クールフライヤー株式会社/目指すは「揚げ物革命」!転換期の融資サポートに感謝

【ウェブサイト】
https://coolfryer.co.jp
熱い、危ない、汚い・・・そんな過酷なイメージが強い「揚げ物調理」の現場。美味しい料理の裏側で、どうしても避けて通れなかった様々な困難を克服する「クールフライヤー」をご存知でしょうか。開発者の山田 光二氏は、大手企業を退職後20年もの歳月をかけて、開発と検証を重ね、業界の常識に挑戦されてきました。国内大手チェーンだけではなく、海外からも注目を集め始めている「クールなフライヤー」への熱い想いと、会社設立から10年目という転換期に新たな金融機関として出会ったみずほ銀行とのエピソードを、お伺いしました。
クールフライヤー株式会社 会長 山田 光二
1950年、静岡県沼津市出身。早稲田大学第一文学部卒業。
日本ビクター株式会社で営業、技術企画室、商品開発研究所、ネットショッピング事業、情報システム部門などを経験し、2004年に54歳で早期退職。
2009年フライヤーの研究開発を開始、2014年クールフライヤー株式会社を設立。
———御社の事業内容について教えてください。
当社は、「クールフライヤー」という揚げ調理を行う機械の製造販売をしています。
———起業のきっかけを教えてください。
起業前は日本ビクター株式会社におりました。ネットショッピング事業では、前例のなかった「ネットで商品を購入、コンビニで受け取り」といった仕組みを提案し、社内起業で実装化しました。そんな経験から「いつか自分自身でも事業をやってみたい」という思いが強くなり、2004年、54歳で早期退職を決めました。そのタイミングで明確な事業計画があったわけではなく、自分のやりたいこと、できることを探す充電期間を経て再チャレンジが始まった形です。
———フライヤーとの出会いは、退職後ということでしょうか。
そうです。56歳くらいのときに、大学時代の友人に偶然再会し「仕事を手伝って欲しい」と頼まれました。それがフライヤー開発の仕事でした。
ご想像いただけると思いますが、揚げ物調理の現場というのは非常に過酷なんですよ。何が過酷かというと、まず暑い。匂いが充満していて衣服が油臭くなってしまう。それだけではなくて火傷をするとか、場合によっては火災のリスクもあります。また、油の交換も避けては通れず、そのコストや手間も含めて、非常に課題の多い現場です。当時開発に携わる中で、そういった実態を改めて知りましたね。
そのときに手伝った事業は、資金面の調達の苦労や複雑な構造ゆえの故障が重なり開発を断念することになりましたが、しばらくしてから人づてで、試作導入先の「揚げ物が美味しくなり売り上げが伸びていた」とか「厨房がきれいになった」「油の消費量が減った」という話を聞くことができたのです。それをきっかけに「もっとシンプルな構造で同等以上のフライヤーができれば、社会貢献にもつながる素晴らしい物になる」と確信し、一念発起しました。
2009年、まずは個人事業主として自宅の一室を拠点に独自に研究開発を始めました。そして、試作機完成後の2014年に法人化、そこから10年で今ようやく次の段階が見えてきたという感じです。
———フライヤー、というと、コンビニやファストフードのバックヤードでも見かける揚げ調理器のことですよね。その存在自体はもう一般的にも感じますが、御社の「クールフライヤー」はどんな点に特徴があるのでしょうか。
なぜそれが実現できるか、は後で述べますが、画期的な特徴は大きく2つ、①調理時に油はねが殆ど発生せず、②油が劣化しないフライヤーであるという点です。
まず1つめ、クールフライヤーでは極めて微細な油はねしか発生しません。その為、厨房の環境を清潔に保つことができ、油汚れの掃除も圧倒的にラクになります。清掃が容易になることで、人件費や清掃にかかる消耗品にかかるコストも減りますし、何より安全に気持ちよく働く環境が実現できます。油煙・オイルミストの発生も大幅に抑制され、火傷のリスクも防げます。
———揚げ物で油はねしない、なんて、常識が変わりますね!
これを実現するのは、主に油槽(油が入っている部分)とヒーターの独自構造と制御の技術です。食材についている水分が高温で蒸発して水蒸気になるときに油はねが発生しますので、水分を早く槽の下部に落とし、低温で“水のまま存在させる”ことができれば、油はねを防げるのです。実験を繰り返す中で「水分が油槽の下部の低温油層に沈殿する仕組み」を素早く、安定的に実現することに成功しました。
水分の多い野菜やフルーツ、水切りしていない豆腐など、従来のフライヤーでは油はねが激しく取り扱いにくかった材料も、食材そのものの水分は逃さず、カラッと美味しく揚げることができますよ。

———料理の幅もぐんと広がりそうですね。2つめの特徴「油が劣化しない」という点も、独自構造に秘密があるということでしょうか。
その通りです。実は、使った油が黒くなるのは、油そのものが汚れるのではなく、食材から出た微細な固形成分等の炭化によるものです。従来型のフライヤーや鍋などでは、揚げるときにぶくぶくとした気泡がたくさん発生しますが、それによって油が攪拌されると、不要な固形物はいつまでも熱い油の中に存在し続け、全体がどんどん汚くなってしまいます。当社の製品は、油層の中央で下降滞流を発生させる構造により余分なカスの落下沈殿も促進できるため、炭化は進まずに油を綺麗なままに保てるということです。

———食事は私たちの生活と切っても切れないものですし、揚げ物のハードルが下がることを喜ぶ人はたくさんいそうです。現在、どのような場所で「クールフライヤー」は使われていますか?
現在は飲食店が多いです。揚げ物がカラッと美味しく仕上がるという点はもちろんですが、小型店舗のオープンキッチンならではの課題、そのまま客席につながっているからこそ揚げ物調理をすると床や壁まで汚れてしまう・・・という悩みにも当社の製品は応えられているようです。室内やインテリアの状態を綺麗に長く保つことができ、店舗維持経費の削減にもつながる為、支持されているのかなと思いますね。
最近では、大手の高齢者向け介護事業者の施設にも入れていただきました。そのときの最大の評価ポイントは安全性ということでした。高齢者向け介護施設は特にそうなのですが、調理する方々の高齢化も進んでいるのです。重い油を移動させたり、熱い油で火傷をしたりというリスクが高いのですが、クールフライヤーを導入してみたところ、その負担が減り本当にラクで安全になったとのことでした。
———廃油削減の問題と働き手の高齢化問題、現代社会が抱える課題を解決してくれる商品であることがよくわかります。
SDGsへの取組は、どの企業も強い関心を持たれています。廃プラスチックと並び、廃油の削減が脱酸素に貢献できる度合はものすごく高いです。そういったところに課題意識を持つ企業からお声をかけていただくことも増えました。
———より規模の大きな調理現場にも対応できるよう、容量の大きい新製品を開発中と聞きました。
現在ご好評いただいている製品は、油の容量が7リットルで製品名はCFT-7です。2024年10月*に正式発表したCFT-18xは、より調理量が多いお客さま向けに油が18リットル入りますが、単純に容量が増えたというだけでなく、追加油のリザーブ機能や調理を止めずに揚げカスを外に取り出すことができる機能を追加し「x」という名前に込めました。大きめのレストランチェーンやスーパーの総菜調理の現場、そういうところにも必要とされていくと感じていますし、多くの方に使っていただけるのが楽しみです。
- *2024年11月より一都三県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)で販売開始、2025年初頭より全国展開を予定(2024年10月時点)
———どういったきっかけで、数ある銀行の中からみずほ銀行を選んでくださったのでしょうか。
資金調達関連でインターネット検索をしていたときに、みずほ銀行さんのやっているイノベーション企業支援プログラム「M’s Salon」というサービスの特集を目にしたのがきっかけでした。読んでみると、スタートアップや民間企業に対して色々な機能を提供していただけるということでしたので興味を持ちましたね。特に我々のような会社では、資金調達というところが最も重要な課題の1つですが、「M’s Salon」に入るとそういった投資家のネットワークができる可能性も広がり各種情報提供も受けられるということで、みずほ銀行さんへコンタクトをしてみました。そのときに、口座開設のご案内もいただき利用が始まりました。
———実際にウェブ面談で法人口座開設をされてみて、どのようにお感じになりましたか。
当社の場合、お客さま訪問や工場の視察などを除く日常業務はほとんどリモート(ウェブ面談)で行なっています。ですから、みずほ銀行さんの法人口座開設も店舗に出向くことなくスイスイ進み、それが当社にとっての普通というか、全くストレスは無かったですよ。
———その後の取引で印象的だったことはありますか?
一番ありがたかったのは、口座開設をした年に、長期資金に対応いただけたことです。その少し前に日本政策金融公庫さんの融資もいただいており、民間金融機関として続いてもらえたことは、当社にとって非常に良い流れとなりました。
———融資の際に、エンゲージメントオフィス(リモート営業部隊)とのやり取りが複数回あったかと思いますが、やりとりはスムーズでしたか?
一般的に我々のような会社が、銀行から融資を受ける為には、それこそ書類がものすごく多くて大変です。けれども、今対応していただいているエンゲージメントオフィス*では、もちろん書類の提出はありますが、電話やメールなどのフォローも手厚く、書類の出し直しなどもほぼなかったと記憶しています。本当に短期間でスピーディーに進んでいったという印象でした。
- *エンゲージメントオフィス・・・中小企業のお客さまに伴走するリモート営業組織
———M’s Salonの会員として、イノベーション企業支援部とのご接点もおありのようですね。
はい、エンゲージメントオフィスのご担当とは別に、これからの拡大フェーズに向けて、ということで事業計画や資金調達の面で各種情報提供をいただいています。

———これからも、みずほ銀行が、御社の成長のよいパートナーでい続けたら嬉しく思います。最後に今後の展望をお聞かせください!
今、ようやく離陸への助走が始まったところだと思っています。来年の計画では、販売数量は相当伸びる予定となっていますが、この「クールフライヤー」をまずは国内で様々な業種の方に使っていただければと思います。さらにその先では、必ず世界でも必要とされると確信していますので、今後はそういった海外への展開も見据えています。