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「経理DX」はじめの一歩

掲載日:2022年7月1日生産性向上

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昨今、テレワークの普及を背景に、バックオフィスでもDX(デジタル・トランスフォーメーション)が浸透してきました。しかし、経理部門は紙での事務処理が多く含まれる業務の特性上、DXが遅れてしまうケースも目立ちます。
しかし、「電子帳簿保存法」の改正等によって、経理部門のデジタル化は以前よりハードルが下がっているのです。本稿では、会社全体の業務効率化や生産性向上が期待できる、「経理DX」を始める際のポイントについて、解説していきます。

経理部門のDXが遅れる背景とは

企業がDXを推進していく中で、経理部門もその例外ではありません。しかしながら、情報システムや営業等の他部門に比べて、経理部門のDXは後回しになりがちです。
最大の理由として、日本企業における紙文化への根強い依存があげられます。

紙の契約書や請求書を発行し、保管することが必須である企業は、まだまだ少なくないでしょう。
また、それらの資料に加え、出張交通費の仮払いや精算でも押印が必須とされ、コロナ禍でテレワークが普及する中であっても、経理部門の担当者は、印鑑を押すためだけに出社を強いられてしまったこともあるかもしれません。

こうした文化は、果たして本当に必要なのでしょうか。
例えば、取引先からPDFで届いた請求書を、わざわざ印刷して社内で提出していたとします。
この場合、経費精算をシステム上で行い、請求書はデータで社内共有することができれば、紙代もかからず、プリンターがない自宅からでもすぐに処理できるでしょう。

実際、紙文化の強制は惰性で続けられていることも多く、全社的にペーパーレス推進の意識を持ち、一部の必要書類や手続きをデジタル化することで、経理業務が効率化できる可能性があります。

さらに、ITツールを導入する際の高額な初期費用も、業務のデジタル化を阻む要因の一つとなっています。
新たなシステムの導入には、決して安くはない費用がかかりますし、DXに消極的な企業では、特に管理部門のデジタル化への投資を、かける必要のないコストと判断してしまいがちです。
現状の仕組み、つまりは人の手で業務が回っていれば、急いでデジタル化を進めなくても構わないだろう、と考えてしまうからかもしれません。

そのほか、社内にITリテラシーを持つ人材がいないことを懸念し、二の足を踏む担当者もいるでしょう。
しかし、業務のデジタル化に資するような最近のシステムは、幅広い企業に利用してもらうべく、わかりやすい設定になっていたり、ベンダー企業の手厚いサポートが付いていたりするため、高度なITリテラシーが必要ない場合も多くあります。

経営者やマネジメント層、現場担当者が考えるべきなのは、DXの推進によって期待できるメリットに対し、ITツールの導入は高い買い物なのか、ということです。
少ない予算の中でシステムを試してみたい……という場合には、クラウド型のシステムを選択することで、自社内にシステムを設置するオンプレミス型に比べて手軽に始めることもできます。

経理部門のDXを進めるためには、まず紙文化から脱却することを会社が支持し、業務のデジタル化に向けた道筋を探る意識が重要です。
そのうえで、システムの導入によって、どの程度、業務効率化や生産性向上に寄与するのかを前向きに考え、費用対効果を算出することも必要でしょう。

ITツールを提供するベンダー企業では、導入を検討するにあたって、費用対効果の算出を手伝ってくれることも多いので、まずは相談してみるのも良いかもしれません。

デジタル化で会社はどう変わる?

2020年1月に改正施行された「電子帳簿保存法」では、データを保存する際の様々な制限が緩和され、会計書類の電子化におけるハードルが下がりました。
例えば従来、国税関係帳簿・書類の電子データ保存や、スキャン保存の導入に際し必要だった、税務署長による事前承認が不要になったことも、その一つでしょう。
これにより経理業務のデジタル化、ペーパーレス化を図りやすくなり、DX推進を後押ししてくれるものと期待されています。

経理業務には、書類作成やデータ入力等の単純作業も多く含まれるでしょう。
それらを紙ベースで行っているとすれば、デジタルベースでの運用に移行することで、作業効率の大幅な改善が期待できます。
定期的に発生し、正確性の求められる定型業務のデジタル化は、手作業によるヒューマンエラーを防ぐことにもつながるのです。

また、ペーパーレス化することで、用紙代や印刷費用、郵送費用等が不要となります。
この恩恵を受けるのは、経理部門だけでなく、一連の業務に関係する全社員です。
紙の書類を作成するための物理的なコストや郵送にかかる手間、資料を保管するためのスペース等を削減でき、会社の資源を有効活用することにつながるのです。

さらに、書類やマニュアルを社内クラウドやイントラ上で共有することにより、属人化していた作業、ノウハウが展開され、特定の経理担当者でなければわからない、という煩わしさからも解放されることでしょう。

このように、経理部門のデジタル化は担当者の負担を軽減するとともに、実は全社的なストレス減少、利益の増加につながりやすい施策でもあるのです。

「見える化」と「意識改革」が成功のポイント

デジタル化を成功させるためには、まず経理部門全体の業務を洗い出すことが必要です。
現状の業務フローを作成し、発生している作業を「見える化」しましょう。

そして現状を把握したうえで、各フェーズで抱えている課題を抽出します。
どの業務をデジタル移行することが可能で、かつ、どのくらいの改善が見込めるのか、一つひとつ確認していきましょう。

業務効率化が望めないものに関しては、無理にデジタル化する必要はありません。
DXは業務効率化や生産性向上における一つの手段であって、それ自体が目的になってしまうことは非常に危険です。

これからDXを推進していこうとする企業では、「とりあえずシステムを入れてみよう」と考え、自社経理部門におけるデジタル化の方向性や必要性が定まらないまま、ITツールを導入してしまうことも散見されます。
その結果、導入したシステムの機能が、自社の求める基準に達していなかったり、逆に高機能過ぎて、本来必要ない無駄なコストを払うことになりかねません。

だからこそ、事前に業務フローと課題を洗い出し、自社にとって必要なシステムや機能を見極めることが肝要です。

また、ペーパーレス化という観点においては、社内全体で、紙を用いたコミュニケーションを意図的に減らすことも大切でしょう。
紙の使用を悪とはいい切れませんが、アナログからデジタルへの移行を進める中、これまでの習慣でつい紙を使用してしまうと、意識がペーパーレスに向かず、移行が停滞してしまう懸念があります。

こうした社内全体での意識改革は、経理部門のデジタル化を進めるうえで非常に重要なポイントです。経理部門は他部署との関係が深いことから、全社的な協力を得なければ、DXはなかなか進みません。
ただ、経理部門の負担が減るから、という単純な理由だけを提示して、勝手に進めると、他部署から反感を買い、協力してもらうことが難しくなってしまうこともあるでしょう。

なぜ、今までの方法を変えるのか、それによって、会社としてどんなメリットがあるのか、各部署で必要な作業はどう変化するのかを、しっかりと周知し、全社一丸となって、DXを推進していかなければなりません。
取引先に対しても、請求書の電子化等を理解してもらう必要があります。お互いのメリットを説明し、協力を求めましょう。
DXを進めている、先進的な意識を持っている会社として、社外へのアピールにもつながるのではないでしょうか。

経理DXに役立つシステム

経理部門のデジタル化に役立つシステムには、様々なものがあります。
前述したように、自社の経理業務をしっかりと洗い出したうえで、最適なシステムを選びましょう。
ここでは三つのシステムを紹介します。

<クラウド会計ソフト>
クラウド会計ソフトは、企業の会計業務を効率的にこなすことに役立ちます。
決算をはじめ、収支の自動計算、入力データの自動集計、各種書類の作成等も自動化することが可能です。
クラウド型なので、インターネット環境さえあれば場所を問わず利用することができ、テレワーク推進にも有効でしょう。

<経費精算システム>
経費精算システムは、社内全体で利用できるシステムです。
経費の申請や承認をシステム上で行うことができ、これまで経費申請に要していた、書類作成や印刷等の手間が不要になります。

<電子請求書システム>
電子請求書システムは、請求書を電子データとして作成・管理するシステムです。
PDF等の形式で請求書を作成・管理することができるため、紙の書類を用意したり、郵送したりする作業を削減できます。
電子印も合わせて導入することによって、出社を伴う業務を大幅に減らすこともできるでしょう。

昨今、こうしたITツールは多岐にわたっており、それぞれの分野でも数多くのベンダーがシステムを提供しています。
そのため、どれが自社に合っているのか、どのシステムが使いやすいのか、選ぶことが難しくなってきているでしょう。
最初は、なんとなく名前を聞いたことのあるシステムに興味を惹かれるかもしれませんが、経営者やマネジメント層と、現場担当者が一緒になって情報収集し、複数のシステムを比較検討することが重要なのです。

おわりに

DXが声高に叫ばれている現在でも、経理業務をマンパワーに頼っている企業は少なくないでしょう。
目の前にある業務で手一杯となり、デジタル化の必要性は理解しているものの、手が回らないということもあるかもしれません。

しかし、企業を長く存続させていくためには、時代に合わせて変革していく必要があります。
経理部門におけるDXの第一歩を踏み出すことは、担当者の負担軽減のみならず、全社的な生産性向上にもつながる一手になるでしょう。
これまでの慣習にこだわり過ぎずに、まずは業務の一部だけでもデジタル化を検討することで、未来への前進を実感できるのではないでしょうか。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
※上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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