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2020年から施行される予定の「ハラスメント規制法」について

掲載日:2019年9月24日人材戦略

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職場でのハラスメント対策を義務付ける改正案が、早ければ2020年より施行される見通しです(まずは大企業に適用され、中小企業への適用は2022年の予定)。

ILO(国際労働機関)によってハラスメント対策は国際条約として既に締結されている一方で、国内企業においてはハラスメント対策について十分に浸透しているとは言い難く、なかには自分がハラスメントをしていることに気づかない人もいるのが実情です。労働環境の多様化が進む現代、将来を見据えると、中小企業も早めにハラスメント対策を講じ、リスクを軽減させる必要があります。そこで本稿では、改正されたハラスメント規制法を解説し、ハラスメント対策をどう講じるかについて説明します。

国際条約となったハラスメント対策と日本の遅れ

ハラスメントとは、いわゆる「いやがらせ」のことを指し、本人の意図に関係なく、発言や行動によって、相手を不快にさせたり尊厳を傷つけたりすることです。ハラスメントには、セクシャルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、マタニティーハラスメント(マタハラ)、モラルハラスメント(モラハラ)、ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)など様々な種類があります。

職場などでのハラスメントについては、世界的な撲滅活動が進められています。2019年6月、ILOは職場におけるハラスメントの禁止を国際条約として採択し、日本政府も同条約に賛成票を投じました。

日本労働組合総連合会(連合)が2017年に行なった「ハラスメントと暴力に関する実態調査」では、職場でハラスメントを受けたり、見聞きしたりしたことがある人は56.2%にのぼり、内訳を見るとパワハラが全世代平均で45%、セクハラが全世代平均で41.4%という結果が出ていることから、国内におけるハラスメントに対する問題意識は高いとはいえないのが実情のようです。

2020年から施行される予定の「ハラスメント規制法」とは?

日本では1999年に男女雇用機会均等法を改正することによってセクハラの防止にかかる法令が整備されましたが、パワハラに関しては規制が存在しておりませんでした。しかし今般、政府は働き方改革を通じた職場環境の整備に向け、パワハラを含めたハラスメントの防止に乗り出しました。これは労働政策総合推進法の改正、いわゆる「ハラスメント規制法」として、早ければ2020年4月より施行され大企業に適用される見通しです。

この規制法の施行によって、パワハラとセクハラに関して、主に下記の点などが強化されます。

【パワハラ】

  • 職場におけるパワハラ防止のため、事業主は方針等を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することが義務となる。
    例:企業内で起こりやすいパワハラや、何をもってパワハラとするのかを例示したものをパンフレットや社内報などを通じて社員に周知する。
  • パワハラに関する紛争が生じた場合、労働者・事業者などの紛争当事者は、都道府県の労働局に調停など個別紛争解決援助の申し出を行うことができるようになる。

【セクハラ】

  • セクハラ防止に関する、国・事業主・労働者の責務が明確化される。それぞれの責務として、国はセクハラ(パワハラ含む)に対する周知・啓発を行い、事業主は労働者が他の労働者に対する言動に配慮する。また、事業主と労働者はハラスメントへの理解を深めるとともに、自らの言動に注意するよう努める。
  • 事業主などに対してセクハラの相談をした労働者に対して、不利益な扱いを行うことを禁止する。

職場で問題となっているパワハラの定義とは

ハラスメントには様々なものがありますが、上述した連合の調査にある通り、職場内ではセクハラやパワハラを体験したり、見聞きしたりするケースが増えています。性的ないやがらせであるセクハラは世に出て久しい単語ですが、パワハラも近年急速に社会に浸透してきました。

厚生労働省によると、パワーハラスメントとは、

  1. 優越的な関係に基づいて
  2. 業務の適正な範囲を超えて
  3. 身体・精神的な苦痛を与えたり、就業環境を害したりすること

の3点を満たすものだと定義しています。

職場の同僚による無視や上司からのサービス残業の強要などは典型的なパワハラだといえます。また、パワハラの中には、妊娠・出産に関するいやがらせであるマタハラも含まれます。

教育とハラスメントの境界線

ハラスメントの問題が社会に浸透するに従い、ステークホルダーからの企業に対する目線も厳しくなりつつあります。しかし何をもってハラスメントと定義づけるのか、その位置づけは被害者側の主観によるところもあります。

例えば管理職側からすると、単純に社員のミスを叱っただけであるにも関わらず、実際に叱られた社員が、それを上司によるパワハラと捉えるおそれも否めません。

厚生労働省はハラスメント(パワハラ)について上述のように定義しています。
具体的には、優越的な立場を利用し、身体に対する攻撃を行う、侮辱、暴言による精神的な攻撃を行う、仲間から外す、無視といった人間関係からの切り離しなどがこれにあたります。また膨大な量の仕事の強制や、それとは逆に業務上合理性のない仕事、能力や経験とはかけ離れた低いレベルの仕事の指示なども該当します。

社員の教育には社員の立場に立った指導が必要です。経営陣や管理職と、一般的な社員では自ずと視点が異なるためです。指導する側としては、かつて自分が習った指導をそのまま悪意なく伝えたつもりが、被害者からするとパワハラと受け取られるおそれがあります。また、昭和では体育会系として許された行為も、今では問題になるといったような時代の変遷にも配慮しなければなりません。

ハラスメントと企業のリスク

2020年から施行予定の「ハラスメント規制法」では、ハラスメントを行った場合の罰則は設けられていませんが、「ハラスメント規制法」の遵守は、国内企業におけるハラスメントに対する意識改革を促進させる効果が見込まれます。また将来的には、罰則が設けられることも想定されているため、たとえ小規模な事業主であったとしても、対策を先送りすることは得策であるとはいえません。

ハラスメントを行うことは、被害者の精神状態の悪化、職場環境の悪化、人材の流出、会社への悪評など多くの問題を引き起こします。また、ハラスメント規制法そのものに罰則が設けられていないものの、ハラスメントに関連する罰則として、脅迫や強制わいせつ罪、暴行罪などの刑事罰に紐付けられる可能性もあります。

加えて民事訴訟における損害賠償などを請求される可能性もあり得るため、ハラスメントに対する取り組みをないがしろにすることはできないといえるでしょう。

企業が取り組むべきハラスメント対策

経営者や人事担当者にとって、ハラスメント対策は遠からず講じなければならない課題であるといえます。厚生労働省が運営するポータルサイト「あかるい職場応援団」では、パワハラ対策7つのメニューとして、以下を掲げています。

【予防するために】

  1. トップのメッセージ(企業トップが全従業員に対してパワハラ対策が重要な課題であることを明確に発信する)
  2. ルールを決める(従業員にとって分かりやすく、できる限り具体的に決める)
  3. 社内アンケートで実態を把握する(対象者が偏らないように実施する。匿名が効果的)
  4. 教育をする(研修は可能な限り全員が受講し定期的に開催する。具体的な事例を取り上げると効果的)
  5. 社内での周知・啓蒙(会社の方針・ルール、相談窓口の周知を徹底する)

【解決するために】

  1. 相談や解決の場を提供する(相談窓口を設置する。相談者が不利益な取扱を受けないように注意する)
  2. 再発防止のための取り組み(定期的な検証と見直し、再発防止策の策定と実施が重要)

取り組みを進めることで期待できる効果

職場におけるパワハラを始めとするハラスメントの防止には、なによりも企業トップが主導することが重要であると考えられています。その上で、従業員の意識改革や制度の整備などを段階的に進めていくことが、ハラスメントを撲滅するためのポイントとなるでしょう。

企業規模を問わず、ハラスメントへの対策は難しいものとして認識されていますが、対策を実施することで多くの効果が得られているとの調査結果も出ております。厚生労働省が2016年に実施した「職場のパワーハラスメントの実態調査」では、パワハラ対策を実施した企業が感じた効果として、企業の発展、職場の士気や生産性、企業イメージなどが向上したとする回答が得られました。

ハラスメント対策は重要な経営課題

ハラスメントを無意識に行っている側は、その言動や行為に問題がないと思っているかもしれませんが、受け手にとっては精神的な苦痛を感じている場合もあります。どのような振る舞いがハラスメントに該当するかについて、相手の立場に置き換えて考えてみることが求められます。

職場のハラスメントを放置することは個人レベルにとどまらず、企業全体への大きな経営リスクとなりかねません。ハラスメント規制法の施行に備え、企業経営者や人事担当者は、なるべく早めにハラスメント防止策に取り組む必要があるでしょう。

上記の個別の表現については、必ずしもみずほ銀行の見解を示すものではありません。
(記事提供元:株式会社ZUU)

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