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人材育成に有効とされているコンピテンシーとは

掲載日:2020年10月26日人材戦略

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人事評価の中で、コンピテンシーという言葉が取りあげられることがあります。
コンピテンシーは、1990年代から日本の人事制度に取り入れられてきています。これは、従来主流であった能力・情意評価が低成長経済化の厳しい競争環境に合わなくなった時期に、より具体的で評価しやすく、より成果に近いものを評価できる制度を米国から紹介されたことによります。中小企業においても企業の文化や戦略にあったやり方で様々にアレンジされ、「日本式コンピテンシー」として導入が進んでいます。
コンピテンシーとは一体何で、導入するにはどうすれば良いのでしょうか。

コンピテンシーとは

コンピテンシーとは高業績者の行動特性のことです。具体的には、高い業績を上げている人に特徴的に見られる行動を類型化したもので、「できる社員の行動パターン」または「行動ノウハウ」と言い換えることができます。例えば、好成績を上げ続けている営業担当者の行動特性を観察すると、「営業活動に出る前に綿密な準備を行い、効率的に顧客を訪問し、結果として訪問件数が多く顧客の関心事も把握している」、「商談よりアフターケアに重点を置き、そのための業務知識や事例が豊富である」といったことが明らかになれば、これらがコンピテンシーとなります。
高い業績の実現には、いくつかのコンピテンシーを組み合わせることが必要です。この観点から多数あるコンピテンシーを体系的に整理し、その役割や仕事内容によって組み合わせたものが「コンピテンシーモデル」です。一つひとつの行動特性がコンピテンシーで、それを部門・職種や等級といった単位ごとにまとめたものがコンピテンシーモデルですが、実際には両者は厳密に区別して用いられないことも多いようです。

コンピテンシーの概念は、ハーバード大学の行動科学研究者であるD.C.マクレランド教授を中心としたグループが、「学歴や知能レベルが同等の外交官(外務情報職員)が、なぜ開発途上国駐在期間に業績格差がつくのか?」という調査・研究の依頼を米国国務省から受け、「業績の高さと学歴や知能はさほど比例することなく、高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」と回答したことが始まりであるとされています。
これらの研究結果から、さらにマクレランド教授は、人の行動の目に見える部分である「スキル、知識、態度」に対しては、目には見えない「動機、価値観、行動特性、使命感」など潜在的な部分が大きく影響を与えていることに注目していきます。行動の目に見える部分は氷山の一角であり、実際に氷山を動かしているのはその水面下の大きな部分だという認識です。
この考えは「氷山モデル」と呼ばれ、成果を上げる行動を評価する現在の人事システム構築のためのコンピテンシー理論の基礎となったのです。

コンピテンシーを導入するには

コンピテンシーについて説明したところで、実際に企業の人事制度の中に導入するメリット、デメリット、またコンピテンシーをどう抽出するのかについてお伝えします。

コンピテンシーを導入するメリットは下記の通りです。

  1. 1.成果への連動性が高いことから、コンピテンシーを評価し、開発・向上させることで業績の向上が期待できます。
  2. 2.評価基準が実際に目に見える行動となるので、スキルと比較すると評価しやすいといえるでしょう。
  3. 3.等級レベルや部門や職務に応じて具体的な行動が示されますので、成果を上げるためには、どのような行動を取ればよいかが明確となり、アクションプランが立てやすくなります。

一方、コンピテンシーを導入すると、次のようなデメリットもあります。

  1. 1.モデルを設計するのに時間がかかることが多いです。どの企業でも使えるような汎用性のあるモデルではありませんので、自社にマッチするモデルの作成には時間と費用がかかるでしょう。
  2. 2.環境変化や新規事業の進出などにより、コンピテンシーの変更や新規設計が必要となり、メンテナンスの手間もかかることがあるでしょう。
  3. 3.コンピテンシーで評価する場合には、部門や職位などで異なるコンピテンシーを用いるため、評価者は慣れるのに時間がかかるかもしれません。

コンピテンシーの抽出には、抽出法と選択法があります。前者は、高い業績を上げている社員へのインタビューや経営者や経営幹部から理想とする社員の取るべき行動を上げてもらい、独自に行動特性を抽出する方法です。後者は、既存の体系化されたコンピテンシー・ディクショナリーから自社に適したものを選択する方法です。前者はカスタムオーダー、後者は既製品といえますが、企業の規模、専門人材の有無、予算などに応じて自社に合った方法を選択すると良いでしょう。

おわりに

コンピテンシーと似た一般的な言葉で、スキルがあげられます。
スキルは一定のレベルの業務に必要となる力で、潜在的なものと顕在的なものがありますが、保有能力を一般には示します。しかし、スキルがいくら高くても実際に発揮されなければ高い成果には結びつきません。
一方コンピテンシーが対象とするのは、実際に行動で示される発揮能力であるので、成果への連動性が格段に高まります。スキルにおいては「~できる」と表現しますが、コンピテンシーでは「~している」と表現し、具体的行動で記述する点に特徴があります。
今までコンピテンシーには馴染みがなかった企業もあるかもしれませんが、本稿をきっかけに、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

本コンテンツは独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営するサイト「J–net21(https://j-net21.smrj.go.jp/index.html)」内の記事「人材育成に有効とされているコンピテンシーとは、どのようなものですか?導入するメリットは何でしょうか?(https://j-net21.smrj.go.jp/qa/hr/Q1086.html)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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