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どう変わる? 「令和5年度版税制改正」の要点

掲載日:2023年4月3日財務資本戦略

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令和4年12月、自由民主党・公明党の連立与党は、「令和5年度税制改正大綱」を公表しました。
その内容から、令和5年度(2023年度)以降に実施される税制改正の方針を知ることができます。

今後の税制がどのような方針により、どのように変わっていくのかによって、ビジネスパーソンや、企業における活動も影響を受けます。
本稿では税制改正大綱に沿って、特に、ビジネスパーソンが抑えておきたい項目に絞り、要点を確認していきましょう。

中小企業の「稼ぐ力」を後押し

大綱の冒頭、基本的な考えの中で、1.「貯蓄から投資へ」、2.「成長と分配の好循環」、3.「公平で中立的な税制」という項目が掲げられています。

1.と2.は、岸田政権が経済政策の柱として打ち出す「資産所得倍増プラン」とリンクするものです。
税制優遇等の政策誘導によって、産業や人材への「成長投資」を促し、2,000兆円に及ぶ個人金融資産や、500兆円に及ぶ企業の内部留保をいかすことで経済を活性化、日本経済の成長軌道を確かなものにすることが狙いです。
一方で、3. は近年拡大している世代間の経済格差、税の不公平感を是正することが目的といえるでしょう。

今回の税制改正の中では、中小企業の設備投資等への支援がいくつか盛り込まれています。

中小企業においては、近年のコストプッシュ型の物価上昇等により、収益環境の悪化が懸念されており、生産性の向上や経営基盤の強化を促すため、支援の重要性が高く見られているのです。

支援の一つに「中小企業経営強化税制の延長」があります。
中小企業経営強化税制とは、中小企業の稼ぐ力を向上させる取り組みを後押しすべく、中小企業等経営強化法による認定を受けた計画に基づく設備投資について、即時償却か税額控除(10%、資本金3,000万円超の場合は7%)のいずれかの適用を認める措置です。

この適用期間が2年に延長されました。
該当する設備には160万円以上の機械装置、70万円以上のソフトウェア等があります。

また、「中小企業投資促進税制の延長」も注目される支援です。
中小企業投資促進税制とは、中小企業における生産性向上を図るため、一定の設備投資を行った場合に、税額控除(7%、資本金3,000万円以下の中小企業者等に限る)または特別償却(30%)の適用を認める措置のことを指します。

物価高や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を鑑み、適用期間を2年延長します。
1台160万以上の機械および装置、車両総重量3.5t以上の貨物自動車等が該当します。

他にも、「設備投資に関する固定資産税の特例措置の新設」「中小企業者等の法人税率の特例の延長」等の支援策があるので、気になる方は、国税庁のサイトより詳細を調べてみてください。

可能性を秘める「スタートアップ」を支援

今回の税制改正でもう一つ、「貯蓄から投資へ」と「成長と分配の好循環」を促す目玉の新制度と見られているのが、「スタートアップ企業への再投資に係る優遇措置」です。

スタートアップ企業とは起業したばかりのベンチャーなので、規模はまだ小さいものです。
しかし、今をときめく巨大企業の多くも、元はといえばスタートアップ企業。
例えば、「テックジャイアンツ」とも呼ばれ、現在の世界経済を牽引するIT企業5社、通称「GAFAM」も、創業時には小さなベンチャーでした。
つまり、スタートアップ企業は小さくても、大きな成長可能性を秘めているのです。

日本では、かつての経済成長期にたくさんのスタートアップ企業が生まれていましたが、近年、欧米等に比べるとその数が少なくなり、このことが「経済成長を阻害している一因」とも指摘されています。
そこで、政府与党はスタートアップ創出へのインセンティブとして、税制面で優遇し、バックアップすることにしたわけです。

スタートアップを創業する際には、資金不足や損失リスクが大きな足かせになります。
そのため、創業者を資金面で支えるとともに、資金が集まりにくい創業初期に「エンジェル投資家(起業して間もない企業に資金を出資する投資家)」等からの出資を引き出すため、スタートアップに投資する場合の優遇税制を設けることで、資金供給を増やす狙いです。

個人が株式を売却して、一定条件(設立5年以内、設立後の各事業年度が赤字状態等)を満たすスタートアップ企業の株式に再投資する場合、株式の譲渡所得から株式取得に要した金額が控除されます。
再投資した株式を譲渡する場合も、譲渡益には20億円まで課税されません。
一方で、譲渡損が出た場合、他の株式譲渡益との損益通算、3年間の繰越控除の適用対象にもなります。

また、企業に対しても、スタートアップ企業への投資を促します。
一般企業がスタートアップ企業に出資した場合、投資額の25%相当額を所得控除できる「オープンイノベーション促進税制」がありますが、今回の税制改正では、株式の発行法人への現金出資だけでなく、発行法人以外の者から既発株式を取得した場合でも、一定条件を満たせば、所得控除の対象となるのです。

また、一定の条件を満たした「ストックオプション」の権利行使期間を、10年から15年に延長する措置も講じるとしています。

これらの措置により、経済成長の引き金になるようなスタートアップへの投資が、税制面から促進されることになりました。

「インボイス制度」に対する懸念に配慮

今回の税制改正では、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」についても、大きな注目が集まりました。

インボイス制度による消費税の「仕入税額控除」は、令和5年10月からスタートします。
制度が始まれば、課税事業者は仕入れ先からインボイス交付を受けたケースでしか、仕入税額控除を適用できません。
交付ができるのは、「適格請求書発行事業者」だけであり、適格請求書発行事業者として登録すると、消費税の免税事業者ではなく課税事業者となるため、消費税の納税義務が生じることになります。

制度の運用に対しては、いくつかの懸念点が指摘されてきました。
一例としては、免税事業者として活動を続ける零細企業や個人事業主は、買い手側の税負担が増えることから、取引を打ち切られてしまうリスクが高まり、他方、適格請求書発行事業者として登録すれば、納税額が増えることになります。
その結果、「零細企業や個人事業主の不利益を招く」のではないか、というものです。

令和5年度税制改正大綱の内容では、免税事業者からの仕入れについて、令和8年10月までは80%、令和11年10月までは50%を「仕入税額控除可能」とする他、免税事業者が課税事業者を選択した場合、令和5年10月から3年間は、納税額を売上税額(本来納めるべき消費税額)の20%とする経過措置を設けることとなりました。

加えて、消費税課税売上高が1億円以下の事業者は、令和5年10月から6年間、1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみでも仕入税額控除ができるようになりました。

これらの措置により、免罪事業者との取引減少を防ぐ狙いや、免税事業者のインボイス制度登録によるデメリット軽減をめざした内容といえます。

おわりに

令和5年度税制改正大綱の中で、ビジネスパーソンに関連度が高い内容について紹介してきました。
特に経営者の方にとっては、経済を支える中小企業への支援、これから大きく飛躍する可能性を秘めたスタートアップへの投資促進等が注目点です。
また、インボイス制度の懸念点に対する配慮も重要でしょう。

税制改正によって、ビジネスは少なからず影響を受けます。
ぜひ、ご自身でも官公庁のウェブサイト等から、気になった項目をさらにチェックしてみましょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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