マーケティング戦略|基本概念と戦略立案の進め方
掲載日:2026年4月6日事業戦略
市場環境や消費行動が大きく変化する中で、企業を取り巻く競争の構図も複雑になりつつあります。そのような状況では、単に良い商品・サービスを用意するだけでは、十分に選ばれにくい場面も見られ、多様化するニーズに応じて改めてマーケティングを戦略的に捉える重要性が高まっています。
本記事では、マーケティング戦略の定義から基本フレーム、戦略の立て方、代表的な手法までを体系的に解説します。
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目次
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マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略とは、提供する価値を誰に、どのように届けていくかを整理・設計するための考え方です。単なる販促活動や広告計画ではなく、「顧客をどのように捉え、どの点に価値を感じてもらうか」という視点を軸に検討されます。
また、事業戦略や営業戦略と混同されることもありますが、マーケティング戦略は需要をどのように生み出し、顧客との関係をどう築いていくかに焦点を当てた領域です。
具体的には、次のような役割を担います。
- 顧客のニーズや行動を理解する
- 自社の強みと差別化要素を明確にする
- 顧客と接点を持つチャネルを設計する
- 顧客接点全体で一貫した体験を提供する
こうした活動を通じて、単発の購入にとどまらず、継続的に選ばれる関係性を築くための土台を整えていくことが、マーケティング戦略の重要な役割といえます。
なぜ企業にマーケティング戦略が必要なのか
では、なぜ多くの企業でマーケティング戦略の重要性が語られるのでしょうか。その背景には、市場環境や顧客行動の変化により、従来の施策だけでは成果を出しにくくなっている状況があります。
主な理由として、次の点が挙げられます。
-
顧客ニーズや行動の複雑化に対応するため
顧客の購買行動は一様ではなく、関心→比較→検討のプロセスが複雑に絡み合っています。こうした行動を前提に整理しなければ、施策が部分最適に陥りがちです。 -
市場や競合環境の変化に柔軟に対応するため
価格や機能だけでの差別化が難しくなる中で、「なぜ自社が選ばれるのか」という理由をあらかじめ設計しておく必要があります。 -
社内の施策や方針を一貫させるため
商品開発、営業、広告等の活動がバラバラでは、顧客に伝わる価値も曖昧になります。戦略は社内の共通言語として各施策をつなぐ役割を果たします。 -
限られたリソースで成果を出すため
人材や予算に制約がある中では、すべてに手を広げることはできません。戦略を通じて優先順位を明確にすることで、効果的な打ち手を選びやすくなります。
このように、マーケティング戦略を整理しておくことで、「誰に、何を、どのように届けるのか」という判断軸が明確になり、施策の一貫性が保たれやすくなるでしょう。
マーケティング戦略の基本フレームワーク
マーケティング戦略を検討する際には、対象とする顧客や市場環境、競合状況等、考慮すべき要素が多岐にわたります。こうした情報を整理し、全体像を把握するために有効となるのが「フレームワーク」です。
ここでは、マーケティング戦略を構成するうえで広く用いられている、代表的なフレームワークを二つ紹介します
1.STP:戦略の軸を定める
STPは、顧客や市場の構造を整理し、どの顧客に、どのような価値を提供するのかという戦略の軸を明確にするための考え方です。
以下のように構造を整理します。
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セグメンテーション(Segmentation)
市場を属性・行動・価値観等の軸で細分化します。 -
ターゲティング(Targeting)
細分化したセグメントの中から、優先的にアプローチする対象を選定します。 -
ポジショニング(Positioning)
競合と比較しながら、自社の提供価値をどの位置に置くかを整理します。
STPを通じて、「どんな顧客に・どんな価値を届けるのか」という全体設計を決めることができます。
2.4P:提供方法を具体化する
4Pは、STPで定めたようなターゲットに対して、価値をどのように届けるかを具体的な施策に落とし込むためのフレームワークです。ターゲットや業種によって、オンライン・オフラインに加え、それらを連携・補完するデジタル技術の活用といった選択肢を組み合わせて検討する必要があります。
以下のように、分類されます。
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Product(製品・サービス)
どのような製品・サービスを提供するかを整理します。 -
Price(価格)
どのような価格設計で提供するかを検討します。 -
Place(流通・販売チャネル)
どのチャネルを通じて、どのように顧客に届けるかを整理します。 -
Promotion(販促・認知施策)
どのような手段で認知を広げ、比較・検討を促すかを検討します。
これらのフレームワークは、必ずしも決まった順番で適用する必要はありません。重要なのは、「誰に」「何を」「どのように届けるのか」という視点を軸に、一貫した考え方で全体を整理することです。
マーケティング戦略の立て方|5つのステップ
では、これらのフレームワークは実際にどのように活用すればよいのでしょうか。
ここでは、STPや4Pを踏まえながら、マーケティング戦略を具体的に設計していく方法を、5つのステップに分けて整理します。
ステップ1:市場・顧客・競合の分析
まずは、戦略設計の前提となる情報を整理する段階です。感覚的な判断に頼らず、市場環境や顧客、競合の状況を客観的に把握します。
このステップでは、戦略検討に必要な材料をそろえることを目的に、代表的な分析手法を用いて外部環境と自社の立ち位置を整理します。
-
PEST分析
政治(P)・経済(E)・社会(S)・技術(T)といったマクロ環境が、自社や市場に与える影響を整理します。 -
3C分析
市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の関係性や構造を把握します。 -
SWOT分析
自社の強み・弱みと、外部環境における機会・脅威を整理します。
ステップ1で得られた情報が、以降のターゲット設計や提供価値の検討の土台となります。
ステップ2:ターゲットの明確化(STPの考え方を活用)
次に、整理した市場や顧客の情報を基に、優先的にアプローチすべき顧客像を定めます。
このステップでは、市場や顧客をいくつかの視点で捉え直しながら、フォーカスすべき顧客像を具体化していきます。
- 顧客を年齢・行動・業種・課題等の観点で整理
- 属性情報だけでなく、「どのような思考や選定軸を持つ顧客か」を想定
- BtoBの場合は組織内の意思決定構造、BtoCの場合は生活者のライフスタイルも考慮
ここでターゲットを明確にすることで、後続の戦略・施策の一貫性を保ちやすくなります。
ステップ3:提供価値と立ち位置の設計(STPの考え方を活用)
続いて、定めたターゲットに対して、自社がどのような価値を提供し、どのような立ち位置で選ばれるのかを整理します。
このステップでは、競合との比較を踏まえながら、「自社を選ぶ理由」を言語化していきます。
- 「自社を選ぶ理由」を明確に打ち出す
- 顧客が抱える課題と、自社の提供価値の対応関係を整理
- 競合と比べた際の違いや、差別化ポイントの明確化
- 機能やスペックではなく、顧客にとっての変化や成果を中心に整理
ここで提供価値の軸(ポジショニング)が定まることで、効果的な戦略を設計しやすくなります。
ステップ4:戦術の設計(4Pの考え方を活用)
ここからは、これまでに整理した戦略を基に、具体的な施策へと落とし込んでいきます。この段階では、4Pの考え方を用いることで、施策同士の整合性を保ちながら検討を進めます。
- Product:提供価値が正しく伝わる形になっているか
- Price:価値と価格のバランスが取れているか
- Place:ターゲットにとって適切な接点になっているか
- Promotion:認知から検討までの導線が描けているか
戦略の軸が明確であれば、4Pは「手段を選ぶためのチェックポイント」として機能します。
ステップ5:KPI設計とPDCAによる改善
最後に、設計した戦略が意図した通りに機能しているかを検証し、継続的に改善していくための仕組みを整えます。
- 認知、リード獲得、コンバージョン、LTV等のKPIを設計
- 数値データに加え、現場の声や顧客の反応も踏まえて改善
- 目標の再設定や優先順位の見直し等、柔軟に調整
マーケティング戦略は一度作って終わりではなく、事業環境の変化に応じて更新されていく「設計図」として運用していくことが重要です。
代表的なマーケティング手法と使い分け
マーケティング戦略を実行に移す際には、顧客とどのような接点を持ち、どの場面で出会うかを設計することが重要です。ここでは、実務で活用される代表的なマーケティング手法を、「顧客との出会い方」という観点から整理し、それぞれがどのような場面に適しているのかを紹介します。
対面・体験型の接点(イベント・展示会・体験施策等)
イベント、展示会、セミナー、体験会等の対面・体験型の接点は、顧客に直接価値を体感してもらい、理解や信頼を深めるための手法です。オンライン施策では伝えきれない情報や体験を提供できる点がメリットでしょう。
この手法の特徴は次の通りです。
- 顧客が法人(BtoB)の場合には、展示会や商談型イベントを通じた理解促進や関係構築に向いている
- 顧客が一般消費者(BtoC)の場合には、体験会やキャンペーン施策を通じて購買のきっかけ作りやブランド理解を深めやすい
- 比較・検討フェーズにいる顧客に対して、意思決定を後押ししやすい
検索を起点とした出会い(SEO:検索エンジン最適化)
一方で、オンライン上で顧客と出会う代表的な手法がSEO(検索エンジン最適化)です。
検索ニーズに応じた情報を継続的に届けることで、検討度の高い顧客との接点を作ります。一般的な検索エンジンに加え、商品・サービスを探す目的で利用されるECサイトや比較サイト、アプリ内検索等も、重要な接点となっています。
この手法の特徴は次の通りです。
- 顧客が「調べる」タイミングに接点を持てる
- 比較・検討フェーズでの獲得に有効
- コンテンツマーケティングと連携して運用されることが多い
SNSを起点とした出会い(SNS運用)
SNSは、情報発信やコミュニケーションを通じて、認知獲得や関係構築を行う手法です。一方的な訴求だけでなく、継続的な接点を持つことで、ブランドへの理解や親近感を高める役割を担います。
この手法の特徴は次の通りです。
- BtoCでは、ブランドの世界観や感情的な価値を伝えやすい
- BtoBにおいても、採用広報やブランド認知、ナレッジ共有等に活用される
- 拡散性をいかしたプロモーション施策とも相性が良い
広告による出会い(広告施策)
広告は、設計したターゲットや提供価値を基に、必要なタイミングでメッセージを届けるための手法です。近年はデジタル広告の比重が高まっていますが、本質的には「短期間で認知や反応を獲得するための手段」として位置づけられます。
この手法の特徴は次の通りです。
- 短期的な認知拡大やリード獲得、購買促進に向いている
- BtoCではキャンペーン訴求、BtoBでは資料請求や問い合わせ誘導等に活用される
- 効果測定を前提に、継続的な改善を行うことが重要
これら以外にも、チラシ配布やダイレクトメール等、業種や地域性に応じた手法は数多く存在します。重要なのは、手法そのものを目的化するのではなく、自社のターゲットや顧客フェーズに合った出会い方を選び、適切に組み合わせて実行することです。
マーケティング戦略の実行で生じやすい課題
マーケティング戦略やその手法を立案した後、実際に成果を上げるには、戦略と施策の一貫性を保ち、組織全体で実行し続ける仕組みが必要です。
ここでは、マーケティング戦略の実行段階で生じやすい課題を整理します。
戦略と施策が分断されてしまう
立てた戦略と、現場で実行されている施策にズレがあると、顧客に伝わるメッセージも一貫性を欠き、期待した成果が得られない可能性があります。施策を考えるときには、必ず「誰に、何を、どう届けるか」という戦略の軸に立ち返る必要があります。
顧客理解が浅いまま進めてしまう
セグメントやペルソナの定義が曖昧なまま施策に着手すると、訴求がずれ、反応率の低下やブランドの誤認につながってしまう場合もあります。データだけでなく、ユーザーインタビューや現場の声も活用し、継続的に顧客理解を深める視点が求められます。
社内連携が不十分で“マーケティングだけの活動”になっている
マーケティング戦略は、商品開発・営業・カスタマーサポート等、他部門と連携してはじめて成果が最大化されます。戦略段階から関係部署を巻き込み、役割分担や情報共有を行うことが重要です。
KPIが適切に設計されていない/機能していない
成果を評価するための指標が曖昧、または運用されていない場合、改善の手がかりが得られません。戦略目標に沿ったKPIを設定し、数値だけでなく“なぜその数値になっているか”を読み解く体制が求められます。
実行して終わりになり、改善につながらない
戦略や施策は、実行して終わりではなく、検証・改善を繰り返すことで成果が積み上がります。検証・改善の習慣を組織全体に根づかせ、戦略自体も状況に応じて柔軟に見直せるようにしておく必要があります。
これらのポイントを意識しながら施策を実行することで、顧客との新たな接点を生み出しやすくなり、結果として自社の成長につながっていくでしょう。
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まとめ
本記事では、マーケティング戦略の基本的な考え方から、主要なフレームワーク、立案ステップ、代表的な手法、実行時の注意点までを体系的に解説しました。マーケティング戦略とは、単なる施策の組み合わせではなく、「誰に・何を・どう届けるか」を一貫して設計するための指針です。
マーケティング戦略を、自社の状況や成長段階に応じて見直しながら運用していくことが、事業成長を支える基盤となるでしょう。