人材不足・人手不足が起こる理由とは?事業への悪影響や企業がとるべき対策を解説
掲載日:2025年11月6日 採用課題
人材不足は、企業が直面する深刻な経営課題の一つです。少子高齢化による労働力人口の減少や雇用の流動化の影響で、多くの企業が必要な人材を確保できない状況に陥っています。
この問題を放置すると、労働環境の悪化や従業員の離職、最終的には事業継続そのものが困難になるリスクがあります。しかし、適切な対策を講じることで人材不足を解消し、競争優位性を築くことも可能です。
本記事では、人材不足の根本原因から具体的な解決策等を詳しく解説します。
<最短翌営業日に開設>来店不要で休日・夜間も受付中!
法人口座開設のお申込方法やお得な特典等の詳細は、以下のページをご確認ください。
人材不足・人手不足の主な原因
人材不足が深刻化している背景には、少子高齢化をはじめとした社会構造の変化と、労働市場における働き方の多様化があります。
これらの要因は一時的なものではなく、今後さらに深刻化することが予想されるため、企業は長期的な視点での対応策が必要です。まずは自社の人材不足がどちらの要因に強く影響を受けているかを把握し、効果的な対策を検討しましょう。
少子高齢化
日本の人口動態は急速に変化しています。
厚生労働省が発表した「令和6年(2024年)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2024年の合計特殊出生率は1.15と過去最低を記録しました。この数値は人口維持に必要とされる2.07を大幅に下回っており、労働力人口が継続的に減少していることを示しています*。
さらに深刻なのは、経済活動の中核を担う生産年齢人口(15~64歳)の減少です。この傾向は今後も続くと予想され、企業が採用できる人材の絶対数は、慢性的に不足する状況が続くと考えられるでしょう。
雇用の流動化
従来の「終身雇用」という価値観が薄れ、労働者のキャリアに対する考え方が大きく変化しています。転職市場の活性化やフリーランス人口の増加により、優秀な人材ほど流動性が高まる傾向が強まっています。
この変化により、企業は人材を「確保する」だけでなく「定着させる」ための戦略がより求められるようになりました。単に採用活動を強化するだけでは根本的な解決にならず、多様で柔軟な働き方ができて、働きがいのある職場環境の構築が不可欠です。
有効求人倍率が高く人材不足が顕著な業種
労働市場での人材不足の深刻度は、業種によって大きく異なります。厚生労働省のデータ(2025年3月時点)*を参考に、有効求人倍率が高い(=人材不足)職業を確認してみましょう。
| 順位 | 職業計 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|
|
1 |
建設躯体工事従事者 |
8.17 |
|
2 |
保安職業従事者 |
6.74 |
|
3 |
土木作業従事者 |
6.12 |
|
4 |
その他の技術者 |
6.06 |
|
5 |
建築・土木・測量技術者 |
5.82 |
|
6 |
建設・採掘従事者 |
5.11 |
|
7 |
機械整備・修理従事者 |
4.06 |
|
8 |
介護サービス職業従事者 |
3.81 |
|
9 |
採掘従事者 |
3.57 |
|
10 |
電気工事従事者 |
3.43 |
有効求人倍率とは、求職者1人に対してどれだけの求人があるかを示す指標で、1.0を超えると求人数が求職者数を上回る「売り手市場」を意味します。
特定の業種では有効求人倍率が極めて高く、構造的に人材不足な状態です。特に建設業や介護・社会福祉等では慢性的な人材不足が続いており、企業間での人材獲得競争が激化している様子が見られます。
専門的なスキルが求められる職種は人材の供給自体が少ないため、人材不足に陥りやすい傾向があります。
人材不足が事業に与える深刻な影響
人材不足は単純に「人手が足りない」という問題にとどまらず、企業経営のあらゆる側面に連鎖的な悪影響をもたらします。初期段階では労働環境の悪化から始まり、最終的には事業継続そのものを脅かす深刻な経営リスクへと発展する可能性があります。
これらの影響は相互に関連し、一度悪循環に陥ると抜け出すことが困難になるため、職場環境の改善や働き方改革の推進など、早期の対策が重要です。
労働環境の悪化
人材不足により従業員一人あたりの業務負荷が増大し、慢性的な長時間労働が発生します。その結果、休憩時間の確保が困難になったり、有給休暇の取得ができなくなったりするでしょう。
特に深刻なのは、人員に余裕がないため、一人が休むと他のメンバーへの負担が過度に増すことです。その結果、従業員が遠慮から有給休暇の申請に消極的になり、心身の健康を損なうリスクが高まります。
月の残業時間が45時間を超える従業員がいる場合や、有給取得率が50%を下回った場合は要注意です。また、「体調不良」での急な欠勤が増加している場合も、早急な対策が必要です。
従業員のエンゲージメント低下
劣悪な労働環境は、従業員に「安心して働けない」等の不満を生じさせ、組織に対するエンゲージメントの低下を招きます。人材不足により新しいスキルを習得するためのリソースが不足し、キャリアアップの機会も制限されるため、長期的に働くモチベーションが低下してしまうでしょう。
従業員のエンゲージメントが低下すると、特に優秀な人材から離職する傾向が強まります。有能な人材は他社からのオファーを受けやすく、現在の労働環境に見切りをつけて早々に転職を決断するためです。
従業員が「この会社にいても成長できない」と感じれば、離職者の増加を招く等、悪循環に陥ります。また、一人の退職により他のメンバーの負担が増加し、それが原因で別の従業員も退職を決意する連鎖反応も起こる可能性もあります。
定期的に従業員と面談の機会を設けたり、簡単なアンケートを実施したりして、従業員の満足度を測定しましょう。「仕事にやりがいを感じているか」「上司に相談しやすいか」「この会社で長く働きたいか」等の質問を通じて、エンゲージメントの変化を定点観測することができます。
生産性の悪化
人材不足は長時間労働につながり、既存の従業員へ大きな負荷をかける原因となります。疲労の蓄積により従業員の集中力や判断力、モチベーションが低下し、全体的な生産性が悪化するでしょう。
さらに深刻なのは、疲労によるミスの増加です。ミスが発生すると、その対応に時間と労力を割かなければならず、生産性がさらに悪化する悪循環に陥ります。この状況は、企業の競争力を根本的に損なう要因となるため、注意が必要です。
受注機会の損失と競争力の低下
人材不足により新規案件を受注するための体制を整えられず、機会損失が発生する可能性があります。また、人材不足により商品やサービスの品質が競合他社より劣ると、既存顧客の離脱も発生するかもしれません。
さらに、競合他社に潜在顧客を奪われ、中長期的な売上減少につながる恐れがあります。人材不足の状況では新しいアイデアの開発に十分なリソースを割けず、市場での競争力や優位性を失うリスクも高まるでしょう。
事業継続リスクの増大
人材不足により組織能力や競争力が低下すると、製品やサービスの品質低下や重大な事故・トラブルの発生リスクが高まります。その結果、取引先や顧客からの信頼を失い、企業経営が危機的状況に追い込まれる可能性があります。
さらに、少数の従業員に業務が集中し、属人化してしまうリスクも無視できません。その従業員が退職や病気により不在になった場合、業務が完全に停止し、事業の継続に支障をきたしてしまうでしょう。
人材不足を解決するための対策
人材不足の解決には、多角的なアプローチが必要です。既存の労働力の活用や外部リソースの効果的な活用、そして働きやすい職場環境の構築という3つの軸で施策を展開することが重要です。
これらの対策は単独で実施するのではなく、企業の実情に合わせて組み合わせることで、より大きな効果を期待できます。
女性の雇用・活躍推進
日本の女性就業率は国際的にも遜色ない水準にありますが、パート比率が高く、年齢が上がるほど正規雇用の比率が下がる傾向が見られます。
15~34歳の女性は他の年齢層と比較して、非労働力・失業から正規雇用へ移行する機会が多いため、この層への積極的なアプローチが効果的です。正規雇用としての就労意欲がある女性を採用すれば、人材不足を部分的に解消できるでしょう。
採用だけでなく、定着支援も欠かせません。具体的には、育児休業からの復職支援プログラムの整備、女性管理職比率の目標設定と昇進機会の積極的な提供等が挙げられます。
また、家庭内で育児や介護等の担い手となっている女性も少なくありません。安心して働ける環境を整備するために、時短勤務制度や在宅勤務制度、フレックスタイム制度を組み合わせた働き方の導入も検討しましょう。
高齢者の雇用・活躍推進
日本の高齢者(65歳以上)就業率は既に国際的に高い水準にありますが、高齢者の活躍の場をさらに広げる余地があります。現在、企業には65歳までの雇用確保措置(再雇用や継続雇用を含む)が義務化(70歳までの雇用確保措置は努力義務)されており、政府も就労意欲や能力のある高齢者の雇用促進を進めています。
65歳以上の高齢者を積極的に雇用することで、熟練技術と豊富な経験をいかせるだけでなく、人材不足の解消にもつながるでしょう。
ただし、一般的に高齢者は心身の衰えから、労災事故のリスクに配慮する必要があります。体力的負担の少ない業務への配置転換や柔軟な勤務形態等を通じて、年齢に関係なく安心して働ける環境を整備しましょう。
外国人の雇用・活躍推進
外国人も貴重な労働力として期待されますが、言語や文化の壁を乗り越えるための対策が必要です。採用と定着支援の面で考えられる対策は、以下の通りです。
- 多言語対応の採用サイト構築
- 外国人向けの企業説明会・面接プロセスの整備
- 入社時の日本語研修プログラムの実施
- 継続的な語学学習支援制度の導入
- 公正で透明性の高い人事評価制度の構築
- メンター制度やバディシステムの導入
- 外国人社員専用の相談窓口の設置
- 住居確保支援
- 宗教的配慮の実施
異文化理解研修を全社員向けに実施し、多様性を受け入れる組織風土を醸成することで、異なる文化的背景を持つ人材による新たなアイデアやビジネス機会の創出が期待できます。
リファラル採用・アルムナイ制度の導入
リファラル採用とは、企業が紹介相手の適性をよく理解している従業員から、友人や知人の紹介を受けて採用につなげる手法のことで、業務内容や会社の雰囲気に合った人材を見つけやすいというメリットがあります。社員紹介制度では、報奨金体系を整備し、採用時や一定期間の定着後にインセンティブを付与する方法が一般的です。
退職者ネットワークの活用と、アルムナイ(卒業生)制度による即戦力者再雇用機会の創出も検討すべきです。これらの手法により、人材紹介会社への手数料と比較して大幅な採用コスト削減を実現でき、企業文化や職場環境にマッチした人材の確保が期待できます。
外部委託(アウトソーシング)の活用
外部委託とは、特定の業務を外部の専門業者に委託することです。外部人材を活用することで、人的リソースが限られる中でもコア業務への人材集中を図れます。
その結果、生産性や専門性を維持でき、業務の停滞を防ぐことで、競争力強化のメリットがあります。
外部委託を導入する際には、業務を「コア業務(自社で行うべき)」「ノンコア業務(外注可能)」「専門業務(外注が有利)」に分類しましょう。経理・総務・人事の定型業務やITシステムの運用保守は、外注効果が高い領域です。
専門知識を持つ外部人材を活用することで、「採用による人件費>外注費」となる場合には、コスト削減効果も見込まれます。 また、外注により削減できた工数を営業や企画等の付加価値業務に振り向けることで、人材不足の状況下でも売上向上を実現できるでしょう。
スキルごとに外部委託人材を探すことが可能な「みずほココナラ」について詳しくはこちら
IT・DX推進による業務効率化・自動化
IT化やDX化により、データ入力・照合・レポート作成等の定型業務を自動化することで、従業員の業務負担を軽減できます。クラウドベースの統合業務システム導入により、部門間の情報共有と業務プロセスの効率化も図れます。
他にも考えられるITツールの導入例は、以下の通りです。
- 勤怠管理システム(労務管理の効率化)
- 会計ソフト(経理業務の自動化)
- 顧客管理システム(営業効率向上)
- チャットツール(コミュニケーション効率化)
業務を省人化し、人的リソースを生産性の高い業務に振り向けることで、企業全体の生産性向上を実現できます。これにより、ヒューマンエラーの削減や業務処理速度の向上、顧客サービス品質の向上が期待できます。
働き方改革の推進
従業員が働きやすい環境の整備は、人材定着の基盤です。勤怠管理システムを導入して労働時間を可視化し、残業時間削減目標の設定とモニタリングを行うことで、長時間労働を未然に防ぐことができます。
業務プロセスの見直しと効率化により、同じ成果をより短時間で達成できる仕組みを構築すれば、労働時間の短縮につながります。長時間労働の是正によって社員の健康維持と家庭生活の充実が図られれば、エンゲージメントが高まり、離職率の低下が期待できます。
段階的に残業削減を進めるための取組として、残業の事前申請制導入やノー残業デーの設定等が有効です。さらに、部署別・個人別で残業時間上限の設定を行えば、残業せずに成果を出せる仕組みを構築できるでしょう。
人材育成制度の充実化
人材定着の面では、人材育成制度を整備し、長期的な就業を支援する仕組みを構築することが効果的です。新入社員から管理職までの体系的な階層別研修プログラムの構築、キャリアステージに応じたスキル開発支援、外部研修・セミナー制度の導入等が挙げられます。
業務に関連する資格取得奨励金制度の導入、自己学習環境の整備は、従業員の自発的な人材育成を促進します。 モチベーションを高く維持するためにも、定期的なキャリア面談の実施や、個人の成長目標に基づいた育成計画の策定と、密なコミュニケーションの実施が重要です。
給与・待遇の見直し
競争力のある給与・待遇を用意し、優れた人材を確保しましょう。同業他社や市場水準との比較分析をしたうえで、給与体系の定期的な見直しと改定を実施することが重要です。
具体的な取組として、以下が挙げられます。
- 成果や貢献度に応じた評価制度の構築
- 成果連動型報酬制度の構築
- 透明性の高い昇格・昇進基準の設定
- 基本給以外のインセンティブ制度の導入
- 諸手当の充実化
- 福利厚生制度の充実化
- キャリア支援制度の導入
- 退職金制度や企業年金制度の導入
給与や待遇、福利厚生等の見直しを通じて、従業員が長く働きたいと感じられる環境を整備することで、長期的な就業継続が期待できます。
新規採用においても、競合他社よりも良い待遇を提供できれば、求職者から選ばれやすくなるでしょう。
柔軟な勤務形態の導入
時間や場所にとらわれない柔軟な勤務環境の整備により、育児や介護等の家庭事情を抱える従業員も安心して就業を継続できる環境が整います。
また、テレワーク制度やサテライトオフィスの導入、在宅勤務に必要なICT環境・セキュリティ体制の整備等が有効です。フレックスタイム制度の導入により、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な勤務時間を提供することも効果的です。
これらの取組を通じて、通勤時間削減による生産性向上と、地理的制約を超えた人材採用が可能になります。
専門人材への外部委託は「みずほココナラ」へ
新たな人材の確保を行っても、応募や選考が想定通りに進むとは限りません。また、雇用後にミスマッチが発生するリスクもあります。
しかし、外部委託を活用すれば「案件を受注したい」と考えている人に直接アプローチでき、人材確保がスムーズに進みます。また、保有しているスキルや経験等を事前に把握できるため、ミスマッチも起こりづらいでしょう。
みずほ銀行の法人口座を開設したお客さまは、「みずほココナラ」のサービス*をお得に利用できます。オンラインで会員登録から発注までスムーズに完結し、発注先と直接やり取りできるため、迅速に仕事を進められます。IT・マーケティング・財務・人事等あらゆる専門分野をカバーしており、必要なスキルを必要な範囲で柔軟に活用できます。
「自社でリソースを確保できない」「必要な人材を見つけられるかもわからない」という事業主の方は、ぜひご活用ください。
- *
対象サービス:みずほココナラスキルマーケット・みずほココナラ募集(単発・スポット依頼)。
上記のサービスは株式会社みずほココナラが提供しているサービスで、みずほ銀行が提供するサービスではございません。
まとめ
日本では今後も少子高齢化が進むと見込まれており、人材不足の問題は企業にとって継続的な課題となります。人材不足が深刻化すると、業務の生産性悪化から事業の継続に支障をきたすまで、企業経営に多面的な悪影響をもたらします。
人材不足の解決には、社内の職場環境整備と長期的に安心して働ける環境づくりが欠かせません。併せて、外部委託を活用して専門的な人材に業務を任せることも効果的な対策です。多角的なアプローチにより、人材不足を乗り越え、持続可能な企業成長を実現しましょう。
専門人材をスムーズに見つけたい場合は、ビジネスに関わる様々な領域のプロが登録している「みずほココナラ」をご活用ください。経営課題やデジタル人材の課題を解消できる人材とのマッチングを通じて、人材不足の解消と事業のスムーズな発展をサポートします。
<最短翌営業日に開設>来店不要で休日・夜間も受付中!
法人口座開設のお申込方法やお得な特典等の詳細は、以下のページをご確認ください。
監修者
羽場 康高
- 公認会計士
- 社会保険労務士
- 1級FP技能士
- 簿記2級
現在、FPとしてFP継続教育セミナー講師や執筆業務をはじめ、社会保険労務士として企業の顧問や労務管理代行業務、給与計算業務、就業規則作成・見直し業務、企業型確定拠出年金の申請サポートなどを行っています。