介護休暇・介護休業制度とは|仕事と介護の両立支援で企業が注意すべきこと
掲載日:2020年2月10日人材戦略
昨今、日本では高齢化が加速的に進み、企業にとって「介護」問題が深刻化しています。
内閣府の「平成30年版高齢者白書」によると、介護や看護を理由とする離職者数は2013年以降急激な増加傾向にあり、毎年80,000人を超えているそうです。介護をしている側の中心世代となる40代~50代は、いわゆる「働き盛り」の世代であり、管理職など重要なポストについている「優秀な人材」も多く存在します。企業にとって、彼らを手放す状態は大きな損失といえるでしょう。優秀な人材を確保し続けるためには、「社会問題としてどう解決するか」「どう従業員を守るか」を企業側でも考えなければなりません。
本稿では、仕事と介護の両立支援制度でもある「介護休暇」「介護休業」にスポットをあて、介護に直面する従業員に対して企業が配慮すべきことや、従業員を守るために知っておきたいポイントなどをご紹介します。
「介護休暇」「介護休業」の違い
【介護休暇】
病気や怪我、高齢などの理由で要介護状態になった家族を介護することになった従業員に対して与えられる休暇です。
介護を伴う休暇の申し出には、有給休暇ではなく介護休暇で対応することになります。
【介護休業】
負傷や疾病、身体もしくは精神の障害などの理由から2週間以上「常時介護」が必要な家族(配偶者、父母、配偶者の父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護する場合に取得できる休暇です。
「常時介護が必要とする状態」とは、厚生労働省により以下のような判断基準が示されています。ただし、あくまで「参考」であり、従業員が介護休業を取得する妨げにならないよう、企業には柔軟に運用することが求められています。また、必ずしもその家族が要介護認定を受けている必要はないようです。
- (1)「常時介護を必要とする状態」とは、以下の(1)または(2)のいずれかに該当する場合であること。
- (2)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
- (3)状態①~⑫のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
項目 | 状態 | ||
---|---|---|---|
1 (注1) |
2 (注2) |
3 | |
|
自分で可 | 支えてもらえればできる(注3) | できない |
|
つかまらないでできる | 何かにつかまればできる | できない |
|
自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
|
自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
|
自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
|
自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
|
できる | ときどきできない | できない |
|
ない | ときどきある | ほとんど毎回ある |
|
ない | ときどきある | ほとんど毎日ある(注5) |
|
ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
|
自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
|
できる | 本人に関する重要な意思決定はできない(注7) | ほとんどできない |
(注1)各項目の1の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分でできる場合も含む。
(注2)各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者等の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。
(注3)「①座位保持」の「支えてもらえればできる」には背もたれがあれば一人で座っていることができる場合も含む。
(注4)「④水分・食事摂取」の「見守り等」には動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判断を支援する声かけを含む。
(注5)⑨3の状態(「物を壊したり衣類を破くことがほとんど毎日ある」)には「自分や他人を傷つけることがときどきある」状態を含む。
(注6)「⑫日常の意思決定」とは毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。
(注7)慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、指示や支援を必要とすることをいう。
出典:厚生労働省「育児・介護ガイドブック」(リンクPDF)p11「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」より
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf#page=13
企業が留意しておきたい6つのポイント
従業員から介護休暇や介護休業の相談または申し出を受けた場合に、企業の対応として気をつけておきたいポイントを6つご紹介します。
- 法律で守られた制度のため、企業は従業員の取得の申し出を拒否できません
- 企業は介護のための選択的措置を講じなければなりません
- *選択的措置には、所定労働の短縮(短時間勤務)、フレックスタイム制度、始業・就業時間の繰り上げ・繰り下げ、介護サービス費用の助成などがあげられます。
- 介護する従業員は所定労働時間・時間外労働・深夜労働が制限されます
- 介護休業は、社会保険料・住民税は免除されません
- 介護休業には、介護休業給付金が支給されます
- 介護と仕事の両立支援策を、社員全員に発信しておきましょう
企業は、従業員が仕事と介護を両立し働き続けられるよう支援体制を考えることが重要で、「介護に直面しても両立を支援する姿勢」「安心して相談できる職場」であることを伝え続けなければなりません。介護の当事者である従業員はもとより、まだ介護に直面していない従業員も含め、すべての従業員に対して、日頃から情報提供や働き方について発信しておくことが望ましいでしょう。
介護休業を支援する企業向けの助成金制度
年々労働人口も減少傾向にあり、介護休業を支援するにも、その従業員が不在になる間、仕事のやりくりに困る企業もあるかもしれません。そこで厚生労働省では、仕事と介護の両立を積極的に支援する中小企業に対し、助成金制度を用意しています。職業生活と家庭生活が両立できる“職場環境づくり”のためにも、こうした制度を有効に活用しましょう。
介護離職防止支援コース
従業員の「介護休業の取得・職場復帰」と、介護両立支援制度など「介護のための柔軟な就労形態の制度導入」について、助成金を支給するものです。
再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
介護のほか、妊娠、出産、育児、配偶者の転勤等を理由に退職した人について、退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることを明記した再雇用制度を導入している企業が、再就職を希望する人を採用した際、最大5人まで支給される助成金です。
他にも、各公共団体が独自に助成金制度を設けている場合もあります。
企業が取り組むべき5つの支援
厚生労働省では、介護に直面した従業員に対し「企業が取り組むべき支援」は5つある、としています。
- 仕事と介護の両立を支援する姿勢であることを伝える
- 地域包括支援センターなどで地域支援情報をしっかり把握するよう伝える
- 人事担当者・管理者・対象従業員の三者面談で、当面の支援方針を共有する
- 介護の体制ができてきたら、両立のための介護支援プラン策定を支援する
- 定期的に人事担当者・管理者が共に対象従業員のフォロー面談をする
介護は、いつ起こるかわからないものです。突発的な事案であるからこそ、日頃からこうした支援を行って従業員を安心させ、企業への信頼を高めることで働きがいや働く意欲に還元することが大切でしょう。
本コンテンツは株式会社オービックビジネスコンサルタントが運営するサイト「OBC360°(https://www.obc.co.jp/360)」内の記事「介護休暇・介護休業制度とはー仕事と介護の両立支援で企業が注意すべきこと(https://www.obc.co.jp/360/list/post80)」を一部加筆・変更したものです。
上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
当初作成:2019年8月23日