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ペーパーレス経理を実現?スキャナ保存制度の活用を考えよう

掲載日:2019年9月9日生産性向上

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税務上、請求書や領収書は紙で保管するのが原則とされていますが、最近はそれをスキャンして「ペーパーレス経理をめざしたい」という企業が増えているようです。ペーパーレス経理をめざすのであれば、スキャナ保存について税務署長の事前承認を受ける必要がありますが、スキャナ保存制度は近年の税制改正に伴い、格段に活用しやすくなっております。本稿では、スキャナ保存制度の概要と活用方法について紹介します。

ペーパーレス化を後押しするスキャナ保存制度

請求書や領収書などの「国税関係書類」をスキャンして保存すること自体は、2005年の電子帳簿保存法の改正から可能でした。しかし3万円以上の書類はスキャナ保存ができないなどの制約があり、実務上利用しやすい制度とはいえませんでした。例えば東京と大阪間における新幹線の往復チケットが3万円未満の場合、領収書のスキャナ保存をすることができる一方で、往復航空券の場合は3万円以上となるため、領収書をスキャナ保存ができないといったケースなどもあったようです。そのため制度開始から10年後の2014年度においてもスキャナ保存制度の累計申請件数はわずか152件という状況でした。しかし近年の改正では、このような金額基準が撤廃され、要件も緩和されました。
その効果もあり、累計承認件数は2015年度380件、2016年度1,050件、2018年度1,846件と増加傾向にあります。あらゆる場面でクラウドサービスが浸透してきており、電子契約も珍しくなくなってきていることからも、既に自社が発行する請求書や会計帳簿などが電子化されているのであれば、外部から入手する紙の領収書などをスキャナ保存することで完全ペーパーレス化も実現可能です。

近年の税制改正で活用しやすく

税制改正では具体的にどのような制度の整備が行われてきたのでしょうか。実際には、要件が緩和された部分とそれにともない手続が追加された部分があります。

  • 2015年度税制改正
    2015年度改正により、金額基準が廃止されてすべての国税関係書類がスキャナ保存の対象となりました。また書類をスキャンする際に必要とされていた入力者などによる電子署名も不要となり、代わりに、入力者などに関する情報を確認できることが要件として追加されました。
    また従来は重要書類にだけ要求されていたタイムスタンプがすべての書類で要求されるようになりました。これらの要件見直しの前提として、スキャナ保存制度を導入するに際しては「適正事務処理要件」を満たすことが必要とされました。適正事務処理要件とは、事務を行うにあたっての内部統制の仕組みであり、具体的には、国税関係書類の作成・受領から、それらの入力に至るまでの事務処理に関して「相互けん制」「定期検査」「再発防止策」に関する規程を定め、それらに従って運用を行うことです。
  • 2016年度税制改正
    従来は「スキャナは原稿台と一体となったものに限る」という要件がありましたが、2016年度税制改正で、この要件が削除されました。これにより、据え置き型のスキャナだけでなくスマホやデジカメで撮影した画像でも証票として認められるようになりましたが、スマホ撮影とスキャナ保存を区別する形で要件などが整備され、領収書などを受領した従業員が「受領者が書類に署名を行う」「3日以内にタイムスタンプを付与する」という保存の要件を満たすことが必要になりました。
  • 2019年度税制改正
    これまでは、スキャナ保存制度の承認前に受領した重要書類はスキャナ保存を行うことができませんでしたが、関連法令が改正されたことにより、適用届出書を提出する場合には一定の要件のもとで、スキャナ保存制度承認前の受領した重要書類もスキャナ保存が可能になります。またJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の認証を受けた市販のソフトウェアを利用する場合、承認申請における記載事項や添付書類が一部省略できるようになります。これらの改正は2019年9月30日以後に適用される予定です。

電子帳簿保存法による承認申請が必要

実際にスキャナ保存を活用したい場合には、承認申請書を作成し、添付書類とともに所轄税務署に提出する必要がありますが、申請には特に手数料はかかりません。添付書類は、国税関係書類の保存を行う電子計算機処理システムの概要を記載した書類が1部、事務手続きの概要を明らかにした書類が1部必要です。なお処理を外部に委託している場合には、委託契約書の写しを添付しましょう。
提出時期はスキャナ保存を開始しようとする日の3ヵ月前までですので、例えば2020年1月1日から適用したい場合には、2019年9月30日までに提出が必要になります。

小規模企業も活用しやすく

以上のように、スキャナ保存制度を活用するためには、事務処理の体制を整備して承認申請をすることが必要になります。従来は3名以上の相互けん制が必要でしたが、2016年度改正では、従業員数5人以下(製造業等は20人以下)の小規模企業の場合、顧問税理士などが定期検査を行うことで相互けん制の要件が充足されることになりました。2019年現在は例えば事業主と顧問税理士の2名だけでもスキャナ保存を始めることができます。
スキャナ保存制度を利用するためには、対応した会計ソフトを導入するなど一定のコストがかかるものの、紙の書類を保管する場所や、後から領収書などの確認が必要になったときに探し回る作業時間などを考えると、活用のメリットは大きいのではないでしょうか。
会計ソフトで帳簿記録とそれに関連する領収書などが紐付けられていれば、ボタン一つで画像データを検索することも可能です。これにより、ファイリングしたはずの証票がどこかに紛失してしまったという事態の防止も期待できます。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社ZUU)

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