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雇用保険とは?加入条件や手続きなどの基礎知識

掲載日:2021年2月22日人材戦略

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人事労務業務の中には、雇用保険に関する手続きがたくさんあります。政府が管掌する強制保険制度のため、一定の雇用条件を満たす従業員には必ず加入手続きを行わなければなりません。また、様々なライフイベントに応じて給付手続きを行うこともあり、こまめな対応が必要になります。
本稿では、そうした「雇用保険」にスポットを当て、加入条件や雇用保険で支給される給付金などについてご紹介します。

雇用保険とは ~加入する人・しない人~

雇用保険とは、失業や育児・介護などによる休業で収入が減った際に、労働者の生活を支えるために設けられた強制保険制度です。困窮する労働者の生活や就職促進のために給付金を支給するだけでなく、失業の予防や雇用状態の是正、雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上、その他労働者の福祉の増進を図ることなどを目的としています。
そのため、労働者を雇用する企業は、その業種や規模等を問わず原則としてすべて「適用事業」となり、労働保険料の納付、雇用保険法の規定による各種の届出等の義務を負うことになります(農林水産業の一部を除く)。つまり、「適用事業」に雇用される労働者は、原則として雇用保険の“被保険者”になります。

雇用保険に加入する対象者は、以下の(1)(2)いずれにも該当していることが条件となります。

(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

「31日以上雇用が継続しないこと」が明確でなければ、パート・アルバイトであっても雇用保険に加入しなければなりません。また、雇用契約期間が31日未満であっても、次のような場合は原則として「31日以上の雇用が見込まれる」ものとされます。

  • 期間の定めがなく雇用される
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない
  • 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある

また、たとえ雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であっても、その後31日以上雇用されることが見込まれることになった場合には、その時点から適用されます。

(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であること

例えばパート・アルバイトの場合、忙しくて20時間以上働いた週があっても、常時は週15時間働くことになっている雇用契約であれば、雇用保険の加入対象にはなりません。シフトの関係で、毎週の労働時間が異なる場合は、月の合計が週20時間相当を超える契約になっているかどうかで判断します。
ただし、学生など、雇用保険の加入対象とはならない人がいるので留意しましょう。

雇用保険で支給される給付金の種類

従業員の中には、雇用保険は「退職時にのみ恩恵を受けられる」ものと認識している人が多いようです。もちろん、それが一番の役割ではありますが、雇用保険で支給される給付金には以下のようなものもあります。

  • 求職者給付、就職促進給付
    失業した際に、新しい仕事を探している期間中の収入を保障したり、再就職を促進したりするための給付金です。基本手当は、一般的に「失業保険」などと呼ばれており、退職後にハローワークで手続きを行うと支給されます。
  • 教育訓練給付金
    国が指定する教育訓練講座を受講し修了すると、受講料や入学料などの教育訓練経費の一部が給付金として支給されます。
  • 高年齢雇用継続給付金
    雇用保険に加入していた期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者について、60歳時点の賃金と比較してその後の賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。
  • 育児休業給付金
    1歳または1歳2ヵ月(支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6ヵ月または2歳)未満の子どもを養育するために、育児休業を取得した被保険者に支給されます。
  • 介護休業給付金
    家族の介護のために休業した被保険者に支給される給付金です。

労働者は、失業や休業により生活が困窮するリスクを常に抱えているものです。
雇用保険に加入することは、労働者を失業などのリスクから守り、安心して働けるようにしてくれるという点で、従業員にとって大きなメリットになるでしょう。

雇用保険の保険料と支払い

雇用保険料は、労働者と事業主で負担することになっています。保険料率と負担割合は、業種ごとに定められており、毎年4月1日から翌年3月31日を1年とする年度末に公表されます。

企業(事業主)が労働者よりも保険料を多く負担する理由は、事業主の保険料には労働者に支給する給付金以外の費用負担も組み込まれているからです。
例えば、2020年に猛威を振るった新型コロナウィルスの影響で、国は休業を余儀なくされた企業に対し、雇用調整助成金の特例措置を実施しました。実は、この特例措置の費用には、雇用保険料の事業主負担分が活用されているのです。

保険料は、年に一度、従業員の当該年度の見込み給与をもとに雇用保険料と労災保険料を算定し、企業がまとめて前払いします。これを「労働保険の年度更新」と呼び、原則として例年6月1日から7月10日までの間に労働基準監督署、都道府県労働局及び金融機関で手続きを行います。
そしてその後、従業員の負担分については各月の給与から分割で徴収します。

【取得・喪失・異動】雇用保険の手続きの流れ

雇用保険では、「雇用時」「退職時」「異動時」に手続きが発生します。ここでは、それぞれのタイミングで必要となる雇用保険の手続きについて解説しましょう。

従業員を雇い入れる際の手続き(資格取得手続き)

雇い入れた月の翌月10日までに、事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。雇用保険の被保険者に該当するにもかかわらず未加入の場合は、罰則として懲役6ヵ月以下もしくは罰金30万円が課せられますので、雇用保険の被保険者に該当するかどうかをしっかり確認しておきましょう。
雇用保険被保険者資格取得届の確認が済むと、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」(被保険者通知用)が交付されます。「雇用保険被保険者証」は、“雇用保険の加入手続きがなされた”証として企業が退職まで保管することが多いですが、「雇用保険資格取得等確認通知書」(被保険者通知用)は企業から従業員に渡すことが義務づけられています。

従業員が離職する際の手続き(資格喪失手続き)

従業員が離職する際は、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を離職した翌々日から10日以内に事業所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。(本人が離職票の交付を希望しない場合は「雇用保険被保険者離職証明書」の提出は不要です)
離職証明書を提出する際には、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など、離職の日以前の賃金支払状況等を確認できる資料や、その他離職理由を確認できる資料の提出も求められます。

他事業所に転勤をさせる際の手続き(異動手続き)

雇用保険は、事業所単位で登録されているため、他の事業所に転勤させる場合には雇用保険の転勤届を提出する必要があります。
手続きでは、事実のあった日の翌日から10日以内に、転勤先となる事業所の管轄ハローワークに以下の書類を届け出ます。

  • 雇用保険被保険者転勤届(則様式第10号)
  • 転勤前に交付された資格喪失届・氏名変更届(則様式第4号)
  • 転勤の事実が確認できる書類(転勤辞令、労働者名簿、出勤簿など)
  • 企業の組織図等 ※転勤前後の事業所が同一の事業主の事業所かを確認する場合のみ

ただし厚生労働省では、その届出内容を精査する必要がある場合を除いて「添付書類を省略して差し支えない」としています。また、従業員のマイナンバーが紐付けされていない場合は、「個人番号登録届(則様式第10号の2)」を併せて提出することが義務づけられています。

今や手続きは電子申請が主流!

今、多くの行政手続きが電子申請になっています。雇用保険も例外ではなく、ほとんどの申請において電子申請が可能になっています。
電子申請にすると、様々な手続きの準備が簡素化されます。例えば、資格取得手続きの場合(必要に応じてハローワークから要求されることもありますが)原則として添付書類が必要なくなります。また、申請書の確認後に交付される「雇用保険被保険者証」などの書類は、電子公文書として交付され、紙の書類がなくなるので、保管や従業員への交付などでも業務の手間を軽減することが可能です。

電子申請は、e–Govから行えますが、電子申請に必要な情報をExcelや手書き書類で管理していると、どうしても手続きにミスや漏れのリスクがつきまといます。従業員情報を一元管理し、かつ電子申請にも対応したクラウドサービスを利用すれば、従業員に電子データで提出してもらった情報をそのまま活かし、各種手続きをデスクにいながら完結することができるので便利でしょう。

本稿を参考に、雇用保険に関する業務をスムーズに進めましょう。

本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「【雇用保険とは】加入条件や手続きなど労務担当者が押さえておきたい基礎知識(https://www.obc.co.jp/360/list/post154)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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