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アフターコロナ~部下の“モチベーションアップ”新常識

掲載日:2020年6月19日人材戦略

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新型コロナウイルスの感染拡大によって、長期の在宅勤務を余儀なくされた結果、新入社員や若手社員、異動になったばかりの社員や中堅社員において、モチベーションの低下が懸念されています。5月25日に「緊急事態宣言」が、ようやく全国で解除されましたが、組織を潤滑に回すために、リーダーは、社員の“ヤル気”を回復させる必要があります。どうしたら良いのか、考えてみましょう。

精神的な「インセンティブ」を有効に与えていく

モチベーションを高めるのに速効性があるものは、「インセンティブ」だといわれています。「報奨」といった意味を持つインセンティブですが、社員の“ヤル気”を復活させるためには、金品ではなく、「精神的なインセンティブ」を考えていくことが大切です。

インセンティブについての代表的な理論の一つには、米国の心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱した「動機づけ衛生要因理論」があります。
この中で、ハーズバーグは、インセンティブを大きく「衛生要因」と「動機づけ要因」に分類しました。

「衛生要因」とは、いわば「あるのが当たり前」のもので、与えなければ社員は不満を感じますが、与えても満足度が高まりにくいインセンティブのことを指します。
具体的には、「固定給」「福利厚生」「安全な職場」など……。つまり、“金銭的”や“物理的な”インセンティブが中心といえるでしょう。

一方で、「動機づけ要因」とは、与えれば社員の満足度が高まるインセンティブのことになります。これは、衛生要因とは違って、「達成感」「承認」「責任(権限)」といった“精神的な”インセンティブが中心です。
そして、いまの状況下で、社員のモチベーションを盛り上げるためには、この、「動機づけ要因」の提供こそが有効といえます。

ただし、「動機づけ要因」については、社員の職位・階層・経験値別に、与えるインセンティブの内容を変えたほうがいいといえます。なぜなら、同じ社員でも、立場が変われば、仕事に求めるものも変わってくるからです。

まずは現在、特にモチベーションが下がっているとみられる若手社員や新入社員には、どんなインセンティブが有効なのかを考えてみましょう。業務経験がまだ少ない彼らの場合、フォーカスすべきは、「仕事のやりがい」と「成長の実感」です。

「仕事のやりがい」を感じさせる、秘訣はこれ!

まずは、「仕事のやりがい」について考えてみましょう。
「仕事の成果を100年後まで残せる重工メーカーに、魅力を感じた」、「お客さまの喜ぶ顔が見たいから、ホテルに就職した」……という具合に、若手社員や新入社員の大半は、その会社を選んだ明確な“志望動機”を持っています。実はそこに、モチベーションを高めるカギがあるのです。

入社前のイメージと入社後の現実とのギャップは、彼らの“ヤル気”低下につながります。そこで、在宅勤務をした経験や、これからはじまる通常勤務について、「これらは、希望の実現へとつながっている……」と思えるように誘導すれば、モチベーションがアップしていくというものです。
そのためには、自身の仕事がどんな形になっているのかを体感させることが、“やりがい”を感じさせる近道となります。

例えば、自動車会社の調達部門の若手が、「自分の作った車が、世界中で走っている姿を見たいから……」といった動機で働いているとしたら、担当している部品が、実際に、現場でどんな車に、どうやって組み込まれ、どんな機能を果たしているのかを、本人に見せるといいでしょう。
そうして、「自分が会社の役に立っている!」と感じられる機会を与えていくことによって、彼らのモチベーションをアップさせる効果が期待できます。

また、異動してきたばかりの社員にも、「どんな仕事がしたいのか」を確認する必要があります。とりわけ配属されたのが、本人の希望の職種や部署でない場合は、十分なケアが必要です。
例えば、メーカー勤務で「設計部門に行きたかったのに、営業部門に回された」という技術系社員の場合でしたら、「技術に強いと、営業でも重宝されるぞ」とか、「設計に行ったとき、顧客の視点が強みになるぞ」といった具合にコーチングするといいでしょう。
「いまの仕事が自分のキャリアに役立つ」と考え方を転換させことが、“やりがい”に有効となっていきます。

小さな成功の積み重ねにより「成長の実感」を!

次は、「成長の実感」について考えていきましよう。
若手社員や新人、異動してきたばかりの社員は、「いまの自分は、確実に成長している……」という実感を得ると、仕事が面白くなってくるものです。そうすれば、ヤル気も高まり、前へ前へと進んでいくようになります。

経験値の少ない社員の場合は、仕事のスキルが身についておらず、実績もないわけですが、ゼロベースからのスタートなので、逆に、自分の成長の手ごたえを感じやすいともいえます。そこで、自分の成長の度合いを客観的に確認できる“指標”を与えるといいでしょう。
例えば、ある建築会社では、職能レベルに応じた「技能認定」のようなプログラムを用意し、新人にもどんどんチャレンジさせて、それに合格させることによって自信をつけさせているそうです。

また、仕事がうまくいったら、「こまめに褒める」ことも大切です。それが、彼らを育てるコツだといえます。
「小さな成功の積み重ね」は成長への道と考え、新人だからといって大きな仕事のサポートばかりをさせるのではなく、小さな仕事でもいいので、責任のある仕事を任せるようにしてみましょう。そこで成功した経験と、それに対して上司から褒められることによる達成感は、自分自身の成長を実感できる機会となり、モチベーションが上がる材料となっていきます。

例えば、ある住宅メーカーでは、小口のリフォーム工事を、若手社員1人に任せています。
実は、上司やベテランの先輩社員が陰でサポートし、イザというときにはフォローするのですが、担当した若手社員は「この工事は自分が責任をもって完成させた……」という自信を抱きやすいので、こうすると、成長のスピードが速まるそうです。
また、顧客からも「ありがとう」などと、直接褒めてもらいやすいので、仕事のやりがいにもつながるといいます。

中堅社員への刺激は、権限と肩書きをポイントに!

業務経験を積み、仕事への自信もついてきた中堅社員には、「責任(権限)」と「ポジション(肩書き)」の付与というインセンティブが効果的と考えられます。
つまり、会社として、「あなたの仕事ぶりや実績を評価して、今後に期待している。それで、もっと大きな仕事を任せるのだ……」ということを、形として示すわけです。
これによって、中堅社員である本人は、「仕事が会社に評価された」「自分は成長している」と実感できます。自信を抱くことができ、俄然、ヤル気を発揮するようになるでしょう。

「責任(権限)」の具体例としては、例えば営業マンなら、顧客との価格交渉、納入業者の選定といった、仕事上のさまざまな“裁量権”の提供が想定されます。その中には、「自分で使える経費の枠」といった、金銭にからむものもあります。
さらに、営業チームの運営・監督、部下の指導・育成といった、責任がより重い仕事を任せることも、モチベーション向上に有効です。

「ポジション(肩書き)」については、課長、係長といったラインの役職ではない、例えば、「チームリーダー」といった肩書を与えるだけでも、本人への評価と期待を形として示すことになりますので、ヤル気アップが期待できるといえます。
また、部下がおらず、組織のマネジメントを担っていない中堅社員に肩書きを与えることも、実は、効果を期待することができます。例えば、研究職であれば、主任研究員→上席研究員→首席研究員といった具合に、個人の能力によって、ステップアップしていくコースもありうるからです。こういった肩書も本人とってはモチベーションアップの契機となりますので、有効な手段の一つと考えたほうがいいでしょう。

最後に、ぜひ知っておきたいのが、「仕事の権限や肩書きを与えても、必ずしもコストアップにはつながらない」ということです。
例えば、管理職ではない中堅社員に、現在の待遇のままで、新規事業の「プロジェクトリーダー」という肩書きと、プロジェクトチームのとりまとめの権限を与えたとしましょう。ここでは、管理職手当といった人件費は増えませんが、彼は、はりきって新規事業の仕事に打ち込んでくれるはずです。つまり、コストアップはしていないのです。

このように、「動機づけ要因」の提供には、コストがほとんどかからないのに、社員のモチベーションアップ、すなわち生産性向上の効果が大きいところにメリットがあります。
新型コロナウイルスの感染予防対策を経て、会社での働き方が大きく変わってくる今後、「動機づけ要因」インセンティブによる社員の“ヤル気”アップは、リーダーが活用すべき一手になることでしょう。

(記事提供元:株式会社プレジデント社 企画編集部)

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