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令和5年度版「年末調整」はここが変わる!

掲載日:2023年11月1日生産性向上

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年末が近づいてくると、考えなければならない年末調整。昨年と同じ処理をするだけでは、ミスにつながってしまうかもしれません。特に企業の総務や人事労務を担当している方は、税制改正によって変更点があることに留意しておく必要があるでしょう。
本稿では、令和5年度版の年末調整で変わるポイントを解説するとともに、次年度に向けて知っておくべき内容もチェックします。

手続きを誤ると、社員に余計な負担がかかることも

年の瀬に向けて、企業のバックオフィスは1年を締めくくる業務で忙しくなっていきます。
なかでも年末調整は、大きなウェイトを占めるといってもいいでしょう。

年末調整をしなければならない理由は、企業が社員に給与を支払う際、所得税や住民税を源泉徴収していることに起因します。
実は、給与所得者が年間で実際に支払わなければならない税額と、源泉徴収の額には乖離があることがほとんどです。
なぜなら、源泉徴収の額は“毎月の給与が変動しないもの”として計算されています。実際には残業が発生したり、なんらかの手当てが支給されたり、あるいは給与自体が変動したりと、一定ではありません。

また、所得税や住民税の控除となる要素があることも一因です。
例えば、給与所得者が生命保険や地震保険といった控除の対象となる制度に加入しているかどうかは、源泉徴収に加味されません。扶養家族がいることも控除の対象となりますが、1年の間にその人数が変わることもあるでしょう。

そのため、しっかりと年間の給与額が確定したうえで、給与所得者から上記の控除となる要素について申告を受け、あらためて正確な納税額を計算し、実際に納税している額と、本来納税すべき額の差を精算するのが、年末調整です。
これは、企業が社員に対して負っている義務でもあります。

このように給与所得者の納税額を適正なものにするのが年末調整であるため、税制改正の影響を色濃く受けやすいのも特徴です。だからこそ、企業の総務や人事労務の担当者は、そうした情報をキャッチアップしていかなければなりません。
年末調整の計算や処理を誤ってしまうと、納税すべき税額が納付されない状態になってしまい、延滞税や加算税が科されてしまうこともあります。
社員に余計な手間や金銭的な負担がかからないよう、細心の注意を払って進めましょう。

2023年に押さえておくべき、3つのポイント

ほぼ毎年のように変わる年末調整の内容ですが、もちろん2023年も従来からの変更点があります。
令和5年度版の年末調整で、昨年から変わるポイントは以下の3つです。

1.非居住者である扶養親族の範囲

ここでいう非居住者というのは所得税法上の用語で、日本国内に生活の本拠である住所、あるいは現実に居住している場所である居所を有しない人を指しています。
従来は16歳以上であることが要件でしたが、2023年1月からは範囲が狭くなってしまったのです。

具体的には「年齢16歳以上30歳未満の人」か「年齢70歳以上の人」となり、30歳以上70歳未満の人は除外されてしまいました。
ただし、「留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人」「障害者」「扶養控除の適用を受けようとする所得者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている人」のいずれかに該当する場合は、30歳以上70歳未満の非居住者であっても扶養の対象となります。

2.退職手当などを有する配偶者・扶養親族

令和5年度の年末書類提出書類に、「退職手当などを有する配偶者・扶養親族欄」が追加となりました。
これは主に住民税に関する内容で、受け取った退職金を住民税控除の所得要件には含めないとなっています。
しかし、所得税の控除要件としては対象外となっているので、注意が必要です。

3.住宅ローン控除適用対象の所得要件

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して新築や中古住宅の購入、リフォームや増改築をした場合に、所得税や住民税が控除される仕組みです。

今回の変更では、対象となる新築住宅の種類が増えました。従来は「認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)」のみでしたが、変更によって「ZEH水準省エネ住宅」と「省エネ基準適合住宅」が追加されたのです。
加えて、新築住宅の控除期間が10年から13年になったり、借入限度額が住宅の性能などによって分けられ、新築で高性能な住宅であるほど控除額が増えたり、2022年12月末までだった入居時期が2025年12月まで延長したりするなど、細かい変更点も見られます。

上記のような範囲の拡大があった一方で、控除率や所得制限が引き下げられたり、一定の省エネ性能基準を満たす住居でしか住宅ローン控除の適用を受けられなくなったりという厳しくなった部分もあるので、しっかりとチェックしておきましょう。

次年度以降に向けて、準備しておこう

既に、令和6年度以降の年末調整で対応しなければならない内容が出てきています。
今のうちから頭に入れておき、来年の年末に慌てて準備することがないようにしましょう。
主なポイントは、以下の4つです。

1.「扶養控除等申告書」の提出

これまでは必要な項目をすべて記入する必要がありましたが、前年の申告内容から変更がなければ、その旨を書くだけで提出できるようになる予定です。

2.「保険料控除申告書」記載事項

2024年10月1日以降に提出する「保険料控除申告書」では、申告者が保険料を負担している親族や、生命保険の保険金などの受取人との続柄を記載する必要がなくなることが予定されています。

3.国外居住親族への「送金関係書類」

国外居住親族に係る扶養控除などの適用を受ける場合、その人の生活費、あるいは教育費を支払った「送金関係書類」の提出が必要です。
現在は金融機関やクレジットカード発行会社が発行した書類で、上記が明らかな内容のものに限定されていますが、2024年以降は電子決済手段の移転による支払いを証明する書類が追加される予定となっています。

4.住宅ローン控除申告書への借入金残高証明書

2023年1月1日以降に購入した住宅については、これまで住宅ローン控除を受けるために必要だった「借入金残高証明書」の添付が必要なくなりました。
これが年末調整に関係してくるのは令和6年度版からなので、留意しておくと良いでしょう。

このように、細かな変更が非常に多いのが年末調整です。
そもそも複雑な作業でもあるので、必要に応じて税理士や社会保険労務士などの専門家から助言を受けることも、企業として間違いのない手続きをする一つの手です。

また、昨今のDX推進においては、給与や所得税の計算をはじめ、年末調整のデータ管理や提出書類の回収に有用なITツールが数多く登場しています。
特にクラウドベースの会計ソフトや人事管理システム、電子申告システムなどは煩雑な作業を自動化できるとともに、今回紹介したような細かな変更点を自動的にアップデートしてくれるものも多いので、ミス防止にもつながるでしょう。
これを機に、導入を検討してみても良いかもしれません。

おわりに

年末調整は企業にとっても、働く社員にとっても、非常に重要な手続きです。
毎年9月に正式版が公表される年末調整関係書類は、7月ごろになると変更の様式案が国税庁のウェブサイトで公表されるので、それをしっかりチェックするのは必須の作業といえるでしょう。
また、税制改正に関する最新情報もこまめにインプットして、社員にも正確な情報を提供できるようにすることも、バックオフィスの責務といえます。本稿を参考に、年の暮れに向けて準備を進めてみてください。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※記事内の情報は、本記事執筆時点の情報に基づく内容となります。
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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