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仕事の減少による自宅待機を命じるときの注意事項とは

掲載日:2020年8月31日人材戦略

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仕事が減少してしまい、このままでは従業員の雇用を維持することが難しい—。このような難局を、従業員に自宅待機をしてもらうことで乗りきった、という企業もあるようです。しかし、経営が苦しいからといって、やみくもに休業するわけにはいきません。まずは「休業」とは何かをしっかりと押さえた上で、休業に至った原因を整理し、必要に応じて労働者に適切な賃金を支払うことが大切です。また、一定の努力により雇用を維持した場合は、雇用調整助成金から休業手当などの一部が助成されます。本稿では、従業員に自宅待機を命じる場合の注意事項についてお伝えします。

休業とは

通常、自宅待機を従業員に命じると、「休業」になります。
この「休業」は、

  1. 1.労働者が労働契約に従って労働を提供する準備をしている
  2. 2.労働者に労働するという意思がある
  3. 3.上記1.や2.にもかかわらず、使用者が労働の提供を拒否する、もしくは労働者が労働の提供をすることが不可能になる

場合をいいます。

休業中の賃金については、仕事が減少した原因により対応は異なります。

企業経営上、当然に予見できるような休業(経営難による休業など)については、原則として、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当しますので、平均賃金の6割以上の休業手当の支払いが必要になります。
この「使用者の責に帰すべき事由」の具体例としては、資材の不足、資金調達が困難、従業員不足の休業、生産過剰による操業短縮、会社の設備や工場の機械の不備・欠陥、工場の焼失、親会社の経営不振による休業、監督官庁の勧告による操業停止などが考えられます。

不可抗力による休業の場合

一方、休業が不可抗力による場合、使用者には休業手当の支払義務はありません。この不可抗力による休業は、

  1. 1.その原因が事業の外部より発生した事故であること
  2. 2.事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお、避けることができない事故であること

といういずれもの要件を満たす必要があります。
1.の具体的な例としては、天変地異で社屋が壊れてしまった場合や、法律を遵守することにより生じる休業の場合のように、事業の外部において発生して事業運営が困難になったことがあげられます。
2.は、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限に尽くしていることが求められます。この具体的な努力を尽くしたかどうかは、次のような事情から判断されます。

  • 自宅勤務などの方法により、労働者を業務に従事させることができるかを十分に検討したか
  • 他に就かせることができる業務があるにもかかわらず、労働者を休業させていないか

不可抗力による休業を申請する際の留意点

新型コロナウイルスへの対応の中で、営業を自粛するよう要請を受けた場合のように、労働者が出勤できなかったときは、不可抗力を主張して「労働基準法によって休業手当は支給しない」とすることも可能とされました(厚生労働省ホームページご参照)。ただし、新型コロナウイルスによって事業の休止を余儀なくされたとしても、本当に「不可抗力」であるかどうかは個別の事情で判断されますので、注意が必要です。

たとえば、海外の取引先が新型コロナウイルス感染症拡大を受け事業を休止したことに伴い、自社の事業も休止した場合、(1)その取引先への依存の程度、(2)他の代替手段の可能性、(3)事業休止からの期間、(4)使用者としての休業回避のための具体的努力、などを総合的に勘案して判断することが求められました。

雇用調整助成金の活用

経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得なくなった事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練または出向等を行うことで労働者の雇用を維持した場合、雇用調整助成金として、休業手当、賃金等の一部が助成されます。上記の新型コロナウイルスの感染拡大の際には多くの特例が設けられましたが、通常であれば、多くの法定の書類を添付書類として求められます。常日頃からこれらの書類を作成しておくことが重要です。

繰り返しになりますが、使用者の責任により休業した場合には、労働者から最低でも平均賃金の6割の休業手当を請求されます。さらに、民法の規定を排除する特約が締結されていない場合は、賃金の全額について請求されることがあります。経営者としては、就業規則や労働協約等で休業手当の取り扱いを定めておくことが大切です。弁護士や社会保険労務士の専門家に相談してしっかりと体制を整えておくことで、会社の運営が厳しくなったとしても柔軟な対応ができるようにしましょう。

本コンテンツは独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営するサイト「J–net21(https://j-net21.smrj.go.jp/index.html)」内の記事「経営ハンドブック(https://j-net21.smrj.go.jp/qa/hr/Q1356.html)」を一部加筆・変更したものです。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。

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