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バックオフィス業務のクラウド活用はコスト削減につながる?

掲載日:2020年6月5日生産性向上

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バックオフィス業務で活用できるクラウドサービスは、いまや会計ソフトだけでなく、販売管理、人事・労務系など様々な領域で業務効率化に大きく貢献しています。
クラウドサービスを活用する上で、多くの方が期待する効果の1つに「コスト削減」があります。しかし、こうしたバックオフィス業務にクラウドサービスを利用することが「本当にコスト削減になるのか?」という疑念の声も少なからずあるようです。

クラウドサービスのコスト効果を考えるには、単なる金銭的効果だけでなく、「コスト」の概念を広く捉えることが大切であり、結果としてクラウドサービス活用は有効なコスト削減策であることが見えてきます。本稿では、クラウドサービスの「コスト削減」効果について紐解いてみましょう。

「コスト」に含まれる3つの定義

「コスト」と聞くと、最初に思い浮かべるのは、「費用」ではないでしょうか。もちろん、それも立派なコストの1つです。しかし、その定義は「費用」だけに限らず「何かを行うときに費やす必要があるもの」のことを指すといえます。
では、具体的に「何かを行うときに費やす必要があるもの」としてコストを大別すると、以下の3つにまとめることができます。

  1. 金銭的コスト(費用)
  2. 時間的コスト(時間)
  3. 労力的コスト(頭脳労働、肉体労働、ストレスなど)
  1. 金銭的コスト(費用)
    辞書の定義にある、狭義の「コスト」の意味を表します。「見えるコスト」とも言われ、会計上は費用にあたるもの全般が該当します。当然、人件費やアウトソーシング費用なども含まれます。
    ただし、金銭的コストは必要とするものを手に入れるための“手段”でしかないため、あくまでも二次的に発生するコストであるということを忘れてはいけません。採算性を評価するときも、必ずしも生み出された利益は金銭的コストではない可能性もあるため、費用対効果を考える際には金銭的コストに変換した上で評価する必要があります。
    経営の面で金銭的コストを考える際は、イニシャルコスト(初期費用)とランニングコスト(維持費用)の両面で捉える必要があります。
  2. 時間的コスト(時間)
    一般的に「見えないコスト」ともいわれ、言葉どおり「その行動を実行するのにどれくらいの時間が必要か」という、業務にかかる時間のことを指します。生産性・効率に大きく影響するため、金銭的コストと同じく非常に重要なコストの概念になります。
    時間的コストは、○時間というように数値化することができますし、時給などで金銭的コストに変換することもできます。したがって、コストバランスを考えるときには、最低でも金銭的コストと時間的コストは算出し、チェックすることが大事です。
    ただし、時間的コストは感覚的な認識に頼ることが多く、実際にかかっている時間とずれることがあります。単純に「作業にかかった時間」ではなく、作業の発生頻度や待ち時間、準備・後片付けなど関連する時間も合わせて把握する必要があります。
  3. 労力的コスト(頭脳労働、肉体労働、ストレスなど)
    労力的コストは「見えないコスト」の1つであり、頭脳労働や肉体労働、その作業を行うことで受ける精神的なストレスなどが含まれます。
    例えば、手入力の業務は「肉体労働」、個別の判断や状況に応じて臨機応変な対応を必要する業務は「頭脳労働」にあたるでしょう。業務内容によっては体力や集中力が失われ、正しい判断ができなくなる恐れもありますし、ストレスがかかり業務に支障が出る可能性も考えられます。
    こうした労力的コストは主観的評価になりやすく、金銭的コストや時間的コストのように数値化することも難しいものですが、行動を起こすためのエネルギーでもあることから、負荷が高くなるとどのようなリスクが発生するかで評価することも必要になります。

このように、コストには数値化できて「見えるコスト」と数値化しづらいために「見えないコスト」があります。特に「見えないコスト」は削減できると、本来行うべき業務に集中したりクリエイティブな業務に時間を使ったりすることができ、結果として短い時間で生産性を上げることに貢献すると考えられています。
「見えないコスト」を軽視すると、こうした「得られたであろう利益」をみすみす逃すことにもなりかねず、経営面から見ると非常に大きな損失となる可能性があります。そのため、コストを考える際には「見えるコスト」「見えないコスト」両面から多角的に検証し、総合的に判断することが求められるのです。

クラウドサービスが「コスト削減」対策になり得る理由–金銭的コストで比較–

それでは、自社サーバで運用するインストール型システムと比較して、クラウドサービスを利用すると、バックオフィス業務は本当にコスト削減になるのでしょうか。まずは「金銭的コスト」で比較検証してみましょう。

  • インストール型システム
    サーバ機器やソフトウェアライセンスの購入費、回線・設定などの費用としてイニシャルコストが数百万円以上かかることがあります。しかし、保守費用やセキュリティ対策にかかるランニングコストは固定されるので予算化しやすく、バージョンアップのタイミングまでは余計な追加費用もかかりにくいことがメリットといえるでしょう。
    ただし、バージョンアップやサーバのサポートサービス終了によって、ある時期が来ると更新ごとに多額の費用を捻出しなければならないというデメリットもあります。また、サーバの運用にはITの専門知識を持った専任担当者が必要となり、上記のような更新作業はもとより夜間や休日の作業もあるため、時間外労働を含めた人件費も金銭的コストとして考えておかなければなりません。
  • クラウドサービス
    サービス提供者が用意したクラウド領域にデータを保存するため、自社内にサーバを設置する必要がありません。インターネットに接続することができれば契約後すぐに使え、イニシャルコストはほぼ発生しないことが多いです。プログラムの更新や保守にかかる費用も基本的に不要で、セキュリティ対策で設備強化をする必要もありません。
    また、利用料については月額や年額で固定されているサービスも多く、ITの専任担当者も不要になることからランニングコストは固定化しやすいといえるでしょう。(ただし、従量制の場合は変動しやすいため、ある程度予算に幅を持たせておく必要があります)

クラウドサービスは月額や年額で利用料が発生するため、ソフトウェアの料金だけを比較するとインストール型システムより割高に見えますが、バージョンアップにかかる費用やシステムの運用料金、サーバのリプレイス費用はすべて利用料に含まれる点や、さらにメンテナンスにかかる人件費なども不要になる点を含め、総合的に判断する必要があります。

クラウドサービスが「コスト削減」対策になり得る理由–時間的・労力的コストを比較–

次に「時間的・労力的コスト」で比較検証してみましょう。

  • インストール型システム
    例えば、経理担当者の主な業務に、日々発生する会社の取引を仕訳して記録する作業があります。経費伝票や請求書、金融機関の出入金情報など、従来のインストール型システムに毎月入力するデータ量は膨大です。入力後はミスがないかチェックも必要になるため、時間も労力も非常にかかる作業といえるでしょう。
    月次や決算期に発生する税理士との会計データのやりとりでも、バックアップデータの出力やメール等によるデータ送付が必要となり、相当の時間を要します。税理士チェックが終了するまで待機しなければならず、仕訳伝票の手戻り作業が発生することもあります。さらにその後、経営層に月次資料を届ける準備も行わなければなりません。
  • クラウドサービス

    例えば、あるクラウド基幹業務システムでは、金融機関とデータ連携して振込や支払などを自動で起票することが可能になります。従来のインストール型システムの場合でもシステム間での連携は可能ですが、金融機関の出入金情報を取り込むことはできないため、手入力作業は残ってしまいます。仕訳伝票の50~70%はほぼ「入出金の伝票入力」といわれていることを考えると、クラウドサービスを利用するだけで仕訳入力作業は半分以下になるといえます。

    また、会計データはクラウド上で保存され“いつでも・どこでも”閲覧できるので、毎月発生する税理士とのやりとりに要する作業は減ると考えられます。税理士と担当者の双方で同時にデータを確認でき、税理士のチェック中でも並行して作業が行えるので、待機時間が削減でき作業効率も大幅にアップします。
    経営者や管理者も、自らアクセスしてリアルタイムに経営状況を把握できるので、経理担当者に都度確認したり、印刷して提供してもらったりする必要がなくなります。簡単に情報共有ができるため、毎月膨大な時間をかけていた月次決算も、経理担当者は資料のメール送信や印刷する手間がなくなり、経営者・管理者も資料の到着を待つ時間がなくなります。

    実際、従来のインストール型システムからクラウドサービスへ移行して、税理士チェックに要する待ち時間が0になり、無駄な作業を削減して月40時間の時間短縮に成功した事例もあります。仮に、担当者の人件費を1時間あたり3,000円とすると、基幹システムをクラウド化するだけで、毎月担当者が消費している時間的・労力的コスト=120,000円を大幅に削減したことになるのです。

「今までより業務が楽」は「見えないコスト」削減の証!

バックオフィス業務は「売上を生まないからコストをかけられない」という話はよく聞きます。法改正や求人対応など専門知識がある、経験豊かな担当者がいなければ業務が成り立たないと思われ、特に経理などの業務は属人化の傾向も強く現れます。しかし実は、時間的コスト・労力的コストを生みやすい入力作業などの雑務が大半を占めており、属人化するがゆえに却ってコストがかかっているという事実もあります。

慢性的な人材不足や働き方改革により、少ない人材でもいかに効率的に、滞りなく業務を遂行させるかは、いま中小企業にとって喫緊の課題となっています。特に「見えないコスト」が発生しやすいバックオフィス業務において「いかに効率化を図れたか」は、本当の意味での「コスト削減」に直結するといえるのです。

クラウドサービスを利用して誰もが対応可能な業務体制に整えることは、単なる業務の効率化だけに留まりません。直接利益を生まない部門だからこそコストを正しく算出して、特に時間的・労力的コストという「見えないコスト」の削減をクラウドサービスで実現してみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「バックオフィス業務のクラウド活用は本当にコスト削減になるのか?(https://www.obc.co.jp/360/list/post116)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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