管理職必見! “アンガーマネジメント”講座
掲載日:2022年7月1日人材戦略
イライラして声を荒げてしまう、ストレスで心身が参っている……。感情コントロールが思うようにできないと、破滅の道を歩んでしまうかもしれません。そうならないように学んでおきたいのは、怒りと上手く付き合う方法です。
本稿では、部下をはじめ、周囲の人に無用な怒りをぶつけることなく、自身もハッピーになるアンガーマネジメントのエッセンスを紹介します。
二つのコツで、怒りをマネジメントする
「つい、イライラして物にあたってしまう」「怒りを押さえられず、職場の空気が悪くなってしまった」「感情が昂り、言葉遣いがキツくなってしまう」……。あなたはそんな上司になっていませんか?
感情に任せて理不尽な叱り方をしてしまったら、叱られた部下はやる気を失ってしまうものです。
その結果、パフォーマンスが下がるだけでなく、上司に対して負の感情が芽生え、信頼もなくなります。
それどころか、出社拒否やうつ症状を引き起こすなど、最悪の事態を招きかねません。職場の雰囲気も悪くなってしまいます。
しかし、「怒りの感情」に振り回されず、部下を適切に叱ることができれば、むしろそれは部下を育成するチャンスとなります。
叱るべきところで叱らないと、部下の成長を妨げてしまうことになり、思うようなパフォーマンスが発揮されないのです。
部下が成長するのはもちろん、理不尽な叱り方をしないことで信頼関係が構築され、組織が活性化することも期待できます。
そうなるためには、「怒りの感情」とうまく付き合うためのトレーニング、アンガーマネジメントが有効です。
冷静な気持ちで「怒り」を見つめることで、ポジティブなパワーに変換していくこともできます。
実際、近年は、アンガーマネジメントを研修に取り入れている企業も増えてきており、リーダーや管理職こそ、「怒りの感情」を上手にコントロールすることが求められているといえます。
では、具体的にどのようにすれば、「怒り」を上手くマネジメントできるのでしょうか。コツは次の2つです。
1.怒りの出来事に対して反射をしない
「反射」とは「衝動のまま怒ってしまうこと」です。
怒りを感じる出来事があったとき、まずは気を逸らすように意識して、反射しないようにしましょう。
一般的に、怒りの感情のピークは6秒間とされていますが、「怒りを感じて最初の90秒間は、頭にくるのは仕方のないこと」だという研究者もいます。
つまり、最初の「6秒間」、長くても「90秒間」をなんとか乗り切れば、怒りは収まることが期待できるのです。
以下のような方法で、乗り切ることが考えられます。
- 好きな俳優やタレント、作家の名前や車種名、食べ物のメニューなどを順番にあげていく
- 真っ白な紙を思い浮かべ、頭の中を空白にする
- 心が落ち着く言葉や、好きな言葉を繰り返し唱える
目を閉じたり、耳を塞いだりして、外界から入る情報をシャットアウトしながら行えば、より効果的です。
可能であれば、一時的にその場から離れてもよいでしょう。
また6秒間でも90秒間でも、その間に「この怒りはどこから湧いてくるのか」を考えるのも有効な手段です。
冷静に自分の感情を客観視して、「なぜ自分は怒っているのか」を分析することができれば、それだけでマネジメントができているといえるのではないでしょうか。
2.怒りへの許容度をあげる
怒りの感情が湧き起こるのは、その怒りの対象となる出来事について、自分が考えていることとギャップがあるからだといえます。
自分は「Aとすべき」と思っていても、相手は「Bとすべき」と思っているといった、いわば考えや感情のすれ違いからくる、もっといえば、価値観が合わないために怒りの感情が発生するといえます。
その対策としては、自分の価値観や思い込みをなくし、相手の考え方を認めて、怒りの許容度を上げることが必要です。
以下のような方法で、許容度を上げることができるでしょう。
- 感じた怒りについて、「自分の考え」と「相手の考え」を紙に書いて、冷静に見比べてみる
- 怒りの内容と、その怒りを感じることによる「メリット」と「デメリット」を紙に書き出し、メリットの方が少ないことには怒らないようにする
なかには、怒ってもどうしようもないこと、デメリットしかないこともあるでしょう。
そんなときは、怒る以外の解決方法や気持ちのはけ口を、考えてみるのも良いかもしれません。
怒りをパワーに変える3ステップ
マイナスなことと捉えられがちな怒りですが、以下のようなプラスの作用もあります。
- 自らの忍耐が、限界であることを教えてくれる
- 感情を吐き出すことで、心が軽くなる
- 不当な物ごとに立ち向かう、原動力になる
これらのプラスの作用を生かすべく、怒りをパワーに変換するためのステップをご紹介します。
(ステップ1)理想の状態を考える
人は、自らの理想が裏切られたときに、怒りを感じます。
逆にいえば、「ありたい姿」「なりたい形」を教えてくれているということです。
「自分がなぜ、何に対して怒りを感じているか」を深く思考し、そこから自分がどうしたいのか、どこに向かっているのか、どうありたいのか、理想のゴールをイメージしましょう。
(ステップ2)理想に向かって行動する
理想と現実にはギャップがあり、だからこそ怒りが生じます。
そのギャップを埋めるためには、実際に行動するしかありません。
なかなか行動できない、何から始めるべきかわからない場合は、「自分はどうしたいか」という理想と、「それを実現するために、現実的に今すぐ行動できること」を具体的に書き出してから、行動に移します。
例えば、「仕事が遅く、パフォーマンスも低い部下を改善したい」を理想としたら、「部下に毎朝今日やることを聞き出す」「1日1回は良かったことを見つけて褒める」などが行動になります。
(ステップ3)日々少しずつ取り組んで、成功体験を重ねる
ステップ2で書き出した「現実的な行動」に、毎日少しずつでもいいので取り組みましょう。
できていなくてもあまり気にせず、できる範囲で続けていくことが肝要です。
日々の「できたこと」を記録しておくと、達成感を得ることができ、推進力になります。
これまでとは違った「行動」を積み重ねることで、「怒り」はポジティブなパワーに変わっていくでしょう。
上手な叱り方、下手な叱り方
最後に、管理職が心得ておきたいこととして、「上手な叱り方・怒り方」についてお伝えします。
部下を叱ったり、怒ったりするのは、「部下が思うように動いてくれない」「部下の発言は気に食わない」というように、自分の理想とのギャップがあるからです。
怒りを伝えるということは、自分の理想通りになってもらいたいからであり、そのためには「具体的にどうして欲しいか」を、明確に伝える必要があります。
例えば、部下に仕事の進捗を確認するメールを出したのに返信がない場合、「なんで返信しないんだ!」と感情的に怒るのではなく、「返信は迅速にしてくれ。時間がかかりそうな場合でも、そのときの状況を、一旦知らせて欲しい」など、具体的に「してもらいたいこと」を伝えましょう。
感情的になって相手を傷つけたり、物に八つあたりしたりすることは良くありません。
自分の機嫌や調子によって、怒ったり怒らなかったりと「怒る基準」がないことも、管理職としては不適切でしょう。
気分屋のレッテルを貼られてしまい、部下から信頼を得ることは難しいかもしれません。
誰に対しても、同じ基準で接することが大切です。
そうすることで、何があっても相談しやすい環境や、ミスを報告しやすい関係性を構築することができます。
おわりに
強い怒りを感じたときには、めまいや呼吸困難、発汗、動悸など、身体的な症状が現れる人もいるでしょう。もちろん、精神的な苦痛も伴います。
しかし、怒りは、人の感情の一つであり、私たちにとって必要不可欠な気持ちでもあります。
ただ、怒りをなくそうとするのではなく、上手くマネジメントして付き合うことが、自分にとっても部下にとっても、プラスの作用を引き起こしてくれるのです。
アンガーマネジメントによって、不要な怒りから解放されれば、仕事も人生も、今以上に順調に進むかもしれません。
ぜひ、意識して実践してみてください。
(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)
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