業員のモチベーションも向上し、個々のパフォーマンスの向上が組織全体の成果につながるでしょう。
また、適正な労働条件を提供し、従業員が能力を十分に発揮できる職場を整えることで、優秀な人材の確保や定着率の向上にも寄与します。
コンプライアンスの徹底
企業は法令に基づく社会的責任を果たさなければならず、法令を守ることはもちろん、社会のルールや倫理に従って業務を遂行する必要があります。
労働基準法をはじめとする労働関連法規の遵守は企業の義務であり、労務管理はコンプライアンスを徹底するための基盤です。労災防止のための安全対策や長時間労働の是正、健康診断の実施等を適切に行うことで、法令遵守の体制を構築できます。
近年は、SNSを通じて各企業の労働実態が明らかになりやすくなっており、悪質な労働慣行は企業と個人の双方にダメージを与えるため、コンプライアンスへの意識を高めることが一層求められます。
リスクの回避
適切な労務管理を行うことで、長時間労働や残業代未払い、労働契約の不備、労働災害、ハラスメント問題、不適切な解雇や情報漏えい等のリスクを回避できます。
法令違反による処罰や企業の信頼低下といったトラブルを防ぐためにも、職場環境を適切に整備することが求められます。
また、働きやすい職場を作ることは、従業員の健康と安全を守るうえでも重要です。さらに、就業規則や労働条件通知書を適切に作成・管理することで、雇用における認識のズレによるトラブルを未然に防げる点もメリットです。
労務管理の業務内容
労務管理の業務は、従業員の労働環境を整えるために多岐にわたります。
企業の規模や業態によって、担当者がすべての業務を担う場合と、複数の部署で分業する場合があります。以下では、労務管理の業務内容を解説します。
就業規則の作成・管理
就業規則とは、従業員の労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の従業員を雇用する企業は、就業規則を作成して労働基準監督署へ届け出る義務があります。
作成の際は、労働時間や賃金、退職に関する事項等の絶対的必要記載事項を必ず記載し、企業が制度を設ける場合には相対的明示事項も記載する必要があります。
なお、就業規則の内容を変更した場合には労働基準監督署への再届出が必要であり、法改正等に合わせて適宜見直しや改廃を行いましょう。
また、作成・変更した就業規則については、従業員代表への説明や意見聴取を適切に行うとともに、従業員がいつでも閲覧できるよう周知する義務があります。さらに、関係部門に対して必要な指導・助言を行うことも、労務担当者の重要な役割です。
労使関係の管理
労使関係の管理とは、従業員と企業との良好な関係を維持・向上させるための施策を立案・推進する業務です。
労働組合が存在する場合には、労使交渉や必要に応じた労働争議への対応が求められます。また、組合の有無にかかわらず、従業員からの相談対応や事実関係の整理、必要に応じて個別労働紛争解決制度の活用を案内する等、適切な対応を行います。
解雇や残業代の未払いといった個別の労働問題が発生した際には、法令に基づいた適切な対応と解決策の提示が求められます。
ハラスメントに関する相談窓口の設置・運用や従業員からの苦情対応等、社内外の関係者と十分な連携とコミュニケーションを図りながら業務を遂行しましょう。
勤怠管理・給与計算
勤怠管理では、従業員の出退勤時間や遅刻・欠勤の有無、休憩時間、休暇取得状況等を正確に記録・整理します。
給与計算では、勤怠データ等を基に基本給や各種手当、賞与を算出し、健康保険料や厚生年金保険料、所得税、住民税等の控除額を計算する必要があります。
長時間労働を行っている従業員がいる場合には、是正を促す連絡や産業医による面談の実施といった対策も欠かせません。
給与計算は1円単位で正確に行う必要があります。創業期においては、クラウド型の勤怠管理・給与計算ソフトの導入が有効です。勤怠データを給与計算に自動連携できるSaaSを活用することで、担当者の工数削減やミスの防止につながります。
福利厚生の管理
福利厚生には、法律で義務付けられた健康保険や雇用保険等の法定福利と、企業が独自に設ける住宅手当や慶弔見舞金等の法定外福利の2種類があります。
法定福利については、採用時に加入要件を満たす場合、加入手続きを行う必要があります。
法定外福利は企業ごとに内容が異なり、社宅の用意や育児支援、特別休暇、財形貯蓄等の制度を企画・導入・運用します。
福利厚生の整備や運営を通じて、従業員が働きやすい環境づくりに努め、就業意欲の向上や定着率の改善につなげることが大切です。
安全衛生管理
安全衛生管理とは、従業員が安全で健康に働ける環境を整備するための管理体制の構築や各種活動計画の作成・推進を行う業務です。
労働安全衛生法に基づき、雇入時の健康診断および年1回の定期健康診断を実施する義務があり、健康診断結果の記録や従業員への通知が必要です。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、定期健康診断の結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられており、結果の通知や産業医への連絡といった業務が発生する点も押さえておきましょう。
なお、労働安全衛生法の改正により、労働者数50人未満の事業場においても、ストレスチェックの実施が義務化される予定です。
施行時期は、公布日(2025年5月)から3年以内に政令で定められるため、遅くとも2028年5月までには適用される見込みです。具体的な時期が確定した際に速やかに対応できるよう、あらかじめ準備を進めておくことが重要です。
また、一定規模以上の事業場では安全委員会や衛生委員会、または両委員会を統合した安全衛生委員会の設置が義務付けられており、労働災害への対応や健康確保対策の推進を担います。
労務管理に必要なスキル
労務管理を適切に実施するには、専門的な知識や高い実務能力が求められます。以下では、労務管理に必要なスキルを解説します。
法令知識
労務管理の業務は法令に沿った対応が求められるため、例えば以下に関する専門的な知識が必要です。
- 労働基準法
- 労働契約法
- 労働組合法
- 労働安全衛生法
- 男女雇用機会均等法
- 育児・介護休業法
- 雇用保険法
- 労災保険法
- 健康保険法
- 介護保険法
- 厚生年金保険法
労働関連法規は、働き方の多様化や社会情勢の変化に伴って頻繁に改正されるため、最新動向を常時把握しておくことが求められます。
法的知識を身につけるには、厚生労働省や都道府県労働局が主催するセミナー・説明会への参加や、厚生労働省の公式サイト、ハローワークの情報の定期的な確認が有効です。
代表的な判例については、その内容と留意点を理解しておくことが重要です。法令違反を防ぐためにも、確かな法律知識を身に付ける必要があります。
労働組合法や労働契約法等、労使関係諸施策の運営に必要な法令についても理解を深め、従業員の利益や権利を適切に保護できるようにしましょう。
情報管理能力
労務管理では従業員の氏名や住所、生年月日、マイナンバー、給与情報等の重要な個人情報を取り扱うため、厳格な情報管理能力が求められます。
個人情報の漏えいや紛失は企業の信頼を損なう問題になるため、日常業務における慎重な対応と高度なセキュリティ意識が必要です。
近年は紙の書類ではなくデータでの管理が一般的であるため、データ運用に関する明確なルールの策定や、高度なセキュリティを備えたシステムの導入が重要です。
労働契約に伴う秘密保持義務や社内の情報セキュリティルールに従い、マイナンバーの正しい利用方法を理解したうえで、徹底した情報管理を行いましょう。
業務改善意識
労務管理では、就業規則の見直しや新たな規程の策定等によって労働環境を改善し、職場全体の生産性を高めていく意識が必要です。
正確性が求められる給与計算や期限が定められている保険料納付等の手続きも多いため、正確に業務を遂行するスキルと着実に作業を進める姿勢が求められます。
テレワークの浸透や業務効率化を目的としたITツールの導入等、働き方が急速に変化する中で、従来のやり方を踏襲するだけでは、従業員にとって働きやすい職場を実現することは困難です。
労働状況や業務改善への高い意識を持ちながら、柔軟で実効性のある労務管理を推進し、その時々の状況に応じた最適な職場環境へ改善していくことが大切です。
労務管理を効率化する方法
労務管理の業務は多岐にわたるため、効率化を図ることで担当者の負担を軽減し、ミスのリスクを低減できます。
以下では、労務管理を効率化する3つの方法について解説します。
システムの導入
ITツールを導入すると、勤怠管理や給与計算等の定型業務を自動化でき、人的ミスの削減と処理スピードの向上を実現できます。
クラウド型のシステムを採用すれば、リモートワークにも柔軟に対応できるほか、従業員の労働時間や勤怠情報をリアルタイムで把握できる環境を整えられる点がメリットです。
システム選定では、自社の規模や業種に適合しているか、既存の社内システムとの連携が可能か、ユーザーインターフェースが使いやすいかを確認しましょう。
導入後は操作性やサポート体制を評価し、現場の声を反映させながら継続的に運用を改善していくことが大切です。
業務フローの見直し
既存業務を可視化して担当者・所要時間・工数を棚卸しすることで、ボトルネックや重複業務といった非効率なポイントを明らかにできます。
業務手順を標準化してマニュアルを作成すれば、誰でも同じ品質で作業を遂行でき、新人教育の時間短縮や属人化の防止につながります。
現状把握後は課題を明確にし、短期・中期・長期の目標を設定したうえで、即効性のある施策から段階的に取り組むスケジュールを策定しましょう。
改善計画の実行後は定期的に進捗を確認し、効果測定の結果を次の施策に反映させるPDCAサイクルを回すことが大切です。
外部委託の活用
給与計算や社会保険手続き等の定型的で工数のかかる業務を外部に委託すると、社内リソースをコア業務に集中させられます。
専門知識を持つ外部事業者に任せることで、法改正や制度変更への対応を適切に行うことができ、ミスや法令違反のリスクを抑えられる点がメリットです。
外注化を検討する際は、作業範囲のすり合わせや情報管理体制について事前に確認し、自社の状況や業務の特性に合った適切なパートナーを選ぶ必要があります。
完全委託ではなく、一部の業務だけを委託するハイブリッド型の運用も有効であり、繁忙期でも安定した運用が可能です。
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労務管理業務の中でも、給与振込や社会保険料の納付には法人口座の利用が一般的であり、利便性の高い口座を選ぶことで事務負担を軽減できます。
事業運営において堅実な資金繰り管理をしていくためにも法人口座を用意することが大切です。
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労務管理体制の整備と合わせて、ぜひ口座開設をご検討ください。
まとめ
労務管理は従業員の労働条件や職場環境を整える業務であり、適切に行うことで法令遵守と生産性向上の両立を実現できます。
就業規則の作成や勤怠管理、給与計算、福利厚生の運用等、多岐にわたる業務を効率的に進めるには、システム導入や業務フローの見直し、外部委託の活用が有効です。
また、労務管理に必要な法令知識や情報管理能力、業務改善意識を高めながら、自社に適した効率化の方法を選択することが大切です。
給与振込や社会保険料の納付をスムーズに行うには、利便性の高い法人口座の開設も併せてご検討ください。
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監修者
大柴 良史(おおしば よしふみ)
- 社会保険労務士
- CFP
1980年生まれ、東京都出身。IT大手・ベンチャー人事部での経験をいかし、2021年独立。年間1000件余りの労務コンサルティングを中心に、給与計算、就業規則作成、助成金申請等の通常業務からセミナー、記事監修まで幅広く対応。ITを活用した無駄がない先回りのコミュニケーションと、人事目線でのコーチングが得意。趣味はドライブと温泉。