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子の看護休暇・介護休暇制度が改正!注意すべき勤怠管理のポイントとは

掲載日:2021年7月26日人材戦略

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育児・介護休業法は、子育てや介護と仕事を両立できる環境作りを行い、働く人を支援するための法律です。
この法律に含まれる「子の看護休暇・介護休暇」について、2021年1月に改正が行われ、より取得しやすくなるよう取得単位や対象者が拡大されました。この改正によって、企業には就業規則の改定や申し出に対する柔軟な対応が求められます。
本稿では、「子の看護休暇・介護休暇」の改正内容にスポットをあて、従業員への対応に際し注意しておきたい勤怠管理のポイントについてご紹介します。

子の看護休暇制度・介護休暇制度とは

「子の看護休暇・介護休暇」は、「育児・介護休業法」で定められる休暇制度のことで、次のように定められています。

子の看護休暇とは、小学生就学前の子がいる従業員が、子供がケガをしたり、病気にかかったりした際の世話、健康診断や予防接種の付き添いが必要な場合などに取得できる休暇です。取得できる年間の休暇日数は、従業員1人につき対象となる子が1人いる場合は5日、子が2人以上で10日を上限としています。
なお、企業によっては、育児・介護休業法が定める条件を上回る「6歳以降の子」についても看護休暇を認めていることがあります。

また、介護休暇とは、両親や親族などが要介護状態になった際、家族の介護やそれに関わる世話をするために取得できる休暇です。食事や排せつの介助といった直接介護だけでなく、買い物や書類手続きなどの間接的な作業にも適用できます。取得できる年間の休暇日数は、従業員1人につき、対象となる家族が1人の場合は5日、2人以上は10日を上限としています。

子の看護休暇・介護休暇は、男女の区別や雇用形態を問わず、該当する子供や家族がいるすべての労働者が対象となります(日々雇用される者を除きます)。ただし、継続雇用期間が6ヵ月未満の従業員や1週間の所定労働日数が2日以下の従業員は、労使協定を締結させることで対象外とすることもできます。

取得できる上限日数は、年度ごとに管理することになっています。特に就業規則等で定めのない限り、4月1日から翌年3月31日までを1年度とするのが一般的です。
また、どちらの休暇も、従業員からの申し出があった場合、企業は拒否できないことになっています。当然、時季変更権のような概念も存在せず、配偶者が専業主婦(主夫)であることを理由に拒むこともできません。特に「子の看護休暇」は事前予測が難しいため、電話による取得の申出も認められています。

従業員の休暇取得期間中は、企業に賃金の支払義務がないため、その間の給与を無給にするか有休にするかは企業の判断に委ねられています。しかし、休暇を取得した日数を超えて減額したり、賞与や昇給について従業員に不利益な算定を行ったりすることはできません。利用を促進するには、賃金の一部を補償するなどの対応が望ましいでしょう。

2021年の改正内容とは

これまで「子の看護休暇・介護休暇」で休暇を取得する単位は、「1日または半日」とされていました。
しかし、この要件では、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は1日単位でしか取得できないことになります。また近年は、認知症介護に関わる労働者が顕著に増加しており、ケアマネージャなど専門家に相談する時間を確保したいという労働者の声も多く、小刻みの休暇取得ができるようにする必要がありました。
こうした労働者のワークライフバランスを後押しするため、2021年1月に「育児・介護休業法」が改正されたのです。
改正法では、1日、半日の休暇に加え、時間単位でも休暇を取得することが可能になり、すべての労働者が柔軟に取得できるようになっています。

ここで「時間単位」とは、1時間ごとの連続する時間のことです。始業時間から終業時間までの間で、「○時から○時までの○時間」というように1時間単位で取得が可能になります。
また、この改正によって、すべての労働者が柔軟に看護休暇や介護休暇を取得できるようになりました。ただし、次に該当する従業員については、労使協定によって時間単位取得の対象から除外することができます。「時間単位の取得ができない対象」を定める際は、既に「半日単位で取得できない対象」を定めている場合でも、改めて労使協定の締結が必要になりますので注意しましょう。

<時間単位取得の対象外とできる従業員>

  1. 勤続6ヵ月未満
  2. 週の所定労働日数が2日以下
  3. 時間単位で「子の看護休暇・介護休暇」を取得することが困難と認められる業務に従事している(1日単位の取得は可能)
    なお、労使協定の締結が必要です。

この改正で企業に求められていることには、法の基準を満たすことはもちろん、従業員にとって不利益な労働条件にならないよう配慮することも含まれます。
例えば、労使協定によって対象外とできる③に該当する従業員でも、「半日単位なら取得できる」という場合もあります。こうした場合は、「半日単位の取得対象者」として取り扱うことが求められます。また、これまで半日単位の取得が可能だった従業員に「時間単位の取得も可能」とする場合は、休暇1日分をすべて時間単位で取得する場合と比べて不利益にならないよう注意しなければなりません。

さらに、就業時間の途中から休暇を取得し就業時間中に戻ってくる、いわゆる「中抜け」については、改正法でも原則として求められていませんが、制度の弾力的な利用が可能となるような配慮が求められています。
このように規定を見直した結果、従来の就業規則から変更が生じる場合は、変更後に所轄の労働基準監督署への届出を忘れないようにしましょう。
なお、既に「中抜け」を認めている企業の場合は、法を上回る望ましい取扱となるため、「中抜け」を想定しない制度に変更する必要はありません(「中抜け」を想定しない制度に変更する場合は、労働者に不利益な条件への変更となるため、労使間の合意が必要となります)。

法改正による勤怠管理の留意点

子の看護休暇・介護休暇の勤怠管理は、従業員がどのような勤務形態であっても、所定労働時間を基準にして出勤日終日で休暇を取れば「日」単位、出勤日に数時間勤務した場合は「時間」単位でカウントすることになります。このとき、所定労働時間が7.5時間というように1時間に満たない端数がある場合は、1時間を最小単位となるように切りあげて計算します。

「1日単位で取得するか時間単位か」「何時間休暇を取得するか」などの選択は、原則従業員に委ねられていますので、改正法に則る場合、「1時間」を単位にすることを明確に伝えておくことが肝心です。
なお、現在「分単位」で取得を許可している場合などは、法律を上回る規定となっているため、改めて時間単位で取得する制度を設ける必要はありません。

所定労働時間は、雇用条件によって異なるため、従業員によってきめ細やかな管理が必要になるでしょう。例えば、1日の所定労働時間が日によって異なる従業員は、1年間の1日平均の所定労働時間を、1年間の総所定労働時間数が決まっていない場合は、所定労働時間が決まっている期間の1日平均の所定労働時間を基準にします(年度の途中で所定労働時間が変更になった場合は、休暇を申し出た時点での所定労働時間が基準になります)。

所定労働時間が8時間の企業では、「午前3時間、午後5時間」というように規定されているケースもあるそうです。子の看護休暇・介護休暇を半日単位で取得する場合、「半日」は所定労働時間数の2分の1と定義されるのが一般的ですが、「午前、午後それぞれで半日とする」など労使協定で別の設定をすることは認められています。また、例えば「午前休を2回取得して1日の看護休暇・介護休暇とする」というように取り扱うことも可能です。ただし、取得した休暇1日分の合計時間数が、1日の所定労働時間数を下回らないようにしなければなりません。

時間単位で取得する場合には、休暇をとりたい時間が取得日の所定労働時間未満である必要があります。
例えばパート・アルバイトなどシフト勤務の従業員の場合、休暇を取得する日の所定労働時間数によっては「日」単位での休暇として扱う可能性も発生しますので、注意が必要です。
特に、時間単位の取得の場合に注意しておきたいのは、休憩時間の取扱です。例えば、「8時半から4時間」と取得したい時間帯の途中に、通常勤務時の休憩時間を挟む場合は、休憩時間を含まずに計算します。

おわりに

看護休暇も介護休暇も、取得することは労働者の権利です。少子高齢化が進むにつれ、今後は看護休暇や介護休暇の取得を申し出る従業員が増えていくことは、想像に難くありません。育児や介護に限らず、従業員が家庭で様々な問題を抱えるケースも多くあります。
従業員が置かれている様々な状況に合わせて、看護休暇・介護休暇を取得しやすいような管理体制を整備することが、企業には求められているといえます。
まずは本稿を参考に、今回の改正制度を整理し、勤怠管理を見直してみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「子の看護休暇・介護休暇制度が改正!担当者が注意すべき勤怠管理のポイントとは(https://www.obc.co.jp/360/list/post166)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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