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リモートワーク時代、社員の「評価」はどうする?

掲載日:2021年6月21日人材戦略

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コロナ禍を機に、リモートワークを導入する企業が増えてきています。リモートワークには「業務改善につながった」といった前向きな声があがる一方、新たな問題が出て悩んでいる中小企業経営者も少なくありません。
問題の一つとなっているのが、社員の「評価」方法といわれます。
不協和音を起こさず、上司も部下も納得できる評価をするにはどうしたらいいのでしょうか。
本稿では、「リモートワーク」導入後の従業員評価のコツをお伝えします。

「期待役割」をはっきり伝え、より具体的に指示を出す

「勤務態度が見えない」
「成果につながる行動をしているか、把握しにくい」
「ちゃんと仕事をしているのか不安」

リモートワークの導入で、管理職からそんな悩みの声が聞こえてくるようになりました。もともと、仕事の成果に応じて報酬を決定する「成果主義」を導入し、評価もそれに準じている企業や、個人が目標を決めて、その達成度合いで評価を決める「目標管理制度(MBO)」を採用している企業であればともかく、そうでない場合は、リモートワークにおける評価の仕組みそのものを変更せざるを得ないこともあるでしょう。
ただ、それには、ある程度の時間をかけて検討していくことが必要だといえます。

なぜならば、今後は制度ありきではなく、部下のライフスタイルや、様々な状況を踏まえながら、柔軟に評価する必要が出てくるからです。
そうした中では、急いで制度を改定するよりも、まず大前提として、「評価項目」や「評価基準」が明確になっているかどうかを確認することが重要です。

実際、リモートワークを契機に評価制度を確認したところ、評価の基本が明確化されていなかったことが分かったという企業も、意外に多くあるようです。
評価項目や評価基準の具体的な内容は、自分たちの組織に合ったものを設定するのが適切ですが、共通していえるのが、「どれくらいの期間で、どんな成果を出して欲しいのか」「いつまでに、何を行うか」ということを、よりはっきりさせることだといえます。

組織においては、「これをやっておいて」という上司の指示が曖昧で、受ける部下側も理解が曖昧なまま「こんな感じ」で仕上げればいいかと進めてしまったことがあるかと思います。

日常的に顔を合わせていれば、作業の途中で上司が口を挟んで修正指示を出すことができますが、それができないリモートワークでは、「最初の段階」で、「最終成果」のイメージを上司と部下で共有し、同じ認識を持つことが大切になります。
つまり、部下へ「期待役割」をはっきり伝え、より具体的に指示を出す、ということになるでしょう。

そうでないと、提出物が仕上がったときに初めて、上司の考えと部下の考えの乖離が発覚して、その作業についての評価をしようがなくなることがありえます。
そのような流れの中で、自分の評価がされてしまったら、部下に不満がくすぶってしまうのは当然だといえるでしょう。

リモートだからこそ「1on1」でこまめなやりとりを

加えて、リモートワーク時代の評価においてポイントとなるのが、「こまめなやり取り」です。
オフィスに出勤していたならば、雰囲気や態度、周囲との会話などによって、本人が目標に向けて、どう取り組んでいるかを見ることができるでしょう。しかしリモートワークとなると、そのプロセスが全ては見えなくなります。だからこそ、きめ細やかな進捗管理や状況把握が必須となります。

具体的には、始業時と終業時に、それぞれ5分程オンラインでの報告時間を設けたり、長期プロジェクトの場合なら、曜日を決めて週2~3回は、オンラインで話し合ったりすることが考えられます。

このとき、チームメンバー全員でオンラインミーティングをして進捗管理する方法もありますが、1対1で話をする「1on1」をすることをおすすめします。
というのも、「1on1」ならば、上司が部下の思いをしっかりと理解でき、また、状況がより共有しやすくなるため、その個人の評価もしやすくなるからです。

東京のあるITベンチャー企業では、部下一人につき「週1回30分」の1on1オンラインミーティングを実施し、業務の進捗管理を行い、評価の参考にしているそうです。
この会社は、コロナ禍以前から1on1ミーティングを実施していたという経緯がありますが、コロナ禍でリモートワークとなったことを契機に、1on1もオンラインで行うようになりました。

オンラインになったからといって、評価の項目や評価方法を変えることはしていませんが、オンラインならではの注意契機を管理職に課しています。
例えば、「オンライン画面が暗いと、1on1ミーティング自体が暗くなることもあるので、それぞれの照明は明るくする」「オンラインは対面よりも聴覚、視覚が劣化している場合があるので、通常よりもゆっくり話す」といったことがあり、オンラインの弱点を払拭するように工夫しています。

また、リモートワークになったからこそ、「部下をじっくり評価できるようになった」というケースもあります。
約30人の部下を抱える、ある企業の管理職は、会社がリモートワークを推奨したことで、往復で約3時間かかっていた通勤時間がなくなりました。それによって、業務効率が向上した他、新しく生まれた時間を、部下との1on1ミーティングにあてることができるようになったといいます。
今まで以上に、部下とじっくり話せるようになったことにより、結果として、部下一人ひとりの思いや考えを的確に理解でき、また、業務の進捗状況や内容を明確に把握できることで、部下を多面的に評価することができるようになったそうです。

「監視」ではなく、互いに信頼し合えるかがカギ

以上のように、「明確な期待役割を伝える」「こまめなコミュニケーションを取る」ということは、リモートワーク時に限らず、不平等感なくメンバーを評価するためにも、本来、日常的に必要なことだといえます。
そう考えると、リモートワークは、これまでの人事評価の仕組みや運用について、あるべき評価のやり方を再認識する良い機会でもあるといえるでしょう。

また、この2つを意識していても、やっかいなのは、管理職に「サボっていないか」と部下に対して思う気持ちが芽生える場合です。

こういった懸念を払拭するために、個々人の働きぶりをリモートで監視できるソフトを導入した企業もあります。
業務時間内にどんなウェブサイトを見ていたか、ワードやエクセルにいつアクセスし、どのくらいの時間使用していたか。そうしたことが、つまびらかになるものです。
管理する上司としては、「業務量が適切か、効率的に仕事をしているかなどを数値化して客観的な評価をするため」に、良かれと思っての対応かもしれません。

たしかに、業務負荷を平準化するために、一時的にこうしたソフトを導入するのは良いかもしれませんが、常時となると、紛れもなく「監視」となります。
その監視によって、モチベーションが低下する人、心理的ストレスやプレッシャーを感じてしまう人も出てくる可能性もあり、そうなると、組織としてダメージを被ることもあるでしょう。
これについても、ソフトを導入するのなら、「何のために、何をどこまで管理するか」といったことを、上司と部下で納得いくまで話し合うことが必要だといえます。

また、労務時間の管理方法として、ネットワークにログイン・ログオフした時間を管理する企業もありますが、そのように管理したとしても部下は、ログインしたまま別のことをしている可能性もあります。
機械的な管理にはどうしても限界があるので、結局は、「姿が見えない」働きぶりをどこまで信頼するか、ということになります。
そこで、適切な評価をしていくためには、コミュニケーションを良く取って、お互い信頼し合う関係を築くことが、回り道に見えて近道なのかもしれません。

政府は、「出勤者の7割削減」を目標に掲げており、リモートワーク推進の動きは、今後も続くと思われます。前述のように、リモートワークによって「部下とはむしろ話す機会が増え、評価しやすくなった」という管理職もいるのです。
お互いに満足できる結果を出すためにも、この機会に部下とじっくり向き合い、評価についての見直しをしてみてはいかがでしょうか。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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