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年末調整とは?確定申告との違いや手続きを徹底解説

掲載日:2021年11月1日財務資本戦略

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「年末調整」は毎年、バックオフィス業務の一大イベントです。年末調整は納税という観点から必要な手続きで、従業員にも様々な書類提出を求めることになります。しかし、書き方の問い合わせや遅延、紛失への対応などに追われ、多くの企業で書類を回収する初期業務に苦慮しているそうです。
本稿では、従業員に周知する際に役立つ「年末調整と確定申告の違い」や基礎知識について解説します。

「年末調整」とは?「確定申告」との違いは?

「年末調整」とは、端的にいうと「所得税の過不足を精算する手続き」のことをいいます。

フリーランスや個人事業主の場合、毎年2月から3月の期間で、税務署に前年1月から12月の所得を申告します。そして確定した所得から算出された税額を一括、または分割して支払います。このときの所得の申告手続きが「確定申告」です。

一方、企業に勤める会社員の場合は、個々人の所得税は企業が代わりに納税しており、社会保険料や住民税などとともに毎月の給与や賞与から天引きされています。しかし、この時点の所得税はあくまで概算で算出されたものであり、正しい税額ではありません。その年の所得額が確定した時点で再計算し、正しい税額で納税する必要があります。その際、算出された正しい金額とこれまで概算で徴収した金額を比較し、過不足分を従業員に還付または追加徴収することが、年末調整の役割となります。

基本的に、年末調整を行っている従業員は、個人で確定申告する必要がないケースが大半です。しかし、副業・兼業などで他に所得がある場合や、医療費控除など年末調整で対応できない控除を受ける場合は、自社での年末調整をしたうえで、従業員本人が確定申告を行う必要がありますので、年末調整の際に確定申告も行うよう従業員に周知しておきましょう。
もし従業員が副業や兼業をしている場合、副業・兼業先とどのような雇用契約になっているかによって、確定申告の方法が変わります。

副業・兼業先で雇用契約を結んでいる場合は、給与所得として確定申告をします。その際、副業・兼業先から年末調整を行っていないことを示す源泉徴収票と、自社の年末調整済みの源泉徴収が必要となります。
一方、フリーランスや個人事業主として契約している場合は、自社からの収入を「給与所得」、副業・兼業での収入は「事業所得」として確定申告を行います。給与所得の証明には、自社の年末調整済みの源泉徴収票が、事業所得の証明としては副業・兼業先が発行した支払調書)が必要です。

ただし、副業・兼業先での収入が年間20万円未満であれば、確定申告は不要です。

年末調整のスケジュール

年末調整は、おおむね10月下旬から11月頃にスタートし、1月下旬までかけて遂行するのが一般的です。

まずは、労務担当者が税額計算に必要な情報を従業員から受け取ることからスタートします。このときの書類の作成から提出するまでを一般的に「年末調整手続き」と呼びます。
企業によってスタート時期は異なりますが、多くの場合は11月下旬頃から関係書類の回収が始まります。

しかし、各申告書が提出されれば、"年末調整は終わり"というわけではありません。

従業員が提出した書類は、労務担当者によって整理され、納税者の個人的な事情から税負担を調整する「所得控除」の計算に使用します。従業員から回収した申告書に誤りがあると、年末調整業務のやり直しなどが起こり、遅延など業務に支障をきたします。そのため労務担当者は、回収後も記載内容のチェックに追われます。
特に保険料控除を受ける場合は、各控除証明書の提出も必要になるため、提出書類に漏れや記入ミスがないかも丁寧に確認しなければなりません。
しかも、同時期には人事評価や賞与の計算など、その他の業務もたくさんあります。そうした他業務の進行なども考慮されたスケジュールになっているため、期日までに必要書類が提出されない場合、年末調整ができず、従業員が自ら確定申告をすることにもなりかねません。

年末調整がスムーズに実施できるかどうかは、「書類の回収プロセスで決まる」ともいわれています。年末調整の手続きについて告知する際には、提出の期日を守るようしっかり周知しておきましょう。

そして、書類がそろったら、年収から様々な控除を行い、年税額を計算します。12月の給与明細・賞与明細もしくは個別の明細書にて過不足税額を還付または徴収し、源泉徴収票を発行して従業員に配付します。最後に法定調書にとりまとめ、翌年1月31日までに所轄の税務署に提出・納付して、すべての年末調整業務が終了となります。

年末調整手続きで提出が必要な申告書

年末調整に必要な申告書には、次の6種類があります。

  1. 扶養控除等(異動)申告書
  2. 基礎控除申告書
  3. 配偶者控除等申告書
  4. 所得金額調整控除申告書
  5. 保険料控除申告書
  6. 住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)

紙で申告する場合、上記②・③・④の申告書は、1枚に3種類の申告ができる様式になっています。そのため、紙での手続きでは4枚の申告書用紙を提出することになります。
他にも、各種保険料の控除証明書や非居住者の親族に関する証明書など、必要に応じて申告内容を証明する書類の添付が必要になります。特に保険料の控除証明書は、一般的に10月頃から自宅に送られるため、従業員には提出までなくさないよう周知しておくことも大切です。

年末調整で受けられる控除・確定申告が必要な控除

所得控除には15種類の控除がありますが、なかには年末調整での控除計算が認められておらず、確定申告が必要なものもあります。
こうしたものは、「確定申告だけをすれば良い」と間違えられやすいのですが、年末調整をしたうえで確定申告もする必要があるので、従業員にその旨を周知しておきましょう。

年末調整で受けられる控除は以下の通りです。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除・配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 住宅ローン控除(2年目以降)

なお、住宅ローン控除については初年度のみ確定申告が必要で、2回目以降は年末調整で控除できます。

一方、確定申告でしか受けられない控除は以下の通りです。

  • 医療費控除
    保険金で補填した分を除く実質の医療費が10万円を超える場合や、対象となるOTC医薬品の購入費が12,000円を超える場合は、医療費控除が受けられます。
  • 寄付金控除
    国や地方公共団体への寄付、ふるさと納税、特定公益増進法人などへの寄付は、寄付金控除の対象となります。
  • 雑損控除
    災害または盗難や横領によって資産に損害を受けた場合などには、雑損控除を受けることができます。

年末調整をしなかったらどうなる?

年末調整は、所得税法で定められた雇用主の"義務"となっています。 企業が年末調整をしなければ、従業員は払いすぎた税金が還付されないことになります。そのため、正しく行っていない企業には、次のような罰則が課せられることとなります。
年末調整をおこなわず、従業員から正しい税額を徴収しなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(所得税法第242条)。
年末調整をおこなったが、追加の徴収額を納付しなかった場合は、10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方(所得税法第240条)。

ただし、年末調整をしない理由が企業の過失ではなく、「書類を紛失した」「間に合わない」など従業員側の理由であれば、3月15日までに従業員本人が確定申告を行うことで対応ができます。
とはいえ、年末調整業務で行う面倒な税額計算を従業員自らが行うことになるため、確定申告での負担をしっかり従業員に伝え、年末調整を必ず行うように指導しましょう。

おわりに

年末調整は、企業に実施義務のある業務とはいえ、業務量が多いうえに年々申告内容も複雑化しており、担当者の負担は大きいといえます。
本稿を参考に今一度、年末調整の意義や基礎知識を整理し、早めに準備を進めるようにしましょう。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「年末調整とは?対象者・確定申告との違い・効率的な手続きのしかたなどを徹底解説(https://www.obc.co.jp/360/list/post182)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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